仮面ライダーブレス   作:ぴな子

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6.

 

『君も彼の色が欲しかったんだろ。……それじゃ彼の力で消えてもらおうか!』

 

 高らかに笑うジャンクズの体、灰色の箇所を、吸い込んだ納戸色が浸蝕してゆく。

 色が馴染んだ体、物々しくより切れ味の上がった刃は確実に夏来へと向いている。

 

 間に合わなかった。

 

 夏来は心の中で愚痴る。

 人間を襲い、色を手に入れ、染まったジャンクズを何体か相手にしたことがあった夏来は、こうなった相手に一瞬でも気を抜けばやられると過去の経験から分かっていたため、染まる前に倒したかったのだが、そう上手くいかない。

 

 剣を生み出し構える夏来にジャンクズは鋭い刃を押し出し、切り刻もうと走ってくる。

 まともに受け止めれば押し負ける、そう感じた夏来は剣を少し当て、突き付けてきた刃を弾き、足を蹴る。

 バランスを崩したジャンクズは転びそうになるのを踏み止まりこらえるが、背後から斬りつけられ、うめき声を出す。しかし傷はカラーエナジーによって回復してゆく。

「こうなったら、何でもありだな。ホント」

 つい言葉がこぼれる夏来にジャンクズは内側がローラーになっている鈍器の様な物を振り回し攻撃してくる。何発か避けるが、鈍器が目の前に迫った時、咄嗟に剣で受ける。ガンッと鈍い音と共に剣が弾かれ、握っていた両手が上がり、大きく隙ができる。ジャンクズはそれを見逃さない。

 ガラ空きになった胴体に刃を押し付ける。刃の当たる金属音と火花が散らばる。

「っう゛!」

 吹き飛ばされ木にぶち当たり、激痛が夏来を襲う。しかし倒れることはない。

『結構本気で殺すつもりだったのにな……!』

 ジャンクズは言い終える前に鋭い刃を回転させながら同じ場所を狙う。

 だが夏来に突き当たる前にジャンクズの動きが一瞬止まる。

 

 ジャンクズの足に黒い槍が突き刺さっていた。

 動きの止まったジャンクズに追い打ちをかける様に、夏来は槍を生み出し投げつける。

 

 黒い槍の刺さった納戸色の部分は色が抜けていくように灰色に変色してゆく。

 

 ジャンクズは槍を抜こうともがき暴れる。

 黒い槍はもろく動くとすぐに崩れるが、夏来が放った緑の槍はジャンクズに深く突き刺さり、体を抉っている。

 ジャンクズは自分の身体から色が抜け落ちていることに気づき、錯乱し、絶叫する。

『おれのいろがっ! いやだ! しなないでくれ! きえないで!』

 

 夏来はバックルからフィルターを抜き出し、剣の鍔に差し込む。

 ガシャ、押し込まれる音が鳴り、剣身は銀から透き通るガラスの様に変様する。

 

『……許さない。俺の、色を、返せ!』

 力の限り振り回す鈍器と丸い刃を避ける。

 3発目、大きく振り上げたジャンクズの攻撃に屈み、懐へと入る。

 

 ジャンクズに突き刺さった剣に納戸色が流れこむ。

 

『もっと、いっしょに……』

 刺さった箇所から色が抜け、黒く変色してゆく。

 

 ジャンクズは黒い木屑となって、消滅した。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 台良は前に取り逃したジャンクズを撃滅するため、豪山から送られてきた位置情報から洪城がいる位置に向かってゆくジャンクズを追いかける。少しでも洪城に負担を掛けないよう、人が退避した自然運動公園の遊歩道をバイクで爆走した。

 

 

 

 洪城は迷いなく近づいてくるジャンクズに、青いカラーエナジーの弾丸に変え、親子から少し離れた場所を位置取る。子供しか目に入らないジャンクズに不意打ちするためである。母親には何があっても飛び出さないでくださいと伝えていた。

 台良が戦った時の印象で気が短く視野が狭いと感じたからだ。怒らせて、台良が着くまでの時間を稼げれば十分だと考えた。

 

 自分たち以外の草を踏み近づいてくる足音に緊張感が漂う。

 

「そこにいるんだろー、怖くないよー」

 間延びした男の声が耳に入る。

 

 洪城の数m先の横を通り過ぎる人間態のジャンクズの背中に向かって発砲する。

「う゛あ゛! ってめぇ、ふざけんな』

 背後から攻撃されキレるジャンクズは洪城のいる方向へ左腕の銃を乱発する。

 木を盾にしながらなんとか攻撃を逃れるが、このままだと親子が巻き込まれてしまう。

 ジャンクズは洪城に向かって今この時も撃ちこんでくる。避けるのに手一杯で考えがまとまらず、打開策が出てこない洪城に、台良から連絡が入る。

「洪城さん、交戦中ですよね」

「うん、かなりやばい。このままだと親子を巻き込んでしまう」

「歩道まで誘導できますか」

「わかった」

 

 台良の案に乗っかった洪城はジャンクズを挑発する。

「ぜんっぜん当たってないぞ、このへっぽこ!」

『んだとてめぇ!』

 案の定キレたジャンクズに歩道へと走りながらさらに挑発する。

「下手くそー! えーと、この単細胞!」

『? とりあえず、殺す!』

 言葉の意味は分からないが、とりあえず侮辱されたと直感的に感じたジャンクズは、思惑通り洪城を追いかけ、歩道へと誘導される。

「いっ! やばっ」

 後ろからの銃弾が数箇所掠める。スーツが裂け、少し血が滲むが、立ち止まれば死ぬと洪城は必死に走った。

 

 冷や汗を滝の様に流す洪城は歩道へと出る。

 木という障害物の無い空間に出た洪城にジャンクズはしめたと舌なめずりをする。

 

 ジャンクズは確実に殺そうと右腕の針を光らせる。

 

 が、ジャンクズは台良のバイクで吹き飛ばされる。

「洪城さん! ここからは俺に任せてください」

「、ああ、頼んだ!」

 台良にジャンクズの対処を任せると、洪城は親子の元へ戻った。

 

 

 

『てめぇ! 何回ぶつけてんだよ!』

「3回目だ」

 

 台良は既に巻かれたベルトにプロフォンをかざす。

 

《 SANCTION 》

 

「次は俺の相手をしてもらうぞ」

「変身!」

 バックルのシルバーを下げ、銀と青いラインの鎧に身を包む。

 

《 INPUT 》

 

 素早くビートガンを2つ転送し構える。

 この間の戦闘で学習したのか、ジャンクズは銃を撃ってくるだけで突っ込んでこない。

 射程はジャンクズの扱う銃の方が長いため近づく必要があるが、うかつに近づけば鋭い針の餌食になるのは目に見えている。

 ジャンクズの銃弾を弾きながら、台良は策を考える。

 バイクで一気に近づくことも考えたが、パンクさせられると殺傷力が下がると思い却下する。

 

 取り敢えず守ってばかりではどうにもならないと、ビートガンの射程距離まで近づき、攻撃を仕掛ける。弾が当たるたびにうめき声を出すジャンクズの銃声がだんだん収まっていく。

 息を切らすジャンクズを、台良は警戒し注視する。銃弾は針で何発か弾かれるが、明らかに疲労していた。

 

 台良はジャンクズの身体が前より灰色になっていることに気づく。

「とどめをさせそうだが、まだゲージが」

 バックルのエネルギーメーターを確認する。9割ほど溜まっており、もう少しで出力最大の攻撃が出せることが判ると、確実にゲージを溜め、攻撃を当てるために、ジャンクズに素早く接近する。

 

 ジャンクズの左腕の銃はとっくに消滅しており、台良の攻撃に針で対抗する。

 台良は突いてくるジャンクズの針を掴むと体を捻り、思い切りジャンクズの腹に肘を叩き込む。

『っぐえ、が、は』

「溜まった!」

 倒れこみえずくジャンクズから離れる。

 台良はプロフォンを操作し、溜まったエネルギーをビートガンへ転送する。

 

《 ABSORD FINISHE 》

 

 ビートガンに濃縮されたエネルギーが集まり、キュイーンと高周波が鳴り渡る。

「連帯責任だ。死で償え」

 台良は引き金を引く。

 

 強大なエネルギーを纏ったカラーエナジーの弾丸はジャンクズへと命中し、緑の爆発を起こした。

 

 

 ジャンクズが消滅したことを確認し、豪山へ報告する。

 豪山から労いの言葉をもらった後、怪我を負った洪城が気になり、連絡を入れる。

「台良君! 大丈夫かい、怪我はない?」

「あ、はい。それより洪城さんのほうが」

「よかった! こっちは2人とも何ともないよ。安全な所に避難させたから」

「え、いや、洪城さん怪我してましたよね。俺、応急処置出来るんでそっち行きます。今どこですか」

「え、あー、東門の、エリアの中央にある噴水広場近くの駐車場だよ」

「わかりました、すぐ行きます」

 通話を切った後早く向かおうとバイクに跨るが、ここが遊歩道だったことを思い出す。流石に今走るのはマズいと、台良はすぐ行くと言った洪城に対し申し訳ないと思いながら、バイクを押して出来るだけ速く歩いた。

 

 そういえば青いジャンクズはどうなったのかと、干渉反応を知らせるプロフォンのアプリを確認すると、履歴が2つ残っているだけで、現在干渉反応無し、と表示されている。

 台良の表情が、少年の、まるで憧れのヒーローに会った様な、歓喜に染まってゆく。

 

「やっぱりすごいな、正義の味方」

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 夏来はジャンクズを倒した後、すぐに変身を解いたことを後悔した。

 後ろで誰かが見ている。

 誰か確かめたいが、振り返れば顔を見られてしまうと思い、ぐっと我慢する。知り合いだったら、と考えるとジャンクズと戦っている時とは違う緊張が走る。

 

 

 塚地は青いジャンクズと緑の戦士が戦い、消滅したところを陰から見ていた。戦士が吹き飛ばされたとき、塚地は微力ながら加勢しようとしたが、それは不要に終わった。

 

 ジャンクズが消滅した後、塚地は緑の戦士が人間の姿になるのを待った。人間でもジャンクズだった場合でも顔さえ確認できれば、探すのは容易だ。探し出した後はこちらの事情を話して協力関係を結べばいいと考えたからだ。こちらは警察、相手がどれだけ常識を持っているかわからないが、まともだったら信用を得られるだろう。

 戦士の手がベルトへと伸びた。

 

 現れたのは、台良とそう変わらない青年だった。

 なぜか立ち止まっている青年の背に塚地は声を掛ける。足を踏み出した瞬間、青年、夏来は走り出した。

「ちょっと! 待って!」

 逃げられて堪るかと塚地は追いかける。普段から鍛えている警察官とただの弁当屋の青年の差は明らかだった。

 

 腕を掴まれた夏来は怯えたように下を向く。

 塚地は少し見覚えがある青年に驚く。かなり前に研究所前で洪城と話していた青年だったからだ。同僚の知り合いだったことに塚地は動揺を隠せない。掴んでいた腕が離れる。

 

「すみません」

 最初に口を開いたのは夏来だった。逃げ出したことに対してか前に洪城の手を振り払ったことに対してなのか判らないが謝罪が落される。

 夏来は塚地の目を見て、意を決して塚地へと頭を下げる。

「お願いします! ――――。」

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 洪城が呼んだ車で保護した親子を家まで送りだした後、駐車場で塚地と洪城は合流した。台良はすでに研究所へと戻っており、お互いに何があったのか報告する。塚地は一瞬言葉に詰まらせるが、特に何もなかったと答えた。

「そっか、結局あの戦士が誰かわからなかったのか」

「、ああ、すまん」

 謝る塚地に洪城は気にするなと背を叩き励ます。笑いながら、それよりと頭を掻く。

「台良君に早く怪我治したいなら、病院か那賀野先生の所に行ってください、って言われちゃった」

「報告書書いたら、連れていくか?」

「お、やったー」

「警察官がバイク事故起こしたら、交通課のやつらに何言われるか怖いからな」

 軽口を叩きながら、2人の乗った車は自然運動公園を後にした。

 

 

 

 





卵色のジャンクズ(コンパス)
納戸色のジャンクズ(パイプカッター)

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