東方忘却記   作:マツタケ

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今更ですが、ただいま東方自然癒にドハマりしております。 ストーリーもシステムも超楽しい!!
テンション上がって忘却記のゲーム作っちゃおうかななんて血迷った考えが一瞬浮かんだけど、そんなことしたら軽く2年は確実に更新止まる。


その14

 

 

 

 

日も沈み星々が夜空に輝く中で、それは盛大に賑わっていた。

 

博麗神社。

言わずと知れた異変解決の巫女、博麗霊夢の住まう神社である。

あまり外に出ず修行もせず境内の掃除もしないこの神社は普段は文字通りの閑古鳥だ。

そんな博麗神社もあるイベントの際には普段の静けさが嘘のように賑わい尽す時がある。

 

それが宴会だ。

 

住民のほぼ八割が酒好きで埋め尽くされたこの幻想郷。

酒は力を持つ者も持たざる者も誰しもが楽しめる娯楽のひとつとなっていた。

 

ただし、その宴会の場に使われているのは仮にも人を妖から守る象徴と言っても過言ではない神社だ。

にも関わらずこの宴会会場に集まっているほとんどが妖怪や幽霊など、ほぼ物の怪で埋め尽くされている。

その愛らしい外見に反してほとんどの妖怪の主食は人間だ。

今でこそ人里“で”人を食ってはならないという決まりが出来ているが、それ以前は一部の能力を持つ人間以外には心休まる日はなかった。

 

そんな人類の天敵がこうやって定期的に一斉に集まって宴会を開いているのだ。

参拝客が来ないのも道理というものである。

一応神社“で”人は食うなと霊夢が言っているのだが、能力を持たない人間からすれば焼け石に水同然なのだろう。

 

ともあれ、博麗神社にこうして妖怪達が集まり宴会をするというのがもはや恒例行事となっていた。

そんな妖怪共を招き宴会の幹事をしているのが、博麗霊夢……ではなく

 

「よぉ――っし!みんなァ、コップは行き渡ったかァ!?」

 

自称普通の魔法使い・霧雨魔理沙だ。

人の身でありながら人妖神鬼問わず招きいれ挙句友人の神社に招待するのだから、この女大物である。

 

「えぇ~~……それではこれより、その他もろもろ難しい挨拶素っ飛ばして!かんぱ……

 

「ちょぉぉっと待っとァァァ―――――っ!!」

 

月の輝く夜空よりその声が魔理沙の言葉を遮った。

誰だ!? そんな疑問に答えるよりも早く一陣の風が駆け、その主は博麗神社に降り立っていた。

 

 

「私が来た!」

 

魔理沙同様に大きな魔女帽子を深くかぶり、上下一体の黒いスカートを身に纏った少女。

毎度お騒がせ。上白沢古河音である。

 

「もう、魔理沙さんってばァ~宴会やるんなら私も誘ってくださいよぉ~☆」

 

腰かけた箒からばっと飛び降りマイク代わりにコップを持った魔理沙のもとへと駆け寄っていった。

突然の乱入者に乾杯を寸でで止められた者達の心中は決して穏やかではない。

 

「いや、お前誘っても酒の飲めないだろ?」

 

言わずもがな、宴会とは酒を楽しむ場である。

飲めない者も料理を振る舞い食し楽しむ事も出来るが、酔っ払いが多い中での素面は返って辛いものがある。

もしかしたら、魔理沙なりの配慮なのかもしれない。

 

 

「ふっふっふ…、私がいつまでも…「古河音っ!?」

 

そんな古河音の登場に誰よりも驚きを隠せなかったのが、彼女の姉。

上白沢慧音だった。

今回彼女も、この宴会に参加している一人だった。

その間の人里の安否は彼女の親友である妹紅が務めている。

むしろ下手に攻め入った妖怪の安否の方が心配な状況である。

というより、今回はむしろ妹紅が彼女にこの宴会を勧めたのだ。

普段ほとんどの時間を授業と里の警護に割いている慧音に気を遣い、たまたま居合わせた妹紅が里の守護を買って出たというのが事の真相だったりする。

 

その際に、古河音が下手なマネをしないようにと頼んだはずなのだが……。

 

「ファファファ…、あの程度の監視で私をどうこうしようなんて甘い甘い!」

 

コップを片手にお預け食らった妖怪たちが大ブーイング。急いで魔理沙が乾杯の音頭をとっていた。

 

 

 

 

「で、どうしてここに?お前は酒は飲めんだろう。それに外の世界では……」

 

「外は外。ここはここ。いや~、やっぱり私も幻想郷に住む者としていつまでもお酒が飲めんままじゃいかんと思った訳なのよ。苦手なものをいつまでも苦手にしておくの良くないってネ!」

 

「そうか、それは良い心がけだ。それじゃあ――――……」

 

どこから取り出されたのか、バサバサと数えきれない量の教本が古河音の前に山のように積まれていった。

その表情は笑っていた。笑っていたが笑っていなかった。

 

「これを機に苦手な教科を克服していくか?え?」

 

慧音が妹紅に古河音を監視させたのは見張ってなければすっぽかすであろう宿題を見張らせる意味もあった。

 

 

 

 

「…まぁ良い。その代わり明日早く起きて終わらせるんだぞ」

 

そう言って差し出される一杯の酒。

慧音としても経緯はどうあれ宴会に出席している身。

それに出来れば酒の席であまり堅い事も言いたくはない。

 

……いつかはこうやって姉妹で飲んでみたいとも心のどこかで思っていた。

 

「おほーっ♪お姉ちゃん太っ腹ぁ~~!ではさっそくいっただきまーっす!!」

 

「ちょっ……待て待て待て!!」

 

慧音の制止も聞かずにコップを両手で掴んで口元にぐいっと。

まるで運動のあとに水を飲むかの様な勢いで多量の酒を口へ押し込んでいった。

完全に酒の飲み方を知らない者の飲み方だ。

 

そして――――……

 

「ぶ――――っ!!」

 

その酒すべてをその肺活量を活かして勢い良く吐き出していった。

……目の前にいた慧音の顔面に向かって。

ぽたぽたと髪から落ちる水滴。

崩れた前髪のせいでその表情が読み取れない。

 

「ま…っず!!なにコレまっず!!こんなもん飲ますなんてお姉ちゃん何考え………あ」

 

古河音は、その場で意識を失った。

酒を吐き出したのは不幸中の幸いなのか、はたまた不幸中の不幸だったのか。

何が原因で意識を失ったのかは神のみぞ知る。

この作品を読んでくださっている方は、くれぐれも無茶な飲み方はしないようお願いしたい。

 

 

 

 

 

 

その間にも宴会は滞りなく進んでいった。

亡霊が他人の食事にまで手を出し、それを止めに行った従者が酒を飲まされ顔を真っ赤にして刀を振り回し。

酔った妖精が吸血鬼に喧嘩を売り全滅したり。

巫女と魔法使いが弾幕ごっこを始めたり、それに便乗して悪魔の妹が乱入したり。

 

いつも通りの光景が繰り広げられていた。

 

 

 

 

「……はっ!」

 

そんな喧騒の中で古河音は目を覚ました。

傍らでは良也がのんびりと酒を仰いでいた。心なしか顔もほんのり赤い。

彼のペースからしてもう2杯や3杯ではないのだろう。

 

「あれ…?私お酒飲んでそれから…………なんかその前後の記憶曖昧なんですけど」

 

「飲みすぎたんだろ?(棒読み)」

 

もちろん良也は一件の始終を全て見ていた。

それでもことの真相を口にしないのは単に思い出したくないのだ。

酒をぶっかけられ、笑っていない笑顔で無言のまま頭突きする、酔いが一気に醒めそうなその光景を。

ゴチンなどという生易しい効果音ではなく、もっとこう…骨が砕けるような……。

なぜ古河音が普通に起き上がるのか不思議に思える程の。

 

「まぁいいや。そうそうお酒マズかったんだっけ…?そんな事もあろうか…っと」

 

どこからともなく取り出された缶ジュース。

姉妹揃って四次元ポケットでも持っているのだろうか。

明らかに幻想郷の代物ではない。人里のお菓子売りにてこの日のために大量に買い込んだものだ。

コップに酒を半分、そこにジュースを半分。

風邪薬が苦手な子供などがよく使う手だ。

 

「ぷはーっ!攻・略・完・了☆」

 

それを片手を腰に当て、風呂上りのコーヒー牛乳感覚で一気飲み。

よい子もよい大人も決して真似しないで頂きたい。

 

「おいおい…いくら薄めてもそんなペースで飲んだら悪酔いするぞ……?」

 

「大丈夫 大丈夫、私ってお酒強い気がするんですよねー。ささっ、良也さんも飲みましょう!」

 

普段の彼ならそれでも止めていたのかもしれない。

だがほろ酔い状態の良也は差し出された一杯の酒に軽く流されてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊夢と魔理沙とフランとの弾幕が終わり、まっ先に負けた魔理沙はその悔しさを飲酒で誤魔化した。

いわゆるヤケ酒というものだ。

そのはけ口として選ばれたのがアリス・マーカドロイドだった。

対照的にアリスは酒の飲み方を熟知している。

どの程度の量をどの程度のペースで飲めば良いのか、だから彼女には飲み過ぎるという事がなかった。

 

結果、酔っ払いの愚痴を延々と聞く羽目になってしまう。

いつもの事ではあるが、慣れるものではない。

 

 

 

ヤケ酒につき合い、流石に普段より酒が回り始めたので魔理沙の元より抜け出していた。

夜空に浮かぶ半月を見つめながら、吹き抜けるささやかな風を頬で感じながら。

いつもとは違う夜の博麗神社を楽しんでいた。

 

そんな散歩の中で2人して飲んでいる古河音と良也の姿を見つけた。

良也はいつもの事として古河音は今回初の宴会のはずだ。

酒は過ぎれば毒でしかない。良也共々一言忠告しておいた方が良いだろう。

 

 

 

「だいぶ出来上がってるわね」

 

「ようアリス。お前も飲むか?」

 

「飲まない。今ちょうど酔いを醒ましてるところなの」

 

酔っ払いに総じて言えるのが普段より遠慮がなくなる事だ。

それは酒によって理性が緩み思考が衰えているからだ。

アッチに行ってもコッチに行っても酔っ払い、宴会なのだから仕方ないとはいえ少しげんなりしてしまう。

 

「ちょっと古河音、特にアンタは飲み慣れてないんだから……」

 

「あうあぁ~~…?」

 

謎の奇声を上げながら、完全に据わりきっている目でのっそりとアリスの顔を覗き込む。

もはや言葉を話せるのかすら怪しい。

 

「ほら、水飲んで。落ち着くまで少し寝てなさい」

 

「………………………………」

 

へんじがない。じゅうしょうのようだ。

アリスの言葉にも無反応。唯々じぃ~っとアリスの顔を覗き込む。

それはまるで野生動物が初めて人間に遭遇したかの様な。

既に人間としての最低限の思考能力すら失われているのかもしれない。

 

「………………ふひっ

 

ふっひゃっひゃっひゃひゃひゃひゃっ!!」

 

無表情、からの突然の不気味な笑い声。

突然の豹変に思わずたじろぐアリスに、突然古河音が飛びかかる。

不意に後ろに傾けた重心が、そのまま古河音の飛びかかった勢いに合わさりそのまま転んでしまう。

 

「ちょ……っ!良也!コレ早く取りなさいよ!!」

 

流石に目の前の事態に良也の酔いも醒めた。

もはや酔っ払いという域を超えて観光客に襲いかかる野生の猿だ。

完全に人間としてのそれを失ってしまっている。

 

「おい、古河音!その辺にしとけって……」

 

「ぐるぅぅぅ~~~~っ!!」

 

引き剝がそうとする良也に向かって唸り声。

もはや古河音を人間とは思わず、野生の獣と捉えれて対処に取り掛かる。

それでも、古河音の次の行動は予想できなかった。

 

「………っ!!?」

 

ぶちうっ!! と古河音の唇が良也のそれを奪い去った。

割と強く。そしてねっとりと。

古河音のそれが良也の唇に押しつけるようにぎゅうっと一体となる。

 

 

 

 

 

「………………………なっ!!?」

 

そこで、ようやく古河音の意識が覚醒し始める。

それまでの記憶は一切ない。ただ気がつけば目の前には良也の顔面。

そして触れ合った唇。それだけが古河音の脳内に強く情報として取り入れられた。

 

「な……なななな…………なんて事を……」

 

唇は離れ良也から離れ、よろよろと後ろによろめいた。

先ほどまで触れていた唇にそっと手を触れ、そこからガクっと力つくように座り込んでいった。

 

「……………初めてだったのに………」

 

「全部コッチのセリフどあぁぁぁ―――――――っ!!!」

 

よよよ…。と崩れ落ちる古河音に対して良也の怒鳴り声が炸裂した。

しっかりと経緯を知る者が見ればどちらが悪いかなど明白だ。

なのに、さめざめと涙する少女と怒鳴り声をあげる青年を見比べると、まるで古河音が被害者の様に見える。不思議だ。

 

そして、その怒鳴り声が宴会の喧騒を一瞬にしてなぎ払う事になる。

今まで酒を飲む事にのみ意識のいっていた者たちが一斉に良也達へと視線が移り、周囲の者達へとその事実が伝えられる。

 

「……古河音。言うべき事が、あるだろう?」

 

いつの間にやら現われていた慧音が座っていた古河音の背中にポンっと手をつく。

その表情からはもう酒の気配を感じない。

 

「……うん。

 

あの、……良也さん。すみませんでしたっ!」

 

 

 

 

 

両手を組んで頭の角度を90度。完全なるマジ謝りだ。

 

「ちょちょちょ……っ!酔い…醒めたんだろ?だったらそんな気にすること……」

 

古河音の奇行など、今に始まった事ではない。

それをこうして大衆の面前で謝れてしまうと、仮に古河音に100%非があるとはいえまるで良也の方が悪く見えてしまう。

 

「……自分マジで反省してるッス。いくら酒の勢いとはいえその……良也さんの初めてを!!

ホントマジですみませんでした!!」

 

「その言い方は色々と誤解を招かないかっ!!?」

 

本人的には割と本気で誤っているのだろう。

ただ、その言い方では色々と今の事態を更に悪化させてしまう事に直結してしまう。

 

 

 

 

「ほら良也くん。古河音もこうやって謝ってくれてる事だし、許してやってくれないか?」

 

「いや、最初から許してますから!その言い方止めてください!!」

 

そんなやりとりが、どんどんと周囲への野次馬根性を掻き立たせていった。

宴会に参加していた2人の烏天狗が、恐ろしい速さでペンを動かしてゆく。

 

 

「……良也。今夜は私のおごりよ?こういう時のためのお酒じゃない」

 

「良也さん、気にすることないわよ。人は間違いを犯す生き物なんだから」

 

 

その日の夜。幻想郷の住人達はいつになく良也に優しかったという。

その優しさが良也の心の傷に塩を塗りたくる結果になった事は言うまでもあるまい。




未だかつてここまでドキドキ出来ないヒロインのキスシーンがあっただろうか……。
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