時間遡行者と円環の理に救済を。   作:スタンチッカ

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頑張ります!


まどかと有栖

まどかside

 

ジリリリリリリリリッッッ!!

 

「ふ…ふわっ!?」

 

そのけたたましい音に、ガバッと身体を起こすと、

そこは自分の部屋でした。

枕元にはお気に入りの熊の人形。

カッパのぬいぐるみもあってー

大好きな花柄のクッションもありました。

ここは、完全に自分の部屋です。

 

ぼんやり顔を横に向けると、

カーテンの向こうから、柔らかな眩い日の光が

注ぎ込んでいました。

 

「はぅぅ……、夢オチ……?」

 

むにむにと手を伸ばして目覚まし時計を止め、

ようやくわたしは、息を吐き出しました。

出窓に近寄って窓を開けると初夏の心地いい風が

わたしの頰を撫でます。

単純なわたしは、それだけで怖い夢が遠ざかっていく感覚になります。

 

真下を見ると小さな家庭菜園にはパパがいました。

いつものエプロン姿に安心したわたしは、

 

「おはよー、パパ」

 

と窓から顔を出して手を振りました。

 

「おはよう。まどか」

 

そう、立ち上がって微笑んでくれたのがわたしのパパ。

"鹿目 知久"です。

 

「ママは?」

 

そう尋ねると、温かい声で静かに喋るパパは

軽く肩を竦めて言いました。

 

「タツヤが行ってる。手伝ってやってくれるかな?」

「はーい」

 

飛び跳ねるように部屋に戻り、わたしが駆け出します。

これは、毎朝の我が家の恒例行事なのです。

部屋から出て、廊下を走り抜け、ママの部屋に着きます。

 

「マ〜マっ!あ〜さ!あ〜さっ!」

 

案の定、ベットにくるまったママの上にまたがった

タツヤがママをポカポカと叩いています。

 

三歳児ぐらいのパンチで起きるママじゃないんだよね。

と、そのまま窓まで駆けて、

カーテンを開けはなちます。

 

「タツヤどいてね?」

 

と弟に微笑み、一気に布団をひっぺ返しました。

そして軽く息を吸い込んで、一言

 

「お・き・ろ〜っ!」

「ひゃあああああ!?」

 

なんかここ最近、楽しみになりつつある朝の行事。

そして、毎回素敵なリアクションで飛び起きてくれるママ…

"鹿目 詢子"はやっぱり素敵でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有栖side

ジリリリリリリリリッッッ!!!

けたたましい音に目を覚ました私は

五台ある、目覚まし時計を止めていった。

 

朝は弱いんだ…。そう思い、目をこすりながら

身体を起こす。

 

また、ダメだったか。

 

夢の内容を思い出しながら私は思う。

 

あれは夢であって夢では無い。

いつかありえたかも知れない世界。

 

私は窓のそばまで行き、外を覗く。

今日から通うことになる

私立三滝原中の生徒が歩いているのを見かけた。

 

やはり、寝坊だったか。

 

頭を軽く振りながら、髪の毛を梳かす。

 

前にあの子に綺麗と言ってもらった

自慢の長い紫色の髪の毛を撫でる。

 

今日もいい朝だな。

私はにこりと笑い、用意を進めた。


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