仮面ライダーブレス   作:ぴな子

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タイトルは思いついたら付けます

台良君、名前めちゃくちゃ出てくるのに、本人が全く登場しない。


3.

「……本当に、存在したのか。台良君の言っていた人物が……」

 

 塚地の前に立つ戦士、仮面ライダーブレスは、挑発するように手招いた。

 

『ちょうしに、のるな!』

 

 掴まれた鞭を振り解き、何度も叩きつける。夏来はそれを避けながら剣を生み出し、ジャンクズに詰めよる。

 地面がえぐれるたびに詰まっていく距離に、ジャンクズは焦りだす。

 

『っぁ!』

 ジャンクズが悲鳴を上げる前に、夏来は突き刺した剣にフィルターを差し込む。

 すると、刺さった剣が透明になった所から緑色に染まっていく。

 

 ジャンクズの身体は黒くなり、引き抜いた瞬間木屑となって辺りに散らばった。

 

 

 ジャンクズが消滅した後、固まっている洪城達を一瞥し、立ち去ろうとする。

 

 我に返った洪城が夏来に向かって叫ぶ。

「あなたは誰なんですか!? ジャンクズの敵なんですよね! だったら、僕たちに協力してくれませんか!」

 少し反応するが、立ち止まる様子のない夏来を追いかけ、腕をつかむ。

「ちょっと、話ぐらい、っうぁ」

 夏来は洪城に掴まれた腕を払い、建物の上へ飛び上がると、暗闇に消えていった。

 

「こ、洪城、大丈夫か」

 塚地は強打した体を無理やり動かし、洪城の方へと歩み寄る。

「塚地! お前の方が大丈夫じゃないだろ。無理に動くな。今車を呼ぶ」

 すまないと洪城にあやまり、少女に近づく。

「もう大丈夫だ。ちょっとだけお話を聞きたいから、親御さんに連絡を入れてもらってもいいかい」

 憔悴しきった顔の少女は頷き、スマートフォンを取り出した。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「昨日の女子中学生からは、特に何の情報も出なかった、と」

 警察署に設置された、失踪事件兼未確認知能体対策班の課長、柿原 陽一(かきはら よういち)は白髪混じりの髪をかき上げ、資料に目を通す。

 

 スチールキャビネットで壁がほとんど見えない無機質な室内。5人分のデスクが並んでいるが、使用者がいない2つの机は、資料置き場として使われていた。

 室内に置かれたホワイトボードには、今年に入ってから報告された失踪者と昨日の少女の様に、ジャンクズに一度や二度襲われた人物の情報が張り付けられている。

 

「でも、博雪先生がおっしゃっていた、ジャンクズを倒している人物らしきものと接触しました」

 塚地がすかさずフォローするが、柿原からはため息が漏れる。

「しかし、言葉を発することなく立ち去った、か。……防犯カメラに映らず、目撃者もいない」

 蒸発した様に消え失せる人物、というのがこの場にいる全員の感想だった。

「かなりこの土地に精通している人物か、……考えたくないが、人間ではない何か、か」

 柿原の言葉が重くのしかかる。

 

「それじゃあ、ジャンクズ同士で潰し合ってる、ってこと?」

「それを判断するのは俺らじゃなくて、先生達だから」

 小さくつぶやく洪城にそう返す塚地は、腕時計の時間を確認する。

「ということで、博雪先生の研究所に行ってきます」

 そう言うと、マグカップに残ったコーヒーを飲み干し、対策室を出ていく。

 

「昨日の人物、人間じゃなくても話の分かる協力的な人だったらなぁ」

「無視されたんだろ。その時点でダメだろ」

「何か急いでたとか!」

「お前は、のんきか」

 バシンと柿原にファイルで叩かれ、洪城は痛いと漏らす。

 

「あ、僕も采雨先生の所に行ってきます」

 聞きたいことがあるので、そう言って対策室を出た洪城は采雨に連絡を入れ、先程塚地が向かった研究所にバイクを走らせた。

 

 

 

 

 研究所に着いた洪城は、一室に通される。資料の積まれた部屋は対策室を連想させるが、可愛い小物やよくわからない薬品のちぐはくさが対策室の無機質な部屋と違い、異様さがにじみ出ている。そんな部屋に1人ぽつんと塚地が座っていた。

 先に着き30分以上待たされていた塚地は洪城の入室を博雪と勘違いし立ち上がるが、顔を見た途端微妙な表情をし、腰を下ろす。なぜかナース服を身につけた女性がお茶を持ってくるが、洪城は気にすることなく受け取る。塚地は博雪がいつ来てくれるか問うが、わからないと返答されてしまった。

 

 

 ナースが退室して入れ替わるように采雨が部屋に入ってきた。

「洪城君ごめんね~、こっち来てもらって。って、塚地君もきてたの」

「いえ、急に押し掛けたのはこちらなので」

 采雨の軽い謝罪にそう返した洪城は、本題に入る。

 

「昨日報告した、ジャンクズについてなんですが」

「ええ、見させてもらったわ」

 

 日鏡大学の考古学教授の采雨は、未確認知能体対策の為に組織されたReWPの一員である。未確認知能体、ジャンクズは、生亶山にある遺跡と何らかの関連がある、というのが彼女の見解だ。

 

「それで、ジャンクズの発言で気になるものがあって……」

「『わたしのいろ』って発言ね」

「はい」

 昨日だけではない、襲われた人が口々に証言していたのだ。言葉は違えど意味は同じ共通の発言。洪城はジャンクズが特定の人間を襲おうとする理由があるはずと、采雨に力説する。

 

 采雨は洪城の考えに頷き賛同する。

「本当は、ちゃんと確証を持ってからにしたかったのだけど……」

 少しだけ眉を下げ、申し訳なさそうに続ける。

「私の調べている遺跡とジャンクズに何らかの関係があるのなら」

「彼らにとって、色とは個という認識なのだと思う」

「どういうことですか?」

 そう訊いてきた洪城と塚地に向かって、数枚の資料を見せる。資料には、被害者が証言したジャンクズの特徴をまとめたものだった。采雨はその資料の色の項目を指し、説明する。

 

「彼らはそれぞれ自分の色を有しているのはわかるわね」

 項目には、灰色・緑、灰色・黄色、と灰色と+αとして、緑・黄色・紫と記述されている。ただし、最初に薄い色、という発言が全てに付いていた。

「この色が彼らの色、個人として認識できる唯一のものなのだと考えてる」

「えーと」

 わからない、といった顔の2人に采雨は何とか伝えようとする。

「つまりね、私が洪城君のことを茶髪で背の高い童顔ののんきな26歳、って認識するのと同じ役割をしているの。ジャンクズは、それを色で判断してるってこと」

「ちょ、そんな風に思ってたんですか!? 僕全然のんきじゃないです」

 突然例にされ、のんきと言われた洪城は頬を膨らまし抗議するが、塚地にそこじゃないだろと咎められる。

 

「そして、私たち人間もジャンクズの色をそれぞれ持っている。それを狙って襲っている、と考えられるわ」

「私たちはそれを」

 采雨は説明を続けようとするが、扉が開く音と入室してきた人物の声に遮られる。

「ごめん、ごめん。遅くなっちゃって」

 軽い謝罪とともに博雪が入ってくると、塚地は立ち上がり会釈する。

 話を遮られた眉をひそめるが、洪城に促され話を続ける。

「この色のことを、カラーエナジーと呼んでいるの」

 カラーエナジーという言葉に博雪は割って説明をする。

「カラーエナジーってのは、わかりやすく言うと、生命力のことだよ」

「人間も色を持ってるって言ったでしょ。ジャンクズはこのカラーエナジーを狙って、自分と同じ色の人間、特定の人物を襲ってる、と言えるわ」

 采雨も負けじと言葉を続ける。

 

「それじゃあ、何のためにカラーエナジーを?」

 ジャンクズが特定の人間を襲う理由が分かったが、カラーエナジーを求める理由がわからない。洪城と塚地は、豪山兄妹に問うが、どちらも首を振る。

「ごめんなさい。それはまだわからないの」

「だが、ここ数年で増え続けるジャンクズ被害と何らかの関係はあると思う」

 そう言うと、口を閉ざしてしまった。

 

 塚地は思い出したように、博雪にビートガンを取り出し、ここに来た訳を話す。

「使用したビートガンなんですが、ジャンクズにあまり効果がなくて」

 昨日の戦闘ではジャンクズをひるませることはできたが、致命傷を与えられなかったと報告する。それに博雪は説明不足だったと謝る。

「この銃の弾丸にはさっきの話に出たカラーエナジーを使っている。……人工的なものだけどね」

「そして、ジャンクズの色によって使い分けないと主な効果を発揮しない」

 博雪はそう言うと、2人にプロフォンを渡す。

「君たちに渡すのが遅れすまなかった。あまり量産できなくてね」

「スマートフォンですか?」

 洪城と塚地は渡されたプロフォンを触りながら、博雪に使い方を尋ねる。

「それはプロフォン、武器の登録、転送ができる代物だ。これを使えば弾を入れ替えずに入ったものが転送される」

「弾は5種、ジャンクズは自分の色以外に寛容ではないみたいでね、反対色を射ち込むと過剰反応を起こす。体内のカラーエナジーで傷が修復させない効果がある」

 そこまで言うと、一呼吸入れる。

 

「ただ、元々この銃はREシステムのために作られたものだ。生身のままでは外傷は与えられても、致命傷になることはあまりないと思っておいてくれ」

 あまり無茶をしないでくれと言われ、洪城は笑ってしまう。

「人命救助が出来たら、無茶しません」

 洪城の言葉に塚地も同意した。

 

 

「そういえば、REシステムベルト完成したって本当ですか」

 塚地の何気ない質問で博雪と采雨の空気が険悪なものになっていく。洪城にやっちゃったなという目で見られ、慌てて発言を撤回するがこの兄妹は止まらない。

「普通一般人だった台良君にアレを渡す?」

「そもそもあのシステムは僕が台良君のために作ったものだ。当たり前の結果だ」

「へぇ、警察からも予算ちょこまかして」

「警察の分は今製造中だ」

「先生!? 今警察の予算って」

 しまったという顔の博雪は取り繕い、采雨はしたり顔でそれを眺める。

「い、一応塚地君が扱う用のシステムベルトを造る予算だよ。台良君に渡したものより攻撃特化を目指している」

 しどろもどろになりながら、自身の潔白を証明する。

「俺ですか」

 突然自分の名を出され驚く塚地に博雪は畳みかける。

「あ、ああ。ちなみに武器のリクエストなんかあるかい?」

「何か思いついたら連絡します」

「今製作中なのはスナイパーライフルだ。洪城君は射撃が得意だったよね」

「え、はい。それより台良君が戦うって、どういうことですか。だって彼、采雨先生の助手ですよね」

 洪城や塚地にとって、台良とは守るべき対象であるため、危険な場所へ送り出すことを許容できない。それも、昨日の様に未知の力を使ってくるかもしれない。台良にREシステムを使用させるべきではないと博雪に伝えるが、真剣みのある目でそれはできないと断られる。

「台良君の願いを叶える。これが僕たちに出来る贖罪だ」

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 夕方でお客があまり来ない時間帯のため店番をしていた美波は夏来がいる奥の部屋に戻る。電気の付いていない室内は夕日で朱く染まっていた。室内に置かれた4つの椅子の1つ、自然とそれぞれの席が決まった椅子に、夏来は何をするわけでもなく、ただ、ぼーっと座っていた。

「どうしたの? なんか昨日から変だよ」

 美波は自分の椅子、夏来の隣に座り声を掛ける。美波が入ってきたことに気づかなかった夏来は、間近で聞こえる美波の声に肩を震わせ驚く。

「そんな驚かなくてもいいじゃん」

 そんな様子の夏来を笑い、テレビをつけた。

 テレビからは全国のニュースが流れだし、静寂な室内に音をあたえた。

 

 

 夏来は昨日の洪城のことを考えていた。

 ジャンクズの敵。

 ジャンクズとは、自分が倒している怪物の総称なのだろう。

 洪城は警察官で昨日一緒にいた人も警察官なのか。それに協力してくれって単純に考えてもいいのだろうか。前に研究所に出入りしているのを見ている。サンプルとして扱われるかも……、など変なことばかり考えてしまい、堂々巡りばかりの思考を続けているうちに夕方になっていた。

 

 しかし、昨日怪我をしてまで少女をかばっていた。

 本来は自分がしなければいけなかったことだ。

 

 

 明日それとなく聞いてみよう。

 そう決意した夏来はテレビを見ている美波に声を掛ける。

 

「明日の朝の店番だけど、代わってもらっていい?」

「どうしたの、急に」

「ちょっと、レジとか接客の練習したいなぁって……」

 少し苦しい口実に夏来は美波の顔色を伺う。

「いいけど……。やっぱ、今日変だよ」

 テレビを見ていた美波は振り返り、夏来の顔を覗き込む。

「そうかな」

「そうだよ」

 自分じゃ分からないもんだよ、と美波に言われ、夏来は首を傾げた。

 

 

 





メドウグリーンのジャンクズ(マイク)

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