刀使ノ巫女 -ただの柳瀬家の執事-   作:ソード.

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ちょい間が空きましたね。ゴメンナサイ。
今回はほぼ進まないです。明日には次の話を上げますんで、どうかよろしく(^_^ゞ




第11話 私を呼ぶな

舞衣を部屋まで送り届けた後、明良は一人で管理局の庭に足を運んでいた。手頃なベンチに腰掛け、電話を発信する。相手は姫和だ。

 

「十条さん、黒木です。今は近くに誰がいますか?」

 

周囲に気を配り、万が一見られても怪しまれない風に話を続けた。

 

『可奈美と累さんだけだ。何の用だ?』

 

「鎌府女学院の糸見さんがそちらに向かいました。迎撃か逃走の準備をお願いします」

 

簡潔に用件を述べる。今のところ差し向けられた刺客は沙耶香だけだが、十分な脅威たりえる人物だ。伝えておくべきことだろう。

姫和は動揺しながら聞いてくる。

 

『刀剣類管理局に掴まれたのか?』

 

「ええ。詳しく言うと、貴女方の潜伏先と恩田さんの素性も割れていますのでご注意を」

 

『どういうことだ。何故ここが……』

 

どこから情報が漏れたのか疑問に思っているようだが、明良はその理由を知っている。無論、推理などではなく確かな筋からの情報だ。

 

「敵の目も節穴ではありません。貴女方の変装やマンションの駐車場の映像、それから昨日の荒魂の出現位置から割り出されていました」

 

『……わかった。糸見はこっちで何とかする。引き続き情報を頼む』

 

「かしこまりました」

 

悔しげな姫和の声が届くが、やがて理解して話を切り上げようとする。だが、中々彼女の方から通話を終了させる気配がない。

 

「……切りますよ」

 

『ま、待て!』

 

「? 何ですか?」

 

引き止める姫和の声に、通話終了のアイコンに伸びた親指がその動きを妨げられた。

 

『……いや、何でもない』

 

聞くのを恐れたのか、他に理由があったのかは定かではないが、明良にはほぼ確信できていた。

 

「今朝の電話の――最後の会話のことですか?」

 

『ああ……』

 

哀しさと悔しさを込めて答える姫和。無理もない。彼女にとっては喉笛を掴んででも聞き出したい情報を目の前でちらつかされているのだ。明良にとっては計算通りだが、心苦しさは感じている。

 

――『……私が貴女方のお母様にしたことは、悪かったと思っています』

 

可奈美と姫和、彼女たちの母親を明良は知っている。かつて若かりし頃の二人と相見え、死に追いやったのだ。姫和だけではない、可奈美にとっても見逃せない話だ。

だが、姫和からすれば今朝の段階まで自分の仇は折神紫、ひいてはそれの姿をした大荒魂だという前提で戦っていたのだ。そこに突然、自分こそが真の黒幕であるかのように名乗る人物が現れれば混乱するのが当然と言える。

 

『一応確認しておくが、あれは何かの冗談か? それとも私を口車に乗せるための嘘か?』

 

「どちらも違いますよ。私は冗談は苦手ですし、嘘をつくことなどありません」

 

嘘だ。明良は目的のためならば嘘も冗談も、計略も厭わない。そうでなければ明良は今生きていない。

だが、彼女たちの母親の件については嘘などではない。相手を操るには真実を話すことも重要なのだ。少なくとも、この件については犯した罪も、胸に抱いている罪悪感も嘘偽りはない。

 

「とは言っても、今貴女にこの件について詳しく話す意味はありません。話すのならば追っ手を逃れた後にしましょう」

 

『わかった。なら、お前もそれまでは死んでくれるなよ。必ず生きて、私と可奈美の前に来い。その時には真実を話してもらうからな』

 

「……ええ、では失礼します」

 

簡素な別れの言葉を述べて今度こそ通話を終える。

 

――私と可奈美の前に、ですか。

 

一匹狼と言っても良かった彼女の口から出た言葉に自然と笑みがこぼれた。彼女自身、理由があるとはいえ多少なりとも可奈美を仲間と認識しているようだ。

 

「……帰りますか」

 

さっき聞いた(、、、、、、)高津学長の話から、向かったのは沙耶香一人。それだけならば可奈美と姫和の二人で十分対処できる。無理にでも潜伏先に向かって加勢に入る必要はないだろう。

そう結論づけ、ベンチから重い腰を上げた。そこへ声をかける人物がいた。

 

「そこのお前、待て」

 

「……はい?」

 

女性の声。凛とした、重く響く声だ。確認するまでもなかったが、振り向いた先にその人物は立っていた。

目元を覆い隠す前髪、腰を通り越して膝にまで届きそうなほど長い後髪、腰に差した二振りの刀。折神紫だ。

 

「これはどうも、こんばんは。私に何か御用でしょうか? というより、先日の一件があったのですからこんな夜中にお部屋を離れるのは危険なのでは?」

 

「問題ない。そもそも、私には護衛など必要ないのだ」

 

はったりではない。姫和の超高速の刺突を簡単に防いだ彼女ならば、親衛隊などおらずとも大概の敵は歯牙にもかけずに返り討ちにするだろう。

 

「少し話がある」

 

「お話ですか、場所を移した方がよろしいですか?」

 

「いや、ここでいい。そこまで長い話にはならないからな」

 

近くに人の気配はない。盗聴器の類いはこの辺りにはないし、監視カメラもこの角度では明良の背中しか映さないため唇の動きで会話を読まれる心配もない。

そこまで考えた上で明良は了承した。

 

「わかりました。それで、話というのは?」

 

「昨日の事件のことだ」

 

昨日の事件、となれば十中八九姫和に暗殺されかけたことについてだろう。だが、何故今更そんなことを聞く?

 

「まさかとは思いますが、私があの二人と共謀して今回の件を引き起こしたと、まだ疑っているのですか?」

 

鼻で笑うように、クスリと笑い声を混じらせる。本気で受け取っていないという意思表示だ。しかし、紫はその雰囲気を一蹴する。

 

「違う」

 

「……何が違うんです?」

 

一応聞いておく。何が聞きたいんだこの人は。ここまで思わせ振りな態度で話しているのだからそれなりに重要な話なのは間違いないのだろうが。

 

「お前は何か疑問に思ったことはないのか? 衛藤可奈美、十条姫和、そしてお前が私の前に現れたこと、十条姫和が私を討とうとしたこと、偶然だとでも思うのか?」

 

「……さっきから何を仰っているのかよくわかりませんね」

 

――見抜いているぞ、とでも言いたいのでしょうね。

 

「親衛隊の方にすでにお話ししましたが、私の知る限り衛藤さんと十条さんが旧知の仲であった覚えはありませんし、私は今回の件については全く予期していませんでした。私と彼女たち……いえ、貴女も含めた私たち四人に何か特別な関係性があるという意味ですか?」

 

「……あくまで白を切り通すのか」

 

「いえいえ、白も何も、私のような一介の執事が関係するような件ではありませんよ、これは」

 

沈黙。これ以上は何も吐かないと踏んで紫の方からは何も追求してこない。

数秒見つめ合っていたが、不意に紫がまた口を開く。

 

「匂い」

 

「……?」

 

「隠しきれていないぞ」

 

「……何のことでしょうか?」

 

――貴女もでしょうが。

 

「その様子ならば、気づいているのだろう? 我々の素性も」

 

「気づいていると言ったらどうなさいます?」

 

挑発の意味を込めて問い掛けると、紫は射殺さんばかりの眼光で睨みつけてきた。

 

「……あの女、柳瀬舞衣と言ったか」

 

「………」

 

「お前の正体について話せばどうなると思う?」

 

心が少しだけ揺さぶられたことは認めよう。

だが、それだけだ。一片ほどの動揺が表情に出たが冷静さを欠いたわけではない。

 

「どうぞご自由に話してくださって結構ですよ。あの方はそんな話を鵜呑みにされるほど愚かではありません。冗談だと笑って流すに決まっています」

 

「……願望だな」

 

「貴女こそ、気を付けた方がよろしいかと」

 

睨んでくる彼女の目に向けて、同じだけの力を込めて睨み返す。

 

「昨日のように、恨みを買った何者かに暗殺されるかもしれませんからね。誰なのかは存じ上げませんが」

 

左手の白手袋は外している。紫も今の明良の言葉の真意を掴めないほど馬鹿ではない。

お互いに睨みを利かせるのは止め、明良は踵を返して宿舎へと歩を進める。

 

「失礼します。舞衣様をあまり御一人にしておくわけにはいかないので」

 

無駄な時間を食ったと心の中で歯噛みしながら中庭を後にしようとする。

 

その背中に、ポツリとぼやく声が飛び、触れた。

 

 

「……変わったな、(しゅう)

 

 

――何と言った? 私のことを、今何と呼んだ?

 

明良は思わず足を止めていた。気のせいではない。はっきりと、雑音の少ないこの場に、明良の耳はその声の振動を寸分違わず関知した。『修』という名前を。その名前――

 

――その名前で、私を呼ぶな。

 

「……申し訳ありません、修とは誰のことでしょうか? お知り合いの方と間違えていらっしゃいませんか?」

 

極めて穏便に、笑顔で対応した。聞こえなかったことにして無視しても良かったが、明良にとっては聞き捨てならない会話だったのだ。

 

「独り言だ。お前のことではない」

 

「そうでしたか、申し訳ありません」

 

紫も話を引っ張るつもりはないらしい。適当にはぐらかされた。

 

「……お前は本当に、柳瀬舞衣に尽くすのだな」

 

「……? 何ですか、突然」

 

紫が全く別の話題を話し始めた。急に何のつもりだ。

 

「ここまでの会話だけでなく、お前は常にあの女の安全のために行動している。それこそ従僕か奴隷のようにな。だからそうやって隠し通しているのだろう?」

 

「従僕に、奴隷ですか。そう考えてくださっても結構ですよ。私はあの方にならば、人権も生殺与奪権も喜んで差し上げる所存ですので」

 

当たり前の会話だ。明良にとっては現実的に考えてもそれくらいの相手なのだ、柳瀬舞衣は。彼女に尽くすことに何故わざわざ確認をされることがあるのだろう。

 

「理解できんな、そこまであの女が大切か? あの女はお前の何だ?」

 

紫は心底疑問に感じた様子で尋ねてくる。愚問過ぎた。こんな質問、一桁の足し算より簡単だ。

 

「大切、などという言葉では言い表せませんよ。あの方は私の敬愛する主であり、命の恩人です」

 

舞衣がいなければ明良は生きていない。彼女には一生を何度繰り返しても返しきれないほどの恩があるのだ。残りの人生など、喜んで捧げられる。

 

その思いを胸の中で反芻させ、今度こそ明良は中庭を後にした。




・余談
→昨日、とじともで何回かガチャを引いたら制服と巫女服の舞衣が一枚ずつ(☆3の)が出ました。その瞬間に勢い良くガッツポーズ。で、頭をドアの柵の部分で打ちましたよorz


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