旅も三日目に入った。このまま行けば日が暮れる前に里にたどり着けるだろう。
目が覚めた時にはベルトーゼの冥力からくる重圧感も消えていた。戦いが終わったのだろう。そろそろビィトがアンクルスの里を飛び出している頃だろうか?
当初は外からビィトの活躍を観賞するつもりだったが、今回の事からそんな甘い考えではいけないと理解した。
あの圧倒的な重圧感、否が応でも自分がこの世界に居るのだと、死は身近なものなのだと解らされた。
原作の流れに干渉するつもりは無いが、強くならなくちゃいけない。活躍を見ようにも今の俺では戦いの余波だけで普通に死ねる。
原作本編が始まるまでの三年間、俺もビィトと同じ様に修行するべきだろうか…。
ユーリィの旅講座を聞きつつも旅路は進んでいく。サバイバル編に突入した。
「みえた!あれがアンクルスの里だよ」
森を抜けると小さな荒野が広がっており、その先には白く高い外壁に囲われた人里が存在していた。
「大きい…」
初めて見る外壁の大きさに驚いた。確かにこれは並の攻撃では壊せそうにないな。
「そうだね、僕も初めて見たときは同じ様に驚いたよ。ハルカの故郷には無かったのかい?」
「それなりに大きな街は有ったけど門みたいなのは無かったな」
「ふぅん?ヴァンデルの勢力圏から大分遠いのかな?平和なところだったんだね」
「そうだね。退屈な日常だったけど、とても平和だった…」
日本の家族の事を思い出し、少し気分が落ち込む。
そんな俺を励ましてくれているのか、ユーリィがアンクルスの里の美味しい物やウンチクを教えくれる。
そんな姿を見て少しだけ気分も晴れる。旨いものの話を聞いて気分が上がらないヤツなんていないからな!
「おかしい…。何故門が開きっぱなしなんだ?それにこのモンスターの死骸は?」
荒野には幾つものクレーターができ、モンスターの死骸がそこかしこに転がっている。とどめは抉じ開けられたかの様にひび割れ、機能していない『門』だ。
アンクルスの里で何かあったのだと一目でもわかる。
(門が機能していないのは俺としては有り難いのだけどね。―――完全にヴァンデルの思考だな…)
「ハルカ、少し急ぐよ」
「わかった」
二人で里に向かって走り出す。
里で何があったのか知ってはいるが説明したところで何故知っているのかと不審がられるだけだ。騙しているようで心苦しい。
アンクルスの里に着き、事情を聞いたが概ね原作通りだ。戦いが終わり様子を見に出てきたらゼノン戦士団もベルトーゼも消えていたらしい。特に描写は無かったがロディーナあたりが何かしてそうで嫌だな…。
里で宿を取る。最初はユーリィが二部屋取ろうとしていたが宿代の無駄なので無理やり一部屋に変えさせた。
「バスターになろうと思う」
宿の一階の食堂で夕食を取っていると唐突にユーリィがそう切り出した。
「今日の事で解ったんだ、日常なんて簡単に壊されるって。別に暗黒の世紀を終らせるだとか正義のヒーローになりたいだとかそんな理由じゃないんだ。ただ、せめてヴォルハ村のみんなくらいは守れる様になりたい。でも地形を変えてしまえる様な化け物相手に人はあまりに無力だ…。だから僕は、バスターになる」
「………」
「ハルカ?」
ユーリィの気迫と覚悟に気圧され、咄嗟に言葉を返す事が出来なかった。
「………いいんじゃねーかな」
俺がこの年頃の時は何をしていたっけか?まだ十五にもなってないだろうに。環境が人を育てるとは言うがこれ程とは…。
「そっか。それはそうとハルカ?君もバスターにならないかい?」
「は?」
「いや、旅をするなら危険は付き物だしバスターになれば身も守れるんじゃないかな、と」
「確かにそうだが…」
ヴァンデルの身体に刻印なんてして大丈夫か?大丈夫じゃ無い気がする。何か色々と耐えきれなくなって身体がパーンってなりそう…。
「………遠慮しとく」
「そうかい?なれば便利だと思うんだけどな」
「ユーリィに教えてもらった事だけでも何とかなるって!………痛いの嫌だし!」
「そ、そう…」
本気で嫌がって見せたら引いてくれた。
確かに一瞬、光と闇が合わさり最強に!なんて思ったがそれだけのために死ぬリスクを負いたくない。そもそも鑑定士のジジババどもはああ見えて一流だ、ヴァンデルだとばれる可能性も無くはない。
「取り敢えず今日はもう休もうぜ。少し疲れた」
「そうだね」
それぞれの思いを胸に二人は眠りにつくのだった。
同じ部屋で。
「もう少し危機感持って欲しいなぁ、無防備過ぎる…」
三年間の修行期間、ユーリィを主人公に無理やり同伴させようか…別れさせて三年後に再開させようか…。
多分キングクリムゾンしそう。