プロローグ
「………ここ何処?」
気が付いたら森の中に立っていた。
自分自身よく理解できずにいる。
鬱蒼と茂る暗い森は非現実感のある風景にも関わらず、むせ返るような草木の匂いや大地の感触を五感に伝えてくる。
確かに此処にあるものだと身体が伝えてくるのに頭が受け入れられずにいる。
「どうなってるんだ?」
記憶を掘り返してみてもこんなところに来た憶えは無い。
何年かぶりに発売された漫画の新刊を買って家で読んでいたことまでは憶えている。
「それにしても面白かったなぁ」
あの漫画『冒険王ビィト』は確か小学生のころから読み始めたんだっけ?作者の病気やらなんやらで10年も休載してたけど最近になって再連載が始まり、昨日新刊として発売されたんだよね。
休載になってから長かったな…。ずっと待ち続けて今じゃ俺も立派な新社会人なんだもんな。
まぁ休載中に作者の前作を買い揃えて読み漁ってたんだけどね。
いいよね『主人公が成長していくのと同時に悲劇的な過去が明らかに!そして身体に秘められた特別な力が解放される!』っていう展開。
こう、なんていうか自分の中にも同じような力があるような気がして主人公がやっていた技を再現してみたりしたよね。傘でアバンストラッシュとか、かめはめ波とか。
それにしても10年ぶりとは思えないくらい違和感の無い作風とストーリ展開だったな。まさか敵と認め合い和解するとはね。あれかな、前作でいうヒュンケルポジみたいな感じで仲間になって最終局面で共闘するのかな?それならどっちかっていえばラーハルトか。ヒュンケルポジは元敵ではないけどスレッドの方が適役かな?たまに噛ませなところはクロコダインだけど…。
何にせよ。
「至福の時間だった…」
うん、あれだ、現実逃避はここまでにしておこう。嗚呼。
「本当にここは何処なんだーーー!?」
あれから俺はずっと歩き続けている。正直しんどい、倒れたい。でも止まれない。
「もうちょっとだけ現実逃避させてくれ」
やけに可愛らしくなった自分の声や低くなった視界に気付いていながら、俺はそれを確かめようとはしなかった。
ただでさえ何処とも知れない森で迷子という厳しい現実なのに更に自分自身までどうにかなっているとか受け止めきれる自信がない。
ひたすら歩きながら心を落ち着け、疲弊によって思考能力を落とし何とか現実を直視した。
「ありえないだろ…」
ようやく現実を見た俺を待っていたのは受入れ難い事実だった。
「子供になってる?」
足を止め自分の身体を確認する。
以前よりもだいぶ低くなった視界に小さく華奢な手足、可愛らしい声。
新社会人のはずの俺が何故か子供に、しかも女の子になっていた。
読専でしたがよくわからない衝動に駆られ書いちゃいました。