ゴールデンタイム   作:みなたか

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今回長めです。




もう一つのゴールデンタイム 5

 ○ ○ ○ 

 

 

 「最近、境也に避けられてるぅ?」

 

 

 「ああ」

 

 

 時刻は夕方、場所は央路の部屋、央路はスマホを片手に今は地球の反対側にいる理亜と電話をしていた。

 

 

 「最近って言ってもここ3ヶ月ぐらいか、最初はちょっと喋らないなぁって思ってたけど1ヶ月超えたぐらいであ、これは明らか避けられてるなって思った」

 

 

 「1ヶ月ってお前… なんで早く言わないんだよ、というか3ヶ月ぐらい前ってことは丁度オレがソルティレージュに行ったぐらいか…、あ、そう言えばシルヴィも境也に電話しても最近出ないって言ってたな…」

 

 

 「その、理亜に心配かけるのもなって思って、なんとか話をしようと境也と近づくんだが、何時も直ぐに何処かに行くか居なくなっているんだよ」

 

 

 央路の声は辛そうな声だった。

 

 

 それもそうだ、仲の良かった幼馴染から急になんの前触れもなく避けられるのだから。

 

 

 「その、理亜は何か知らないか? 境也が避ける理由、玲奈やエルちゃんに聞いても理由が分からなくて、境也に直接聞こうにも会えないし…」

 

 

 「…多分、知ってる、理由じゃなくて原因の方は、多分」

 

 

 「本当か!?」

 

 

 「うぉ!! 急に大きな声出すなって」

 

 

 「わ、悪い、それで、その、境也が避ける理由って…」

 

 

 「だから言ったろ、理由じゃなくて原因の方だって、しかもそれが合ってるかどうかも知らないし……」

 

 

 「何も知らないよりはマシだ、教えてくれ、理亜」

 

 

 「ったく、分かったよ」

 

 

 ○ ○ ○ 

 

 

 授業終了のチャイムが鳴る。

 

 

 学年が上がっても特にエキスパートプランを何も受講していない境也はすぐに教室を出ようとする。

 

 

 何かから逃げるように。

 

 

 もう何度繰り返したか分からない光景だ。

 

 

 しかし、今日は違った。

 

 

 「ちょっと待ったァ!!」

 

 

 そう言い教室を出ようとした境也の前に立ちふさがったのは玲奈だった。

 

 

 「なんの用だ」

 

 

 正直誰とも話したくない境也はぶっきらぼうに言う。

 

 

 「いやー、特に用はないんだけどね」

 

 

 「は?」

 

 

 「しいて言うなら、頼まれた?」

 

 

 「俺が頼んだ、直ぐに教室を出るだろう境也を止めてくれって」

 

 

 そう言い、後ろから歩いてきたのは央路だった。

 

 

 境也は一瞬辛そうな顔をし目を逸らす。

 

 

 「…なんの用だ」

 

 

 「話がある」

 

 

 「そうか、俺はない」

 

 

 そう言い境也は玲奈の横を通り抜けようとしたが。

 

 

 「ちょっと、イチく、市松さんが話があるって言ってるじゃない」

 

 

 「城ケ崎もか」

 

 

 境也の進路上を塞いだのは城ケ崎だった、横には友人の愛子もいる。

 

 

 後ろを振り向くとそこにいたのは央路だけではなかった。

 

 

 菊千代に西郷、山本も境也を逃がさないように包囲を固めていた。

 

 

 「……」

 

 

 「理亜からあの日のことを教えてもらった」

 

 

 恐らくあの日とは理亜がソルティレージュに行った日だと境也は確信した。

 

 

 「多分、だけどその日からだよな、俺たちを避けるようになったの」

 

 

 「…それがどうした」

 

 

 「教えてくれ、境也に何がったのか、なんで俺たちを避けるのか」

 

 

 「……」

 

 

 それでも無視して境也は教室から出ようとした。

 

 

 「ちょっとキョウちゃん!!」

 

 

 それを玲奈が腕を掴んで止めた。 

 

 

 境也が玲奈を睨んだ、とても醒めた目で。

 

 

 驚いた、しかし玲奈は離さなかった。

 

 

 「何、睨んでも解決しないよ」

 

 

 「…ちっ」

 

 

 境也は玲奈の腕を無理やり振り払った。

 

 

 「きゃっ!!」

 

 

 振り払った拍子に玲奈がこけ、尻餅をついた。

 

 

 「いったぁ…」

 

 

 「玲奈!!」

 

 

 城ケ崎と愛子が玲奈に駆け寄る。

 

 

 境也は思わず自分の腕を見た。

 

 

 まるでこんなはずじゃないと言わんばかりに。

 

 

 そして視線を上げるとそこには境也を見る央路たちの視線。

 

 

 それに耐え切れなくなった境也は思わず教室から駆け出した。

 

 

 「ちょ、き、境也!!」

 

 

 焦る央路の声が聞こえる。

 

 

 だが境也は走る、廊下に誰かとぶつかりかけても走る。

 

 

 逃げるように。

 

 

 ○ ○ ○

 

 

 「はぁ…はぁ…」

 

 

 境也は走った、走った、走った、ただがむしゃらに何処に向かっているのかも分からず、とにかく走った。

 

 

 息がしんどくなり足を止めた。

 

 

 視線を上げたそこにあったのは湖、奇しくもたどり着いた場所は4人の思い出の場所、始まりの場所の湖の畔だった。

 

 

 「本当に…カッコ悪すぎるぞ…俺…」

 

 

 境也はそのまま芝生に腰を下ろす。

 

 

 「…なんで俺、こんなことしてるんだろ」

 

 

 理亜に拒絶されて、嬉しくなって、罪悪感で央路たちから逃げて、最近じゃ、かかってきてたシルヴィからの電話も無視するようになって。

 

 

 手に入れたもの全部手放そうとしている。

 

 

 座り込んだ境也、ここから動く気力すらも無かった。

 

 

 ○ ○ ○

 

 

 一体どれだけの時間がたっただろうか、日も傾きはじめもうすぐ太陽が湖の向こう側に落ちようとしている。

 

 

 境也は少しも動いていなかった。

 

 

 「やっと見つけた」

 

 

 後ろから声が掛かった。

 

 

 だが境也は立ち上がって逃げる事も、振り替える事すらしなかった。

 

 

 もう、何もしたくないと言うように。

 

 

 そうして後ろから近づいてきた人物、央路は境也の横に腰を下ろした。

 

 

 「話がある」

 

 

 改めて央路から切り出す。

 

 

 境也は答えない。

 

 

 それでもかまわず央路は喋り続けた。

 

 

 「理亜が日本を発つとき境也と二人にした、境也が話したい事があるから、って。んでその時、境也、お前は理亜に何かしようとしたんだよな、理亜が言ってた光が見えたって、そして、それを理亜が拒絶した」

 

 

 「……」

 

 

 「境也が理亜に危害を加えるなんてまずありえない、だから考える事の1番は理亜を助けようとしてくれた、方法は分からないけど、んでそれを拒絶された、境也はその理亜を助けれたのに助けれなかったという罪悪感で俺たちから逃げていた、違うか?」

 

 

 境也は驚きのあまり思わず央路を見た、なんで分かったと言うように。

 

 

 「ったく、だからお前は一人で抱え込みすぎるんだよ、少しでも良いから話せって、まあこの推論も正直穴だらけのガバガバ理論だからな、外れたら赤っ恥だったんだが、その様子だと当たってたっぽいし」

 

 

 「んなの…出来るわけ…」

 

 

 ここで境也がよやく口を開いた。

 

 

 「ん?」

 

 

 だが、何を言っているか分からない央路は聞き返した。

 

 

 「話すって、そんなの、出来るわけないだろ!!」

 

 

 境也は大きな声で反論した。

 

 

 「俺は、俺は!! ああ、そうだよ!! あったさ、理亜を治せる力が!! 言葉では説明できないがな、あるんだよ、俺にはそういう力が!! んなこと言ったって誰が信じるんだ!? 信じないだろ!! 誰も!! だから誰にも気付かれず理亜を治そうとした!! でも、それを、当の本人に拒絶された!! なんでなんだよ!! 何が駄目なんだよ!! 俺の光の何処が!! それで、なんだ拒絶されたのに、どうして!! なんで、俺が喜んでいるんだよ!! ふざけるなよ!! 意味が分からないじゃないか!! なんで拒絶されてるのに、助けれたのに!! 助けなかったのに喜んでいるんだよ!! 俺は理亜を助けるために生きてたのに、これじゃあ意味がないじゃないか!! 俺が生きてた意味なんて!! そうさ!! だから逃げてたんだよ!! 俺は、お前らから!! 我が身可愛さで!! 罪悪感から逃げるために!!」

 

 

 それはもう、癇癪に過ぎなかった、何に対して怒っているのかも境也自身分かっていなかった。

 

 

 ただ、内に思っていたことをそのまま吐き出しているのだろう。

 

 

 央路は境也の豹変ぶりを見て、思わず固まってしまっていた、まさかここまでとは思っていなかったのである。

 

 

 動けない央路、吐き出す境也。

 

 

 誰も動けなかった、だが、ここで動くものがいた。

 

 

 「そう、…そう言うことだったの」

 

 

 それは第三者の声、思わず境也も央路も声の主に顔を動かす。

 

 

 そこにいたのは長い金の髪を腰まで伸ばし、2学期までは同じ教室で授業を受けていたとある国のお姫様で二人の幼馴染。

 

 

 「シル、ヴィ…」

 

 

 ソルティレージュのお姫様、シルヴィア・ル・クルスクラウン・ソルティレージュ・シスアがそこに立っていた。

 

 

 「ソーマ君から事情を聞いて、居ても立っても居られず思わず来ちゃった」

 

 

 そう言い、シルヴィは境也に向かって歩き出す。

 

 

 「…やめ、ろ」

 

 

 シルヴィが一歩、境也に踏み出すたびに境也は一歩下がる。

 

 

 「来るな!!」

 

 

 境也が叫ぶ、それでもシルヴィは止まらない。

 

 

 境也にとって、今の状況、カッコ悪い状況を誰にも特にシルヴィには見られたくないものだった。

 

 

 「大丈夫…」

 

 

 シルヴィが呼びかけながら境也に迫る。

 

 

 「止まれ!!」

 

 

 「嫌よ」

 

 

 それは拒絶の言葉。

 

 

 「だってサキ、とっても苦しそうな顔してるもの」

 

 

 境也の顔が苦痛そうに歪む。

 

 

 「俺は、お前の傍にいていいような人間じゃない!!」

 

 

 「それは私が決めるわ」

 

 

 また一歩境也に近づく。

 

 

 境也は一歩下がる。

 

 

 「親友が傷付いて、それを良しとする屑人間だぞ!!」

 

 

 「サキは屑なんかじゃないわ」

 

 

 また一歩境也に近づく。

 

 

 境也は一歩下がる。

 

 

 境也の片足が湖に浸かる。

 

 

 「やめろ、来るな、来ないでくれ!!」

 

 

 また一歩境也に近づく。

 

 

 シルヴィの片足が湖に浸かる。

 

 

 境也は一歩下がる。

 

 

 境也の両足が湖に浸かる。

 

 

 「なんで、なんでここまで関わろうとするんだよ!!」

 

 

 「…サキがね、痛そうな顔をするとね」

 

 

 シルヴィが境也の目を見て言う。

 

 

 「わたしが痛いの」

 

 

 境也の足が止まる。

 

 

 シルヴィが境也に追いつく。

 

 

 シルヴィも既に両足が湖に浸かっている。

 

 

 「だから、今度はわたしの番、今度はわたしがサキを、境也を助けるわ」

 

 

 そう言い、シルヴィは境也を抱きしめた。

 

 

 その瞬間、湖に落ちかけていた太陽が完全に落ちた、辺りを金色に照らした。

 

 

 「大丈夫、大丈夫よ」

 

 

 境也を抱きしめたまま、シルヴィは境也の頭を撫でる。

 

 

 暖かさを境也に染み込ませるように、何度も何度も撫でる。

 

 

 「……俺、さ」

 

 

 「うん」

 

 

 「理亜を助けるために、イチとソーマの道を残すために生きてたんだ」

 

 

 「うん」

 

 

 「その為なら命を掛けてもよかった」

 

 

 「…うん」

 

 

 「でもさ、力を使ったらさ、死んでしまうと思ったらさ、急に怖くなったんだ」

 

 

 「……」

 

 

 「真っ先に浮かんだのがさ、シルヴィで、さ、もう会えないのか、って思うとさ何故か体の震えが止まらなかった」

 

 

 境也はその時を思い出すように体が震えた。

 

 

 それを止めるようにシルヴィがさらに強く抱きしめた。

 

 

 「俺、さあ」

 

 

 「うん」

 

 

 「生きても、良いかな? 生きて、シルヴィの、隣に居ても、良いかな」

 

 

 その声はもう嗚咽混じりの涙声だった。

 

 

 「ええ、勿論よ、むしろ私から言うわ、境也、私の傍に居て頂戴、もし境也のことを否定する人が出てきたのなら私が全て守るわ、だから」

 

 

 シルヴィは目一杯境也を抱きしめた。

 

 

 「そうか、それは、嬉しいな」

 

 

 境也はようやく穏やかそうな顔をした。

 

 

 そしてシルヴィの背中に手を回して抱きしめた。

 

 

 






央路「エンダアアアアアアアアアアアアアアアイヤァアアアアアアアアアアアアアアアアウィルオオオオオルウェイズラアアブユウウウウウウウウアアアアアアアアアアアアア」



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