この作品はフィクションです。
また戦闘シーンが無く、とても中途半端です。
申し訳ございません。
「あー、マジ苛つくわぁ」
美術室で屯する少女たちの1人が突如大声を出す。それを聞いて他の少女たちはクスクスと笑う。
「ひーちゃんほんっと嫌いだよねー。おもしろかったじゃん、あの顔」
「まじうけたわ。泣きそうになりながら片付けてさ。その上、水掛けられてびしょびしょ」
何が苛つくのとばかりにひーちゃんと呼ぶ少女に先程の出来事を言っていく。それを聞いて一緒に笑っていたが、気に入らないと口を開く。
「あいつのさ、なんつーの、自分かわいそうな子感ってのがむかつく。か弱い子アピールがうざい」
「それな。ちょっと顔良いからって、男子の気引こうって必死すぎ」
ひーちゃんの言い分に同意するようにとある少女への発言がエスカレートしていく。夕日で染まった教室から出る様子のない少女たちの話す内容はどんどんひどくなっていく。
1人の少女が思いついたと机をバンバンと叩き、注目を集める。
「夏休みのさ、部活日程の紙渡さずに休日も来させようよ!」
「うっわ、お前サイコーかよ」
げらげらと笑う集団は、廊下で聞いていた生徒に気づかない。
少女たちの話題は違う人物へと移る。
「てかさ、あいつと一緒にいる奴、まじ目怖くね」
「わかる。こよみちゃんでしょ。うちのクラスだけど、なんで
しゃべりに夢中だった少女たちの1人が時計を見て、うわっと声を上げる。まだ日は沈んでいないが6時半を過ぎていた。帰ろうと一斉にカバンを持ち教室を出ていった。
「ひーちゃん、じゃーねー」
「ばいばーい」
3人と別れたひーちゃんもとい
「まじじゃまなんだけど、なんなの」
振り向こうとする少女に勝ったと思い上がる。さらにまくし立てようと歪んだ口を開けようとするが、驚きで固まる。動揺したことを悟られないように、いつもと変わらない口調でいようと意識するが、僅かに上ずった声が出ていた。
「……なに、何か用? じゃまだからどいてくれない」
振り向いた少女はさっきまでの会話に出てきた少女だった。
「どうしてあずさを虐めるの」
無表情な、人形の様な光も濁りもない眼に思わず後ずさる。得体の知れない寒気が妃華莉を襲うが、プライドの高い彼女は思わず言い返してしまう。
「あ、あんたには関係ないでしょ!」
怒鳴り散らす妃華莉に少女は一歩、また一歩と近づく。
「な、なによ。こっちくんな! な、ぇ、」
妃華莉の怒鳴り声は困惑から恐怖へと変わる。
「あ、あ、ぁ」
腰が抜け、その場で倒れる。
彼女の目の前には少女の姿はなく、異形の怪物が妃華莉を見下ろしていた。
目を見開き、唯々涙を流す少女の顔に黄色い不透明な粘着物を押し付ける。
もがき、苦しむ表情を只々見ている。そこに一切の感情は無かった。
痙攣を起こす妃華莉の首を持ち、腹に手を突っ込む。
かき回す手付きが止まり青っぽい球体を取り出すと、少女を投げ捨てた。
妃華莉の肌に木屑がまとわりついた。
――――――――――――――――――――――――
昨日ろくに眠れなかった夏来は、あくびを噛み殺しながら朝早く彰悟と一緒に食材の下ごしらえをしていた。遅れて美波が厨房へ行くと、落ちそうな瞼を必死に上げる夏来と、落ちそうになるたび耳元で手を叩き、起こしている彰悟の姿があった。
「なにしてるの」
冷たい美波の声に彰悟の手は夏来の肩へと素早く置かれる。肩を揺すられ、どうにか目を開けた夏来は、厨房に来ていた美波に寝ぼけた声でおはようと告げる。
「おはようするのはそっちでしょ。もう一回顔洗ってきなよ」
美波は包丁を置かせ、夏来のエプロンを引っ張る。
「……うん、そうする。あ、米まだ炊けてないから」
ドア付近で立ち止まり、夏来は背中を押す美波に言う。
「わかったから、はやく!」
美波は夏来を洗面所へと行かせ、2人のやり取りを笑いながら見ていた彰悟を呆れた目で見据える。次の標的にされた彰悟は誤魔化すように視線を自分の手へ向けるが、隣から美波の揺れる頭がのぞき込んでくる。
「もう、ちゃんと起こさないとダメでしょ!」
軽く睨みつける美波の頭に彰悟は無意識に手を乗っける。
「ははは、ごめんって。珍しくてさ」
「怪我したらどうするの」
美波の説教に素直に謝った彰悟は宥める様にぽんぽんと頭を撫でる。
「お兄ちゃん、私もう子供じゃないんだから」
やめてと言うわりに美波は嬉しそうに目を細めた。
「めっちゃ目さめた」
洗面所から帰ってきた夏来を加え、3人は遅れを取り戻すようにテキパキと働き始めた。
朝のラッシュ中夏来は店に来るお客、洪城に対して気が気でなく目の前のことに集中できず、店の方に耳をそばだてていた。昨日塚地との約束を完全に信用することが出来なかったからだ。
しかし、夏来の思いは杞憂に終わった。
洪城の様子も普通だったし、美波も何も言わずに隣で一緒に朝ご飯を食べている。昨日の夜、塚地に正体がばれたことに心配や不安で全く眠れなかった夏来は今安堵に包まれていた。緊張で張りつめていた精神にゆとりが出来たことで、再び瞼が下がりそうになるが、彰悟と美波の声でそれは阻止された。
――――――――――――――――――――――――
洪城を研究所にいる那賀野に預けた塚地はそのまま豪山の元へ向かった。モニタールームで指揮を執っていた豪山に急用と声を掛ける。武器についての相談と思ったのだろう、地下の特2で待っていてくれと言われ、塚地は一人で向かった。
会議室のような椅子とテーブル、ホワイトボートしかない室内、地下のため窓がなく閉鎖的な空間で待っている間、今から豪山に報告しようとしている事柄、夏来との約束を破ることに対し、申し訳なさが塚地を苛む。
つい先ほどの出来事を思い出す。
変身を解いた後、走って逃げた彼を追いかけ捕まえたこと。怯えた表情と掴んだ時の強張った腕、決意した目で言われた言葉。
「お願いします! 俺がジャンクズと戦っているってこと、誰にも言わないでください!」
頭を下げ、懇願する彼に喉まで出かかっていた言葉を飲み込んだ。
「……どうして、正体を隠す必要がある? 同じジャンクズの敵なら協力した方が」
「俺は! 俺は一人でも大丈夫です。ああやって戦えるから。でも洪城さんやあなたは生身で、……死ぬかもしれない。変身していたあの男の人も。それに、こんなことやってるの、か、家族に知られたくないんです。どうしても」
「だから、約束してください。誰にも言わないで、俺のこと忘れてください。俺、今以上に被害出さないよう頑張るので、お願いします」
息の、呼吸の仕方も忘れるくらい、夏来の気迫に押される。
「あ、あぁ」
どうやってその力を手に入れたのか、どうして戦っているのか、聞きたいことがたくさんあったはずなのに、やっと喉を震わせたときには、もう頷いていて承諾してしまっていた。安堵した表情で去っていく彼を見つめることしかできなかった。
5分も待つことなく豪山が入ってくる。間髪入れず、いつもの調子で軽い謝罪をすると塚地の正面の席に着いた。
一度助けてもらった、いわば命の恩人である青年の約束も守らないことに罪悪感から心臓を握られているような痛みを感じた。
「塚地君なんかいい武器思いついた感じ? それとも欲しい機能とか」
「いえ、今日はそのことではなくて、その、謎の人物のことで」
塚地の発言に豪山は少し目を見開くが、ひどく落ち着いた口調になる。
「それで、誰か分かった感じかな」
塚地は洪城から聞いた夏来についてと言われた内容を豪山に話した。黙って聞いていた豪山は塚地が話し終わってから、淡々と質問していく。
「この事は僕以外には」
「言ってません。洪城や柿原さんにも」
「他に何も訊いていないんだね」
「……気圧されて、何も言えませんでした」
正直に答えた。思い出すたびに手の平から汗が滲んでくる。
「そっかー、そっか、そっか」
納得した様に繰り返される言葉には、どうするべきかわからない難解だという思いが滲み出ていた。ふぅと一息ついた豪山は、一応青年の身元だけ調べておいてくれと提案した。
それと、と豪山はキャリーケースから部品を取り出し組み立ててゆく。組み立て終わりテーブルに置かれたものは、スナイパーライフルだった。もう一つと手榴弾らしきものを2つ取り出す。
「これは」
「前言ってたスナイパーライフルだよ」
「それと君たちは無茶をするから、こっちのパイナップル型が殺傷能力があるもので、こっちは閃光弾。本当はグレネードで音響手榴弾の方がいいと思ったんだけど、ジャンクズに効果があるか分からないからね。君たちが使っていた通常の物より威力が高いから実験と思って一度使ってみてくれ!」
ライフルと形の違う手榴弾について爛々と目を光らせ説明をしていく。
「改造したものだから癖があるけど慣れてくれ。ライフルは一丁しか無いから大事に扱ってほしい。スコープの調整はしておいたけど、問題があったら言ってね。じゃあ洪城君によろしく」
「ありがとうございます……」
早口で熱を帯びた豪山に引き気味で礼を言う。ライフルケースを渡され、話は終わったというように部屋を出る豪山に、塚地はふと尋ねる。
「どうして博雪先生は台良君に肩入れしているんですか」
突然の質問にきょとんとするがまるで我が子を自慢するように喋りだす。
「彼はいいよ。決して立ち止まらない。だから僕たちの所にいる」
「ま、台良君の事情を考えると、あの青年も何かあるんだろうね」
そう言い終わると塚地を残し、部屋を後にした。
「遅かったな」
塚地がロビーへ向かうと手当された洪城が座っており、スマフォをいじりながら待っていた。
「すまん、ちょっと長引いた。それでこれ預かってきたぞ」
ライフルケースとプロフォンに登録された手榴弾を見せ、受けた説明を省略しながら話す。テンションの上がった豪山が簡単に想像できた洪城は、お疲れ様ですと塚地に手を合わせた。
「お前の方は大丈夫なのか、さっきよりふらついてないか?」
ここに来るまで普通だった洪城は、今はぎこちなく歩いている。
「いやなんかこう、安全って思うと痛みが訴えてくるんだよね。不思議」
呑気に笑う洪城に、塚地は力が抜けていく感覚に襲われた。
「ボロボロになっちゃったな。新しいスーツ買わないとなぁ」
洪城と塚地の溜息が重なった。
――――――――――――――――――――――――
太陽は雲に隠れることなく熱を振りまき、2人の少女がいる教室はまるでサウナの様に熱い。開け放たれた窓からは熱風が入り込み、地獄を作り上げていた。少女たちは日の当たらない教室の奥に座っていたが、おさげの少女は当然の様に滲む汗で額に前髪が張り付いている。冷やしたハンカチを肌にくっつけるがすぐにぬるくなり、機能をはたしていなかった。
もう一人の少女は汗1つかくことなく涼しそうな顔をしている。そんな少女を恨めしく見ることなく、おさげの少女は小さく謝る。
「……ごめん。今日部活休みだったのに、私知らなくて」
少し湿った声で零された声はセミの鳴き声でかき消されてしまいそうなほど弱弱しかった。
「大丈夫だよ。あずさと一緒だもん。笑い話にしてどっか遊びに行こう?」
「……うん、こよみはいつでも優しいね」
「当たり前でしょ! あずさは私がずーっと守るからね!」
こよみと呼ばれた少女は向日葵色のシュシュをつけた右手をあずさへと伸ばす。片方の手でカバンを掴み、廊下へと駆けだした。
「ま、まって! はやいよ!」
「最後の夏休みだよ! 思い出いっぱい作らないと!」
引きずられるように走っていたあずさは、今は笑顔でこよみの横を走っていた。
――――――――――――――――――――――――
「こりゃひどいですね。まだ中学生なのに」
中年の刑事が思わず呟く。同意を求められた隣に立つ若い刑事は、少女の遺体に顔をしかめた。
顔をしかめた捜査第一課警部補の
「被害者は
「死因ですが、顔の粘着物による窒息死ですね。先日の井口妃華莉殺害と同じ物体だと思います」
「そうか。短いスパンで同じ事件が2件もか。同じ学校、同じ部活だったよな」
先日起きた殺害事件の際、井口妃華莉が死亡する前、最後に会ったという生徒に事情聴取した時にこの被害者もいたことを思い出す。依然犯人の手がかりを掴めていないこの状況に警察は焦りを感じていた。
「第一発見者の証言ですと、路地裏のゴミ捨て場に投げられたように遺体があったそうです」
「近くの住人等に聞き込みを行いましたが、怪しい人物の情報はありませんでした」
「13時28分にコンビニ入店から13時40分に退出、外の防犯カメラには43分までの映像がありましたが、それ以降の目撃情報はありません」
報告されるものからはなんの進展もなく、鑑識の報告だけが頼りだった。
最後まで閲覧ありがとうございました。
感想や質問、誤字、その他お待ちしております。