東方忘却記   作:マツタケ

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久々の更新となります。っていうのもですね。今まで私も遊んでた訳じゃないんですよ。
突然ですね、トランクスっていう好青年にいきなり失われた過去を取り戻すためタイムパトロール隊員になって一緒に戦ってくれなんて言われちゃいましてね?
なんでも緑色の龍に「強い人を連れてきてください」ってお願い事したらどういう訳か私が呼ばれちゃったみたいですよ?それからというもの正しい歴史を取り戻すために過去の強敵たちと戦う日々が続いてた訳なんですよ。
しかもね? 最近だとアークスになってダーカーの脅威から人々を救い出すっていう副業まで請け負っちゃってですね。色んな人から依頼を受けて日々原生生物やダーカーと戦ってる訳なんですよ。

思い切り遊び倒してんじゃないかっ!まったくもうめっ!!


その21

 

 

 

 

 

 

土埃を立てながら何かが高速で人里の外れで駆けていた。

車や単車の類ではない。幻想郷にそのような文明の利器は存在しない。

だとしたら馬か、はたまた野生の狼かもしれない。

 

そのどれとも違う。

駆けているのは人間だ。更に突き詰めるならば、その正体は古河音だった。

駆けているという表現は少しちがう。

正確に言えば転がっているのだ。人間のそれをはるかに超えた速さで。

古河音は箒を使った高速での飛行魔法を得意としているが、今回に限っては何も好き好んで転がっている訳ではなかった。

 

ごろごろと音を立てながら謎の物体Ⅹは尚もその勢いを衰えさせる事を知らない。

だが、わずかにそれが転がりながらも浮き上がった。

浮かび上がった物体はそのまま宙に跳ね上がりその回転を少しずつ止めていった。

 

「よっ……ようやく止まっ………うぷっ…!気持ち悪っ……!!」

 

当然ながら人間には平衡感覚というものがあり、回転すればする程にそれは狂わされていく。

体育祭などの競技でバットを額に当てぐるぐると回りゴールを競うというものがあるが、端的にいってしまえばアレである。

そういう訓練を積んだ者でなければ大抵は今の古河音と同じ様な状態になるだろう。

 

 

 

 

 

宙に浮かんだ状態から、ゆっくりと地面へと着陸していく。

どうやら今のをきっかけに箒を使わず空を飛ぶ術を身につけたらしい。

主人公が身の危機に瀕して新たな力を身につけるというのはよくある話だが、もう少しマシな目覚め方はなかったものかと古河音は思う。

 

「……うぇっ……ちょっ!? これ……ホント吐きそ……っ!」

 

宙に浮いた状態から地面の感覚にまだ馴染めず、酔いは一層加速する。

これでも一応はこの作品のヒロインなのだから、公然の場でリバースという最悪の事態だけは避けて頂きたい。

 

口元を押さえ、最悪の気分のまま自分が『こうなった』元凶を見据える。

両手を使えば手のひらに収まりそうな小さな体躯。

甲高い鳴き声に短く生えそろった薄紅色の体毛。

そう、子豚である。

 

今まさに古河音にヒロイン史上サイテーの暴挙に片足を突っ込ませた張本人(?)こそ彼(??)である。

子豚に吹き飛ばされはるか数百メートルも転がされるなど、冗談以外のなにものでもない。

しかし、その冗談を冗談でなくしたのが目の前の子豚である。

 

箒なしでも飛べるきっかけをくれた事には感謝はしているが、今にも口元まで達しそうな嘔吐感がそれを全て吹き飛ばしてくれる。

古河音にも察しは着いている。というか誰だって分かる事だ。

この子豚、ただ者ではない。

妖怪なのか、もしかしたら神様なのかもしれない。

冗談のような話だが、残念ながらここは幻想郷。冗談が冗談でなくなる場所だ。

 

 

 

 

 

 

 

「………っ!?」

 

まるで真剣勝負の居合い抜きの様なにらみ合いが続いていた頃。

真剣勝負も何もこっちに勝ち目などないのだからお願いします帰ってくださいと心の中で密かに思っていた頃。

子豚が光を放ち始めた。

突然の事ながら古河音は直感的に身の危険を感じとった。

動物やモンスターが突然光りだすというのは古河音の知る限り変身やパワーアップのフラグだ。

大抵の場合そういうのは主人公のピンチなどに味方である動物キャラなどに引き起こる現象なのだが、そんなところまで常識に縛られてはいけないというのか。

 

などとアホな事を古河音が考えているうちに、光が収まってゆく。

 

「な……けっ…………け……」

 

眩い光の中から現れたその姿に、古河音は言葉を失った。

現れたその姿は古河音の予想通り。元の子豚とはまるで別物だ。

 

日の光を映し出す耳にかかった金色の髪。

膝まである裾の長い緑色のカンフー着、肌けた胸部と引き締まった身体。

手にあるのは農具として使われる鍬。

 

「あ……あれ!?オラ元に戻っただか!?」

 

その端正な顔立ちとは裏腹に訛りの抜けない口調で、少年は自分の両の手をまじまじと見つめていた。

それは、彼自身にとってもこの現象は予期していなかった事を示している。

 

だが、今の古河音にとってそんな事は気にならなかった。

それ以上に重大な事実が目の前にあるからだ。

 

 

「…………け……け…………け………………け………………

 

 

 

 

 

けも耳少年キタァァ――――――――――――――――っ!!!」

 

古河音の咆哮が天を穿った。

それは意図して行ったものではなく『それ』を見た瞬間無意識に行われた反射に近いものだった。

 

そう、少年の姿は一見すると人間のそれだった。

が、頭部に生えた大きな耳が彼が人間ではない事を示していた。

本来人間の耳があるべき場所にそれがなく、本来人間の頭部にあるはずのないものが彼の頭にはある。

薄紅色の大きく垂れ下がった獣特有の耳。意図してか無意識にか絶え間なくぴこぴこと常に動いていた。

 

「さ…………触らせてくだせええぇぇぇ~~~~っ!!」

 

その独特の動きが古河音の中の何かを刺激したのか、覚えたての飛行魔法の応用で少年に向かってダイブしようとする。

 

「う……うわっ!!」

 

 

人間に限らず、何かが自分に向かって飛来してきたならそれを避けるのは普通の行動である。

ましてやそれが手をわきわきとさせながら奇声を発して飛んでくるのなら、尚更だ。

 

「ぎゃああぁぁ~~~~~っ!!!」

 

少年の避けたそれはダイブ先を見失い、その勢いのまま地面をキスをしてそのままスライドしていった。

確認しておくが、一応この作品のヒロインである。

 

 

 

 

 

 

「なんでよっ!?キミさっきの子豚だよね!?流れからしてそうだよね!?

私にアレだけ熱烈なアタックかましておいて、いざ自分がやられそうになったら逃げ出すってどういう事ですか!!?男っていつもそう!!

大体女の子がダイブしてきたら男は黙って転倒しながら受け止めるっていうのが世界のテンプレーションってもんでしょうが!!ラブコメチックにぽってなるところでしょう!?そんでもってあわよくばケモ耳を触らせてくれるっていうのが心意気ってもんでしょうがっ!!っていうかどうでも良いから耳障らせてくださいお願いしますっ!!!」

 

地面とキスをかました古河音は、鼻血をたらしながら怒涛のごとく吼える。

実害だけを見るなら間違いなく古河音は被害者なのだろう。

服はドロだらけ。所々に擦り傷もある。それに引き換え少年の方はまるで無傷。

にも関わらず、現場を傍から見れば少年の方が加害者に見えてしまう。不思議なものである。

 

「ええやんけ……!減るもんでなしちょっと触るくらいええやんけ……!

えへ…っ……えへへへへへ♪」

 

否、正真正銘少年は被害者だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………っ!!?」

 

直後、古河音の生存本能が無意識に身体を後方へと仰け反らせた。

その行動はどうやら正しかったらしく、彼女が先ほどまでいた位置へ目掛けて少年は手にしていた鍬を横に薙いでいた。

回避しながらも突然の少年の行動に理解が追いつかず混乱している最中、直後に強烈な突風古河音に襲いかかった。

少年の攻撃を躱して地に足がついてない古河音の身体は紙のように吹き飛ばされてしまう。

 

「止まっ………止まっ………止まらなななななっ………!!」

 

覚えたばかりの飛行魔法で必死に飛ばされる身体を止めようとするが、やはり箒があるとないとでは雲泥の差らしい。

抵抗も空しく重力に従い落ちるリンゴの様に、未だ古河音の身体は飛ばされ続ける。

 

「……ってそうだった!これがあった!!」

 

風によって飛ばされているなら、別の風によって打ち消してしまえば良い。

風を操る術は彼女の専売特許だ。

 

「風は来た、さぁ…伝説を解き放て!今こそ、我ら真の正義の力を示すのだ! スタンドアップ・MYヴァンガードっ!!」

 

古河音が手を振りかざすと同時に彼女を圧しつけていた突風がかき消されていった。

自らを縛るものがなくなると、着地と同時に決めポーズ。

くくく…と喉を鳴らして笑っている。『お前の攻撃など通じぬわ』とでも言いた気な実に中二病的な笑い方である。

 

が、直後にその自信に満ちた顔が青ざめる。

今の風は『攻撃』などではなかったという事実に気がついたからだ。

少なくとも最初に鍬を薙いだあの行為。アレは確実に古河音に向けられた攻撃だったのだろう。

しかし、その直後に古河音を襲った突風。

それは術や魔法の類でなく、単に鍬を振った事によって起きた風圧。

つまりは本人も意図していない副産物。

その副産物を相手に今の今まで死ぬ思いをさせられていたのだ。

 

 

 

「…………っ!!」

 

改めて見れば、その鍬を構えた姿には少年とは思えぬ闘志を秘めている(ように見える)。

そこに邪気の類は一切なく、あるのは戦士としての強い瞳だ(おそらく)。

と、たぶん思う。

実際に目を見ただけで相手の真意を見抜ける程の観察眼を古河音は持っていない。

先ほどの攻撃を受けてなんだかそんな気がするだけだ。

 

 

「……今ので確信しただ!童の格好しちゃいるがオラは騙されねえぞ!?

おめえ……妖術使いだな!?」

 

「魔法使いですけど!!?」

 

妖術使い。 読んで字のごとく妖術を扱う者の事を指す。

どちらかといえばそれは負の力に分類され、代表的なものは呪術や人の心身を蝕む邪術などがあり、あまり健全な力ではない。

幻想郷で例えるなら旧地獄の妖達がそれに近いかも知れない。

人を病に貶め、嫉妬の感情を煽り、人の心を覗き込む。基本的に人に害する術というイメージが強い。

 

 

 

 

「三蔵法師様の居場所が分からねえ今、おめえみたいなのを野放しにしておく訳にはいかねえっ!!」

 

「……………んん!?」

 

何やら、聞き覚えのある単語が少年の口から語られた。

少年の尋常ならざる怪力。振り回す鍬。

 

そして頭に生えた豚の耳。

 

「え……?ちょ、ちょっと待って!?ひょっとしてひょっとしたらひょっとしてまさかキミって………」

 

もし先ほどの彼の発言が聞き間違えでないのだとしたら、彼の正体に心当たりがあるかもしれなかった。

そしてもしそれが本当ならば、これは幻想郷でいうところの“異変”と呼ぶべき事態だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「天蓬元帥猪悟能八戒、いざ参る!!」

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