仮面ライダーブレス   作:ぴな子

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 タイトルは思いついたら付けます。


2.

「REシステムベルト、完成しました!」

 

 

 

「それは本当か!」

 研究員の吉報に豪山は立ち上がり、声を張り上げる。

 他の研究員達も声を上げはしないが、労いの言葉をかける。

 

「今すぐ稼働させられるか?」

 そう言うと、豪山はすぐさま開発室へと向かう。

「10分程度調整にかかりますが、可能です」

「わかった。進めておいてくれ。彼を呼ぶ」

 

 研究員を先に向かわせ、豪山はすばやくスマートフォンを取り出し、電話を掛ける。

 コール音が鳴り、すぐさま繋がった。

「ああ、台良君。僕だ。今大丈夫かい」

 

「実は、君にも話していたアレ。完成したみたいだから、ちょっと協力して欲しいんだ」

 

「うん、よろしく」

 要件を言い終わり通話を切ると、開発室へと入っていった。

 

 

 

 

 

 樹環市日鏡町(ひかがみまち)、駅からそれほど遠くない場所に位置する大学、日鏡大学のとある研究室で先ほどまで通話していた青年は、この部屋の主に声を掛ける。

「と、いうことなので失礼します」

 そう言うと、山積みになったファイルを数冊だけカバンに詰め込み、そそくさと帰ろうとするが、ドアは長髪の女性に阻まれていた。

「……あの、先生。俺呼ばれたので、行かないと……」

 帰路を塞がれた青年、台良 国風(だいら くにかぜ)は、目の前で立ちはだかる女性をどうにか説得しなければならない状況に困り果てていた。

 

「だ、大事な用事で……」

「あら? 先に声を掛けたのは私なのに、飛び込みの方に行っちゃうの?」

 腕を組み、この部屋の主、豪山 采雨(ごうやま あやめ)は笑顔で言い放つ。

「すみません。この分はいつか必ず……」

 

「よーし、その言葉忘れないでよー。それじゃあ、行きますかぁ」

 台良から言質を取った采雨は、何事もなかったかのように壁にかかった上着を羽織り、散らかった荷物を適当にまとめだす。

 采雨の変わり身の速さに慣れている台良は頭を掻き、ほっと息を吐く。

「別にいつでも手伝いますけど……」

 

「って、先生もついてくるんですか!?」

 どうしてと問い掛ける前に準備を終えた采雨がもっともらしい顔で言う。

「私もちょっと用事あったし、完成したのがどんなものか気になるしね」

 ほらいくよ、と資料だらけの部屋から台良を追い出し、鍵をかける。

 

「でも先生、今日車でしたっけ?」

 さっさと歩いて行ってしまう采雨の後ろにつきながら訊くと、振り返り

「私、バイクの後ろに乗るの、はじめてかも」

 満面の笑みで言った采雨の言葉に台良から溜息がでる。

 

 

「……俺だって後ろに乗せるの、初ですよ」

 

 

 

 

――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「そういえば、昨日の集会ってなんだったの?」

 真上にあった太陽が少し傾き始めたころ。美波は厨房の床を掃除をしながら、食器や調理器具を洗う彰悟に訊く。

「なんか、今年の秋祭りはほかの町と合同で開催するとか」

 

 秋祭りとは、樹環市のどの町とも隣接している生亶山(いくぜんやま)にまつわる祭りで、毎年各町ごとに開催されている。

 

「え!? じゃあ、お祭りの数減っちゃうじゃん」

 落胆する美波に彰悟は軽く笑うが、同意するようにうなずく。

「せっかくの稼ぎ時が減っちまうのはなー、コロッケ屋のオッサン、カンカンだったわ」

「あそこのおじさん怒るんだ……」

 想像できない、と2人で話していると、店の裏口がガチャリと開く。

 

「ただいまー、戻ったよー」

 夏来は持っていたビニール袋を2人に差し出す。美波が受け取り、中を見ると揚げたてのコロッケが数個入っていた。さっきまで2人が話していたコロッケ屋で手伝いをしていた夏来は、すぐにテーブルに顔をくっつけ、愚痴をこぼす。

「今日のおじさん、超機嫌悪かった。終始無言で眉間にシワ寄ってた」

 

 手を洗ってこいと言われ、立ち上がる夏来の後ろで仕方ないよと美波と彰悟がうなずく。

「仕方ないって、なんで?」

 自分だけ話が分からない状況に、むすっと口をとがらせる。

「おばさんからも言われなかった? 今年の秋祭り、他の町と合同でやるんだよ」

「え! じゃあ、祭りの数減っちゃうじゃん」

「私とおなじこと言ってるー」

 けらけらと笑う美波を無視して、夏来は彰悟に祭りについて訊く。

「どこと合同なの? 日鏡、鶴川? てか場所は? 屋台はどうする?」

「鶴川だよ。場所は町の境目の川。橋のとこ」

 彰悟は夏来がバイト代代わりに貰ってきた熱々のコロッケを食べながら、答え続ける。

「屋台はなー、多分大丈夫だと思う。でも、2つも出せないかもな」

 

「貴重な収入源がぁ……」

 またテーブルに顔をくっつけて落ち込む夏来を突っついていた美波が気合を入れて立ち上がる。

「今年は、夏が勝負よ! 日鏡の夏はすごいから!」

「いや、知ってるよ」

 冷静な夏来の突っ込みを無視して、花火が~、テレビ特集が~と熱弁しようとするが、タイミング良く来店を知らせるチャイムが鳴り、美波は表へ出ていった。

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――

 

 

 白い壁。同じく白い清潔なベッドにカーテンが揺らめく部屋、医務室で白衣の男性が台良にコーヒーを差し出し、椅子に腰を掛ける。

 壁に掛けられた時計は、3時過ぎを指し、休憩を入れるのに丁度いい時間だ。

「それにしても、昨日も今日も大変だね」

 白髪の男性は、台良に張った湿布を確認しながら、声を掛ける。

 台良はそれに苦笑いでこたえる。

「怪我についてはいいんですけど、先生の熱弁には堪えました」

 話して思い出したのか、台良は力なく笑う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 大学を出た後、台良と采雨は豪山研究所に向かった。

 研究所に着くと、2人は迷いなく開発室のある地下へと向かう。

 

「すみません。遅くなりました」

 台良が扉をノックし部屋に入ると、豪山が振り返り、待っていたよという前に、台良の後ろにいる人物を見て顔をしかめる。

「おかしいなぁ? 僕が呼んだのは台良君だけなんだけど?」

「あら? 私もこのReWPの一員なのだけど」

「でも、これは采雨に関係ないと思うけど?」

「情報が共有されないのは、組織的にまずいと思うけど?」

 2人の言い合いに周りはまた兄妹ゲンカが激しくなること察し、台良へと視線を向ける。

 

 豪山兄妹は二卵性双生児なのだが、学問以外の好みや性格が全く同じ、どういうわけかすこぶる仲が悪い。言い争いを止めることができる台良が仲裁に入り、本題へと切り出す。

 

「それで、完成したものって……」

「ああ、これだよ。REシステムベルト、ジャンクズに対抗する兵器だ」

 じゃーん! と見せたのは、片手で持てるほどの大きさの機械、台形の黒い板にLの様な形をしたシルバーの部品が取り付けられており、カチ、ガチャンと動かせるようになっている。また、メーターと何かを差し込むくぼみがある。

「これ……何ですか?」

 数年かけて作られたものが小さい機械ということに驚きを隠せず、豪山を二度見する。

 

「別にこのまま使う訳じゃないよ」

 そう言うと、豪山は機械を台良の腰に持っていく。すると帯革が伸び、腰に固定される。

「うわっ」

「驚くのはまだ早いよ」

 豪山はスマートフォンらしきものを黒い板にかざす。

 

《 SANCTION 》

 

 音声の後、ガチャンとシルバーを下げると、ベルトから台良の身体に光る青のラインが伸びる。

 ラインが止まると、台良の身体は、銀色の鎧に包まれていた。

 

「これがこのREシステムベルトの本当の姿だ」

 得意げな顔の豪山は、説明を続ける。

「今の台良君が身につけているのは、耐衝撃ボディスーツ。あらゆる攻撃を軽減させる」

「そして、このプロフォンに登録されたアプリでREシステムベルトが起動する」

 プロフォンと呼ばれたタブレットを再度かざすと変身が解かれる。

 

「……すごいですね」

 自分の身に何が起きたのか理解する前に台良から思わず感嘆が漏れる。

 

「このプロフォンって、起動時にだけ使用するんですか?」

 台良の疑問に豪山は目を光らせる。

「よく聞いてくれた! このプロフォンは、武器を登録して、転送することもできるんだ」

 そこまで言い終わると、今までと違う暗い表情になる。

「ただ、今開発した武器で完成品は、ビートガンっていう銃しかないんだ」

 

 

 落ち込む豪山をよそに采雨は今までの疑問をぶつける。

「これ、台良君が戦うってこと?」

 

「俺はそのつもりでしたよ?」

 一瞬で冷えた室内と豪山の顔、数人の研究員達の表情に、嫌な予感がするこれからの出来事に冷や汗をかいた。

 

 

 

 

――――――――――――――――

 

 

 

 

 空は赤く染まり、日が沈むにつれ青が差し、黒く暗くなる。

 

 部活帰りの少女は、近道の路地を進んでいた。

 

 タッ、タッ、タッ

 

 カツ、カツ、カツ

 

 少女は自分以外の足音に気づき、振り返るが誰もいない。

 気味が悪いと感じた少女は、さっさと立ち去ろうと前を向く。

 

「ひっ」

 小さく悲鳴を上げた少女の目の前に笑顔を浮かべる女性が立っていた。

 突然現れたことに驚くが、女性だったことに安堵する。

 

 しかし、安堵の表情はみるみる恐怖に染まる。

 女性はもう人の形を成していなかった。

 

 灰色と緑の異物は、マイクの様な形を所々にはめ込んでおり、キィィンと耳障りな音を響かせる。

 少女は逃げ出すが、ジャンクズがそれを許さない。腕から伸びた鞭が少女の足を絡めとる。

 

「いやっ! やだ! いやあぁぁ!」

 足を取られ、地面に這いつくばる。悲鳴を上げる少女の顔は、自身に降りかかる恐怖と引きずられる痛みで歪み切っていた。

 

 

 バンッ

 

 一発の銃声が響き、少女に絡まった鞭を切断する。

 

『なっ! だれだ!』

 邪魔をされたジャンクズは、声を荒げ撃たれた方向を見る。

 

 路地裏の方から銃、ビートガンを構えた男が2人、ジャンクズに発砲しながら少女に駆け付ける。

 茶髪の男、洪城 颯水は、少女を安全な場所へと保護するため抱える。

 

 もう一人の男、塚地 慶士郎(つかじ けいしろう)は、少女の逃げる時間を稼ぐためにジャンクズに銃口を向け、数発撃ちこむ。

 

『じゃまをするな! それはわたしのいろだ!』

 ジャンクズは撃たれ怯むが、再度鞭をしならせ、目の前にいる塚地へと叩きつける。

 

 塚地は攻撃をとっさに避けるが、先ほどまで自分のいたアスファルトの地面は、強い衝撃でえぐれていた。

 

 もし直撃していたら……、その場にいた全員が息をのむ。

 塚地は手汗で滑らないように銃をもう一度握りしめた。

 

「洪城、早くいけっ!」

「っは、はい!」

 あまりの衝撃に固まっていた洪城は、少女を抱えなおし退避する。

 

『っ! 《とまれ》 』

 

 ジャンクズが言葉を発した途端、洪城の足が止まった。

 

「なにしてんだ! はやく!」

 

「あ、足が動かないっ!」

 突然止まった洪城達の距離がこれ以上縮まないよう、ジャンクズに掴みがかり引き留めようとするが、投げ飛ばされ、壁に叩きつけられる。

 

「っは、かっ」

 強い衝撃に、空気が強制的に吐き出される。

 

『まさか、つかうはめになるとは』

 笑うようにこぼす言葉から、ジャンクズが能力を使ったことがわかる。

 

 

 ゆっくりと、洪城の方へ歩みを進める。

 

 動かないはずの足が震える。

 

 塚地が何か叫ぶが、洪城と少女には、迫りくる恐怖で何も聞こえない。

 

 

 

 ザクッ

 

 瞬間、ジャンクズの動きが止まる。

『あ、あ゛、ぁ゛、ぁ、さ、ささってる……』

 

 ジャンクズの身体には、足元から生えた黒い槍が5本突き刺さっていた。

 

 突き刺さった個所は、黒く色抜け、ホロホロと崩れる。

 急いで、槍を引き抜くように動かすと、黒い槍は砕け散り、はらはらと木屑が舞う。

 

 

 崩れた箇所を押さえ、よろめきながら、闇雲に鞭を振る。

 

 しかし鞭は薙ぎ払うことなく、何かに捕まれ止まった。

 

 

 暗闇に包まれた路地で黄色い複眼が不気味に浮かび上がる。

 

 得体の知れない恐怖にジャンクズは警戒する。

 

 微かな電灯の光で全貌が現れる。

 

 

 緑の鎧に包まれた戦士の登場に誰かが言葉を漏らした。

 

 

「……本当に、存在したのか。台良君の言っていた人物が……」

 

 

 塚地の前に立つ戦士、仮面ライダーブレスは、挑発するように手招いた。

 




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