【完結】シャルティア誕生秘話   作:taisa01

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2.種族と容姿、あと住処が生まれた

 その日からペロロンチーノは、仕事が終わると全速力で家に帰り、できる限りの時間をNPC作成に費やすようになった。

 

 NPC作成と一口に表現しているが、実作業は多岐にわたる。

 

 まずはキャラの骨格となる性別と種族レベルと職業(クラス)レベルの設定する。制限はプレイヤーと概ね同じではあるが、経験値の代わりにNPCの保有ポイントを利用する。また特殊なイベントを必要とするクラスを取ることができないという制限もある。ただ、ユグドラシルというゲームは一アカウントにつき一キャラクター制限があるため、試行錯誤したい、自キャラでは実現できないビルドを試したいという意味でNPCのビルドというものの需要はかなり高い。

 

 次に取得した種族や職業(クラス)からどのようなスキルやアビリティ、そしてステータスを選択するかで、星の数ほどのビルドが可能となる。

 

 最後に外見、装備、フレーバーテキスト、そして行動AIを組み込み、名を与えて終わりとなる。

 

 しかし、ペロロンチーノが最初に設定したのは二つ。

 

---性別:女

---種族:吸血鬼(ヴァンパイア)真祖(トゥルー・ヴァンパイア) 

 

 たったそれだけを設定し、いきなり外見を作りはじめたのだ。

 

 一般的な外見の作り方は大きく三つである。

 

①ゲームが用意する初期外見のテンプレートから基本を選び、顔の大きさ、目の位置、目の形、瞳の形、顔の大きさ、丸さ、肩幅、胸の大きさ、二の腕の長さに太さなどなど百を超えるパラメーターを調整する

②二次元イラストを用意しMMO用にコンバートしたあとボーンなど調整する

③三次元データ(有償、無償いろいろ)を用意し利用する

 

 最終的に拘りはじめれば百を超えるパラメーターを調整することになるのは同じだが、完成度でいえば①以外となる。

 

 ではペロロンチーノはどうかというと、美的センスは無い。加えて芸術系の仕事をしているわけでもない。しかし、彼の脳内には過去プレイした数百のエロゲーのヒロインがインプットされていた。目を閉じれば、歴代のヒロインたちが、時には微笑み、時には悲しそうな表情を浮かべ、それこそ生きているように動く様を思い描くことができるほど鮮明に記憶されている。

 

 ゆえにペロロンチーノの外見作成は、熟練した画家が迷いなくキャンパスに筆で色をおいていくようなものであった。必要なのは時間だけ。ペロロンチーノの中にはすでに完成形があり、あくまでそれに近づけるための儀式。聖職者が、神に捧げる祈りのようなもの。たとえどれほど時間がかかろうとも苦痛はない。

 

 そんな風に五日ほど経過し外見が完成したが、拘りはここで終わらない。

 

 完成したモデリングデータのスクリーンショットをとり、ユグドラシル外の友人に送りつける。

 

「あ~俺俺。おひさ~ 先月のイベント以来」

……

「そうそう。で、お願い事」

……

「イイデキだろ。いまやってるゲームで嫁つくってるのよ。で、一枚描いてほしいのよ」

……

「仕様? ああ今、ユグドラシル公式の情報送った。立ち絵二枚に表情差分。背景なし」

……

「報酬は売り子と川上先生の同人誌で。えっ?! コス付き!!」

……

「う~ん。わかった。衣装そっち持ちなら」

 

 こうして、ペロロンチーノはイロイロなものと引き換えに、自分がモデリングしたキャラのイラストを後日入手することに成功した。いわば②と③のいいとこどりをしようというのだ。

 

 しかし、ここにきてあることに気が付く。

 

「そういえば、オレの嫁はどんなフロアを担当するんだ?」

 

 ナザリックはかなり巨大なダンジョンである。一人で作り上げるにはとんでもない時間がかかってしまう。そのため担当者を決めて作成を分担するかたちをとっていた。

 

 そういうことで、ギルド内掲示板を探す。

 

「え~とフロア担当はっと……。ガーネットさんか」

 

 アインズ・ウール・ゴウンは社会人であることが条件のギルドである。そのため、多種多様な職種の者が所属している。例えばギルドマスターのモモンガは営業職。たっち・みーは警官。ペロロンチーノの姉は声優。中には漫画家といったレアな職業のものもいるほど多種多様である。

 

 その中でガーネットの職業は建築士。

 

 フロア担当で実質二週間で完成させて、罠作成担当に引き継ぐ必要があるため、一人一フロアとなっている。しかし、本業であるガーネットは三倍の第一から第三層までを担当することになった。もちろんゲームのダンジョンと、リアルの設計の違いなんてものははなから承知の上で、ひとえにプロフェッショナルとしてのスピードを期待されてということだった。

 

 ギルドメンバーのリストを確認しガーネットもログインしていたため、ペロロンチーノはメッセージを送る。

 

「ガーネットさんおつかれさまです。今大丈夫ですか?」

「大丈夫ですよ。今、三層の出口ゲート付近で作業してます」

「遅くなってしまったのですがフロアとボスNPCの相談がしたかったので」

「私もその辺の相談がしたかったところです」

「じゃあそちらに向かいますね」

「了解」

 

 ペロロンチーノはメッセージを切ると、ダンジョン内で転移を行う。

 

 フロア担当とフロアボス担当の殆どは制作初日に打ち合わせを行っている。例えば第五層の氷雪フロアで炎熱系ボスを配置するなんてことはありえない。だからこそコンセプトのすり合わせは必須であった。

 

 しかしペロロンチーノは嫁の制作に没頭するあまり、そのへんの調整をすっぱり忘れてしまっていた。なによりメッセージの着歴を確認すると、ここ数日数回ガーネットから呼び出しを受けていたことを確認すると、血の気が引くのを感じた。

 

 どうしようかと頭を悩ませながら転移した先には、まだ作成中の第三層。だだっ広い空間にぽつんと門だけがある場所だった。そしてその目の前に赤い透明感のある宝石を人形(ひとがた)に切り出したような姿。赤いクリスタルゴーレムのガーネットがコンソールを展開し作業をしていた。

 

「乙です。本当に申し訳ありません。NPCにばかり意識が逝ってしまって、メッセージに気がついてませんでした」

「乙ですペロロンチーノさん。まあ、集中してたのだからしょうがないですよ。とはいえフロアの方はNPCより期限が短いので、打ち合わせ前にある程度作らせてもらってました」

 

 本当に申し訳なさそうに頭を下げるペロロンチーノに対して、ガーネットは本当に気にしないとばかりに、手をひらひら振りながら答える。

 

「まあ、見てもらったほうがいいかな」

 

 ガーネットはクリエイターツールを操作し、現在の作成中の情報を展開する。

 

 すると先程まで何もなかった空間は、切り出された石材の壁に囲まれたダンジョンに早変わりした。

 

 実際、壁は半透明でその向こうに複雑な迷路があることが見て取れる。またガーネットの手元にもミニチュア版ダンジョンがあり俯瞰でフロアを確認することができる。

 

 ギルドダンジョンの作り方は、まずはフロアの広さと階層の出入り口を決める。そしてオブジェクトを配置していく。ここで問題になるのが出入り口を結ぶルートが最低一本以上通っていること。間に転送罠を設置しようが、毒沼をはさもうが、ボスを倒したら開く扉を配置しようが、キャラクターが移動できるルートが存在すれば良い。逆にリドルやクイズで開く扉を配置して暗号のヒントがあったとしてもNGとなる。そのような扉を例えば宝物庫や罠部屋の出口に設置するなどは問題ないあたり、運営の判断基準はよくわからない。

 

「ダンジョン型。しかも石面ですか」

「ダンジョンといったらこれかな~と。構造物系のダンジョンをイメージしました。表層は朽ちた都市。そして第一層の入り口よ大理石の神殿の中に配置すると言ってましたので」

「ふむふむなるほど」

「そして第四層は地下水脈をテーマとした半水ステージということで……」

 

 ほどほどの広さを持った通路と小部屋を基準とした迷宮型ダンジョン。小部屋の中ならまだしも、通路の幅から同時に立つことができるオフェンスは二名が限界だろう。狭い視界に狭い通路は小規模なパーティーならまだしも、大軍で進行しようものなら、それだけで進軍速度を落とす罠となる。

 

 また外壁も石材テクスチャだが、一面同じテクスチャではなく、壁画があり、松明ありの複雑なもの。たとえ正しい道を進んでいても、まるで同じ場所をぐるぐる迷っているような錯覚に陥る配置。意図的な死角が作り出される絶妙な光源の配置。人間の錯覚を利用し遠近を狂わせたり、本当に通路の幅も少しづつ広がったり狭まったりと遠近感が狂う仕掛け。

 

「ガーネットさんって建築士ですよね?」

「ですよ」

「実は忍者屋敷作ったことがあるとか……」

「さすがにありませんよ。どうみても真っ当な用途でない隠し部屋ならありますが」

 

 あまりにも高い完成度に、ありえない疑問をもったぺロロンチーノだが、さすがにガーネットに否定されある意味安心した。後半のセリフは、自分がオタクだから勝手に妄想した結果とペロロンチーノは考えることにした。 

 

「すごく雰囲気があっていいとおもいます。いかにもダンジョンって感じなところが特に」

 

 ガーネットはイメージと共に、フロアの特長などを述べていく。もちろん後から罠担当がいろいろ配置するにあたり、微調整は必要だろうが、すでに迷宮部分は作業の山場を超えていることが見て取れる。なにより、そこまで作業を進めるにあたり、前後のフロア担当者ともコンセプトのすり合わせ、三倍のフロアを作成したというのだから、さすがは本業というところなのだろう。

 

「まあ、ボスフロアはこんな感じでいかがでしょう」

 

 そしてガーネットは第三層の出口付近、フロアの三分の一ほどの区画のデータをロードする。

 

 先程四層は地下水脈のフロアと言っていたが、ダンジョンを抜けた先には天然洞窟のような岸壁が広がっていた。そしてまるで行軍を遮るように底の見えない谷が横一線に広がり、そして一本だけ、壊れかけのロープと板を組み合わせた、古めかしい橋がかけられている。

 

 なによりペロロンチーノが目を見張ったのは、橋を渡った先にある古めかしい木造の教会。

 

「もしかしてここが・・・・・・」

「ええ、ボスフロア予定です。どんなボスが来るかわからなくってテンプレートの古い教会を配置しただけなんですが」

 

 ガーネットは困ったように右手で頬をかきながら答えると、正面の扉を開く。そこには教会の心臓部ともいえる礼拝堂がひろがっていた。もし違和感があるとれば、神の子の像や聖女の像が無く、朽ちた台座が一つあり、その奥には扉が一つ。たぶんあの扉が次の階層へとつながっているのだろう。

 

「お~~~~」 

 

 人工物のダンジョンの奥に広がる自然鍾乳洞と底の見えない谷。

 

 その先にある朽ちた神殿。

 

 言葉で表現すればその程度。しかし配置とルート、それぞれの距離からペロロンチーノの頭には物語が浮かび上がっていた。

 

「朽ちた都市の地下にある三層の人工ダンジョン。その奥には天然の洞窟と朽ちた神殿。逆か……、この地下空間に到達するために三層のダンジョンはつくられたんだ」

「いいですねその感性。建物は本来無機質なものです。それにテーマを加えるのは常に人間です」

 

 ペロロンチーノの感嘆にガーネットも嬉しそうに答える。

 

「とはいえ、このボス部屋ですがどんな風にします?」

 

 ボス部屋か~

 

 ペロロンチーノは、考えると完成したばかりのボスNPCデータを呼び出す。

 外よりわずかに暗い礼拝所。高い位置にある明り取りの窓から、僅かな光が差し込む先。荒廃し薄汚れた場所に佇む銀髪の美少女。

 

「地下神殿か……木造もいいけど、もっと無機質で冷たい石造りのほうがいいかな」

 ペロロンチーノは想像の翼を広げる。

 

 いままでただ美少女キャラが戦っていたシーンだが、フロアの広さや雰囲気が決まってきたことから、イメージが固まりだす。

 

「ボス部屋の広さはどのぐらいにします?」

「建物の中にはいると……ボスと……そうだな吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)五体でプレイヤーパーティーと戦う」

「広くすることができるけど、広くしすぎると、同時に襲いかかってくるプレイヤー数が増えるから、ギリで6人に制限とかならこのぐらい?」

 

 ガーネットはボス部屋に限り設定できる同時潜入プレイヤー数を設定すると、それに合わせて部屋の広さが変わる。古びた神殿の中。最奥には祀るべき神の変わりに次の階層に進むゲートが配置される。

 

「フロアボスは神祖(トゥルー・ヴァンパイア)。古びた地下神殿で冒涜的な儀式を繰り返す吸血姫」

「なるほどなるほど」

 

 ペロロンチーノの妄想から垂れ流されたイメージを、ガーネットは几帳面にメモを取る。もし第三者が見ていれば悶え死ぬような光景だが、ペロロンチーノの頭の中には確かに自分のヒロインたる嫁が動き始めようとしていたのだった。

 

 

 

   ******

 

後日

 

「お? イラストできたって?……って、なぜに巨乳だし」

……

「いや、巨乳好きなのわかるけど、おれの嫁だよ? モデリングだって貧乳だったじゃん」

……

「私は巨乳しか愛せないって、お前女じゃん。しかもお前自身も巨乳だし」

……

「わりぃ。まあ、とりあえずありがと服とのギャップは、パットで盛ってるって設定にするわ。それはそれで、背伸びする美少女という点で萌えるし」

……

「ですよね~」

 

 

そんなわけで、気が付けば第一から第三層階層守護者はパット入りとなった。

 

 

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