モブ「パープル色のライダーが逃がしてくれたんです!!」 作:オラオラドララ
花丸「アーシアちゃん……」
祝う者二人は、別れの握手を交わす。このコラボの最後の前書きに言葉はいらない。ただ、この別れの悲しみを味わい、またいつか出会うことを願う二人だった。
それではどうぞ。
三人称side
「………」
こうやって、意識を失った後に目覚める時は、誰かの顔が見える場合が多い……と、そんな風に思いながらイッセーは目を開ける。傷はアーシアに治してもらったのか、既に完治しており、そんな彼の顔を同じチームヤベーイの朱乃とギャスパーが覗くように見ていた。
朱乃の切れた左脚は、アーシアの神器でくっつけたことで完治している。イッセーが起き上がると、まず二人は同じ言葉を彼にかける。
「「お疲れ様」」
「……責めないのか……俺のこと」
作戦はイッセーが考えたものだ。自分に従って、このような結果が出たのだ。文句の一つや二つは覚悟していた。だからとて、別に許しを乞うわけでもないし、謝る気もなかったが、最悪二人からの罵倒は予想していたのだ。
だが、彼に送られる言葉は優しいものだった。
「責めるわけないでしょ。むしろ、嬉しかったわ。貴方が、最後まで私が残ってることを信じてくれて」
「………へぇ」
その言葉に、何を感じたのか。はたまた何も感じないのか。イッセーは、背を向けて何処かへ行こうとする。トボトボ歩くその背中姿は、どこか哀愁が漂ってきた。
「小猫ちゃん、ついて行ってあげたら?」
「は、はい!」
「私達もいくわよ!」
曜に背中を押すように言われ、イッセーを追いかける小猫。それにグレモリー眷属一同も続いた。
「なんか……悪いことしちゃったかな……?」
「俺達も以前クロノスに敗北して、それを糧に強くあろうとした。アイツも、恐らく俺達と同じように落ち込む……が、きっと立ち直るだろう。今は、そっとしておこう」
そう言い、静かに待とうとするヴァーリ(ゲ)。皆は賛成し、大人しくその場にいようとした。だが、しばらくすると……。
ドォンッ!ズバーンッ!
「……ねぇ、なんか音が聞こえるよ?」
妙な衝突音、空気を裂くような音が聞こえ、千歌は確証を得るために、今一度耳を澄ませる。
「あっちのグレモリー先輩達の声も……なんだか楽しそうな声が聞こえるような……」
「いや、まさか……流石にそれは……」
先程、暗いムードだったのに、いくら破天荒な彼等でもそれはないだろうと変な汗を掻きながら言うヴァーリ(ゲ)。もしそうなら、さっきの自分のセリフがなんだか恥ずかしく思え、確かめるために皆はその音が聞こえる方へと向かう。
▽
「ここらへんだな」
先程いたサッカースタジアムから離れた場所。そこには、運動するのに適した大きなグラウンドだ。
「ヴァーリくん……アレ」
「……」
梨子が指差す方向を、何故か見たくないと思ったヴァーリ(ゲ)。梨子の諦めかけたような顔を見て、何かを察したからだ。ゆっくりと、その方向へと視線を向けると、予想だにしていなかった光景が目に広がる。
「ファイアトルネードッ!!」
「ゴッドハンドォォッ!!」
「「「「「………?」」」」」
彼等はグラウンドで、サッカーをしていた。
もう一度言う。サッカーをしていたのだ。グレモリー眷属とイッセーがだ。
イッセーが何やら炎にボールを纏わせたシュートを放ち、ゴール前に立つギャスパーは巨大化のエナジーアイテムで手を大きくさせてそのシュートを受け止めようと踏ん張る。
「ぐぅおおお……ぐはぁぁっ!!」
ギャスパーの右手が突破され、そのままボールがゴールは突き刺さる。見事なシュートに小猫がイッセーに抱きついた。
「やりました!イッセー先輩!」
「フッ、神の才能にかかれば、ざっとこんなもんよ」
彼等は、燃えていた。先程の勝敗を引きずらず、ヴァーリ(ゲ)達へのリベンジのために特訓をしていたのだ。
そう、サッカーの!
「さぁみんな!さっきは負けてしまったけれど、今度はサッカーで勝利するわよ!練習あるのみ!!エイエイオーッ!!」
「いや、だから違うだろォォォォォォォォォォッ!!」
ドォォォォォォォォンッ!!
模擬戦が始まる前と同様、ヴァーリ(ゲ)はロケットランチャーの弾頭を放ってグレモリー眷属とイッセーを爆撃。
またもやアフロとなり焦げてしまったリアス達は、『なんでまた?』という感じでヴァーリ(ゲ)を見る。
「えっ!?はっ!?なんか今、完全にテンションだだ下がりのムードだったよね!?なんでケロッとした表情でサッカー楽しんでんだァァァァァァッ!!」
「えっ、だって……チェスをやって、模擬戦で勝負をしたでしょ?なら、今度はサッカーじゃない」
「どういう理論だよ!?ってか、そっちのイッセーとか特にへこたれてただろ!?だって、負けたじゃん!!」
「はぁ?何をへこたれる必要がある?だって、俺はまだ負けてないし。そう、俺が負けを認めない限り、負けじゃないのだ!!」
「餓鬼かッ!!」
えっへん!と胸を張るイッセー。全く落ち込む様子などなく、自尊心が消えた様子もない。良くも悪くも、彼はポジティブなゲームマスターだった。
「お願いします〜!次はサッカーで勝負してください〜!!」
どうしてもサッカーがやりたいのか、それとも相当自信があるのか。懇願するように頼んでくるリアスの姿に苦虫を潰したような顔をするヴァーリ(ゲ)
「……はぁ、分かった。だが、これで本当に終わりだ。いいな?」
「「「「「やったー!!」」」」」
こうして、本当にサッカーをやることとなったコラボ回。審判はリアス(ゲ)が執り行い、チームには先程の模擬戦のメンバーに加え、パープルライダー側にはアンクを、ゲームライダー側には美歌を加えてサッカー勝負を行う。
「では、これよりパープルチーム対ゲームチームのサッカー対決を始めます。礼ッ!」
「「「「「おなしゃーーっすっ!!」」」」」
ピーーッ!!
それぞれのポジションについたところで準備が整い、ついに試合開始のホイッスルが鳴る。
「よし!いくぜ!」
まずは先攻のパープルチームが動く。アーシアに憑依しているネガタロスから蹴り始め、同じ
「フン、これが終わればゼノヴィアからアイスを貰えるからなぁ。3分でケリつけてやる!!」※サッカーは3分で終わりません
「手羽野郎ッ!こっちだ!!」
「俺に命令すんな!!」
アンクは、ボールをパスをしようと視線をネガタロスに向ける。そのまま蹴ってパスするかと思いきや……。
何故か、
「「「「「…………えっ?」」」」」
その光景をポカーンとなって見る一同。そんな彼等を気にせず、そのままネガタロスへとパス。まるで、バスケのように、いつもゼノヴィアにメダルを投げる時のコントロールの良さをここでも活かした速いパスだ。
「おっしゃぁぁっ!決めてやるぜぇぇぇっ!!」
それを、今度はネガタロスが両手で抱えるようにキャッチをし、猪突猛進の如くゴールへと向かっていく。そして、終いにはラグビーのトライのように自分ごとボールと共にネットに向かって滑り込んだ。
「よっしゃぁぁぁっ!!」
「フン」
点を取れたという勘違いで喜ぶネガタロスと、まるでナイスアシストで策略通りだと自慢げにほくそ笑むアンク。しかし、案の定……。
ピピーッ!!
「反則」
「「何ッ!?」」
「いや当たり前でしょうがぁっ!!」
当然、審判のリアス(ゲ)から反則を告げられ、敵チームの美歌でさえツッコミを入れるほど。当然、同じチームのパープルライダー達も呆れるしかない。
「バカだ……」
「くっ……そうだった。あの二人ルールを知らないんだったわ……!!」
「お前もバカだよ」
リアスに対して辛辣なイッセー。しかし、後には引けないのでこのまま試合は続行。
前半が終わり、気がつけば点数は『
「へっ、やるじゃねぇか……俄然、燃えてきたぜ」
「チッ、なんかズルしてやがんのか?」
「おい、大体の失点はお前らのせいだからな?……いや、そんな『バ、バカな……!!』みたいな顔されても……」
何故か得意げなネガタロスと、負けている原因が分からずいちゃもんをつける寸前のアンクにゼノヴィアがそう言うと、二人は驚く。この試合、まさか自分達が足を引っ張ってるとは思ってなかったからだ。
「な、なんでだ……?」
「お前達がボールを掴んだり、隠したり、埋めたりその他諸々反則プレイをするからだろう!!考えれば分かるだろうに!!」
「「………なら、破裂させるか」」
「ダメに決まってるだろ!!というか、もし許されたとして、そこからどうやってゴール決めるんだ!?」
後半戦もあったが、結局、足の引っ張るものが二人もいたこともあってサッカーですら敗北。チェスと模擬戦も合わせて、パープルライダー達は総合的に敗北を喫した結果に終わった。
▽
敗北を喫したパープルライダーズ。やたらと満足したような表情だが、それはサッカーによって大いに楽しめたからだろう。
だが、そんな楽しみはすぐに終わり、別れの時がきた。リアス達も元の世界でやることがある故、いつまでも、この世界にとどまってはいられないのだ。
『パラレルトラベラー!』
「このゲートをくぐれば、元の世界に帰ることが出来る」
「何から何までありがとね」
「なに、こっちのガシャットの不具合で招いてしまったんだ。これくらいは当然だ」
パラレルトラベラーガシャットを修復し終わったことで、ヴァーリ(ゲ)は世界を繋ぐゲートを出現させる。別れが近づき、皆は其々挨拶を交わす。
「アーシアァァァ〜!アルマゲドン一族としてこれからも頑張っでぇぇ〜!!」
「ヨハネさ〜ん〜!!ゔぅ〜!!」
別れを最も惜しんでいたのは、善子とアーシア。同志との別れは寂しい。だからこそ、互いに抱き合って涙さえ流していた。アーシアは、善子の次にアーシア(ゲ)にも別れを告げる。
「こっちの私も、アルマゲドン一族として共に精進しましょう!応援してます!」
「いや、私そんな種族じゃないです……」
厨二病でないアーシア(ゲ)は、厨二の自分を見て苦笑い。やはり、ついていけないようだ。
「マルも、負けないように祝いの勉強をするズラ!今度は、そっちのアーシアちゃんよりも盛大な祝いをしてみせるズラ!」
「フッ、それはこちらのセリフ!次会う時を楽しみにしているぞ国木田 花丸!」
当然、祝う者同士の花丸との会話も。二人はライバルに近いような関係となり、ともに精進しようと誓い合う。
「よーし!今度は私とズラ丸……そしてアーシアとこっちのアーシアで『ドリームカルテット』を組むわよ!!」
「そ、そんなの無理ですぅ〜!!」
変な集団に巻き込まれたくないアーシア(ゲ)はブンブンと首を横に振る。他の者達も、それぞ!別れの言葉を交わすが、やはり最後までパープル勢に振り回されっぱなしの様子。
そして、イッセーもイッセーで帰る前にやることがあった。この世界の自分の前まで歩み寄り、カイザードラグーンダブルナイツガシャットを差し出す。
「返す」
「……おう」
イッセーは、元の世界に帰ってもカイザードラグーンは作るつもりはないと決めている。それどころか、カイザードラグーンやキセキゲーマーを越えるほどの物をいつか創り上げるつもりだ。
「これも、もういらねぇ。元はこの世界の機材で作ったもんだからな」
レジェンドライダーも取り出し、ヴァーリ(ゲ)に押しつけるように前に出した。だが、それをヴァーリ(ゲ)は優しく押し返した。
「……いや、それはお前が持っておけ。もしかしたら、役に立つ日が来るかもしれん」
それは一体どんな時なのか。ヴァーリ(ゲ)にもレジェンドライダーガシャットはあるし、持っていて損はないだろうと判断して、特別にイッセーに譲った。
「フン、まぁ当然だよな。俺が作ったし……お・れ・が・作ったし」
「お前ホント畜生だなァァァッ!!」
素直に受け取ると、何か借りを作ったような感じになるので嫌味風に受け取るイッセー。やはり、悪びれる様子無し。
「……」
ふと、イッセーはチラッと曜のいる方向へと視線を移す。だが、曜が視線をこちらに向けると、反射的に目をそらしてしまった。
「ほら、イッセー……ちゃんと言うことがあるでしょ?」
「……チッ」
リアスがイッセーに何かを促す。きっと、作戦の為に一部の者を騙したことについてだろう。
あの時の謝罪が本物かどうかは、本人にしか分からない。だが、作戦の為に曜を利用した。その心も、若干裏切りに近いものだった。決して良い事とはいえないだろう。
そんな彼は、曜に謝りもせず、代わりに何かを差し出して曜に手渡した。
「これをやろう。それがお守りとなって力になってくれるはずだ。ついでに、泣いた時にでも使っておけ」
イッセーが堂々とした様で曜に渡したのは……『神』と、真ん中にどでかく刺繍の文字が縫われているハンカチだった。しかも、自作である。
(((((ダサっ……)))))
小猫のTシャツ並みにダサいと感じた一同。渡された曜も、若干苦笑いをするが、その好意は嬉しく感じた。
「あ、ありがとう!そっちのイッセー君!またいつか会えた時は、一緒にお茶でもどう……かな?」
「…………考えとく」
「うん!」
曜の優しさは、イッセーにとって眩しすぎたのか、彼は顔をそらしながら返事をする。まるで、初めて出会った時の小猫を見ているかのようで、どうにも調子が狂うようだ。
「まっ、彼なりのお詫びってことですわね」
「素直じゃないなぁ、先輩」
「的外れなこと言ってんじゃねぇぞお前ら」
チームヤベーイの他2人が茶化すように煽り、若干苛立ちながら返すイッセーを最後に、グレモリー眷属達は帰りのゲートの前に立つ。
「じゃあね、私!今度はちゃんとラ・メーンをご馳走するわ!」
「えぇ、楽しみにしてるわ」
「なら、もう一人の私にはトカゲの丸焼きを差し上げますわよ」
「いらないですわよ!」
リアスに便乗するように朱乃も食べ物を提供しようとするが、案の定引かれてしまう。が、そんなことは構わず、優雅に帰還していったリアスと朱乃だった。
「さらばだ。別世界のイザイヤ」
「ッ!その名前……君は一体……」
その名前を言われて身体をビクッと跳ねらせる木場(ゲ)。そのことについて聞く前に木場は元の世界へと帰還。
「グッバイ、もう一人の私」
『俺がお前で、お前が俺で』
「次は絶対にそのTシャツ着てこないで」
文字Tシャツを見せつけ、華麗に退場する小猫に、最後まで苦い顔をする小猫(ゲ)。
「また会おう!我が妹よ!ワーッハッハッハッハ!」
「勝手に妹認定されちゃいました……」
高笑いをしながらゲートをくぐるアーシア。どうやら、この世界の自分を妹と定めた。
「パンツは予備を買った方が良いぞ!それでは!」
「最後までパンツなのか……」
アドバイスをして去るゼノヴィアと、アイスを頬張りながらそれについていくアンク。当然、彼に別れの言葉など無し。
「もう一人の僕。ロリをその手につかみ取れるよう、頑張れ。とうっ!」
「……僕は、ああはならないようにしよう……かな」
ギャスパーのようなロリコンにだけはならないよう、心に誓うギャスパー(ゲ)。
「諸君!素晴らしいものを見せてもらったよ!ハハハハッ!!」
鴻上も里中と共に元の世界へと帰還。最後まで自由な人であり、同時に謎が深まるのだった。
「ねぇ、あの人結局なんなの?」
「さぁ?」
最後は、イッセー。無愛想な彼は、何も言わずにゲートをくぐろうとするが、その前に後ろから声をかけられる。
「じゃあな」
「……フン」
後ろからこの世界の自分に別れの挨拶をされるが、彼は見向きもせず、代わりに軽くヒラヒラと手を振ってゲートをくぐるという彼らしい別れを最後に、ゲートは閉じた。
「なんだか、遊びに来て楽しそうに暴れて、満足に帰っていったって感じだね」
「中々インパクトの強い人達だったわ」
忘れることなどないだろうと、誰もが思った。だが、同時に面白い体験をしたと感じて皆で笑い合った。
「あら、電話?……誰かしら?」
唐突に、リアス(ゲ)のスマホから着信音が鳴り、彼女は電話に出てスマホを耳に当てる。
「はい、もしもし?えっ?はい……大将?伊勢エビの仕入れ……えっと、それ私じゃなくて説明するとややこしいんですが……はっ!?仕込み終わって客がわんさか来るから早急に手伝って欲しいッ!?いや、まっ……切れた」
どうやら、別世界の自分の影響が出て、要らぬ面倒事が降りかかってしまったようだ。他のグレモリー眷属もスマホを取り、パープルライダー達のことでSNSで話題となっているのを見て顔を青ざめた。
「私が霊感体質!?な、何故こんな事で有名に……」
「そういえば、あの免許証偽造疑惑……この先、僕は目をつけられるのだろうか……?」
「私……小学生と間違えられてる……」
「ぼ、僕は勝手に捨て子扱いにされかけてるぅぅぅっ!?」
「「「「「……おのれパープルライダーァァァァァァァァァァァァッ!!」」」」」
余計な置き土産をしてくれた彼等に、怨念を込めるかのように叫ぶこの世界のグレモリー眷属達であった。事後処理は相当時間がかかる……かも。
▽
(パープルライダー……か。とんでもない奴らだったな)
イッセー達が元の世界へと帰還して行った後、ヴァーリ(ゲ)は幻夢コーポレーションの屋上で一人黄昏ていた。手に持つパラレルトラベラーのガシャットを見つめながら。
「他にも、紫色のライダーがいたりしてな」
と、半分冗談混じりで呟いた。しかし、次の瞬間……言ったことが現実として本当に起きてしまう。
「世界を渡ることの出来るガシャットなんて、凄いお宝ですね。欲しくなってきたじゃないですか」
「ッ!?」
どこからか聞こえた声に反応した時にはもう既に遅かった。声の正体の人物は、素早い動きでヴァーリ(ゲ)に迫り、彼の手にあったパラレルトラベラーのガシャットをスリのように奪った。
「何ッ!?」
『パラレルトラベラー!』
女は奪い取ったパラレルトラベラーのガシャットを起動させると、ヴァーリの背の後ろ辺りにゲートが現れる。
「あら、そんなところに……。そこの貴方、悪いのですけど邪魔だから退いてくれますか?」
(この仮面ライダーは……まさか、コイツも奴らと同じ世界からやってきたのか……?)
ヴァーリ(ゲ)は、目の前の仮面ライダーのことを知っていた。基本は緑の中華風のスーツ。ブドウをモチーフとした紫の甲冑を着て、更にはブドウの形に似せた銃を構えた……その仮面ライダーのことを。
「仮面ライダー………龍玄」
「へぇ、何故か分かりませんがこれのことを知ってるようですね。実は、この姿に名前がなかったんですよ。龍玄……なるほど、いいですね………うん、その名前貰いました。私は今日から『仮面ライダー龍玄』……フフッ、なんか嬉しいですね。名前があるって」
ここに来て初めてライダーとしての名前をつけることが出来たからか、本当に嬉しそうだ。龍玄はそのままパラレルトラベラーガシャットを返さず、後ろのゲートを通ってにイッセー達のいる世界へと帰るつもりだ。
『タドルレガシー!』
「術式レベル100!変身!」
『デュアルガシャット!ガッチャーン!デュアルアップ!タドールレガシー!』
そうはさせまいと、ガシャットギアデュアルβIIを使い、レガシーゲーマーレベル100へと変身したヴァーリ(ゲ)は、得体の知れぬ彼女に剣を向ける。
「お前、何者だ!」
「中身のことですか?まぁ当然、名前は明かしませんが……そうですね。通りすがりの仮面ライダー……とでも言っておきましょうか♪」
「どこの世界の破壊者だ!いや、それよりも……俺のガシャットを返せェッ!」
剣で斬りかかるヴァーリ(ゲ)。しかし、龍玄は流すようにヒラリと攻撃を躱す。
「乱暴な方ですねぇ。もっと女の子は大切に扱わないと」
避けた先で、余裕そうに言う龍玄がパチンと指を鳴らすと、辺りに複数の魔法陣が展開され、そこからレーザービームを放たれた。
「善子と同じようなことを……!」
確かに、善子と同じように見えるが、明らかに相違がある点は彼女が爆発する殲滅系に特化したレーザービームで、龍玄が放つビームは熱エネルギーを主力とし、焼滅に特化したビームであるということ。
更には、魔法陣が縦横無尽に動くので、ビームがまるで踊るようにヴァーリ(ゲ)に襲いかかる。躱し続けるも、ブレイブのアーマーが一部分が被弾するだけで、その部分があっという間に熱で溶けた。
(チャージ時間も短い……これほど高出力なレーザービームを即座に放てるとは、相当の手練れか……!?)
「お前……魔法を使えるのか。人間か?」
一度ビーム攻撃が止まり、その隙に問う。ゆったりとした佇まいの彼女は、こう答える。
「もうちょっと上位な存在ですかね。詳しく知りたいですか?」
「あぁ、是非ともな」
「へぇ、そうなんですか」
ヴァーリ(ゲ)に対してお淑やかに答える女は、お次に魔法陣から弓を出し、片方の手にエネルギーを溜める。そのエネルギーを矢の形へと変え、弓に携えて引きしぼった。
「なら、教えますよ………死んだらですけど♡」
シュンッ!!
「うぉっ!?」
思わせぶりなことを言っていたが、教える気など鼻からなかった。ニコッと笑う彼女は弓を引きしぼり、上空へと放つとエネルギー矢が拡散して豪雨のようにヴァーリ(ゲ)を中心に降り注ぐ。
それに対してヴァーリ(ゲ)は、レガシーゲーマーレベル100の能力を使い、上空に手を掲げて波動を放つことで魔法をかき消す。だが、それでも周りから執拗に狙ってくるレーザービームも残っているので、なんとかそれにも気を配ることで攻撃を躱し続ける。だが
「フッ!」
「ッ!ぐぁっ!」
魔法に気を取られ、彼女の高速移動に対しての対応が遅れ、ゼロ距離での射撃攻撃をくらう。レーザービームが飛び交う中で、懐に潜り込む彼女の勇気や決断力に驚くヴァーリ(ゲ)はふっとばされたのちに立ち上がって、再び剣を構える。
(勇気を出して飛び込んできたか。……いや、本当にそうなのだろうか?)
余裕が見られる彼女を見て、ヴァーリ(ゲ)は自身の出した結論を疑う。その感はだいぶ当たっており、実は今の攻撃の流れは彼女自身が作り出したものである。あの魔法陣の操作権は彼女が握っており、そこから放たれるレーザービームの軌道や、ビームが被弾しない安全地帯を全て理解し、その上で近づくためのルートを瞬時に判断し、ヴァーリ(ゲ)との距離を詰めたというわけだ。
『ガッチョーン!スゴワザ!ガッチャーン!タドルクリティカルスラッシュ!』
必殺技を発動し、剣にエネルギーを溜めるヴァーリ(ゲ)。そして同じように龍玄も必殺技を発動するため、腰に巻かれているドライバーに手を添え、取り付けられているブレードを下ろした。
『ハイーッ!ブドウスカッシュッ!』
「フッ!」
「ハァッ!!」
ヴァーリ(ゲ)は斬撃エネルギーを飛ばし、龍玄はエネルギー弾を銃から発射。両者の遠距離攻撃がぶつかり合い、拮抗したまま爆発。相殺に終わってしまう。
「いい加減帰らせてくれませんか?これ以上やっても、お互いにあまり意味ないと思いますし。お宝さえくれれば、後は何もしませんよ?」
「無駄な争いは避けたい……ということか?」
「えぇ」
「……そうか」
獰猛な獣という性格ではなく、危険性は低いかもしれない。ガシャットだって複製は可能だろう。しかし、彼にも曲げられない信念がある。その提案には乗れなかった。
「しかし悪いな。俺にとってもガシャットはお宝なんだ。お前に渡すわけにはいかない」
イッセーと同じように、彼にとってガシャットはかけがえのないものだ。奪われることに抵抗だってある。ガシャットを諦める気は毛頭なかった。
「……なら、これで終わりにしますか」
仕方ないと言わんばかりに、銃の引き金に指を添える龍玄。終わりにするべく、ヴァーリ(ゲ)の眉間に狙いを定めるが……。
『マキシマムマイティクリティカルストライクッ!!』
「たぁぁっ!!」
「うっ!?」
マキシマムゲーマーとなった千歌が、横上方面からライダーキックを放ってきた。不意打ちに対して、龍玄は咄嗟にガードするも、衝撃に耐えられずに吹っ飛ばされ、手に持っていたパラレルトラベラーガシャットが弾き飛ばされた。
その結果、パラレルトラベラーガシャットはヴァーリ(ゲ)の手元に落ちて奪い返すことに成功。
「ヴァーリくん!大丈夫!?」
「あぁ、ありがとう千歌。助かった」
「あらら、まさか伏兵がいたとは……残念。まっ、ガシャットは元の世界でも手に入れることは出来ますから、今回はこの辺にしておきましょう。アデュ〜」
飛ばされた位置がちょうどゲートの近くで、ここら辺が潮時だと感じたのか、龍玄はゲートから漏れる光を背に、イッセー達のいる世界へと帰っていく。突如現れた謎の人物により、混乱はしたものの、通り雨のようにすぐ去ったことで結果的に何も損害などなく終わった。
「まだあんな曲者がいたとは……本当に、なんて奇妙な世界だ」
ある意味恐ろしい世界だと感じたヴァーリ(ゲ)だった。そして、同時に思う。彼女は、戦場をかき乱す厄介な人物になるだろうと。
▽
「次は絶対にこの俺の才の……いや、俺達が勝ァァァつッ!!そして、その次はたった一人でも勝ってやるゥゥッ!!何処までも登りつめて、やがてはどんな奴も越えてこの俺が頂点に立つ!」
元の世界に帰っても、イッセーは平常運転。一度負けたところでへこたれず、常に向上心を切らさない心の持ち主の彼は、きっとこれからも成長していくだろう。心はともかく、力と身体は誰もが想像しない高みへ。
「フフッ……」
きっとそうなるだろうなぁ、と彼の部屋で静かにその後ろ姿を見守る小猫。元気な彼を見るのが何より嬉しく、同時に愛おしいと感じる。
「覚悟しろキセキゲーマー………キィィィセェェェキィィィィゲェェェマァァァァァァァァァァァァァァァッ!!」
「ちょっとイッセー!近所迷惑だから静かにしなさい!!」
「……ごめんなさい」
そんな彼でも、やっぱり母親に弱いのであった。
因みにサッカーのポジションはこんな感じ
パープルチーム
FW アーシア(ネガタロス憑依) 朱乃
MF イッセー リアス アンク
DF 小猫 木場 ゼノヴィア
GK ギャスパー
ゲームチーム
FW イッセー パラド
MF 美歌 ヴァーリ 千歌
DF 鞠莉 梨子 ダイヤ
GK 善子
これにてコラボは終わりです。疾風の警備員様、ありがとうございました!