「おはようございます」
二月十四日。舞衣がその日に初めて会った人物が彼だった。今日は美結、詩織、そして明良の三人のために早起きして朝食を作ろうと意気込み朝の五時半に起きたのだ。そう、明良が出勤してくるよりも早く。
だが、それが計算違い、いや思い違いだったことに今更気づかされた。早起きした舞衣は自室から廊下に出た――出ようとしたところで彼に会ったのだ。部屋の前に正座している明良に。明良は晴れやかに顔を綻ばせながら朝の挨拶をしてきた。
「お……おは、よう」
普段なら笑顔で応対できるはずなのだが、彼のこんな突拍子もない奇行には流石の舞衣も動揺せざるを得ない。
「早いんだね……まだ五時半なのに」
「はい。万が一に備えて深夜の二時からお部屋の前で待機しておりましたので」
――ええ……
心の中で、動揺を通り越して軽く恐怖を憶える。もし舞衣が深夜に部屋から出ていれば、暗闇の中に正座している彼と出くわしていたことになる。想像しただけでも怖い。
「……えっと、ちゃんと寝てる?」
「はい。勿論です。それに、この場所で不眠不休で舞衣様のお目覚めを待つことは決して苦ではありませんので。むしろ至福です」
「そ、そうなんだ」
もはやツッコんだら負けだと舞衣は悟った。もういいや、と舞衣は明良と一緒に一階のリビングへと降りていく。
「あ、そうだ。明良くん、美結と詩織はもう起きてる?」
「いえ、まだお二人とも眠っておられるようです」
「じゃあ、私ご飯作らないと……」
「それでしたら、私が作っておきました。和食と洋食どちらになさいますか?」
リビングに着くと、食卓には既に食事が用意されていた。焼き魚、出汁巻き卵、ほうれん草のおひたし、スクランブルエッグ、ソーセージ、ハムエッグ、サラダ等々、取り分けはされておらず、食卓の真ん中に置かれたそれらを各々が皿にとる様式になっている。
「スープ類はお味噌汁とコーンスープ、お飲物は麦茶、牛乳、アップルジュース、コーヒー、紅茶となっています。ご用の際はお申し付けください」
明良はそう言ってキッチンの奥へと歩いていく。
「舞衣様は今すぐお召し上がりになりますか?」
明良がキッチンで味噌汁の鍋をかき混ぜながら尋ねてくる。
いざ朝食を作ろう、と意気込んでいただけに肩透かしを食らった気分だが、彼の方が早くいたのなら作っていないはずがなかったのだ。
まだ朝食には早いが、もうこのまま頂いてしまおう。
「それなら、いただこうかな」
「畏まりました。ですが、良いのですか? まだ時間は早いですし、もう少しお休みいただいても構いませんが」
「いいよ。だって、明良くんと二人で食べたかったから」
美濃関に通っている以上、明良と毎日会っているわけではない。些細なことかもしれないが、こうして一緒の空間で過ごすのは純粋に嬉しいし、大切にしたいのだ。
「………」
「………」
明良が口を開けたまま呆けた顔でこちらを見ていることに気づいた。それと同時に、今し方自分が言った台詞を脳内で反芻し、もう一つのことにも気づいた。
「あ、いや、違う――わけじゃないけど……」
「ええと……舞衣様……」
明良は苦笑いを浮かべつつ優しく諭すように言う。
「あまりそういう台詞を仰られると、大抵の方は勘違いをされますから……失礼ながら、控えた方がよろしいかと」
顔が熱くなった。こういう言い方をしてくるということは、明良から見ても恥ずかしい台詞だったということだ。
何より、そんな台詞を会話の流れで臆面もなく言ってしまった自分が恥ずかしい。
「ですけれど」
明良が一度言葉を区切り、続ける。舞衣は顔を熱くしながらもそれに耳を傾けた。
「照れていらっしゃる舞衣様も大変可愛らしいですよ」
「………しらない」
微笑ましく、幸せそうな顔でクスクス笑う明良。舞衣はそれから朝食を食べ終えて妹二人が起きてくるまでの間、その生優しい視線にさらされたまま過ごすこととなった。
※※※※※
「「ハッピーバースデー!」」
二発のクラッカーが鳴らされ、パンッという軽快な音と紙テープが空中に舞う。
舞衣は妹の美結、詩織の二人から盛大な誕生祝いを受けていた。
「誕生日おめでとう、舞衣姉」
「おめでとー」
「うん、ありがとう。美結、詩織」
クラッカー斉射を浴びた舞衣は満面の笑みで応えた。
柳瀬家の食卓では、夕食後の誕生日パーティーが開かれていた。生クリームでコーティングされた円筒状のケーキ、その上面の外縁に沿う形で等間隔でイチゴが配置されている。その隙間を埋めるように十三本の小さくカラフルな蝋燭に灯された火。舞衣は唇をすぼめ、フーッと息を蝋燭の火に吹きかけ、消した。
「はーい。じゃあこれ、あたしたちからのプレゼント!」
吹き消したことを確認した美結は、自分の椅子の下に隠していた紙袋をテーブルに置き、舞衣に差し出した。
「これね、私と、美結お姉ちゃんとお父さんとお母さんで選んだの」
横から詩織がキラキラした笑顔で言う。両親は仕事で今回は不在だが、せめてプレゼント選びくらいは、と考えてくれたのだろう。
「……何だろう」
舞衣は紙袋の中から包装紙とリボンでラッピングされた箱を取り出す。丁寧にそれを解き、中身を確認する。
「ええっと……手袋と耳当て?」
中には山吹色の毛糸の手袋と同色の耳当てが入っていた。材質や繊維の緻密さからかなりの値段のものだと舞衣は一目で理解する。
「うん、寒さがひどくなるから、ちゃんと暖かくしないといけないって」
「ねえねえ、それ着けてみて」
詩織に促され、舞衣は両手と両耳にそれらを装着する。外気のほとんどが遮断され、じんわりと熱気が内側に籠ってくる感覚がある。これはかなり良い。デザインも実用性も申し分ないくらいだ。
「おおー、似合ってる」
「お姉ちゃん、可愛い……気に入ってくれた?」
「うん。大切に使うね。……って、あれ?」
舞衣はそこで、プレゼントの箱にまだ何か入っていることに気づいた。手のひらサイズの長方形の厚紙だ。そういえば、と舞衣は昨夜の明良との会話を思い出す。
『ですが、ご安心ください。旦那様と奥様からはプレゼントとメッセージを受け取っております』
確か彼はこんなことを言っていた。ということは、これは両親からのメッセージカードだろう。一応、舞衣は二人に尋ねてみる。
「ねえ、これって……」
「それ、お父さんとお母さんからって。何て書いてあるの? 私も詩織も初めて見るからさー」
「わかった、じゃあ読むね……」
舞衣は紙面に目を走らせ、少しずつカードに書かれた文章を朗読する。
「『舞衣、誕生日おめでとう。中学生になって初めての誕生日だから祝いに行きたかったけれど、どうしても仕事が外せなくてすまない。代わりに父さんと母さんの伝言を書いておく』」
この口調からして、書いているのは父のようだ。舞衣はそのまま読み進めていく。
「『刀使の仕事で怪我をしたり大変な目に遭わないだろうかと、父さんも母さんも心配している。くれぐれも体調に気をつけて、怪我をしないように過ごしてほしい。それを守ってくれれば言うことはない』」
それで文章は終わっていた。舞衣は胸が暖かくなるのを感じた。いつも無表情というか、家庭をあまり省みていないように感じてしまう父から真摯なメッセージを貰ったことに。
続けて、もう一枚。母のカードを手に取り、目を通す。
「ええと……」
母のメッセージはそこまで長くはなかった。文章の始めが『お母さんの言いたいことはお父さんが書いてくれたから、お母さんは一言で済ませますからね』だったからだ。舞衣はそれに続く文章を読み上げる。
「『舞衣ももうすぐ中学二年生なんだし、彼氏をお母さんたちに紹介――』……って、ええっ!?」
舞衣はカードを落としてしまいそうなほど動揺し、目が泳いでしまう。因みに、残りの文章は『――してね。何なら、結婚の挨拶に来てもらってもいいから』だった。流石に舞衣に残りを読むだけの勇気はなかった。
「え? 舞衣姉、彼氏いんの?」
「す……すっごい……お姉ちゃん、オトナだぁー」
「ちちちっ、違うから! 私はまだ明良くんとは――」
「誰も明良さんと、とは言ってないけど……」
「じゃなくて! 彼氏とかはいないよ。これは『出来たときに』ってこと!」
何故か無意識の内に彼氏という単語から明良が連想されてしまったが、慌てて掻き消した。
「というか、そういえば……」
ここで気づく。今し方舞衣が口にした人物、明良がいないのだ。先程リビングで夕食の後片付けをしていたが、それが終わるとすぐに『少し外しますね』と別室へと移動したのだ。
そうして彼がいなくなってもう一時間半は経つ。彼の場合、一時間以上も開ける際に『少し』とは言わない。せいぜい五分か十分くらいかと思っていたが、少々間が長い気がした。
「明良くん、今何してるんだろう」
「明良さんなら、もう戻って……いや、舞衣姉の方から行ってあげたら? 多分休憩してるときの部屋にいるから」
「え? 美結、知ってるの?」
「うん。あたしと詩織は知ってるよ。だからほら、舞衣姉も早く」
舞衣はよくわからないまま席を立ち、件の部屋に向かうことにした。そうしてリビングから出ようとしたところで、詩織に呼び止められる。
「お姉ちゃん、これ、忘れ物」
詩織の左手には舞衣の学生用鞄。詩織は小さな手でその中を漁り、直方体の箱を取り出して舞衣に手渡す。誕生日プレゼントと同様に包装紙とリボンが使われているが、プレゼントの箱よりいくらか小さい。
「ありがとう、詩織。ちゃんと渡してくるね」
「うん!」
舞衣は二人の妹に見送られ、部屋から出ていった。
そして、部屋に静寂が訪れる。それを即座に破ったのは美結の大きなため息だった。
「あー、大丈夫かなー。舞衣姉も明良さんも」
「だ、大丈夫だよ。明良さん、もうちょっとで出来るって言ってたから」
「……ならいいけど」
美結は椅子に座ったまま机に顔を突っ伏して、椅子の下にあるもう一つの紙袋をテーブルの上に置く。そこから、二つの箱を取り出す。舞衣が持っていったものとほぼ同じ大きさと、同系統の細工が施された箱だ。美結はそれを自分と詩織の前に置いた。
「あたしたちも作ったけど、まあ、最初は舞衣姉に譲らないとねー」
「うん。あの二人、すっごくお似合いだもんね」
「だよねー」
※※※※※
舞衣はリビングから廊下一つ挟んだ部屋、使用人用の休憩室の扉をノックする。
「明良くん、いる?」
中からは『……はい、何か御用でしょうか?』と返事が返ってくる。
「ちょっと入っていいかな?」
舞衣が話を切り出すと扉は即座に開かれた。当然、舞衣の正面には明良が立っている。
「お入りください。丁度、私も舞衣様にお話と、それからお渡ししたいものがありまして」
「うん。じゃあ入るね」
休憩室は簡素な作りの部屋だった。部屋の真ん中に備え付けられたテーブルと取り囲むように置かれた六つの椅子。部屋の隅にはウォーターサーバーと小型冷蔵庫。その対角線上には仮眠用の簡易ベッドがある。
舞衣は明良に言われた位置に腰掛けると、その対面の椅子に明良が腰掛ける。
「明良くんの話が先でいいよ。何?」
「では、私から話させていただきますね」
明良は一度咳払いをして声を整えると、礼儀正しい所作で話し始めた。
「まずは、舞衣様。お誕生日おめでとうございます。今年で十三歳になられましたね」
舞衣は美結と詩織にしたように「ありがとう」と返す。
「それでですね……ご家族の方々からはもうプレゼントをいただいたと思うのですが……」
「うん、貰ったよ」
「私からもプレゼントがございます。こちらをどうぞ」
明良は部屋の端の机に置かれている箱を持ち、対面側から舞衣のいる方へと移動し、手渡してきた。
「開けてもいい?」
「はい、勿論」
箱を開けると、中には鮮やかな赤い色の塊が敷き詰められていた。中から引っ張り出してみると、それは帯状の長い編み物だとわかる。
「これ……マフラー」
「はい。以前の舞衣様のものを見たとき、かなり傷んでほつれていたようでしたので……新しいものを」
舞衣は珍しそうにそのマフラーを眺めていると、視界に何やら見慣れないものが入った。明良の座っていた席――その横の席の椅子が少し出ていて、その椅子の上に毛糸玉と手編み用の棒が置かれている。
「……これってもしかして、明良くんの手作り?」
「……え?」
明良が珍しくドキッとした顔をする。
「そ、その……何か問題があったのでしょうか?」
「そうじゃなくて、ほら、あそこに毛糸玉とかがあるから……」
「あ……不覚です」
明良は舞衣の指差した方向を向いた瞬間、苦笑いして顔を伏せた。
「はい……それは私の手作りのものです。申し訳ありません、隠すつもりはなかったのですが」
「いいよ。別に怒ってるとかじゃないから。むしろ、手作りでここまで出来るのってすごいと思うよ」
これは純粋にそう思えた。正直、あれらの物証がなければこれを既製品と信じて疑わなかっただろう。それくらい出来が良い。
「あんなところに置いてるってことは、晩ご飯の後も作ってたの?」
「最後の工程をどうしても終わらせておきたかったので……」
「頑張ったんだね、嬉しいなあ……」
「その……無理をして使っていただかなくても結構ですよ。お気持ちだけでも私は十分すぎるくらいですので」
明良は恥ずかしそうに口元に手を当てて言う。舞衣は首を左右に振ってそれに答えた。
「そんなことないよ。ちゃんと使うから。それに、無理なんかしてないよ」
「……ありがとうございます」
舞衣は明良からのプレゼントの話が一区切りついたところで、今度は自分の話に移る。
「じゃあ、今度は私の番」
舞衣は立ち上がり、明良に向き合いながら手に持っている箱を明良に差し出す。明良は不思議そうな顔で箱と舞衣を交互に見ていた。
「舞衣様、これは……何でしょうか?」
「何って……今日はバレンタインデーでもあるんだよ? だからこれ、明良くんに」
そう。本日二月十四日は舞衣の誕生日だが、世間一般ではバレンタインデーと呼ばれる日だ。
日本では女性が意中の男性にチョコレートを渡す日。尤も、義理チョコと言って、渡す相手は恋愛関係にある間柄でなくとも、お世話になっている人や友達、家族などでも構わない。
「バレンタイン……デー……?」
「えっと……知らない? バレンタインだよ?」
「ああ、確か……はい。そうですね。二月十四日ですから……確かに。すっかり忘れていました」
明良は古い記憶の引き出しの奥からメモを引っ張り出したような仕草で言う。
「申し訳ありません。ここ最近は舞衣様のお誕生日のことで頭が一杯だったものですから、すっかり十四日の別の意味を忘れていました」
「そ、そうなんだ……」
彼の頭にはそれだけ舞衣の誕生日に対する情熱や刷り込みがあったのだろうか。考えるのが少し怖いくらいだ。
「とにかく、これ。明良くんへのバレンタインチョコだよ」
「私に……ですか……」
「うん。普段から私たち、お世話になってるから。そのお礼もかねて、ね」
舞衣は再度両手でしっかりと箱を握り、明良に差し出す。明良はそれを両手で受け取る――と思いきや、突然膝から崩れ落ちた。
「あ、明良くん!? どうしたの?」
「……う……うう……」
悶えるような、絞り出すような声。何かあったのか。突然気分でも悪くなったのかと思い彼の顔を覗きこむ。すると……
「……嬉しい、です」
歓喜に打ち震えた目と声色。口元は両手で覆われて見えないが、想像せずともその下は自然とわかった。
「そ、そんなに……?」
「はい……何分、生まれてから一度も、誰からもバレンタインチョコを貰ったことがなかったので……」
「え? そうなの?」
かなり意外だった。彼のような男性なら、放っておいても女性の方から渡してきそうなものだと思っていたからだ。そうでなくとも、義理チョコを女性の友達や家族から貰うことくらいは大抵の男性に経験がありそうなものだが。
「あ、その……家の方針で、そういった関わりは控えるように言われていまして。それで……」
明良は喜びつつも自嘲した顔で説明する。家の方針とは言っても、バレンタインチョコを断つというのは少々やり過ぎだと舞衣には思えた。
憐憫ではないが、せめてバレンタインデーを楽しむことくらいは彼に与えられてしかるべき権利だろう。舞衣はそういう意思を込めて明良にチョコの入った箱を渡す。明良は立ち上がって今度こそそれを受け取った。
「本当にありがとうございます。人生初のバレンタインチョコを舞衣様からいただけるだなんて、光栄です」
「もう……大袈裟だなあ」
明良は首を左右に振ってチョコの入った箱を胸に抱く。
「これは大切に保存しておきますね。劣化しないように管理を徹底します。それから、神棚に置いて毎朝お祈りも――」
「いや……勿体ないから食べて」
そこから先、どうするつもりなのか聞こうか一瞬迷ったが、聞かないことにした。聞いたら本気で詳しい説明をしそうだったからだ。
「良かったら、今食べて感想を聞かせてくれないかな?」
「……わかりました。では」
明良は丁寧にラッピングを解き、中を開ける。中身はチョコチップやチョコブラウニーを混ぜ込んだクッキーだ。
明良はその一枚を取り、口元に運ぶ。
「いただきます」
一口かじり、二口、三口と入れて一枚のクッキーが明良の口の中へと消える。明良はそれを何度か咀嚼し、飲み込んだ。
「どうかな……?」
「美味しいです、とても」
満面の笑みだ。普段の達観したものではなく、無邪気で飾り気のない純粋な笑み。間違いなく美味しいと思ってくれている。
「ほんと? よかったぁ……」
舞衣は安堵し、胸を撫で下ろす。
「良かったら、バレンタインデーとかじゃなくてもこっちに帰ってきたときに作るよ?」
「いえ、それは……遠慮しておきます」
「えっ……」
舞衣は何気なく提案したのだが、明良は困ったように逡巡してしまった。何故だろうか。やはり口に合わなかったのか。そんな一抹の不安がよぎるが、それはただの杞憂だと次の瞬間にわかった。
「あ、勘違いをなさらないでください。決して舞衣様のクッキーが嫌いではないのです。ただ……」
「ただ?」
「あまり食べてしまうと、幸せすぎておかしくなりそうで……今でも、どうにかなりそうなくらい嬉しいんです、私」
珍しく顔を赤くして弁明している明良を見ると、つられてこちらまで羞恥に呑まれてしまう。
まさかバレンタインチョコを渡したくらいでここまで波及するとは思わなかった。
「確か来月の……三月十四日がホワイトデー、というものらしいですね。バレンタインデーのお返しをするのだとか。私、このお返しは全身全霊を以て取り組む所存です。お楽しみに待っていてください」
「あはは……ほどほどにね」
喜んではくれたものの、こうしてすぐに舞衣へのお返しに思いを馳せるところはいつもの明良らしい。また来月に暴走しないか少し心配になってきた。
――来年も……
こうして日常を過ごしていれば、また次の二月十四日がやってくる。十四歳になった舞衣は、またこうして彼から誕生日プレゼントを受け取り、彼にバレンタインチョコを手渡すのだろうか。それがこれから何年も続いていく、と。
――来年は、本命のチョコを渡したりするのかなぁ……
ポツリと浮かんだそんな想い。何故そんな感情が前触れもなく浮上してきたのか。それにまだこのときの舞衣は気づくことはなかった。
さてさて、こっから本編はどうなっていくのか。ぶっちゃけこの後の本編の前にできて良かったです。
P.S.
明良の変態のくだり、いる? と思った方は今年のバレンタインチョコを誰から貰ったのか自己申告よろ。無論、リアルチョコです。
あのくだりは必要なんです(鋼の意思)
質問、感想はお気軽に!(*´∀`)つ