このままだと火金投稿になるのかな…
----烏間----
「私は防衛省の烏間 惟臣というものだ。君と話がしたい…いや、交渉させてほしい」
私が用件を彼に伝えると、彼の目つきが変わった。先ほどまでの温厚な、万人から好まれそうな表情は消えて心の奥底までえぐられるような鋭い目つき…目の色は青く透き通っていて瞳の中に引き込まれそうになる。
気配を消して彼の先ほどの行動を観察していた。油断しているからだろうか、それとも私に気づいていて財布を盗んだのかわからないが話に聞いていた通りに触手を持っていた。早すぎて正確には見えなかったが何かが彼の後ろから現れて、気づいたら彼の手に財布が握られていたのは確認できた。
「場所を変えないか?ここだとお互い不都合だろう。防衛省で手配している店がある。そこなら話を誰かに聞かれる心配もない。君にとっても悪い話ではないよ。」
私としたことが集中を切らすところだった。元空挺所属、現役の自衛官…特殊部隊の私が相手にのまれるところだった…。
彼から目を離してはいけない。見た目は子供だが身体は普通の人間では無いことを知っている。もちろん、なんでそうなってしまったのかも話は聞いている。これは国家機密、知っているのは国のトップの一部と防衛省臨時特務部、E組の教員の中でも私ともう一人だけしかしらないことだ。
あとは彼が提案にのってくれるかどうか。黄色いタコと同じなら、彼も全力を出せばマッハ20とまではいかないがすぐに逃げることが可能だろう。そうなれば再び探すのは至難の業だ。どうにか話を聞いてもらうだけでもいい…
----渚----
烏間さんの波長を見ながら彼の話を聞いてみる。どうやら嘘をついている様子はないようだ。嘘をついていれば波長が乱れる、僕に嘘は通用しない。人の波長を感じ取ることのできる能力は触手が僕の身体に住み着いたことによって得られたものの一つだ。波長を見ることによって相手の感情の起伏を感じ取ることができるんだ。
烏丸さんの先程の話しぶりからして、おそらく僕の身体のことを知っているのだろう。話を聞くだけでもいいかな…何かあれば逃げればいいだけだしね?
「交渉ですか… それって、あれが関係してたりしますよね?」
僕はそう言いながら形の変わった月を指さして烏間さんに聞いてみる。案の定、烏間さんは苦い顔をしながら頷いた。
(やっぱりか…まぁ、だからと言って僕に何の用があるのかわからないけれども。月を壊した原因を殺してこいとか言わないよね。)
「いいですよ?でも、何かあれば逃げますからね。」
当然だ。防衛省が用意したということは、防衛省側にとって有利な状況を作り出しいる可能性の有る場所であることを意味する。相手のフィールドに入るなんて嫌だけど今回はしょうがない。何かあれば全力で逃げるだけのこと。
僕が同行することに承諾すると烏間さんは安堵のため息をついて額の汗をぬぐった。この人もすごい苦労してるんだろうなぁ…。
*
防衛省の用意していた話し合いの場所は、いかにも高級そうな料亭。久しぶりにまともな食事が食べれるんじゃないかと今からワクワクが止まらない。いけない…!涎が垂れてきた…。
和式の部屋に通されて、座布団に座る。しばらくすると目の前に美味しそうな料理が運ばれてきた。白米だって最後に食べたのがいつだったのか思い出せない状態なのに、こんな美味しそうな料理運ばれてきたら我慢できない…。これだけでも烏間さんに着いてきたかいがある。しばらくしてから烏間さんが話し始めた。
「さっそくだが、簡単に状況の説」
ぐぅ~。お腹が鳴ってしまう。
「ごめんなさい…。話の続きを」
我慢できなかった。大事な話の最中だというのに、空腹に耐えきれずお腹がなってしまった。顔が熱くなるのがわかる。僕は顔を真っ赤にしながら話を遮ってしまったこと謝りながら、話の続きを促したが烏間さんは微笑んで
「いや、話はあとでもいい。先に食べてしまおうか。遠慮しないで食べてくれ。」
「いただきます!」
食べていい。許可が出れば我慢できなくなり、箸を持ち最初は白米を口にする。
……美味しい!やっぱり和食が一番だね。味噌汁も一口…漬物も食べて、焼き魚も…
身体は勝手に動いていく。手が止まらない、胃袋が次へ次へと食べ物を要求してくるのがわかる。こんなに食事に集中したのは初めてかもしれない。美味しいものを食べるって幸せなことだなと思ってしまった。
気付いたら食べ終えていた…。とても美味しかった。
食べ終えてから気づいたことがある。窓の外、廊下に何人かの気配を感じる。おそらくは防衛省の人間だろう、素人でないことはわかる。
……いや訂正、一人だけ素人が混ざっている。襖の向こう側に一人だけ雰囲気の違う人間が立っているのがわかった。僕は箸を置いて、手を合わせて
「ごちそうさまでした。とても美味しかったです。」
「気に入ってもらえてよかったよ…。食べ終えて早々ですまないが、そろそろ本題に移ろうか。」
烏間さんは苦笑してから、すぐに表情を切り替えて話を切り出してきた。
----雪村あぐり----
私は襖の隙間から彼をずっと見ていた。その姿は研究所で何度も見てきた…忘れるはずもない、水色の髪をした少年だ。
私は自分の犯した罪の重さを理解している。柳沢の手伝いとして、非人道的な研究に協力していたのだ。そして、その研究によって多くの命を奪ってきた。
今は国に身柄を確保され、ある研究を行っている。その間もずっと後悔してきた。小さいときから、人を救うことをしたかった…なのに婚約者のためとはいえ、あんな研究に加担していたなんて…。
とにかく、この子が助かっただけでもよかった…私がそう思っていると中から声が聞こえた。
「雪村先生、入ってきてください。」
烏間さんの声が聞こえた。私は覚悟を決めて襖を開ける。私が姿を現すと彼の驚いた顔があった。ゆっくりと歩いて、烏間さんの隣に座り彼の顔を見る。
「久しぶりね。生きていてくれてよかった…」
最初はなんて声をかければいいのかわからなかった。しかし彼の目を真っすぐみたとき自然とそんな言葉が口から出た。本当は謝罪した。謝っても許されないことぐらいわかっているが。
----烏間----
雪村先生を見た瞬間、少年は驚いたような顔をした。その後、混乱したような表情を浮かべながら歩いてくる雪村先生を見ていた。
「いろいろ聞きたいこともあるだろうが…まずは君の名前なんだが。」
そう、私も雪村先生も彼の名前を知らない。調べれば孤児院時代までの戸籍は見つかったが、死亡扱いだ。死者が蘇るのはまずい…新しく作ったほうがいいだろう。
「僕の名前ですか?えーっと…渚で。名字はてきとうに…」
「そうか、それでは渚君。さっそくだが君には椚ヶ丘中学校に通って暗殺に協力してほしい。」
いきなりで困るだろうが私は一番の目的を彼にぶつけた。
----渚----
学校にいきなり通い暗殺に協力しろと言われたときは驚いた。しかし、黄色いタコの写真を見せられて説明を聞くと納得することができた。……何点かツッコミたいところもあるけど…
「何点か質問があるんですが…。まず、僕が暗殺に協力してメリットは?別に世界を救いたいとかヒーローになりたいなんて思いは無いんですけど。お金もいらないですし… そもそも僕はこいつみたいに宇宙に飛んで行って月を破壊できるような力も持ってませんよ?戦力なんかにならないと思いますけど。」
「世界を救う気はないか… それでもメリットはあるぞ。協力してくれるなら戸籍を用意しよう。それなりの生活を送れるように国から支援もさせてもらう。それに…君の身体がもとに戻れるように雪村先生が研究してくれる。」
思ったよりもメリットが多かった。そもそもデメリットがないな…。チラッと雪村さんを見ると、僕の目を見て頷いた。そして烏間さんは続ける。
「別にいますぐ暗殺してほしいとは言っていない。1年間共に過ごせばチャンスはいくらでもあるだろう。クラスメイトとも協力すれば作戦の幅も広がるだろう。もちろん触手のことは秘密だが。」
たしかにそうだ。100回失敗しても最後の1回が成功すればいいわけだ。
「仮にE組に編入したとして、クラスの皆には僕の身体のことは秘密ですよね?そしたら触手を使った暗殺もできないわけですし、わざわざ生徒として暗殺に協力する必要は無いんじゃないか…。どうせ外部から暗殺者も送り込んでるんですよね?」
とりあえず疑問に思ったことを烏間さんに聞いてみる。生徒として対象に接触する必要はない。なによりも勉強したくない…
「それはだな…」
「それはね!渚君がまだ子供だからよ…だから学校に通って勉強するべきなの。それに同年代の子と一緒にいるべきだわ…友達もたくさん作って遊ばないと。」
烏間さんの言葉を遮ってあぐりさんが話し始めた。あぐりさんの顔を見ればわかる、僕を必死に説得しようとしている。
「だから私のクラスに来て欲しいな…。私の妹もいるのよ?きっと渚君となら、すぐ仲良くなれると思うわ…それに渚君の身体のことをよく知っている私が近くにいたほうがいいと思うの。」
まだ言葉を続けて説得しようとするあぐりさんに僕は
「わかりました。生徒として暗殺に協力しますよ…」
折れてしまった。
原作からの変更点
・渚君はすでに波長を使いこなしている。