折神修が嫌いだった。
この世で最も嫌いで、憎むべき両親と同じ名字を名乗らなければならないことが。折神家に生まれたせいで人生を狂わされたことが。
ずっと、ずっと許せなかった。
殴られたときの痣や擦り傷、鞭打ちで皮膚が裂けて血だらけになった背中、あらぬ方向に曲げられた指、工具で抉られた肉。ほぼ毎日これらの痛みに付き合い続けていた。
痛みに慣れすぎて痛覚が鈍化した。
腐った肉、黴の生えたパン、濁った泥水が毎日のように部屋に届けられ、生きるために摂取し続けた。吐気、悪寒、頭痛を催した。
味覚がなくなった。
中身のない、感情を発散させるためだけの罵声、高圧的な説教、理不尽な罪の糾弾。殴られながら何度も聞いた。同じ内容のことを延々と繰り返し言っていた。
他人への興味がなくなった。
致命傷を避けようと殴られる箇所や角度、防御の方法などをコントロールする術を身に付けた。
反射神経が強化された。
閉じ込められている書斎にある本を片っ端から読んだ。一日に何冊も。読み書き、計算、物理学、天文学、化学、心理学、歴史、地理。著名な研究者の論文、研究資料などもあった。
執念と努力で全て理解し、記憶した。
目的のために身体を鍛え始めた。文献から様々な国の武術や格闘術、トレーニング方法を試し、独学で鍛練を続けた。
身体能力が人間の得られる範囲の限界にまで達した。
決行まであと数ヶ月……
その日にはこの家を出よう。もう計画は進めてある。
私から全てを奪った連中に思い知らせてやろう。地を這う虫に喉元を掻き切られる気分を。自分たちの行いの残虐さと、それに対する相応の罰を。
それを遂げたとき、私は新しい私として生まれ変わる。
私は、
※※※※※
その日、明良は舞草の拠点を離れ、長船女学園を訪れていた。事務室で事情を話すと、学長は学内の研究所にいると言われたので、そこへと向かう。
「失礼します」
研究所の扉を開けると、白衣を着た数人の研究員と一人の女性が目に入った。
「初めまして。黒木明良と申します。此方に真庭学長がいらっしゃるとお聞きしたのですが」
話を聞いた女性が明良の目の前に躍り出た。褐色の肌にくすんだ金髪、長身。明良の記憶にあるかつての彼女とは髪形や体格が変わっているが、面影はあった。
「私だ。朱音樣から話は聞いてるぞ。お前が黒木か」
「はい。本日は微力ながらご協力させていただきたいことがございまして……」
「まあ、立ち話もなんだ。向こうで座って話そう」
真庭学長は研究所の一角に設けられた休憩スペースのような場所に移動し、向かい合う椅子の一つに座るように促してきた。
「失礼します」
明良が一礼してから腰掛けると、真庭学長も目の前の椅子に腰掛けて一息つく。
「それで、協力するっていうのは具体的に何をするんだ?」
「まずは、こちらをご覧ください」
明良は手提げ鞄から一つの筒状のものを取り出し、テーブルの上に置いた。明良が盗んできたノロのアンプル、そのうちの一つだ。
真庭学長は一瞬だけ驚いたようだが、視線を明良の方へと移動させて目を細める。
「これを何処で手に入れた?」
「とある親切な女性に譲ってもらったんですよ」
「……ふざけているのか?」
「冗談です。刀剣類管理局の立入禁止区域から拝借しました。どうかご内密にお願いします」
真庭学長はアンプルを手に取り、色々な角度から観察する。ある程度観察し終えたところでアンプルをテーブルに置き、話を再開する。
「フリードマン博士から聞いたところ、長船女学院でノロの解析を行っているとのことでしたのでお伺いさせていただきました」
「つまり、これを解析に役立ててほしいと?」
「ええ」
真庭学長は多少訝しんではいるものの、自分にデメリットはないと理解し、アンプルを受け取った。
「ところで、話は変わりますが」
「何だ?」
「解析というのはどのようなことを行っているのですか? 差し支えなければ拝見させていただいてもよろしいでしょうか?」
「少しだけなら構わんが……」
真庭学長は渋々といった様子で明良を奥へ案内する。薬品や真新しい機器の匂いが鼻につくが、明良の視線は顕微鏡に接続された画面――その映像に釘付けになった。
「あの画面は……?」
「ああ、人工細胞とアンプルの中のノロを反応させてみたところ、あんな変化を起こしたんだ。ノロの浸食とは違う、言うなれば融合だ」
ノロは生物の肉体にとって極めて有害な物質だ。細胞を腐らせ、荒魂へと作り替えてしまう。
だが、画面上では人工細胞を包み込むようにノロが広がり、別種の物質へと変化しているのがわかった。
「人体と荒魂を融合させ、身体能力を向上させる技術ですか……」
――馬鹿らしい。
親衛隊の面々の顔が思い浮かぶが、溜め息しか出てこない。そんな方法を取ることのリスクを十分に理解できていないのだろう、と明良は推測した。
「……?」
ふと、真庭学長が手に持っているアンプルの中身が一瞬だけ蠢き、それが目に留まる。遠目なので正確には視認できないが、赤黒い液体の中にギラリと光る眼が見えたような気がした。そう、可奈美が見たというタギツヒメの眼もこれなのかもしれない。
「真庭学長」
「ん?」
「貴重なお時間を割いてしまい申し訳ありません。私はこれで失礼致します。本日はありがとうございました」
「ああ、じゃあな」
明良が一礼すると真庭学長は軽く会釈して先程の作業に戻っていった。
「さて……」
先程の蠢いた眼。明良は嫌な予感が現実のものになっていないことを祈りながら駐車場へと歩いていった。
※※※※※
「……これは」
やや急いで舞草の里へと戻ってきた明良だったが、里の中の騒がしさに少し理解が追いつかなかった。
街灯が消え、代わりに灯篭に灯された火が道を照らしている。広場に屋台が立ち並び、大勢の人々がひしめいている。
明良は駐車場に車を停め、境内の方へと向かった。明良が境内へと続く階段を上りきると同時にその場にいた見知った六つの顔がこちらを向いた。
「帰ってきたんだ、お帰り、明良くん」
「舞衣様……皆様、その格好は……」
六人の服装は伍箇伝の制服ではなく、青、橙、桃などの鮮やかな色の浴衣だった。今日の祭りに合わせて誂えられたものだろう。
「フリードマンさんが用意してくれたんだ! どうかな? 姫和ちゃんのとか凄く似合ってると思うんだけど」
「何で私が……ま、まあ悪くないとは思うが……」
「おいおい、ヒヨヨンはエターナル胸ペッタンなんだからそりゃあ似合うだろ。和服の似合う体系ってやつだな」
「はぁ!?」
可奈美に誉められた姫和は、恒例のエターナルイジリに激昂する。
「皆様、とてもよくお似合いですよ。可愛らしくて華やかだと思います」
「おー、サンクス、アキラリン!」
「……ありがとう、明良」
エレンと沙耶香は明良からの賛辞に微笑んで答える。そんな賑やかで微笑ましい空間だった。
「ねえ、明良くん。これから舞の奉納があるらしいんだけど、明良くんも一緒にどうかな?」
舞衣が境内横の四角形の壇を指差す。参拝客や儀式の主催者たちが集まっている。
「はい、ぜひご一緒させてください」
七人が観客席の最後部席に座ると、その横にフリードマンが座る。やがて席が一杯になると奥の空間で奉納の儀が執り行われ始めた。
御刀を持った刀使二名が華麗な儀式剣舞を披露し、それに合わせて奥の間の観音開きが開かれ、小さな木製の箱が表れる。
「あの御神体……何が入ってるんだろう」
ふと、可奈美が小声で呟く。
「ノロだよ」
聞こえていたのか、フリードマンが答えた。明良とフリードマン以外は大なり小なり驚いている。
「古来からのノロの管理方法としては、細かく分離させて日本各所の社に祀って保管する、というのが安全かつノロのためにもなると言われていますね」
明良が付け足すと、フリードマンは可奈美の方を向きながら質問する。
「可奈美くんはノロがどうやって生まれるか知っているかい?」
「え? えっと……」
「珠鋼を加工して御刀を精錬する際に分離されて発生する不純物――ですよね?」
答えに詰まった可奈美の後ろから舞衣が代わりに答える。
「その通りです、舞衣様。流石ですね」
「あれ? でも、ノロを放置しておくと荒魂になるから折神家が集めて管理してるんじゃ……」
可奈美が新たな疑問に頭を悩ませるが、フリードマンがそれを簡単に払った。
「うん、不正解だね」
「うええっ!?」
思わず大声を出してしまう可奈美。当然、その声は近くの席の人々にも聞こえているわけで、一斉に視線が可奈美の元へ集まる。あたふたと慌てる可奈美だが、フリードマンは優しく笑い「場所を移そうか」と七人を壇上の外へと促した。
「ここでいいだろう」
境内の真ん中では篝火が焚かれており、木や藁の焼ける匂い、パチパチと火花の散る音、夕闇を照らすオレンジ色の暖かな光が堂々とした存在感を見せている。
移動する途中、一行に気付いた朱音も話しに加わるべく八人に合流。フリードマンは話し始めた。
「明治の終わり頃、ノロの管理体制は変革された。ノロを日本の各地に分散させておくよりも折神家に一局集中させて管理した方が合理的かつ安全だとね」
「しかし、ノロが一ヶ所に大量に集まればスペクトラム化――荒魂の発生に繋がります。ですから、折神家はノロの量を厳密に調整し続けていたんです。ですが、それを崩壊させる出来事がありました」
「戦争……つまり、ノロの軍事利用ですね」
フリードマン、朱音が説明する途中で明良が口を挟んだ。
「刀使の方々が御刀の神性によって隠世に干渉し、様々な超自然現象を起こしていることに人々は眼をつけた。ノロについて詳しく解析し、科学兵器や人体強化の技術として利用するために。そうですね?」
「ああ、そうだ。そして、戦後に米軍が研究に加わりノロの収集が加速した。その結果、二十年前の災厄が起きてしまったんだ」
「どういうことだ?」
姫和が問う。フリードマンはやや俯きながら答えた。明良にはわずかだがその顔に後悔や憂いの感情が込められているように見えた。
「あの災厄は、ノロをアメリカ本国に送るために輸送用タンカーに満載した結果、起きたことなんだ。膨大な量のノロが結合し、彼らの眠りを覚まし、怒りの業火に薪をくべてしまったんだ」
フリードマンは当時そのタンカーに乗船していたらしく、タギツヒメの誕生の瞬間を目撃している。この言葉には言い知れないほどの感情が込められているはずだ。
「先程の舞衣くんの説明の通り、ノロは人々が御刀を手にしたことで生み出された犠牲者だ。だから、本来はこうして丁重に祀り、敬うべきだと私は思っている」
「犠牲者……荒魂が……だと?」
姫和の眉間に皺が寄る。姫和にとってタギツヒメは自分の母親を死に追いやった存在だ。その荒魂が被害を被っている側であるなど彼女に納得させるのは困難だろう。
「二十年前の災厄は、多くの人々の傲慢さのせいで引き起こされたものだ。だから、せめて我々の手でそれに終止符を打たねばならない」
「……そうでしょうか?」
酷く冷たい声が鋭く耳に刺さった。声の主――明良はフリードマンを静かに睨んでいる。その口元には微かな笑みがあるが、眼は氷のように冷えている。
「どういう意味だい?」
「大勢でなくとも……たとえ一人であっても、引き金を引きさえすれば悲劇は起こります。歴史はそうやって戦争を刻んでいる」
いつにない、普段の穏やかで人畜無害な彼の表情とはとても思えなかった。人が豹変することなど知っているはずなのに、目の当たりにしても到底信頼できない。舞衣は絡まった毛糸玉のような状態の脳内を整理しつつ、明良に歩み寄る。
「あ、明良……くん?」
「……申し訳ありませんでした。つい、戯れ言を。私はこれで失礼致します」
明良は事務的に謝罪と一礼を済ませ、境内から続く階段へと身体を回す。
それを呼び止める人物が一人いた。朱音だ。
「待ってください、修にいさ――」
朱音は叫んでから口を手で覆う。顔が陰り、明良の背中から眼をそらしてしまう。明良は思わず振り向きそうになったが、手前で思い留まり無言で立ち去った。
※※※※※
「……」
明良は広間の座敷に一人踏み入り、明かりのない畳の間を通り過ぎて縁側に足を運んだ。縁側に腰掛け、足を庭の方へと放る。
そして、煌びやかでありながら何処か空虚にも見える黒い星空を見上げる。
――修兄様、ですか。やはりしっくりきませんね。
先程朱音に呼び止められそうになった際に彼女の放った名前。彼女にとっては仕方ないと思いつつも、心中では吐き気がしそうなほど忌み嫌っているその名が明良の手足や臓腑に至るまでを浸食していた。
「はは……」
知らず知らずの内に口から乾いた笑い声がこぼれていた。過去に捨てて、破り去った名前に未練や情などないと思っていたのに。無関心、無理解でいいと思っていたのに。
今更その名を呼ぶ者が現れたせいで閉じていた蓋が開きかけているようだ。くだらない。こんなことにこだわったところで一文の得もないどころか、仕事の邪魔にしかならないことはわかっている。
「舞衣様……情けないですよね、こんな私は」
自分でも聞き取れないほど小さな声。弱い隙間風が通り抜ける程度のものだ。
だが、思わぬところでそれに呼応する声があった。
「情けないって、何が?」
「――!?」
背後から。何度も何度も何度も聞いた彼女の――舞衣の声だ。慌てて振り向くと縁側に座る明良を見下ろす形で舞衣が立っていた。服装は浴衣から美濃関学院の制服に着替えている。
予想以上に心理的なストレスが大きかったのだろう。部屋に誰かが入ってくる気配に全く気がつかなかった。
「ま、舞衣様…いえ、今のはただの独り言でして。気になさらないでください」
明良は立ち上がって弁明する。あの程度の声量ならば聞き間違えで済ませられる。そう踏んだが、舞衣は全く表情を崩さずに明良の顔を見上げながら言った。
「明良くん、もうやめて」
「……舞衣様?」
「知ってるよ。明良くんが隠し事してること。私の知らないところで色々なことしてて、沢山考えて、戦ってること」
舞衣の表情や声色からは明らかな確信が感じられた。冗談やハッタリとは思えない。それに、元々舞衣はこんなことで平気で嘘をつくような人間ではない。それは明良が一番よく知っていることだ。
「さっき、朱音様に『修兄様』って呼ばれてた。どういうことなの? 朱音様と明良くんはどういう関係なの? 何で荒魂の力が使えるの? どうして……!?」
「それは……」
不味い。舞衣は間違いなく朱音や姫和から情報を得ている。知らぬ存ぜぬを貫くのも適当な真実を捏造するのも難しい。今は言えない、というべきか。だがそれではいずれ知られることになる。口車に乗せて、それから――
「やめて」
思考を網のように張り巡らせていたはずなのに、舞衣のこの一言によって容易く断ち切られる。
「嘘をつくのがダメだなんて言わない。誰にだって隠したいことも知られたくないこともあるから。けど、明良くんのつこうとしている嘘は誰も幸せにしないと思う。明良くん自身も」
「……」
何か言おうと思ったが、口が縫い合わされたように開かない。ここでどんな言い訳をしても逆効果だとわかっているからだろうか。
「明良くんが苦しんで、辛そうにしてるのに私が何もしない、何もできないなんて嫌なの。だから――」
舞衣の潤んだ瞳、哀しみと決意の込められた相貌は明良に何の反論も許さない。
「今だけは嘘はつかないで。ちゃんと明良くんのことを知って、ちゃんと力になってあげたいから」
不思議と、いや、明良にとっては清々しいと思えるほど流麗に舞衣の言葉が心に納まる。そのせいか、ばつが悪そうにしかめられていた自分の顔が緩んで穏やかになるのがわかった。
「……ずっと、貴女にはいつか話をしなければと思っていました」
たどたどしいが、ゆっくりと言葉を紡いで本心を吐露していく。
「ですが私は、せめてあと一日、あと一日と延々と先伸ばしにしていたんです。本当は貴女に知られたくないという気持ちが何処かにあったんでしょうね」
「明良くん、それじゃあ……」
「はい。全てお話しします」
※※※※
数分後、広間には明良と舞衣、可奈美、姫和、沙耶香、薫、エレン、朱音、フリードマンの九人が集まっていた。
事前に大体の事情は教えてある。明良は全員が揃ったところで重い口を何とか開き、話をする。
「お忙しい中、皆様に集まっていただいたのはとある重要な話をするためです」
明良以外の全員が固唾を呑んで次の言葉を待つ中、当の本人は何度も唇を舌で濡らしながら声を発した。
「私の正体についてです」
「!」
姫和は周りにもわかるほど動揺し眼を見開く。彼女の知りたかった話をこれからするのだ。
だが、明良は思っていた。この話を聞いたところで彼女が幸せになるとは限らないことを。
「さっき、明良さんが朱音様に呼ばれた名前、あれも関係あるの?」
「『修兄様』って呼ばれてた」
「でも、とてもブラザーには見えませんネ」
可奈美、沙耶香、エレンが早速疑問を口にした。これは朱音とフリードマン以外は気になっていた所だろう。
「はい。それは私の……昔の名前です」
「昔の? 改名でもしたのか?」
「まあ、そのようなものですね」
薫の素朴な疑問に自嘲気味な笑いがこぼれる明良。
「私の二十年前までの名前は……折神修」
「折神……だと!?」
姫和が眼を丸くして明良と朱音を交互に見る。
そう、折神という名字と兄としての呼称から導き出される答えは――
「私は折神紫の双子の弟であり、折神朱音の兄に当たります」
呆気に取られる舞衣たち六人だが、舞衣は動揺しながらも問いを投げ掛けてきた。
「で、でも、明良くんはそんな年齢に見えないよ。私たちより少し上くらいじゃ……」
舞衣の問いは尤もだ。明良が紫の双子の弟ならば年齢は三十代後半になる。今の明良の外見は二十歳前後が精々だ。
だが、それは順当に歳を重ねている場合の話だ。明良にはそんな常識が通じない。
「確かに、その通りです。私の肉体年齢は十七歳で止まっていますから」
「……どういう、こと?」
舞衣は理解が追い付かずに表情が何度も転がっている。
「いや、待て」
「十条さん……何でしょうか?」
「折神紫の双子の弟と言ったな? 確か私の記憶では、折神家本家の直系には男子はいない。そうじゃなかったか?」
「そうなんですか?」
可奈美が朱音に問う。朱音は苦々しく、ただ頷いた。彼女の口からは詳しいことは言いたくないらしい。
「じゃあ、何で明良さんは……」
「可奈美さん、まずはそのお話から説明いたします」
明良は一度眼を閉じ、改めて覚悟を決める。今から話すことは黒木明良という人間が作られるまでの過程の話。十七年という時間をかけて作られた、壊れた人形の話だ。口にするのはあまりにも憚られる。だが、話さないわけにはいかない。
話して、聞いてもらわなければならないのだ。それが彼女たちに対して執るべき最善の行動であり、果たすべき義理だ。そう信じて、黒木明良は
「私は……折神家に産まれた非嫡出子――折神家の忌み子です」
次回は明良の過去、その正体を説明します。楽しみに待っていてくれた方がいらっしゃいましたら、長らくお待たせいたしました。次回をお楽しみにしていてください。ではでは。
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