〇〇しい世界   作:てておん

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今回も投稿間に合った…!
最低でも火金に投稿することをルールとしています。



命名の時間

----渚----

 

 

二日目、今日も問題なく学生として周囲に溶け込んで過ごせている、と思う…

昨日も家に帰った後、皆に追いつけるように勉強に打ち込んだ。進学校っては大変だね、周囲に置いていかれないようにっていう焦りが常にどこかに生じてしまっている。

 

何かに集中すると時間はあっという間に過ぎていて日付が変わったあたりで寝たのを覚えている。

 

昨日の挨拶で先生の身体能力の高さを思い知った僕は、今日一日とくに暗殺をしかけるつもりはなかった。

 

(まずは情報収集からしないとなぁ。できれば弱点なんかを探りたいんだけど、触手に対する弱点は僕と同じなのかな?)

 

他の人が暗殺をするのを観察して、少しでも先生に関する情報が欲しい。

だが皆シンプルな暗殺ばかりで情報を得ることができない。

 

(工夫しろって言われてたのにさ…)

 

そして、あっという間に時間は過ぎて気づけば午前中の授業は終わり昼休みの時間。

 

(今日は簡単な弁当を作ってきたんだー。ほとんどおかずは冷食なんだけどね…)

 

「おい松本…ちょっと来い。」

 

楽しみのご飯タイム。弁当を取り出そうとすると急に3人組に声をかけられた。

 

(たしか寺坂に吉田、村松だっけか。正直めんどくさいやつらだよな。苦手なタイプだなぁ)

 

このクラスに来て2日目だが、その短い時間でわかった。こいつらはクラスの中で浮いている。周囲とよろしくやるのが嫌いらしい。

 

「なんの用かな?僕、お腹すているんだけど。」

 

「うるせーよ。暗殺者なんかと一つ屋根の下で授業なんか受けるつもりはないんだ。猫被っても暗殺者ってバレバレなんだよ。」

 

(いきなり何を言い出すんだ…。本当にみんな僕のこと暗殺者だと思い込んでるんだ。)

 

「こちとら、早く平穏な生活に戻りたいんでね。これ使って早くあいつのこと暗殺してくれや、お前ならよゆーだろ。金は半分やるからよ。」

 

(手榴弾か…、おもちゃを改良しているな。これを使えば周囲に対触手用BB弾を大量にばらまくができる。上手く使えば案外やれるかも?)

 

お金はいらないんだけどね。

 

「あいつを暗殺できれば、お前だって学生ごっこする必要もないし本職に戻れるぜ?」

 

(………。僕って暗殺が終わったら…どうなるんだろ…何が残るんだろう?)

 

そんなことを考えてしまった。

 

 

--------

 

 

初めての手作り弁当はまぁまぁ美味しかった。これからは料理の勉強もしないとね…

そんなこんなで昼休みは終わって5時間目。今は国語の時間で先生の出した条件を満たすように短歌を作っている。

 

「ぬるふふふ。書き終わったら先生に見せに来てくださいね。」

 

(触手なりけりで終われって…どんな短歌だよ!そんな短歌聞いたことないし聞きたくもないし…)

 

そもそも触手って季語なの?難しすぎるよ…短歌を書き終わったら短冊の後ろにナイフを隠し持って先生に近づく。

そしてナイフで切りかかって相手の態勢が崩れた所に抱き着き、手榴弾を起爆する。よし、その作戦で行こう。完璧じゃないか!

 

(その作戦でいきたいんだけど、そもそも短歌を完成させないとだめじゃないか…!あ、別に短歌を作り終えなくても攻撃はできるのか…)

 

僕は先生の様子をうかがう。どうやら先生も食後は眠いのか、どこか油断していて反応も悪いように思える。

ちなみに食後に反応が悪いという情報はあかりから聞いた。他に数日間で集めた先生の情報を聞かせてもらった。

 

(あんな見た目でも、けっこう人間っぽいところあるんだよな。まぁ元々は人間なわけだしね。よし、作戦を実行するなら今しかないな…)

 

僕は短冊の後ろにナイフを隠し持って静かに立ち上がる。クラスの視線が僕に集まる。そして僕は寺坂にチラッと視線を向けて合図を送った。手榴弾の起爆スイッチは遠隔で寺坂が握っている。

先生からはナイフが見えないが、みんなには見えているはず。みんなが固唾を飲んで僕の暗殺を見守る。

 

「……おや渚君、完成しましたか?はやいですねぇ~」

 

(やっぱり反応が鈍い。今も僕が立ち上がってから先生が反応するまでに間があった…可能性はあるな…)

 

僕は心の中であかりに情報をくれたことに対してお礼を言いながら、ゆっくりと教室の前へと歩いていく。

そして先生の前に立つと、昨日と同じように手にナイフを握り一連の流れのように自然な動きでナイフを振り上げた。しかしナイフは先生に当たることなく

 

「おっとっと、危ないですねぇ。ですが渚君、昨日の一件で君のナイフ攻撃は常に警戒されていると思った方がいいですよ~。先生にナイフをあてたいなら、もっと工夫をしないといけませんよ。」

 

(そんなことくらいわかってるよ。正面からの馬鹿正直な攻撃は先生に通用しない。本命はこれからさ…)

 

ナイフを握っていた手の力を抜いて自由にする。そして両手を開いて自然な運びで先生へと肉薄、抱き着くようにする。先生の慌てる顔が見え、僕は微笑む。

次の瞬間、凄まじい音とともに僕の身体は後ろへと吹き飛ばされる。

 

「よし、やったぞ!0距離で大量に弾をバラまいたんだ、これで金は俺のものだぜ!」

 

「ちょっと!何を渚に持たせてるのよ!」

 

煙の外で寺坂たちが何か言い合っているのが聞こえる。だが今の僕にはそんなことはどうでもいい…

 

(避けられた!爆発する瞬間、腕の中から触手が抜け出すのがわかった…それに、僕の身体を覆っているこの膜みたいのはなんだ?)

 

だんだん煙が晴れてくると僕も寺坂たちも状況が理解できてくる。まず僕が無傷だったことと、僕を覆っている膜を見てみんなが驚いた。

次にみんなの視線は天井へと移る。そこには肌の色が真っ黒に変化させた先生がいた。誰が見ても怒っていることがわかる表情を浮かべて。

怒っている先生を見てみんなの表情が凍り付いた。

 

 

----

 

 

「はぁ~、やっと解放されたよ…先生を殺すまで帰れませんなんて無理だって…」

 

あのあと、いろいろあって放課後数時間教室にみんな拘束されていた。

 

 

結果からいうと暗殺は失敗だ。首謀者の3人組は先生の脅しに怯えていた。僕たち生徒に手は出せなくても家族や大切な人には手を出せるぞと。

教卓の上に大量に積み上げられた全員分の表札が物語っていた。

 

「あ、渚君の家に表札がありませんでしたので先生作っておきました。見てください、檜でつくった先生こだわりの一品です。」

 

松本と書かれた檜で作られた表札を見せながら先生はそう言った。

地球上どこにいても、この先生からは逃げられない。その事実を僕たちは一瞬にして理解してしまった。

もし助かりたいなら暗殺するしかない。

 

そのあとは先生によるお説教タイム。

 

「人に笑顔で胸を張れる暗殺をしましょう」

 

とのことらしい。人に胸を張れる暗殺があるなら、ぜひ聞いてみたいと思ったが大人しく説教をうける。

とても異様な教育風景だが、そのうちこれが当たり前になるのであろう。これから1年間僕たちは暗殺を続ける。続けるしか選択肢はないのだ。

他の人は気づいていないかもれしないが僕たちE組が最もターゲットに近く、多くのチャンスに巡り合える可能性を持っているのだ。

 

ちなみに僕も、もっと自分を大切にするようにと説教をくらった。ただ殺意を隠して近づいてくる技術は褒められた。

 

(殺意を隠してっていうか…そもそも殺そうとしてないんだけどなぁ…)

 

作戦は失敗だったが得られたものもある。まずは先生の脱皮に関する情報だ。

月に一回ほど脱皮できるらしい。先生の奥の手らしい。

あの一瞬で脱皮して爆弾に皮を被せて、爆破の威力を減らすことによって守ってくれたらしい。

 

(脱皮ね…僕の身体は脱皮なんてしないから知らなかった。この情報を引き出せたのは大きいな。本気の暗殺をしかけるなら脱皮後を狙うしかないな…)

 

他に得られたものといえば表札。これを扉に飾ろう。

 

(まぁ、マンションの扉に檜の表札って似合わない気がするけど…)

 

そして最後に先生の名前が決まった。命名者はあかりだ。

 

「殺せない先生だから…殺せんせーは?」

 

(名前が無いのは不便だし呼びやすいからいいと思うな)

 

異論が出ることはなく、タコの名前は殺せんせーと正式に決まった。

 

 

 






渚君は脱皮しないのです。脱皮設定を付け加えても良かったけど…

次回は杉野の野球…かもしれない!
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