ゴールデンタイム   作:みなたか

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もう一つのゴールデンタイム 6

 ○ ○ ○

 

 

 「なんというか、俺、結局蚊帳の外だったな」

 

 

 あの後、央路と境也は二人で帰路についていた。

 

 

 シルヴィはどうやら本当に忙しいらしく、あの後すぐにエルさんたちが来て帰っていった。

 

 

 「結局、境也はシルヴィのおかげで立ち直ってしまうし、俺って一体…」

 

 

 「…なあ、央路」

 

 

 今まで一人で話していた央路、初めて境也が口を開いた。

 

 

 「どうした」

 

 

 「すまなかった」

 

 

 「何に」

 

 

 「お前らを無視してたこと、逃げてたことその他色々」

 

 

 「何も相談せずに一人で抱え込んだところもな」 

 

 

 「あ、ああ、本当にすまん」

 

 

 境也は足を止め、央路に頭を下げた。

 

 

 「はぁ… 言いたいことは一杯あるけど、とりあえず」

 

 

 「……」

 

 

 「今日、晩御飯奢れ」

 

 

 思わず顔を上げ、ポカンとした境也だったが。

 

 

 「それでチャラにしてやる」

 

 

 「…はは、ああ、分かった奢らしてもらおう」

 

 

 思わず境也は笑った、央路の顔にも笑みがあった。

 

 

 「さて、焼き肉行くか、食べ放題の」

 

 

 「は? いや、おいちょっと待て聞いて…」

 

 

 「おっやぁ? 奢らしてもらおうとか言ったのは誰だったっけなぁ」

 

 

 「くっ」

 

 

 「あ、もしもし玲奈? 実は境也が焼き肉奢ってくれるって、食べ放題の、そうそう」

 

 

 「うっそだろお前!?」

 

 

 いきなりスマホを取り出した央路が電話を掛けた先は玲奈だった。

 

 

 「玲奈も来るってさ」

 

 

 「うそやん…」

 

 

 持っている財布の中身を確認する境也。

 

 

 「玲奈が焼き肉奢ってくれるのなら押し倒したことチャラにしてやるって」

 

 

 「あ、はい、奢らせてもらいます」

 

 

 ○ ○ ○

 

 

 「やっほー」

 

 

 合流した玲奈、3人で焼き肉屋に入り個室に通れる。

 

 

 「ちょっとトイレ」

 

 

 肉を注文し待っている間、央路がトイレで席を外した。

 

 

 席に座っているのは玲奈と境也の二人。

 

 

 「その、玲奈、すまなかった、教室で倒して」

 

 

 「あっはっは、まあ良いよそのことは、そのおかげでこうしてお肉様が食べれるんだし、それに」

 

 

 玲奈は一息置いて。

 

 

 「それに、キョウちゃんが元に戻ってよかったよ、私も心配してたし他にも皆心配してたよ」

 

 

 それは本当に心配していた優しい目だった。

 

 

 境也は改めて実感する、どれだけ周りを見ていなかったのかと。

 

 

 「避けててすまなかった」

 

 

 「はい、許します」

 

 

 あっけらかんと玲奈は答える。

 

 

 「…お前のそう言う所は本当に美徳だな」

 

 

 「え、何々、煽ててもコーヒー牛乳しか出ないぜ」

 

 

 「お待たせいたしました~」

 

 

 ここで店員が注文した肉を持ってきた。

 

 

 「さ、食べよ食べよ、折角の奢りなんだし」

 

 

 「おう、味わって食え」

 

 

 もう二人の間には、わだかまりは無かった。

 

 

 ○ ○ ○

 

 

 央路も帰ってきて三人で焼き肉を食べていると不意に央路が。

 

 

 「そういや、すっかり忘れてたんだが境也ってシルヴィと付き合うのか?」

 

 

 「んごっ!?」

 

 

 央路の言葉に見事に肉を喉に詰まらせる境也。

 

 

 「え、何々どういうこと」

 

 

 急いで飲み物を飲んでいる境也を傍目に玲奈は央路に問いかけた。

 

 

 「いや、境也が立ち直った理由なんだけど簡単に言うと、シルヴィが来て慰められて立ち直ったみたいな」

 

 

 「え、シルヴィこっちに来てたの!?」

 

 

 「ああ、直ぐに帰ったけどな、んで慰められたときにシルヴィが境也に「傍に居て欲しい」って、境也も「傍にいたい」って言ってて」

 

 

 「ちょ、おま、やめろ!!」

 

 

 赤裸々に語られる先程の出来事、正直あの時のことを思い出すと境也は布団に潜り込んで悶絶したくなるぐらいには黒歴史にはなっている。

 

 

 「ほうほう、成程~」

 

 

 玲奈の目が明らかにニヤニヤしてきた。

 

 

 「いや、あれはそういう意味ではなくて!! 付き合うとかじゃなくて!!」

 

 

 「いや、傍に居て欲しいとか告白を通り越してプロポーズだろ」

 

 

 「プロっ!? いや、違うから!! 別に告白とかしたわけじないから!!」

 

 

 「でも実際は?」

 

 

 ニヤニヤしている玲奈、新しいおもちゃを見つけたとばかりな表情だ。

 

 

 「え、実際…とは」

 

 

 「だーかーらー、キョウちゃんがシルヴィのことを好きなのかってこと」

 

 

 「す、好き…!?」

 

 

 「…うぉ、いつも俺と理亜のことを散々おちょくってきた割には自分のことになると急に恥ずかしくなるのかよ」

 

 

 そう、境也は顔を今までにないぐらいには赤くなっていた。

 

 

 「んで、どうなのよ、付き合う付き合わない以前にキョウちゃんはシルヴィのことが好きなの?」

 

 

 「え、あ、えっと…」

 

 

 なんとかしてこの場を凌ごうと言葉を探す境也。

 

 

 この時央路は見た、玲奈がテーブル下でスマホを触っているのを、丁度境也の見えない角度で。

 

 

 こいつ、何をする気だ、と央路も身構える。

 

 

 そして玲奈がテーブルの下で表示させたのは通話画面、さらにそこからアドレス帳から誰かをコールした。

 

 

 央路は誰をコールをしたのか名前を見る。

 

 

 「(シルヴィ…だと!?)」

 

 

 それを見た央路、全てを察し玲奈と目を合わせる。

 

 

 目で頷く。

 

 

 その目は新しいおもちゃを手に入れた子供のよう。

 

 

 「あー、言ってくれないとキョウちゃんに倒された時にぶつけた背中が痛むな~!!」

 

 

 「な!?」

 

 

 「そうだな~、俺も言ってくれないと無視され続けたことがショックで寝込んでしまいそうだな~!!」

 

 

 「うっそだろ!?」

 

 

 凌げなかった境也。

 

 

 「…あー」

 

 

 ワクワクと目を輝かせる央路と玲奈。

 

 

 「……だよ」

 

 

 「ん? なんて言ったんだ小さすぎて聞こえなかった」

 

 

 「だから!! 好きだよ!! シルヴィのこと!! 大好きだよ!!」

 

 

 顔を真っ赤にして焼き肉屋で叫ぶ境也。

 

 

 央路と玲奈はこの時ばかりは個室で良かったと思った。

 

 

 「おー」

 

 

 「そうだよ!! 好きだよ!! ひとめぼれだよ!! キャンプで会った時から!! 昔っから好きだったんだよ!!」

 

 

 「そんな昔から… でも、昔はそんな素振り一切見せてなかったような…」

 

 

 「見せなかったんだよ!! 俺は最初!! シルヴィは、央路!! お前のことが好きだと思っていたんだよ!!」

 

 

 「お、俺!?」

 

 

 「でも、今はオーロ、理亜ちゃんと付き合ってるけど」

 

 

 「それな!! だからシルヴィがショックかも、って気が引けて、口が裂けても言えなかったんだよ!! 好きとか!!」

 

 

 「…なんかごめん」

 

 

 「ええけど!!」

 

 

 「取りあえず、キョウちゃんはシルヴィのことが好きでファイナルアンサー?」

 

 

 「イエス!! 俺は、坂巻 境也はシルヴィのことが大好きです!! ずっと!!」

 

 

 「こいつ、頭のストッパーか何かが外れて一気に知能指数下がったな」

 

 

 「よし」

 

 

 すると玲奈がスマホを 境也に見せた。

 

 

 そこには 通話中 シルヴィ と書かれた文字。

 

 

 「………は?」

 

 

 「お、一瞬思考を放棄したぞ」

 

 

 「にゃっはは、この反応を見るためだけに頑張った」

 

 

 境也は震える手で玲奈からスマホを受け取ると耳に当てた。

 

 

 「えっと、シルヴィ…?」

 

 

 『あ、やっと出てくれた!! もう、いくら呼びかけても出てくれないんだから』

 

 

 「 」

 

 

 一瞬で喉が干上がり変な汗が出てきた境也。

 

 

 「え、っとそのさっきの声…」

 

 

 『あのね、境也』

 

 

 「あ、はい」

 

 

 『私も大好きよ境也のこと、昔から、キャンプのあの日私の手を握って皆の所に連れ出してくれた時から、ずっと大好きよ』

 

 

 「…what's?」

 

 

 『あ、あれ、伝わらなかったのかな、ならもう一度言うわ、大好きよ境也、世界で一番、宇宙で一番、世界か境也か、って言われたら迷わず境也を取るぐらい大好きだわ』

 

 

 「like?」

 

 

 『Loveに決まっているじゃない』

 

 

 「あ、キョウちゃんの頭から煙出てきた」

 

 

 「あれだ、一度に沢山のことが起こり過ぎて脳が処理しきれなくなったんだろ」

 

 

 こうして、境也とシルヴィは付き合うことになったのであった。

 

 




玲奈・央路「計画通り」

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