どうにか無理やり渚君をE組にぶちこみました。
挨拶の時間
----雪村あかり----
みんな緊張したような、どこか硬い表情をしながら教壇に立つ暗殺対象である先生を見ている。なかには額に汗を浮かべている人もいる。
(みんな演技が下手だよ。そんなんじゃ暗殺しようとしているのがバレバレ、気持ちはわかるけどさ…)
女優をやっていた私だからわかる、こんな表情じゃこれから暗殺をしますよと言っているようなものだ。
3年E組の全員が机の下にそれぞれの武器を用意している。ハンドガンだったりサブマシンガンだったり。
もちろん装填されているのは実弾ではなく対触手用BB弾。日直の杉野君の号令で一斉射撃を行う予定になっている。
(と言いつつ、私も武器を持つ手に力が入っちゃって緊張してるんだけどね…)
と心の中で苦笑いして一度深呼吸、改めて気持ちを落ち着かせる。そして
「起立!!」
杉野君がいつもより大きな声を出す。全員がそれぞれの武器を構えて
「気を付け!!」
先生に狙いを定める
「れい!!!」
全員が引き金を引いて一斉射撃が始まる。みんな、ほとんど適当に射撃をしている
(マッハ20のスピードを出せるといっても、これだけの人数で射撃すれば1発くらいは…!)
そう、私たちは数で押す作戦に出たのだ。先生の避ける軌道や動きなんて予想できるはずもない。
私たちは素人。狙いを定めたり先生の動きを予想して射撃するよりも、とにかく多くの弾を撃ちこんだ方がいいとう考えに至ったのだ。
しかし先生は余裕そうに私たちの攻撃を避けながら生徒名簿を開き出席をとりはじめる。全員が弾を撃ち終わるのと出席を取り終わるのは同時だった。
暗殺が始まってから数日、先生に傷を負わせたことは一度もない。クラスにだんだん諦めムードが漂い始めると
「だめですね皆さん。数に頼る戦術は個々の思考をおろそかにしてしまいます。もっと工夫をしましょう。」
(自分を殺そうとする相手にアドバイスを送るというのも奇妙な光景だなぁ)
先生の言っていることは正しい。どうやらこの化け物に、数による戦いは無意味らしい。
そんなことを考えていると先生は話を続ける。
「今日はE組に新しい仲間が来ますよ。紹介しますから一度席についてください。それでは渚君、入ってきてください。」
「「「転校生?」」」
全員が驚きの声をあげ、何人かが小声で呟く
「この時期に転校生って…」
「暗殺者じゃねーのか?」
「まさか、かわいい女の子!」
1人変なのがいたが、私もみんなの呟きに頷く。そして開いた扉のほうへ視線を向けて入ってくる転校生を見る。
(うん、私も暗殺者だと思うなぁ。新学期早々転校生ってどう考えたっておかしいもん。どうせ屈強で目つきのするどい野郎…じゃない…!)
そこにいるのは背が低く(おそらくクラスで一番背が低い)緊張した表情を浮かべながらおずおずと教室へと入ってくる青い長髪の男の子?がいた。
まるで小動物みたいで…その…かわいいなと思ってしまった。
(暗殺者じゃ…なさそうだなー…頼りなさそうだし。)
----渚----
僕は緊張したような表情をしながら教室の前に立つ。そして教室を見渡すと皆が興味深そうに僕を見ているのがわかる。
(うーん…わかっていたことだけど、みんな素人なんだなぁ…)
さっきの一斉射撃を扉の隙間から見ていたが僕にも彼らが素人だということがわかるほどひどいものだった。
「は、はじめまして…今日からE組でみんなと一緒に勉強することになる松本渚です。気軽に渚って呼んでくれると嬉しいかな。念のために言っておくけど、こんな見た目だけどちゃんとした男だから間違えないでね。えーっと…暗殺の戦力になるかどうかわからないけど、よろしくお願いします…!」
不安げな…気弱な雰囲気を醸し出しながら自己紹介をする。もちろん先生を油断させるための演技だ。ちらっと横を見ると先生は不用心に右隣に立っている。先生に攻撃を仕掛けるタイミングをうかがう。
そして僕は自己紹介を終えると同時に対先生用のナイフを取り出す。そして素早く切り上げると、ぽとりと触手が一本床に落ちた。
(よし…!不意打ちだけど一本確実に切り落とした。この調子で2本目も…えっ…?)
振り上げた腕をそのまま振り下ろそうとしたとき、目の前に先生がいないこと気づく
(どこに行って……まさか後ろに!)
慌てて身体を反転させるため、ひねりを加えながら前に飛ぶ。案の定、僕の後ろに先生は立っていて
(着地と同時に前に飛び出すか…)
一瞬の滞空時間で次にどうするのかを考える。しかし先生は僕が着地すると同時に距離を一気に詰めてきて僕の目の前に立つ。そして僕の腕を掴み
「ぬるふふふ…素晴らしい動きです。教室に入ってきてからの演技もナイフさばきもクラスの皆さんに見習ってほしいですねぇ~。しかし渚君、敵を目の前にして攻撃が当たったかどうか確認するのはよくないですよ?2撃目は素早く繰り出さないと…先生ならその間に渚君の後ろに回り込み、渚君の髪をツインテールにしちゃいました。長髪はじゃまそうでしたので…ちなみに触手は元通りなのでご心配なく。あ、渚君の席はそこです。」
切り落とした触手は元通りに再生していた。
「みなさん、渚君と仲良くしてあげてくださいね。質問などは休み時間にするように。」
(再生も早い…!僕の再生速度なんか比べ物にならないくらいに。ほんとにツインテールにされてるし…)
もともと長髪で後ろで1つにまとめていただけだったが、気づけばツインテールにされていた。まぁ、こっちのほうが邪魔にならなくていいかも。もともと意味もなく伸ばしてたから髪型にこだわりなんてないし。
「ちっ…マッハ20っていうのは嘘じゃないみたいだね…まぁ、対触手用ナイフが効くってことがわかっただけでもよしとするかな。」
僕は舌打ちしながら指示された席に座るのだった。
ちなみに一斉射撃によって散乱したBB弾の片付けに僕も駆り出されるのだった。
----タコ----
(油断できませんねぇ~。一斉射撃が失敗して元気のないクラスのみんなを元気づける必要がある。そして、先生を暗殺することができる可能性があることもわからせる必要がある。そのために渚君の攻撃に掠る程度に当たるつもりでしたが、まさか触手を一本切り落とされるとは…朝、森の中で出会ってなければ演技にも騙されていたかもしれませんしね。これから楽しくなりそうですね、ぬるふふふ…)
渚君が席に着くのを見届けてから私はBB弾の片づけをするように指示を出す。ついうっかり踏んでしまうかもしれませんからね。
(しかしいったい彼は何者でしょう?暗殺者…ではないと思いますが。私の経験と勘がそう告げています。しかしナイフさばき、身体能力などはとても中学生のものとは考えられない…後でこっそり烏丸さんにでも聞いてみるとしますかぇ。正直に教えてくれるとは思いませんが…。)
クラスメイトと一緒に掃除をする渚君を見ながら考察する。彼がこのE組の言い起爆剤になってくれると信じて。
思ったよりも早くクラスに馴染めそうだと安心しながら今日の授業の準備をする…
----渚----
(意外にもちゃんと授業をやってるんだな…)
今日一日先生の授業を受けて思ったことだ。初めて授業を受ける僕にも工夫と配慮がされていてわかりやすかった。
なんで来年3月に地球を滅ぼそうとする化け物が一生懸命教師をやっているのか理解はできないが…
(そのふざけた見た目と、はちゃめちゃな行動がなければ最高の教師になれると思うんだけどなぁ)
そして僕はクラスのみんなと馴染めるかどうか不安だったけど、まずまずの滑り出しだ。最初の休み時間には何人かが話しかけてきくれた。
なんで一番後ろの席ではなく、前から二番目、窓側から二番目という中途半端な場所が空いていたのかわからないが、そこが僕の席だ。
最初にクラスで僕に話しかけてくれたのは隣の席の雪村あかりさん。雪村あかり先生の妹らしい。髪の毛は緑色だし髪型もどこか僕に似ているし姉妹に見えない。あと胸ないし…
そして後ろの席の杉野君も最初の休み時間に会話した。彼は野球が好きらしい。
それぞれあかりと杉野と呼び捨てすることになった。僕のことは名前を呼び捨てで呼んでもらうことにした。
昼休みには男子何人かと一緒に弁当を食べた。ちなみに今日は急いでいたのでコンビニで弁当を買ってきた。
女たらしっぽい雰囲気を醸し出す前原君とクラス委員の磯貝君と一緒に食べた。この2人も同じ呼び方で僕のことを呼んでくれるようになった。2人とも僕がクラスに早く馴染めるように気を遣ってくれてすごい助かる。
磯貝君は弁当を自分で作っているらしい。しかも安く美味しく…
(僕も自炊できるようにしなきゃな…。国からお金を貰っているとはいえ外食ばかりしているわけにもいかない、食費以外にもお金はかかるし、このままいくとサバイバル生活が始まっちゃう。)
そんな僕は今、放課後の校舎前で杉野とキャッチボールをしている。
なんでもキャッチボールに付き合ってくれる奴がいなくて、ダメもとで僕に声をかけたんだって。帰っても勉強くらいしかすることないし、せっかくの誘いだったからキャッチボールをすることにした。
杉野曰く、仲良くなるにはキャッチボールが一番だとか。野球バカかな?
「それにしても…渚はすげーな、あの先生の触手を一本切り落とすなんて。俺たちなんて全員で襲い掛かっても傷一つ負わせられないのに。」
「ははは…そんなことないよ。みんなもそのうちできるようになるって。」
僕たちは会話をしながらキャッチボールを続ける。
「そうか?なぁ、一つ質問していいか?」
(きたか。だいたい何を聞かれるのかは想像できるんだけど。)
ボールをキャッチしてから頷く。僕は力強く投げ返しながら
「渚は何者なんだ?みんなプロの殺し屋とか特殊部隊の隊員だとか推測してるんだけどさー。俺も気になっちゃって。」
「やっぱ普通の学生だとは思われないよね。詳しくは秘密だけど、普通の中学生じゃないよ。今言えるのはこれくらいかな。」
「そっか…。まぁ、詳しくは言えないよな。よっと…」
杉野はキャッチしたボールを見て、そして僕を見る。
「んじゃ今日はこのくらいにして帰るとしますか。明日からもよろしくな渚。」
「うん。こちらこそよろしくね杉野。」
すでに暗くなり始めている中、僕たちは一緒に帰っていくのだった。
文量も安定しないし、日々小説を書くことの難しさを学んでおります。