○ ○ ○
境也が戻ってきた後、理亜がダウンして部屋に戻っていった。
境也とシルヴィ、央路、エルの4人は外の空気を吸いに外に出ていた。
「ソーマくん、お疲れのようだけれど、なにがあったのかしら」
「や、はは」
シルヴィの純粋な心配心を前に央路はごまかすしかなかった。
言えるわけがない、夜遅くまでプロレスごっこ(仮)をしてましたなんて。
「ゆうべはおたのしみでしたね」
「境也ァ!!」
「ゆうべ?」
純真無垢なシルヴィには伝わらなかったらしい。
「シルヴィ様は気にしなくて大丈夫です」
エルがシルヴィの思考にストップをかける。
「エルも分かるの? 私だけ仲間はずれはズルイわ、教えて頂戴!!」
「…おいこら、シルヴィが余計なことに興味を持ってしまったじゃねえか、どうしてくれんだ」
央路が境也を肘て突く。
「笑えばいいと思うよ」
「喧嘩売っとんのか」
まあまあ、と央路をなだめる境也。
「シルヴィはそのまま純真無垢で可愛いままで居てくれ」
「…可愛い、可愛いって言ってくれたぐへへ」
「おい、お姫様がしたらいけないような顔をしだしたぞ、どうするんだこれ」
「お、カレーみたいな雲見っけ」
「聞けよ!?」
と、こんな他愛のない話を続けていた。
「そう言えば、境也は一旦帰らないのか?」
「いや、流石に正月だから朝飯食べて帰ろうとしたんだがシルヴィに涙目で駄々こねられて引き留められた「やだやだやだ、境也も一緒に正月を過ごすの」って」
「あー、成程想像がつくな」
「だろ? ということで夜お前らと一緒に帰ることになった」
「すみません、坂巻殿、姫様のワガママに付き合わせてしまって」
「大丈夫っすよ、結局のところ俺もシルヴィたちと正月を過ごしたかったし」
「そう言ってくれると幸いです」
「ねえ境也!!、羽子板やりましょ羽子板」
そう言い、両手に羽子板を持ち境也に駆け寄るシルヴィ。
「いいけど、その羽子板一体どこから…」
「グェ」
疑問に思う境也の前にキュロちゃんが現れ、その口から羽子板が出てきた。
「…もうなんでもありだな」
○ ○ ○
そのまま4人で色々して過ごしていると。
「おいっすー」
玲奈が友達を大量に連れてきてやってきた。
「玲奈じゃない。あけましておめでとう」
「シルヴィ、あけおめことよろー」
玲奈とシルヴィが新年の挨拶をした。
「どうしたんだ? 高級牛肉ならもうないぞ」
「ワシが全て食べた」
「あっはっは、覚えてろよ」
割とガチで恨んでそうな声音であった。
「んで、今日はどうしたんだ」
「ツレにあたしがマジぽんでノーブルに通ってるってとこ、見せにきたの」
「あー、それで後ろの」
「そうそう」
どうやら有名人なシルヴィが居るからだろう、明らかに色めき立っていた。
エルさんとシルヴィが玲奈に連れられて向かっていった。
「理亜のこともあるし、ここはエルさんとシルヴィに任せて中に入るか」
「そうだな」
そう言い、境也と央路は中に入った。
○ ○ ○
中でソファーに座り温まっていると
外での会話が終わったのか玲奈だけ中に入ってきた。
「あ、はいこれお年玉」
そう言い、境也と央路に折り畳まれた紙を渡してきた。
「諭吉先生が書かれてないようだが」
「樋口先生も野口先生もないな」
「るわけないじゃん」
こいつらアホだろって顔で見てくる玲奈。
「何々、おみくじか、え、何でおみくじ」
境也の手には二枚の貝と共に小吉と書かれた紙が。
「そこの丘おりたところにあるちっちゃい神社、そこ自分で引くタイプじゃなくて誕生日でくじを取るタイプのおみくじだったからオーロとキョウちゃんの分も貰ってきてやったのだ」
「んな無駄なことを…」
「あーし小吉でさ。なんか悔しいじゃん。凶! ならともかく小吉って」
「まて、その考えで行くと俺も小吉なんだが」
「そうそう、連続で小吉って出た時は思わず叩きつけたくなったね」
「やめんか」
やれやれとくじの内容を見る。
小吉
大きな決断を迫られる年でしょう。
苦境にはひたすら耐えるが吉。
恋愛、周りに目を向けるべき。
ラッキーカラー 黄色
「…決断、ねぇ」
○ ○ ○
その後、玲奈たちも帰り、車が用意できるまで1時間のところで理亜の提案で学校に行くことになった。
エルは空気を読んで車で待つと言って外で待機。
境也たち幼馴染組4人は休日の校内、屋上へ。
「わああ……」
「今日はイイ感じに晴れてるな。元旦にコレはついてる」
もうすぐ沈むであろう太陽が照らす屋上。
その光景はとても幻想的であった。
「……」
「…境也、さっきから元気がないみたいだけど、どうしたんだ」
央路がシルヴィたちに聞こえないよう小声で問いかける。
「あー、うん。ちょっと考え事をな」
そう言い境也はシルヴィの横顔を見る。
「とっても綺麗…」
「イイ感じの変化だろ、シルヴィ」
「うん」
シルヴィから目を離し前を向く境也。
「何か悩んでるならいつでも聞いてやるから、お前っていっつもため込むからな、本当、そこは昔から変わらない」
「…はは、そん時は頼むよ」
落ちて行く夕日に目を細める4人。
「私からも、何か変化をあげたいわ。なにかないかしら」
シルヴィがそう提案する。
「そんな焦ることないだろまだ元旦なんだから」
「うーん、でもあのおみくじには従いたいのよ。あの神社の、あの神様たちの言うことなら」
ここで境也たちは気が付いた。
「前に言ってた、傷を治す神様の神社か」
失言だった。と苦笑するシルヴィ。
「ンな気ぃ使わなくても平気だよシルヴィ」
一瞬、暗くなりかけた空気を断ち切る理亜。
「もうオレの変化は予約入ってるから、主に苗字が」
「…ああ」
「え、マジか」
これには察した境也も驚いた。
「苗字が変わる… ソーマくんがソーマじゃなくなるということ?」
どうやらシルヴィはピンと来ていないようだ。
「シルヴィ、結婚したら苗字ってどうなる?」
境也が助け舟を出す。
「結婚!?」
流石にもう気が付いたようだ。
「わあああ市松!? 市松理亜になるのね? どうしましょどうしましょ、ソーマくんがイチくんになるのね!!」
「そこに食いつくのはお前だけだろうな」
理亜が苦笑する。
「と、言っても今年中には無理だけどさ。最短でも来年以降だ」
「籍はまだだけど、約束だけはってことで」
「そう。ふふ、うふふ」
嬉しそうに笑うシルヴィ。
「これでシルヴィの苗字も変わってくれたら更に大きな変化になるんだけどな」
そう言い、境也を見る理亜。
「なんで俺を見る」
「分かってる癖に…」
○ ○ ○
「さて、そろそろだな」
理亜がそう言う。
日が湖に突入しかけている。
4人、夕焼けに向き直る。
「ステキね」
「だろ。オレのとっておきのゴールデンタイムだぜ、感謝しろよ」
「ええ」
「……」
「……」
「これ以上の時間は望まない」
その理亜の一言に境也は右手を強く握りしめた。
何かを噛みしめるように。
だが、沈黙をやぶったのは。
「俺は…」
央路だった。
「俺は…足りないかな」
「おう、ろ…?」
呆然とその言葉を聞く境也。
「俺は…」
央路が言い終わる瞬間。
金色に混じって緑色の光が4人を照らした。
そして。
理亜が倒れた。
グリーン・フラアアアアッシュ!!!