スミマセン、切るに切れなかったです…。
○ ○ ○
時刻は15時程、もうすぐ夕方になろうとする時間帯。
なんとか終わったアメリカとの外遊。
帰ってきてすぐ、シルヴィは休まずに執務をしようとしたが。
「シルヴィア様、今日のお仕事はこれで終わりです」
「え?」
執事にそう言われるが、そんなはずは、と、シルヴィは思う。
いつもならまだまだ仕事は残っていて終わるのは大体20時ごろ、これでも実際の王女の仕事量と比べると少ないぐらいなのに。
「後のことは我々に任せてシルヴィア様は休養を取り、ゆっくりと羽を休ませてください、最近寝る時間も少なくなっていたぐらいなのでしょ?」
「そ、そんなことないわ、それに仕事をしていた方が今は落ちつくし…、第一上司である私が休んで部下に仕事をやらせるなんて…」
「姫様、これは決定事項です、大丈夫ですよ、残りの執務などは騎士院派の人たちにも助けてもらうことになっています」
すると、執務室のドアが開いた。
「失礼します」
「エル!!」
中に入ってきたのはエルたち騎士院派。
「そういうことですよ、シルヴィ様、ここは我々に任せて休養を取ってください」
皆、シルヴィのことを心配しているのだ、楽団派、騎士院派、関係なくシルヴィを助けるために手を取り合って動いている。
「で、でも急に休養だなんて」
「それには心配いりませよ」
エルさんがドアに目線を送る。
つられてシルヴィもそこに顔を向ける。
「よ、シルヴィ、デートしようぜ」
「きょ、境也!?」
これに関してはシルヴィも驚いていた、知らされていたのは央路が理亜のお見舞いでソルティレージュに来ているということだけ、境也が来ているなんて一言も聞いていなかった。
「う、嘘でしょ境也。いつ来たの!? うわぁ、3ヶ月ぶりぐらい? 元気にしてた?」
「ああ、元気にしてたさ、シルヴィは少し元気がないみたいだけど?」
境也の目にもシルヴィが疲れがたまっているのが目に見えていた。
「うっ、えっとこれは…」
手で顔を隠し顔を逸らすシルヴィ、正直あまり見られたくないのだろう。
「取りあえず、シルヴィ」
「…はい」
「さっきも言ったけど、デートしようぜ」
「…へ?」
シルヴィは間抜け顔を境也に晒した。
○ ○ ○
少し準備があるから、と、集合場所の書いた地図を執事に渡され集合時間の1時間後、境也は集合場所の王宮近くの噴水の前で待っていた。
「やっぱり日本とは街並みも違うな」
集合場所に来るまで見ていたテレビでしか見たことのなかった街並み、そして彼女との初めてのデート、境也は少しわくわくしていた。
「お、お待たせ」
シルヴィの声が後ろから聞こえた。
境也が振り返る。
「お…う」
思わず声を失った。
「え、えっと、どう…かな…、一応、王女だから周りにバレるといけないからって侍女が…」
今のシルヴィはその長い金色の髪を後ろでくくり、ポニーテールにし、メガネをかけている。
服装もいつものドレスではなく、日本で着ていたような肩を見せた刺激的な服装。
いつもの雰囲気と違って凄く色気があり、年上のような雰囲気を醸し出している。
「エルが境也がポニーテールが好きだって…」
「(ありがとう、エルさん、けどその情報をどこで手に入れたのかだけは小一時間ほど問い詰めたい)」
まさか、コンビニでそういう系の本を買ったところを見られたりしてない…よな?と本気で考える境也。
ソルティレージュの諜報員は何処にでもいて何処にもいないのである。
「え、えっと、境也…?」
「え、あ、えっと、凄い、すっごく似合ってる、えと、今までのシルヴィと全然雰囲気が違ってて、その、あの、凄く可愛い」
緊張しまくって震え声な境也、自分でも何を言ってるのか分からないレベルである。
「~~~~っ!!!!」
シルヴィは境也のその返答を聞くと体ごと境也から背けて手で顔を隠す、思わずにやけてしまう顔を隠すように。
「えっと」
「ひゃい!?」
境也の呼びかけ一つに飛び上がるシルヴィ。
「取りあえず、行こうか」
「え、ええ、分かったわ」
こうして境也とシルヴィのデートが始まった。
○ ○ ○
「ところで境也、その手に持っている地図ってなんなの?」
シルヴィと歩き始めて境也が手に持っている地図に疑問を示したシルヴィが聞いていた。
「なんか、エルさんたちから持たされたんだ、この付近の観光スポットとか書かれてるらしくて」
正直、デートしようとか言ったわりにはどこに行くのかも決まっていないのでこの地図が命綱なのである。
「あ、ここは私もよく行ったところだわ」
シルヴィはそう言い地図のある場所を指さした。
「丘…?」
「ええ、この街を一望できるとても良い場所よ」
「じゃあ、目的地はここにするか、あ、けど、シルヴィは何処か行きたい所とかあったりする?」
「いいえ、特にないわ、それに私が行きたいところとは境也の隣なんだから」
「……ほんとさ…不意打ちはアカンでしょ…」
境也はシルヴィの一言に撃沈した。
「さ、行きましょ、境也!!」
シルヴィに手を引かれ歩き出した。
○ ○ ○
「まさか、ボラルコーチェに双子の弟さんがいたなんて初めて知ったわ、はむはむ」
「…そうでしょうね」
屋台で買ったクレープを頬張りながらシルヴィは言う。
二人は目的地の丘に向かっていたのだが途中でクレープの屋台があったので寄ったのだが。
「それもクレープ屋さんをやっているだなんて、はむはむ」
そこの屋台の人がボラルコーチェさんだったのである、もう一度言う、ボラルコーチェさんだったのである。
本人曰く双子の弟のボレルコーチェですと言っていたが。
「(いや、あれは無理があるだろ…)」
境也の脳内でほっほっほと笑いながらクレープを焼くダンディな爺さんが思い出される。
「(と、いうか何人か通行人で王宮で見たことがある人がチラチラといるし…)」
シルヴィの近衛兵がかなりの数、この街に放たれていた。
目的はただ一つ。
『シルヴィ様の初デートを成功に導く』
これだけなのである。
「むぅ、境也、難しい顔をしているわ」
「え、マジ?」
知らず知らずに顔がこわばっていたようだ。
「こういう時は甘いものを食べないと、はい」
と、シルヴィは自分が食べていたクレープを境也に向ける。
「え、」
「あーん」
「ん"!?」
『おー』
待て待て待てと境也の脳内は緊急アラートを発していた。
あと通行人(仮)はこっちみんな。
「(これが、あれか恋人がやると言われている伝説の宝刀「あーん」!! ま、まさかこんなところで拝めるとは、いや、ちょっと待って、まだ心の準備が出来ていないというか、え、はれ、このシルヴィが向けている部分、ここはさっきシルヴィが食べてた部分、ということはつまり間接キス…だと…!?)」
「あーん」
『やっちまえ』
『早くしろよ』
『あのテンパり具合、童貞かよ』
『ああ、シルヴィ様こんなにも立派になられて…』
『姫様はワシが育てた』
『うるせー黙ってろ今良い所なんだ!!』
『何よ私だってシルヴィ様の成長記録を撮るのに忙しいのよ!! 貴方だって邪魔しないで!!』
『ほっほほ、何事も経験ですぞ、坂巻殿』
テンパる境也。
騒ぐ外野。
「…境也?」
寂しそうな目で境也を見るシルヴィ。
その視線に押されて口を開ける境也。
「あ、あーん」
笑顔になるシルヴィ。
「はい、あーん」
シルヴィから差し出されたクレープを食べる境也。
「美味しい? 境也」
「あ、ああ」
「なら良かったわ」
正直味なんて全く分からなかったがシルヴィが笑顔ならいいやと思う境也。
ただ、影でハイタッチしてる人たちは帰ってほしいと切に願う境也であった。
○ ○ ○
「おお、これは凄いな」
「ね、言ったでしょ」
驚く境也に嬉しそうに言うシルヴィ、場所は目的地の丘、そこから見える街を一望する景色に感嘆の声を上げていた。
時刻は6時ぐらい、綺麗な夕日が街を照らしていた。
「ねえ、境也、この街は気に入ってくれた?」
「ああ、凄く綺麗な街だ」
「ふふ、なら良かった」
二人はしばらく無言になり景色を見た。
境也は何かを待つように。
シルヴィは何かを言いたそうに。
景色を見た。
夕日が更に傾きはじめ、街の向こう側に落ちかけたころ、シルヴィが意を決して口を開いた。
「…本当ならもっと早くに二人を呼びたかった…のだけど」
境也はそれを黙って聞いた。
「ごめんなさい… 央路と境也を読んだら揺らいじゃうから…、私もソーマ君も」
その声は震えていた。
境也はシルヴィの姿を見て、そっとシルヴィ近寄り肩を抱いた。
「…辛かったな」
「…っ」
「親友が命を投げ捨てるための選択をして、しかもそれを近くで後押ししなきゃいけない、なんて」
シルヴィの肩の震えが大きくなる。
「けどさ」
境也はシルヴィを抱きしめた。
「辛いならさ、辛いって言ってくれよ、電話でも弱音すらも言わずにさ、俺にも…支えさえてくれよ、シルヴィのこと、言わなくちゃさ、伝わらないからさ」
「……ひぐっ、う……ううううう」
シルヴィは境也の胸の中で嗚咽を漏らす。
「大丈夫、全部受け止めるから、信じて」
「……辛かった」
「…ああ」
「…ひぐっ、境也、私、辛かったよっ…」
「よく、言えました」
「ひぐっ、うあああああああ」
シルヴィの鳴き声が胸に響く。
「…わ、わたし、正しいのっ? 間違っていないのっ? ソーマ君が、あんなにもっ、苦しんでいるのにっ…!!」
無言で境也はシルヴィの背中を摩る。
「わたしなら、止めれたのよ…、春までに言えば止めれたの。王女だもの。赤ちゃん、堕ろしましょうって、言えたの!! でも、でも…っ!!」
「大丈夫、大丈夫」
「ソーマ君のお顔、見てたら、そんなこと、言えなかったっ…」
「ああ、分かってる…、分かってるよ、あんな顔されたら言えない、よな…」
境也は日本を発つ時の理亜の顔を思い出す。
「シルヴィは間違ってないよ」
「…でも、でもっ!!」
「大丈夫、間違っていない、君の選択は間違っていない」
境也は更に強く抱きしめる、シルヴィの震えを止めるように。
「シルヴィは正しいことをしたよ、人間誰だって正しいと思ってることをするもの、シルヴィは悪くない」
「…ぐすっ、うう」
涙も止まりかけてきたシルヴィ。
「…その先に俺は皆が笑顔な
右手を見る。
特典が使える右手を。
「…駄目、それだけは絶対に駄目」
シルヴィが境也の右手を両手で掴む、まるで逃がさないように。
「何か分からない、けど、境也はそれを使うと、死んじゃうんでしょ…」
「…誰にも話してなかったけど、シルヴィには話しておこうかな」
そう言い、境也はシルヴィに特典のことを打ち明けた。
「俺はさ、生まれた時からそう言う力、特典があるんだ、一度きりの力を使うとどんな瀕死の、不治の病でも治る、でも、その代償は俺の死、感覚で言うと椅子を譲り渡してそこに座らせるって感じかな、そう言う力が俺にはあるんだ、何故か」
そう言うと境也は右手に力を込める、すると淡い光がシルヴィの手の隙間から漏れる。
思わずビックリするシルヴィだがそれでも手は離さなかった。
「絶対嫌だからね、わたし、境也が死ぬなんて…」
境也は微笑み、シルヴィの両手を左手で優しく覆う。
「ああ、分かってる、前の俺は死んでもいいって思ってたけど今は違う、自己犠牲なんてくそくらえ、俺は目指すんだ、皆が笑顔な
「…?」
「この力のこと、言ったのシルヴィが初めてなんだけど何で話したかって理由なんだけど、その、俺はさ、今、傲慢かもしれないけどシルヴィが背負っているものを少しだけ背負わさせて貰ったわけじゃないか」
「傲慢じゃなくて、本当に、しかもかなり大部分を一緒に背負ってもらったと思うんだけど…」
「その、だから俺のも一緒に背負ってくれないか…な…って、重い…かな」
思わずポカンとするシルヴィ。
少し恥ずかしくなって顔を赤くする境也。
「…いいえ、いいえ!! 重いわけないじゃない!! 勿論よ!! 境也が背負っているもの、それを私にも背負わせて頂戴!!」
笑顔で言うシルヴィ。
思わずホッとする境也。
「…なんというか、俺、今ようやく彼氏彼女の関係になれたんじゃないかなって思う」
「ふふ、ええそうね、私もそう思うわ」
「……あの、ところで」
「なあに…?」
「いつまで密着しているので…しょうか…」
そう、境也とシルヴィは今の今までほぼほぼ真正面、密着率99%ぐらいの状況で話していたのだ。
「…いや?」
「いやじゃないけど、そのなんというか…恥ずかしいというか…」
「何よ、最初に抱きしめてくれたの境也じゃない」
「えっと、はいそうなんですけど…」
「なら良いじゃない」
まるで語尾に音符マークが付くレベルでルンとしたシルヴィの言葉。
「ま、いっか…」
「あ、見て境也!! もうすぐ日が沈むわ!!」
シルヴィが指さす先、そこには太陽が街の向こう側に落ちる瞬間。
「…夕日ってのはやっぱりどこに居ても変わらないものなんだな」
「…でも、私、正月に学校の屋上で見た夕日が一番凄いと思うわ」
「それは俺も思うな、また見ようか一緒に」
「ええ、一緒に」
二人は夕日を沈むまで眺めた。
「さて、帰るか」
「ええそうね、体も冷えてきたし…」
歩き出した二人、ふと境也が空いてるシルヴィの手を取った。
「え、っとこの方が少しは寒くない…だろ?」
正直内心心臓バクバクだが、平静を装う。
「ええ!!」
シルヴィも笑顔になり手を握り返す。
二人は王宮に手を繋ぎながら帰った。
近衛兵に殆ど見られた。
境也は死ぬほど恥ずかしくて途中で手を解こうとしたがシルヴィがそれを許さなかった。
○ ○ ○
夜。
境也は宛がわれた部屋で就寝しようとしたら不意にドアのノック音が響いた。
「…境也、まだ起きてる?」
入ってきたのは寝間着姿のシルヴィだった、何故かその手に枕を持って。
「起きてるけど…」
「…その、一緒に寝てもいい?」
「…What's?」
一瞬脳の活動が休止しかけた境也。
いや、待て待て待て、とストップをかける境也。
「(仮にも王女だぞ!? 王女と一緒のベットで寝たとか俺、明日エルさんたちに何されるか全く分からない、分かりたくもない、よし、ここは穏便にかつシルヴィを悲しませないように、説得して…)」
「…ダメ?」
「ええよ」
境也、シルヴィの枕を胸に抱きながら上目使いに一瞬で敗北。
ベットに二人入り毛布を被る。
ちなみに背中合わせだが。
まあ、寝れるわけがないと境也。
「境也起きてる……?」
「起きてる」
「境也こっち向いて」
「え、あ、うん」
正直、恥ずかしいがシルヴィの方を向く境也。
しかし、目が泳いでる境也。
「今日はありがとう」
「あ、いや、俺も楽しかったらお礼は時間を作ってくれたエルさんたちに……」
「エルたちにはもう言ったわ、だから次は境也」
「そ、そうか」
「……ちゃんとこっち見てる?」
「見てる見てる」
嘘だ、恥ずかしくて目があっていない。
「仕方ないなあ、もう」
と、不意にシルヴィが顔を近づけてきた。
突然だったので全く反応出来なかった境也。
そのまま、シルヴィは自ら唇を境也の唇に押し当てた。
そう、キスである。
「!?!?!?!?」
全く何が起こっているのか境也には理解出来なかった。
ただわかるのはシルヴィの唇が凄く柔らかくて、甘い味がすること。
唇を放すシルヴィ。
「ふふ、やっとこっちを見た」
妖艷に微笑むシルヴィにショート寸前な境也。
「境也、ありがとう。大好きよ」
そう言うとシルヴィは背を向けた。
「それじゃあ、お休みなさい」
この日、境也は一睡もできなかった。
ちなみにシルヴィが背を向けたあと、顔は真っ赤に染まっていたということをここに記そう。
理亜「さすがシルヴィ!」
央路「おれたちにできない事を平然とやってのけるッ そこにシビれる!あこがれるゥ!」