他の投稿者の方々が書く軽妙なあらすじとかギャグを自分も書いてみたかったんだけど……ダメみたいですね(諦観)
合計1000お気に入りして頂いて飛びあがりました。本当にありがとうございます!
同様に感想評価誤字報告等して下さる皆さんには感謝してもしきれません。これからも応援よろしくお願いします。
『これまでの星狩りのコンティニュー!』
『仮面ライダーエボルであり、数多の星を滅ぼしてきた地球外生命体であるこの俺エボルトは、桐生戦兎らに敗北した際に飛ばされた並行世界で、教師石動惣一として新たな人生のスタートを切る!』
『フン、何が地球外生命体だ。それにしてはこの地球に馴染みすぎていると思うがな』
『げっ! 織斑千冬!? いきなり物言いが率直すぎるだろ!』
『大体なんだ貴様は、その年で貫禄が無さすぎる。教室では机の角に体をぶつけて痛がるし、よく椅子からは転げ落ちる。更にはタコが大の苦手、食堂の定食にパスタが付いてくれば一度も口にしないまま残す! その全てが演技なのか?』
『演技じゃあねえとこばっか指摘するのはやめろ! ウルっときちまうじゃあねえか!』
『それに何よりもだ……何よりも煎れるコーヒーが不味すぎる! 本当にカフェのマスターだったのか貴様!?』
『俺だってそこは気にしてるんだよ! って言うか、この世界に来て更に評判悪くなった気がするんだよな……この世界の人間に俺のコーヒーは合わんのかもしれねえ……』
『フン、元々不味かったと貴様も言っていた、それが全てだろうに。さあ、こんなうだつの上がらん地球外生命体は放っておいて第11話を始め――――』
ブチッ。そんな音を立てて真っ暗になったテレビの画面を見て、俺は大きなため息をついた。
……何だ今のは。何で俺と織斑千冬が漫才やってんだ? ったく、本当にフリーダムなボトルだなこれ。嫌になっちまうぜ。俺はテレビの角に
俺の持つフルボトル――――石動の記憶から生み出したボトルは、基本的に『娘の好きな生物、職業』と『それを殺傷、破壊出来る無機物』の
ところが心優しい父親だった石動惣一は娘の愛するものを壊されるのをよしとせず、途中から関係どころか脈拍もない無機物を挙げる事で俺の提示した生物と無生物の
まあそれでも俺は別段構わなかった。石動のイメージから生まれた突拍子の無い無機物フルボトルが実は滅茶苦茶便利だったり、俺の予想も出来ない性能を発揮して窮地を救ったりしてくれる事もままあったからな。その点を初めとして俺は石動には感謝してもしきれないんだが、時に俺でさえ想像もつかないような性能を持ってしまったフルボトルも何本か出来ちまったのは正直誤算だったと言える。
その最たる物はライダーシステムの開発者である
実際ベストマッチ<トラユーフォー>の実験の際は
他にも俺の思う通りに能力を発揮してくれないボトルはある。今テレビを介して使用していた<テレビフルボトル>もその一つだ。
このボトル、様々な情報を使用者に提供してくれる能力を持つんだが、如何せんランダムに番組が始まったり変わったりして落ち着きがない。そもそも知りたい情報が知れるかどうかもよく分からんし、ドキュメンタリー形式だったりニュース形式だったりクイズ形式だったり再現ドラマだったりやりたい放題だ。アニメーションだった事さえもある。
情報の精度自体は信頼が置けるのだが、いい所でいちいちCMが挟まったりしてイラッと来ることもあったな。先日<第一回モンド・グロッソ>の解説番組が流れた時の引き延ばしはありゃあひどかった。
このボトルの持つ不安定さは、エレメントを選んだ石動が自身の見たいチャンネルを独占するような
ふと気づけば、既に出勤するべき時間が迫っている。職場まで徒歩五分と言うのは理想的に過ぎる立地だ。だが
俺は<パンドラボックス>にテレビフルボトルを放り込むと、それを金庫にしまい込んで、さらに<ロックフルボトル>で施錠する。このボトルも非常に便利だ。普段からパンドラボックスを持ち歩くわけにもいかない以上、防犯意識は高いに越したことは無い。もしも他人の手にパンドラボックスが渡れば――――いや、見つかるだけでも大問題だ。何せアレは『この世界には存在しないはずのもの』なのだから。
万一パンドラボックスの存在が露見すれば……俺の正体を解き明かされるだけならまだいい。その情報は篠ノ之束にだって伝わるだろう。奴の知性は戦兎に匹敵する可能性もある。もしこの危惧が現実のものであれば、戦兎の様にパンドラボックスから俺に対抗するための兵器を生み出すかもしれない。<ジーニアスボトル>だって、元はと言えばパンドラボックスの一部、<パンドラパネル>の一枚だったからな。
同様に、<ネビュラガス>の使用にだって俺は慎重を期している。ガスを他人に注入すれば手っ取り早く強くさせられるんだが、これだってこの世界では未知の存在だ。俺は<ビルドの世界>と言う絶対的アドバンテージを手放すつもりは毛頭ない。
部屋を出て、扉を再びロックフルボトルで施錠する。そう、先日何者かが俺の部屋に侵入しようとした形跡があったからな。ロックフルボトルが出来るまでの数日を除いては常にこの手段で施錠してきたので、ちょっとヒヤッとしただけで済んだのは
かなり綺麗に痕跡を消されていたが、広大な宇宙を旅しながら命ある星とそうでない星を見分けてきた俺の眼は誤魔化せない。ま、『何故か開かない扉』ってだけでも十分に与えたくない情報なんだが……中に踏みこまれるよりはマシだろう。
一体何処のどいつが探りを入れてきたのか、早急に調べ上げねえとな。
そう思っている間にガチャリ、と音を立てて施錠が完了した。ロックフルボトルによる施錠は現行技術のどれにも当てはまらない、概念的な力だ。物理的な手段でこの鍵を開ける手段は皆無と言ってもいい。さあて、ここまでしてようやく一安心だ。仕事に行くとしよう。俺は閉ざされた扉を後にして、今日もウキウキ気分で石動惣一を演じに向かうのだった。
◆
―――私、山田真耶は今、窮地に追い込まれていました。
今日もいつも通りの、何ら変わり映えのない朝だったはずです。目を覚ましてシャワーを浴びて、テレビの占いを見ながら朝食を取って。そして忘れ物が無いかをしっかりと確認して、職員として勤めているIS学園へと出勤してきました。
職員室に入った所で、ふわりとコーヒーの香りが鼻を擽ります。先日、石動先生が私物のコーヒーメーカーを職員室に設置してから、IS学園の職員の間ではコーヒーを煎れる事が小さなブームとなっていたのです。
先生がそれぞれ豆を持ち寄ってお互いにコーヒーを味見してみたり、何かの頼みごとのお礼としてコーヒーを煎れてくれたりと、皆の関係や職員室の空気がとても良くなったと私は思っています。
轡木さんが煎れて下さったコーヒー、すっごくおいしかったなあ……。
あの人はお茶を煎れるのが専門だと思っていたけれど、コーヒーまであんなにおいしく作ることが出来るなんて。一緒に居た先生方と一緒にびっくりしたのを覚えています。
――――ただ、そんな轡木さんとは真逆に、とてもおいしくないコーヒーを煎れる人もこのIS学園には存在したわけで。
「そんなに緊張するなよ山田ちゃ~ん。ただコーヒーを飲んで、その感想を聞かせてくれればいいだけだからさあ~」
そう言って『IS学園のまずいコーヒーを煎れる教師第一位(
以前、石動先生が皆にコーヒーを振る舞われた時には、あまりの不味さに皆が昔見た探偵モノのドラマのように口からコーヒーを吹き出し、
そう言えば今日のハザードカラー(私の見ている占いにおける要注意カラーの事です)は黒だったような……もしかしてこのコーヒーの黒の事なんじゃ……。
それを思い出した私は、机に並ぶ二つのコーヒーを見据えます。そう、二つです。石動先生の煎れたブラックホールめいた暗黒のコーヒーが一つ。もう一つ、漆のように艶めいた姿を見せるもう一つのコーヒーを煎れたのは……。
「真耶、無理をするな。石動のコーヒーの危険性は私もよく知っている。私のコーヒーだけ飲んで席を立ってくれればいい。不戦勝という奴だ」
腕を組み机の横に立つ織斑先生。普段であればその毅然とした態度が何とも頼もしいのですが、『IS学園のまずいコーヒーを煎れる教師同率一位』の称号を持ち、フランシィ先生を一杯で撃沈させた、と言う織斑先生がコーヒーを煎れてくれているというこの状況は何の慰めにもなりません……!
私はこんな状況に追い込まれたのは、そもそも織斑先生が石動先生のコーヒーを「まずい」と言ったのが原因らしいです。元々それを随分前から気にしていらした石動先生が「じゃあお前のコーヒーはどうなんだ!」と突っかかっていった結果、二人はコーヒーの美味しさで対決する事になり、不運にもそこに出勤してきた私がその犠牲になった、と言う事になります。
ああ、何と言う事でしょうか! 誰か助けてください……!
そう思って周囲の先生方に救助を求める視線を送れば、皆気まずそうに視線を逸らしてしまいました。そそくさと立ち去らないでください、フランシィ先生! 涙を流さないでください、榊原先生!
「麻耶、怖がらなくていい。クイッとやってくれればいいんだ」
「そうだぜ山田ちゃん。俺の奴をこうクイッとやって、まあ不味いんだがちょっと我慢してくれればいいんだって!」
「石動のコーヒ―など飲まずとも良い。気にせず私のコーヒーを飲むんだ、真耶」
「何をぅ! とりあえず騙されたと思って俺のコーヒーを飲んでくれ! 頼むよ山田ちゃん!」
うう……不味いのを自覚している石動先生と、その事実から目を逸らしている(気がする)織斑先生、前者の方がましな気もしたけど、まずいのはどちらも同じです……! 私は一体どうやってこの場を切り抜ければいいのでしょうか……!
「山田ちゃん!」
「真耶!」
二人が、まさしく鬼気迫る勢いで迫ってきます。右が石動先生のコーヒー、左が石動先生のコーヒー。 もうどちらがどちらで、なんて感想を言えばお二人に悲しい想いをさせずに済むのか、二人との関係を悪くせずに済むのか! もう、もう私にはわかりません!!
「山田ちゃん!?」
「真耶!?」
瞬間、混乱した私は二つのコーヒーカップを手に取り、両方を一度に口にしました。
その時、不思議な事が起こりました。私の体内で出会った二つのコーヒーはそこで
『本日のハザードカラーは……(
――ああ、そう言う事だったんですね……。諦めと共に全てを受け入れた私の前で石動先生と織斑先生、二人の顔がぐにゃりと歪むと同時に、世界が90度右に傾いて、そこで私の意識は途絶えてしまいました。
結局、私が目を覚ましたのは授業が終わった放課後になってから。争いを避けた代償に、私は医務室のベッドの中で強い倦怠感とお腹の痛みに苛まれる事になったのでした。
◆
「……石動先生?」
はあ。戦兎に言わせれば『
それは正直構わないっちゃ構わないんだが……俺のコーヒー、幾らなんでもあそこまでマズかったか? この世界に来て評価の低さに拍車がかかってやがる。劇物にでもなっちまってるんじゃあねえだろうかってくらいの反応だ。まさか世界の差異がこんな所で俺に試練をもたらしちまうとはな。と言うか、それだったら逆においしく感じてくれたっていいだろうに。まったく腹立たしい!
「石動先生!」
「んおっ!?」
声を掛けられて意識を向ければ、座禅を組んだ篠ノ之が畳一枚を挟んだ距離で俺の事を心配そうに見つめていた。そう、座禅だ。放課後となった今、俺と篠ノ之は精神的訓練の一環としてひたすらに座禅を組んでいたのだった。
「どうにも体調が優れぬようですが……山田先生が体調不良になったのと何か関係が?」
「うっ」
鋭い奴だ。そう、俺は自分のコーヒーがおいしく無い事は自覚していた。だがそれに甘んじたことなど無い。出来ればうまいコーヒーを入れたいと願う俺は研鑽を欠かした事は無いし、その事に日々悩んでいる。地球の食い物というものは結局俺には理解のできん文化の積み重ねの象徴って事なのだろうか……。しかし、俺のコーヒーより自分のそれがまずいと最後まで認めやがらない織斑千冬の負けず嫌いには困ったもんだぜ……。
「うーん。いや体はともかく、精神的なダメージがなあ……」
「もしお辛いようでしたら、今日の訓練は切り上げますか? 座禅は自室でも出来ますし……」
「そうしとくか~……篠ノ之も訓練ばっかじゃあ気が滅入っちまうだろ。今日は休みって事にしとこうぜ」
「いえ、私は別に……」
そう言ってバツの悪そうな顔をする篠ノ之。強くなりたいって思いがちょっと先走りすぎてるか? 座禅中も落ち付きが無かったしな。
「うし、じゃあこうしようぜ。今日と明日は訓練禁止だ! 強くなりたいと逸るのは悪い事じゃあねえが、時には休息も必要だ。お前、俺との訓練が終わった後も自室で遅くまでトレーニングしたりしてるんじゃあねえのか?」
「なっ、何故それを!?」
「はっはっは。お前最近の午前の授業中目茶目茶眠そうだからな。ここだけの話、織斑先生にもマークされてるぞ」
そう小声で言うと、篠ノ之の顔がさっと青くなった。織斑千冬、本当に生徒達に畏れられてんだな。しかし同情はしねえぞ。今日の事を含め、意外と恨み辛みが溜まって来てるからな。頭が痛え……。この頭痛もアイツに頭を叩かれ過ぎたせいかもしれねえな。
しかし剣道や格闘、ISで何度かやり合って分かったのだが、篠ノ之は攻めは強いが、守りに関しちゃまだ甘い。これからどんどん上に上がって行く中で、必ず自分以上の強者とやり合う機会があるはずだ。そこで躓いていれば篠ノ之束の名を覆すほどの強さは手に入らないだろう。ここは一つ、強者に勝つためのコツを教えてやるとするか。
「うし、篠ノ之。ここでお前に二つ目の教えを授ける」
「よ、よろしくお願いします!」
「
「成程…………」
篠ノ之は納得したようで、顎に手をやったまま物思いに耽り始めた。自分なりに俺の言葉を噛み砕いているのだろう。まったく、いい弟子を持ったもんだぜ。ISの訓練はそれほどの回数を熟せてはいないが、現地点でも篠ノ之はクラス対抗戦地点の一夏とならば十分以上に渡り合えるだけの実力を備えている。近づいてきた学年別個人戦に向けて、後どれだけ詰められるか。
そこん所は、俺の腕の見せ所でもあるな。
座禅したまま頭の後ろで手を組んだ俺は、篠ノ之に一つ言うのを忘れていた事を思い出した。今の篠ノ之は強くなるという長期的な目標を持ってはいるが、個人戦に対する目標は持っていないはずだ。ここらで一つ、俺からも発破をかけてやるか。
「なあ、篠ノ之ぉ」
「……あっ、はい! どうしました?」
「あの噂聞いたかよ?」
「噂って?」
「今度の学年別個人戦で優勝した奴が、一夏とデートできるって噂さ」
「なっ!?」
俺の言葉に驚愕した篠ノ之は慌てて立ち上がろうとしたが、座禅を組んでいたのでそのまますっ転んで畳の上を転がった。その様子に俺はついくっくっと喉を鳴らして笑ってしまう。
そのままちょっと笑っていると、真っ赤な顔でドタドタと走り込んで来た篠ノ之が俺の胸倉を掴み上げ凄まじい剣幕で押し迫ってきた。
「一体どういう事ですか先生!? その話は私と一夏の秘密のはず!!」
「あーっ! 皺になる皺になる! おいやめろってホント篠ノ之ォ!」
俺は慌てて篠ノ之をもぎ離すと、服の襟をぱんぱんと払って皺が無い事を確認した。セーフ。皺になってねえ。ったく。忍耐って言ったばっかじゃあねえか。
「ハァ~ッ……篠ノ之、秘密ってお前、一夏とそういう約束してたのか?」
「は、はい……申し訳ありません。実はあのクラス対抗戦の後に、二人きりでその話を……」
さっきとはまた違う原因で顔を赤くする篠ノ之。そうかあ、そんな約束をねえ……。それじゃあ今回のは余計なお世話だったか。ここ数日の放課後、不特定多数の生徒に擬態して噂を流してたのが骨折り損だったな。
肩を落とす俺。だが、先程まで顔を赤くしていた篠ノ之が今度は頭を抱えて苦悩しているのを見て、俺の心は随分と晴れやかになった。人間という種族の中でも女の恋心と言うのはもっとも難解だとは聞いていたが、まさにその通りだな……。
難しいもんだ。俺は改めて、人間という生き物が如何に面白く未知に満ち満ちているのかを実感して、随分としんみりとした気持ちになった。しかし、あんまりこいつに悶々とされていても困るし励ましておいてやらねえと。
「まあまあ篠ノ之、そう頭を抱えるなって!」
「……先生?」
「他の奴らのは噂にすぎないが、お前は一夏と直にその話をしたんだろ? だったら心配する事はねえさ。それに、結局お前が優勝しちまえばいい話だからな。何にも心配する事はねえよ。勝って存分に一夏とデートしな、篠ノ之!」
「は、はい……! ありがとうございます、石動先生!」
ぱあっと満面の笑顔を浮かべた篠ノ之を見て、俺は女心と言うものが難しいのか御し易いのかよく分からなくなった。ともかく、今俺の立場からこれ以上かけられる言葉は無いだろう。
「うし。まあそう言うわけで、今日の訓練はお開きにしようぜ。また明後日の放課後にガッツリしごいてやるから、今日と明日はじっくり休んどけよ。じゃあな、
「はい! 本日もありがとうございました!」
頭を下げる篠ノ之に背を向け、俺は道場の外へと歩き出した……のだが座禅で痺れた足がもつれて、三歩目で盛大にすっころんだ。
いってえ。やっぱ聞きかじっただけの内容を訓練に導入するべきじゃあねえなあ。篠ノ之も笑いを堪えて口元を押さえている。そんな奴に俺は苦笑いを返して、早々にその場を後にするのだった。
ビルド本編と違ってあらすじの記憶は本編には引き継がれないです。
それだけは真実を伝えたかった。
連投しようと思ったけど心配になってきたんで誤字のチェックや見直しをして後編もさっさと投げますんで少々お待ちを……。