抵抗する間もなく、ルチアに引き摺られる様に一室に連れ込まれた。
その部屋は衝立で仕切られており奥にはお湯の張られた大きめのタライが置かれていた。
「着替えは私の物を使ってください。脱いだ服は衝立に掛けておいてくださいね。洗濯しますので。それと湯加減が気に入らなかったらタライの横に置いてある鍋からお湯か水を足して調整してください。では、何かあったら気にせず呼んでくださいね」
「あ、はい」
ルチアの勢いに負けて着替えの入った籠を受け取ってしまう。ルチア、良い娘ではあるけどお節介というか善行してるときは話を聞かんな。
ルチアが部屋から出ていった後、俺は呆然と立ち尽くした。
「こうしていても仕方ないか」
確かに森の中に居たせいか身体は汚れているし、肉体的にはともかく精神的には大分疲れている。風呂に入ってリラックスしたい。
「だけどなぁ…」
別に裸になるのは気にならない。確かに女の身体になってはいるが十を少し越えたか程度の子供のものだしそもそも自分の身体だ、恥ずかしいとかそういうのはない。
ただそれを目で認識し、男じゃなくなったという事を完全に理解した時の喪失感から心が折れないか心配しているんだ…。
「女の子になった事は理解しているつもりだけど、つもりと実際に目で確認するのじゃ大きな違いがあるからなぁ…」
「お湯が冷める前に覚悟決めないとな」
その後暫く悩んだ末、俺は服を脱ぎ始めた。
「ふぁあ~~……」
いい湯だ。
お湯は胡座をかいた状態で腰ほどもないが、それでもその温かさから声が洩れた。何度もタライの中でかけ湯を浴びる。風呂の偉大さの前では男とか女とかどうでも良いことだった。
暫く湯を堪能した後身体を洗うことにした。
「こうして見ると俺もなかなか良い色を持ってるよなー」
腰ほどもある長い髪は深い闇の様に黒くありながら鍛え上げられた鋼の輝きを放っている。肌は白磁の様に白く滑らかで子供特有の柔らかさを持っている。
ただ白過ぎて昼間はともかく夜中に見たら血色悪そうに見えそうだ。風呂入ってる子供の肌色じゃねーわな。
それにしても華奢だな。こっちに来た時から村人Aとかが着ていそうな長袖長ズボンだったからわからなかったが、正直あの森歩きに耐えられそうにない。よく歩いたものだ。
「ん?」
左腕を洗っていると何やら指先に膨らみを感じた。
イボか?それにしては水晶珠の様にスベスベしていて透明感がある。
「何だこれ…?」
擦ってもとれない。腕に埋め込まれているような感覚だ。ちょっとしたアクセサリーの様で綺麗ではあるのだが自分の身体にくっついているのは気味が悪い。
左腕に埋め込まれた珠ーーー星?
「マジかぁ…」
そういえは髪を洗ってる最中に若干の違和感があったな。急いで頭を確認してみる。
「こっちもかよ…」
両側頭部の生え際辺りにスベスベした小さくなだらかな瘤が幾つか集合している。少し大きめの瘤両端に小さな瘤が1つずつ、両側頭部で計6つの瘤、角が生えていた。
「完全にアレだ、ヴァンデルじゃねーか俺…」
ゼノンやビィトの近くで原作を楽しもうとしてたのにヴァンデルになったんじゃ近付くことすら儘ならない。
もうなんなんだろうかこの仕打ち。踏んづけ、持ち上げ、叩き落とすとか鬼畜の所業。世界を恨んだのは何回目だろうか?最近そこそこあった気がする。
ただ一言云わせてもらうなら…
ふっざけんっなあぁぁーーー!
TSものでよくあるお約束?でした。
サービスシーンを書こうとも少しだけ思ったのですがろくなのにならなさそうだったので止めました。