○ ○ ○
「この道を通るのは何年ぶりだろうな」
境也はノーブル学園の通学路である丘を歩いていた。
あれから沢山のことがあった。
ソルティレージュからは境也だけが帰国、央路はそのまま理亜の付き添いでそのまま学園を休学し残ることにした。
境也は進学を選択、理由としてはシルヴィと並び立つためであった。
シルヴィからはソルティレージュの権力でそれなりのポストを用意すると言っていたがシルヴィにおんぶにだっこではカッコ悪すぎる。
なので境也はシルヴィと並び立つ為に、一国の王女にふさわしい男に成る為に外交官という立場になることを決意した。
故に休学という形で留年ということは避けたかったので先に帰国したのだが、まあ、その時シルヴィが境也と一緒に学校に通いたいと駄々をこね、一悶着あったのは別の話。
元から偏差値が70を超えるノーブル学園に進学できるだけの学力は持っていたので普通に勉強し卒業、春に進学。
そして休学が開けたシルヴィたちは日本に帰ってきて一年繰り下がって卒業、その時にも色々あったのだがこれもまた別の機会に。
こうして順調に勉強を続けた境也はこの春から晴れて外交官になるのだ。
「本当に、色々あったな」
しみじみと呟きながら境也は掛けた眼鏡を人差し指で押し上げる。
そう、眼鏡を掛けていた。
特典を使ってから著しく視力が低下した。
それでも失明というわけではない、目が悪くなったぐらいだ、これぐらいの代償で済んで良かったのだろう、殆どはもう一人の境也が持って行ってくれた。
変わりに理亜は目がある程度まで回復、他の色も見えるようになったらしい。
「ここも変わらねえな」
足を止めたのはノーブル学園の門の前。
だが今日、用があるのはこちらではない。
ノーブル学園から道を外れたところにある湖、4人の始まりの湖に移動した。
もう既にそこには人が二人立っていた、一人は境也と同じぐらいの男性、そしてもう一人は。
「あ! きょうやさんだ!!」
境也を見つけた女の子が手を振る。
境也もそれに手を振り返し近づく。
「久しぶり、真理亜ちゃん」
「うん、久しぶり!!」
そう元気に返すのは央路と理亜の娘、真理亜。
そして。
「央路も久しぶり」
「おう久しぶりだな」
父親の央路。
あの時生まれた赤ん坊の真理亜。
彼女は元気に病気もなくすくすくと育ち、髪は央路、顔は理亜似に、今では5歳になっていた。
「外交官になるんだってな、おめでとう」
「ありがとう、でもここからだ、まだスタートラインに立っただけだ」
「やっぱりシルヴィの為?」
「あったり前だろ、というか央路も公務員の仕事大変じゃないのか?」
「まあ、大変だけど娘と妻の為だよ」
そう言い央路は真理亜を抱きかかえる。
「わわっ、パパ急にビックリさせないでよ」
「ごめんごめん、下そうか?」
「いや、このままがいい」
そう言い真理亜は央路に笑顔で微笑む、央路も笑顔で返す。
その光景を見る境也も微笑んだ。
「まだシルヴィと理亜は来ていないんだな」
「もうすぐ着くってさっき連絡来た」
そう言い、境也はスマホを取り出し確認する。
と。
「お、来たんじゃないか?」
央路が言い、境也はスマホから顔を上げる。
すると理亜とシルヴィが並んで歩いてくるのが見えた。
「お待たせ」
「待たせたな」
理亜とシルヴィの到着。
「ママ!!」
央路から飛び降りて理亜に駆け寄り抱き付く真理亜。
「こらこら、危ないでしょ」
「えへへへ、温かーい」
「もう…」
優しく注意しながらも微笑む理亜。
「もうすっかりソーマ君はお母さんね」
そう言いながら微笑むシルヴィ。
苗字が市松になった理亜なのだがそれでも呼び方は変わらない。
「さて」
4人が集まり声を掛ける央路。
この場所に呼び出したのは他でもない央路なのである。
「央路なんでここに呼び出したんだ?」
「同窓会ってのも兼ねてるんだけどちょっとやりたいことがあってさ」
そう言い央路が懐から取り出したのは指輪の箱。
「
「ああ」
境也たち4人の始まりの出来事、その原因の箱だ。
「確かこれを取りに行こうとして央路が溺れて」
「それを助けに行こうとしたシルヴィが足を滑らしてさらに溺れて」
「そして助けてくれたのが境也だったのよね」
4人は懐かしむように言う。
央路は箱を開け、そこに銀色のラブリッチェマークを入れた。
「銀なのか」
「いくら開けても金が出なくてな…」
そう言い央路は箱を閉める。
そしてそれを。
湖に放り投げる。
箱は大きな弧を描きながら。
ぽちゃん、と湖に落ちた。
それを5人は眺める。
「…もし誰かが金色の次に銀色を見つけたとしても」
理亜の言葉を央路が引き継ぐ。
「銀色の世界も綺麗に暮れていくさ」
「ああ」
二人は微笑む。
「その次の色は何にするかは…」
「その人次第さ」
「ええ、そうね」
シルヴィと境也も笑う。
「…さて!! 折角集まったんだ、どこか行こうぜ!!」
「お、良いな」
「あ、じゃあ私、新しく出来たメロンパン屋さんに行きたいのだけれど」
「シルヴィのメロンパン好きは変わっていないのな」
「まりあもメロンパン食べたい!!」
「ふふ、じゃあそのメロンパン屋さんに行こうか」
そうして5人は湖を後にする。
○ ○ ○
彼らの話はまだまだ続いていく。
次はどんな世界を彩るのだろうか。
だが、ここで一区切り。
そしてこの言葉を彼らに送ろう。
めでたしめでたし。
もう一つのゴールデンタイム 完
はい、と言うわけで「もう一つのゴールデンタイム」ここで完結とさせて頂きます。
正直、短編2,3話で終わるかなと思っていたらそんなことはなく大幅に長くなり、それを読んでくださった読者様には感謝以外の言葉が見つかりません!!
境也たちの物語はまだまだ続きますがそれでもきっと最後は綺麗に暮れていくだろうと思います。
読んで下さった読者様に最大の感謝を込めて。
ありがとうございました!!
シルヴィ「私たちも子供欲しいわ」
境也「ファッ!?」