刀使ノ巫女 -ただの柳瀬家の執事-   作:ソード.

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予想以上に長い……それに反して、進みが遅いなあ。

今回は薫視点です。


第52話 現実

「はあ、刀使やめてえ」

 

静けさが支配する森林を駆け抜けるように、その気だるげな声が響く。益子薫はトボトボと土を踏みしめながら目の前を歩く白髪の少女――糸見沙耶香の後を歩いていた。

 

「薫……どうしたの?」

 

「なーんかオレばっか働かされてる気がするんだヨナー」

 

タギツヒメとの戦いの一件から数ヶ月。この間に日本各地での荒魂の出現率は激増した。そのため、必然的に刀使が任務に駆り出される頻度も上がったのだが、その中でも薫はかれこれ四ヶ月もの間無休でいくつもの地方を奔走している。尤も、当の本人は今まで任務を何度もバックレていたため、自業自得とも言えるのだが。

 

「な? ねねもそう思うよな」

 

「ねー?……ね、ねー!」

 

「……何か歯切れ悪いな」

 

薫の頭の上で疑問や逡巡に顔を悩ませるながらも頷くねねだったが、薫にとっては複雑なものでしかない。

 

「薫」

 

「何だよ、沙耶香」

 

「今は、任務に集中」

 

「あーもー、真面目だな」

 

前を歩く沙耶香は立ち止まり、薫の方を振り返って言う。常に冷静沈着、与えられた任務は忠実にこなす沙耶香と無気力さを体現したような薫。両者のモチベーションの差はもはや語るべくもなかった。

 

「ねねっ!」

 

そんな沙耶香から諌められたことで若干バツが悪そうになる薫だったが、彼女の頭上に乗るねねは突然足を踏み切り、沙耶香の肩に乗り移った。

 

「お、おい、ねね」

 

「ねねぇ……」

 

「? どうしたの、ねね……?」

 

ねねは、沙耶香の肩の上に乗ったまま顔を綻ばせる。これはねねが人になついているときの表情だ。

 

「はあ、ほんと、同じクール系でもエターナル・ヒヨヨン・ザ・ナイペッタンならからかったりできんのになぁ……」

 

ここにはいない姫和の存在に嘆く。彼女は、その薄い胸元についてイジり倒す度に期待通りの反応を返してくれるのだ。やはり、会話での掛け合いを楽しめる相手でなければ面白くない。

と、そんな薫にある一つの妙案が浮かんだ。

 

「そうだ。この写真を……」

 

薫はまず、沙耶香と彼女の肩に乗るねねの二人の様子を正面から携帯端末のカメラで撮影する。そして、メッセージアプリを立ち上げて姫和に対して送る文面を入力し始めた。

 

「『ねねが沙耶香になついた。つまり、沙耶香はヒヨヨンのホライズン胸より未来があるみたいだぞ⭐』……送信っと」

 

ついでに今し方撮影した画像も添付し、文章を送信した。どんな返しが来るかワクワクしていた薫に、直ぐ様姫和からの返信が届いた。

 

『しょうちしたきさまはきる』

 

漢字変換も句読点もない簡素なものだが、それゆえに彼女の怒りがひしひしと伝わってくる文章。そして、薫が送信してから返信が来るまで、その間わずか1秒程度。

 

「やっぱこうでないとなー!」

 

携帯端末越しとはいえ、やはりこのやりとりは格別だ。まあ、後日会った際に斬りかかられるかどうかは問題だが。

 

「ねねっ?」

 

薫が姫和とのやりとりにガッツポーズをかましていたところで、沙耶香の肩に乗るねねが何やら茂みの方を指差した。

 

「?」

 

どうしたのだろう、と首をかしげているとねねが示した茂みからガサッと何か動く音が聞こえた。

 

「ようやくお出ましか」

 

「……」

 

ねねの反応からして、目的の荒魂だろう。薫と沙耶香は二人とも抜刀し、茂みの奥に注意を集中させる。

やがて、茂みに潜む荒魂の姿が明らかになり……

 

「へ?」

 

なりはしたが、その姿は敵と評するにはあまりにも小さく可愛らしいものだった。

 

「……なんだこりゃ」

 

大きさはねねと同程度。外形はリスに近く、とてもではないが凶悪な荒魂には見えないし、敵意も感じられない。遅れて反応したスペクトラムファインダーの通知音も馬鹿らしく聞こえてしまった。

 

「こいつか、この辺りを騒がせてる荒魂って。スペクトラムファインダーどころか、ねねでも察知できないわけだ」

 

薫は拍子抜けすると同時に安心もした。こんな荒魂なら討伐の必要はないだろう。これ以上人里に下りてこなければ特に問題はない。

 

「さて、さっさと山奥に返して――」

 

だが、薫の横を風のように駆け抜ける一人の影があった。沙耶香だ。

 

「っ!!」

 

沙耶香は容赦なく、御刀を振り上げて荒魂に斬りかかろうとした。しかし、それに先回りして薫は荒魂を庇う形で沙耶香の斬撃を自分の御刀で防ぐ。

 

「勝手なことするんじゃねーよ」

 

自分でも意外なほど低く、それでいて冷え切った声が口から出た。沙耶香が憎いわけではない。ただ、薫にとってこの行いが容認できないだけだ。

 

「どうして? 荒魂は討たないと。それが刀使の仕事」

 

「ああ、そうだな。確かにお前は正しいよ、沙耶香」

 

沙耶香の言っていることは世間一般どころか、刀使ですら認める共通見解だ。今も昔も、刀使はそのために存在している。

それでも、薫にはそれが完全な答えだとは思えない。

 

「正しいけど、気に食わん」

 

「……え?」

 

「見ろよ、こいつを」

 

薫は沙耶香と刀を合わせながら、荒魂の方へと沙耶香の目を向けさせる。その荒魂の傍らには、すり寄り、笑顔で話すねねの姿があった。

 

「ねねはこいつに敵意を感じてない。それが何よりの証だろ」

 

「荒魂は荒魂、放置していたら人に危害を加えるかもしれない。だから、早く斬らないと」

 

「そうか、そうかもな」

 

薫は一歩引いて沙耶香から離れる。そして、自分の御刀をねねに向ける。

 

「だったら、お前はねねと明良にも同じことを言うのか?」

 

「それは……」

 

「お前たちは荒魂で、いずれ人に危害を加えるかもしれないから、問答無用で殺されて当然だって。そう言うのか?」

 

ねねは荒魂であっても、穢れではない。人を害さず、共に生きることのできる存在だ。

明良は半分荒魂の人間だが、決して人の心を失っていない。大切な人のために努力し、身体を張って戦う意志と正義感を持っている。

二人とも荒魂に類する存在であることに違いはない。だが、同時に悪でもない。この二人と目の前にいる小さな一つの荒魂と、一体何が違うというのだ。

 

「お前に二人が斬れるのか?」

 

「……」

 

沙耶香は口ごもり、御刀を持つ手を下ろす。そして、御刀を鞘に納めてゆっくりと首を左右に振った。

 

「駄目。そんなことできない……絶対に、やりたくない」

 

哀しげに、噛み締めるように沙耶香は呟く。己の価値観が正しいと思っていて、なおかつ薫の言葉に心から納得してしまったがゆえの反応だろう。

 

「ねえ、薫」

 

「何だ?」

 

「私は……間違ってたの?」

 

「いんや、間違えてねーよ」

 

そうだ。沙耶香は間違えていたわけではない。恐らく、沙耶香があのまま荒魂を斬り祓っていたとしても誰も彼女を咎めない。むしろ、任務を達成した人物として評価されていたはずだ。

 

「ただ、何で刀使が荒魂を斬るのかってとこは考えないとな。じゃないと、道を踏み外すかもしれない」

 

「……まだ、よくわからない」

 

沙耶香は哀しげな目を伏せ、再び開く。その目にはもう悲痛の色は灯っていない。

 

「だから、よく考える」

 

「おう。今はそれで十分だ」

 

薫は笑顔でそれに応える。そもそも、一朝一夕で完全に理解できる考えではない。理解しようと努力してくれるという姿勢だけで嬉しいのだ。

 

「さて、こいつはどうするか」

 

「山から出られないようにする?」

 

「どうだろうな。まあ、まずは本部長に連絡して――」

 

薫は携帯端末を取り出そうとするが、それを甲高い声が制した。

 

「ねねーっ!!」

 

ねねだ。先程とは打って変わって、荒魂を睨み、全身の毛を逆立てている。

 

「……! まさか!」

 

薫の嫌な予感は的中した。荒魂の肉体がどんどん膨張し、リスくらいだった外見の印象はもはや感じられない。野生の象ほどの体躯は凶悪な荒魂そのものだ。

 

「嘘だろ……っ!」

 

「くっ……!」

 

荒魂の振り上げられた右手は薫と沙耶香の頭上に影を作り、やがて二人めがけて降り下ろされる。察知した二人は後方へ跳んで回避する。降り下ろされた右手が地面を割り、土と砂礫が宙に舞った。

 

「何故、急に……」

 

「さあな。だが、こうなったらもう四の五の言ってられねー」

 

薫は写シを体表に貼り、両手で御刀を握って荒魂に突進する。

 

――考えて、信じて、それが駄目だったときは誰よりも先にそいつの牙を受け、剣を向ける。

 

益子の刀使はそうやって何世代にも渡って荒魂と向き合ってきた。だから、今回も――

 

「オレが、ケジメをつける」

 

跳躍し、上段に御刀を振りかぶる。そのまま己の体重と御刀の重量を乗せ、一気に降り下ろす。

 

「きえー!!」

 

 

 

※※※※※

 

 

 

「隊長、糸見さん、どうもお疲れ様でした」

 

同じ部隊の眼鏡をかけた綾小路の刀使が二人に一礼する。

荒魂を討伐した後、別働隊の刀使とノロの回収班を呼んだ。現在はノロの回収作業に入っている。

 

「後は我々で作業を済ませますので、お二人は先に戻ってお休みになられてください」

 

「お、いいのか? よーし、行くぞ沙耶香」

 

「……薫、切り替え早い」

 

「休めるからな」

 

薫はさっさとその場を退散し、下山を始めた。沙耶香と彼女の頭に乗るねねも、薫の後ろを歩く形で下山している。

 

「薫、大丈夫だったの?」

 

「ん? 何がだ?」

 

「ノロを奪う刀使がいるって……」

 

「ああ、それか。けどまあ、こんな山奥にあんな少ないノロを奪いに来ないだろ」

 

犯人の正確な狙いはまだ不明だが、あんな少量を奪うにしてはリスクが高すぎる。放っておいても問題はないだろう。

 

「そうつれないことを言わずに、戻ってやったらどうだ?」

 

そんな安心感を叩き消すかのごとく、二人の背後から不気味な声が投げ掛けられた。

 

「誰だ!」

 

薫と沙耶香は同時に振り返り、御刀に手をかける。だが、声の主はいつの間にか距離をとっており、間合いの外に立っていた。

 

「少しからかっただけでそこまで警戒するとはな」

 

「そりゃするだろ。明良に言われたんだ、緋色の装束の男(お前)に会ったら一秒たりとも警戒を緩めるなってな」

 

そう。今二人の眼前に立っているのはフードを目深に被った緋装束の男。外見だけではない、相手を嘲るような口調や仕種も、明良から伝え聞いていた人物像と合致する。

 

「明良……そうか、あいつはもう伝えているんだな。仕事熱心なようで感心したよ」

 

「……お前、さっきのは一体どういうことだ? 戻った方がいいとか何とか」

 

「もうすぐ、件の刀使がお前たちのお仲間からノロを奪いに来る。だからわざわざ忠告に来てやってるんだ」

 

「どうして、そんなことがわかるの?」

 

沙耶香は訝しげに眉をひそめ、緋装束の男に問う。男は大きく溜め息をつき、答えた。

 

「……そんな問答をしている暇はないぞ」

 

「だったら、オレたちと一緒に来てもらおうか。その後でしっかり問答をすりゃあいい」

 

「拷問の間違いだろう? それに、俺はそんなことに従う義理はない」

 

薫と沙耶香は変わらず敵意を向け続ける。そんな状態が数十秒続いたが、その静寂はねねによって破られた。

 

「! ねねっ!」

 

ねねが慌てた様子で叫ぶ。目の前の男に向かってではない。先程まで薫たちがいた場所。ノロの回収作業を行っている場所だ。

薫は御刀を抜き、緋装束の男に向けて正眼に構える。

 

「くそっ! さっさとどけ! じゃないと――」

 

「言われなくてもどいてやる。足止めしに来たわけでもないからな」

 

緋装束の男は道の端に寄り、誘導するような所作で二人に道を譲った。

 

「沙耶香、行くぞ!」

 

「……わかった」

 

今はこの男よりも仲間の安否の方が優先だ。薫と沙耶香は警戒しつつも男の脇を通り、目的地へと駆け抜ける。

 

「おい、お前ら大丈夫か!?」

 

辿り着いた先では、刀使とノロの回収班が倒れ伏していた。薫が呼び掛けるが、返事がない。さらに、先程倒した荒魂のノロは跡形もなく消えていた。

 

「薫、ノロがどこにもない」

 

「もう盗られた後ってことかよ……」

 

幸い、外傷が見られないことから気絶しているだけのようだ。

 

「薫、あれ」

 

同じように被害者に駆け寄っていた沙耶香が別の方向を指し示す。その方向には、ある人物が立っている。

 

「……」

 

「やっぱり、お前だったか」

 

かつて見たことのある服装とは違う、黒いフード付きのコートに身を包んだ少女。だが、今の彼女の顔はフードによって隠れてはいない。

間違いなく、薫が予想していた通りの人物の顔だ。

 

「……獅童真希」

 

元親衛隊第一席。かつては薫たちと敵対していた刀使であり、タギツヒメとの一件以来消息不明となっていた。

 

「明良は、お前が犯人じゃないかもしれないって言ってた。その上で聞く。これはお前がやったのか?」

 

「……」

 

真希は答えない。今すぐにでも攻撃を仕掛けなかったのは、事実確認のためだ。しかし、真希が沈黙を貫くなら彼女が潔白であるとは到底思えない。

 

「答えてもらうからな」

 

この現状から鑑みるに、彼女が犯人である可能性は高い。容赦や手加減はしない方がいいだろう。

 

「……」

 

薫、真希、双方とも臨戦態勢に入る。どちらが先に斬りかかってもおかしくない状況だが、その場に別の役者が乱入した。

 

「いちいち争ってもらっては困るな」

 

「お前、さっきの……!」

 

現れたのはつい先刻山道で会った緋装束の男だ。男は薫と向き合う形で真希と薫の間に立つ。

 

「お前、獅童の仲間か?」

 

「仲間? 可笑しなことを言うんだな」

 

「違うんならそこをどけ」

 

小馬鹿にした様子で肩をすくめる男。薫は苛立ちを募らせ、男に御刀を向ける。

 

「断る。仲間でなくとも、俺の駒であることに違いはない」

 

「駒だと?」

 

「そうだ。ここでお前たちに真実から遠ざかってもらっては困るからな」

 

「遠ざかる? オレたちが間違ってるって言うのかよ?」

 

「ああ、見当違いなことをしてる」

 

「信じられるか」

 

こんな怪しげな男が敵の勢力ではないはずがない。薫たちを混乱させるために口車に乗せているのか。

 

「さっさと行け、獅童真希。お前のここでの役目は終わりだ」

 

「………」

 

真希は何も言わず、大地を蹴って跳躍する。そのまま目視できない距離まで瞬く間に消えていった。薫と沙耶香は止めようとしたものの、緋装束の男の威圧感に当てられて不用意に動けなかった。

 

「……そこのお前」

 

真希が消えた途端、男は沙耶香の方を指差した。いや、沙耶香ではない。彼女の頭に乗っているねねをだ。

 

「ね?」

 

「荒魂が刀使と馴れ合って家族ごっことは、見ていて滑稽だな」

 

「おい、何が言いたいんだ」

 

聞き捨てならない。荒魂と刀使の関係性という点だけではない。自分の大切な存在を見下すような物言いに、薫は睨みを利かせながら問い質す。

 

「実現もしない、仮初の関係など見るに堪えない。そう言ってる」

 

「……警告してやる、今謝れば痛い目は見ずに済むぞ」

 

「気遣いは有難いが、撤回する理由もないな」

 

薫は強めに脅しの言葉をかけるが、男は全く意にも介さない。

 

「お前たちは刀使と荒魂が争う必要のない世界を夢見ているのかもしれないが、そういう『妄想』は絵本の中だけにしておけ」

 

「………」

 

この男は強い。それは知っている。だが、そんなことは理由にならない。

 

「『現実』を思い知ったときに、果たして同じ『妄想』を吐けるか?」

 

「警告はしたからな……!」

 

我慢の限界だ。薫は地を足で踏み切って、一足跳びに緋装束の男に迫る。この距離と速度、間合い。回避も防御もできない。常識的に考えて直撃しないわけがない。

 

「そうだったな」

 

しかし、常識では計り知れない事態が起きた。防がれたわけでも、避けられたわけでもない。

 

「お前の警告など、どうでもいいから忘れていた」

 

御刀で斬る瞬間、目の前にいたはずの男が自分の左に立っていた。

速いとか目で追えないとか、そういう次元じゃない。気がついたら横にいた(、、、、、、、、、、)のだ。

 

「お前っ!!」

 

瞬時に横凪ぎに切り替えるが、それも不発だ。結果はほぼ変わらず、今度は右にいた。

 

「この距離だぞ、そんなに大声で怒鳴るな」

 

確信した。薫にとっては渾身の一撃を交えた戦いであっても、この男にとっては遊び以下だ。

 

「薫!」

 

タイミングを見計らっていたのか、男の油断を狙って沙耶香が横合いから斬り込む。

それも案の定と言うべきか、当たることはない。今度は沙耶香や薫の傍ではなく、十メートルほど離れた木に寄りかかっていた。

 

「安心しろ、俺はお前たちと戦いに来たわけじゃない」

 

「だったら、何が目的なんだよ」

 

「ただの挨拶回りだ。ついでに、お前たちが『どれくらい』なのかを見ておきたくてな」

 

「何の話だ?」

 

「こっちの話だ」

 

男は薫の言葉を吐き捨てるように一蹴する。

 

「まあいい。今のところ、お前たちは合格だ」

 

男は指を鳴らす。すると、男の背後の空間が歪み、その中へと彼の身体は吸い込まれ、消えた。

 

「お、おい! 待ちやがれ!」

 

「駄目、薫」

 

薫は思わず歪みに飛び込もうとしたが、沙耶香に肩を掴まれて引き留められる。

 

「今追い掛けても、勝てない。多分、二人がかりでも」

 

「……ああ、わかってる。わかってるけどよ」

 

自分の信念を侮辱されたことへのやるせなさは拭えない。また会ったら、今度こそ勝つ。薫はそう胸に誓った。

 

「しっかし、何者だったんだあいつは」

 

「わからない。けど、ねねが反応してなかったから……荒魂じゃない……?」

 

ねねは荒魂の持つ穢れを嗅ぎ取る能力を持っている。それゆえに、スペクトラムファインダーのような機器よりも正確な認識が可能だ。逆に言えば、ねねが反応しないということは荒魂ではないか、その荒魂の穢れが消えているか。そのどちらかとなる。

 

「ねねが騒いでないなら違うんだろうが……だったら、あんなに強いのは何でだろうな。わかるか、ねね?」

 

「ねねぇ……? ねねー……」

 

ねねは何度も試行錯誤する動きを見せる。ねねなりに頭を回しているのだろう。だが、一向にねねから確かな答えは返ってこなかった。




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