東方忘却記   作:マツタケ

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・・・なんか、すみません。今の今までずっとニコニコで活動してました!東方手書き!?PSO2のゆっくり実況!?もうホントにごめんなさいっ!


その36

 

 

 

 

 

 

「ま…………

 

 

 

 

任せただじゃねえぇぇぇぇ~~っ!!!」

 

人というよりも、まるで獣のそれのような赤みがかった長髪を揺らしながら、少年は叫んだ。

その足元には雲のような浮いていて彼を宙に支えている。

本来雲の上に人が乗るなど不可能なはずなのだが、目の前の光景はその不可能を否定している。見越入道もいるくらいなのだから。

 

「屋根なんかぶっ壊したら下にいる連中もれなく潰れちまうだろう!!子供でも分かるわっ!!お前ここに何しに来たんだよ!!?ここで占拠されてる人達助けにきたんだろうがっ!!」

 

少年が怒鳴りをあげた矛先は意外にもここまで連れてきた霧雨魔理沙だった。

彼女自身も、それを予見していたかのように予め耳を塞いでいてげんなりとした顔をしている。

 

「意外ね……。あなたが連れてきたにしては良識があるじゃない」

 

「そうなんだよ……。コイツ事あるごとに口うるさくてさぁ。そんなんじゃ幻想郷じゃやってけないって何度も言ってんのに聞きやしない」

 

下にいる人間の事などおかまいなし。

瓦礫の上でメイドと魔法使いは呑気に世間話をはじめていた。

その間も少年の怒声は続く。にも関わらず2人はまるでスーパーで偶然出くわした主婦のようにお喋りをやめようとしない。

 

「どぁああ……!!もういい!テメエ等はそこで死ぬまで喋ってろ!!」

 

咲夜と魔理沙に見切りをつけて、孫悟空は下に向かい瓦礫の撤去作業を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………本当に見ないタイプね」

 

「……だろ?食事は栄養をバランスよくとかいちいち口出ししてくるんだコレが」

 

「正論じゃない。実行してみたら」

 

「考えとく」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そこの人ぉぉ!!大丈夫かっ!?」

 

瓦礫をまるで発砲スチロールか段ボールのように軽々と持ち上げて、その先には一人の青年の姿があった。

が、その姿は無残なものだった。

もはや助かるはずもない出血量。身体は冷たく、すでに硬くなり始めている。

かつて彼が過去に何度も見てきた〝死体”のそれだ。

 

「……クソっ!!」

 

少年は悔いた。

人の死などかつて幾度も見てきた。

それでも目の前に死があれば当然悔いる。

救えなかった命。救えたかもしれない命。死なずに済んだかもしれない命。

 

「おい…っ!魔理沙テメ……」

 

「あー死ぬかと思った」

 

「ぎゃあああああぁぁぁぁっ!!?」

 

かつてどこかで見覚えのある光景ではないだろうか。

目の前に死んだはずの死体が昼寝から起きたかのように蘇れば、普通は驚くだろう。

それも既知の者はもはや日常としてスルーしているのだから、慣れとは恐ろしい。

 

 

 

 

 

「じゃ……じゃあなんだ?アンタそうやって死ぬ度にそうやって当たり前のように起き上がんのか?」

 

「ま…まぁ、そんな感じッスね」

 

2人の対面は、お互いが衝撃的なものだった。

良也からの悟空の印象は意外の一言だ。逆の意味で。

孫悟空といえば各作品によって性格は様々だが、やはり粗暴という印象が強い。

粗暴とまではいかなくとも、やはり知性はあまりないというのが共通の印象だ。

たしかに言葉遣いは丁寧とは言い難いが、それ以上に相手に対しての気遣いの態度がひしひしと伝わってくる。

 

対して孫悟空から見た土樹良也の印象も、これまた驚くものだった。

元来妖でさえも、死という概念から逃れようと必死で抗うものだ。

妖怪の間では徳の高い僧を食らうと不老不死になれるという話が広がっている。

真相はさて置き、その噂を信じて三蔵法師を狙う妖怪は後を絶たない。

人よりもはるかに長い寿命を持つ妖でさえ、『不老不死』という永遠の命を喉から手が出るほどに欲しているのだ。

それを今、目の前の凡庸そうな男は然もそれが当然のように持っているのだ。

 

 

 

「オイオイ、私の目の前で世間話たぁ随分余裕じゃねーか。小姑ザルが。

ま、でもたしかにそこのにーちゃんが不老不死だったっつーのは驚きだわな」

 

宙に浮いたままあぐらをかいて、頬杖をついたまま……三蔵法師は浮かんでいた。

彼女がいたであろう辺りには瓦礫の類は一切なく、代わりに彼女の周りには複数の数珠が浮いていた。

三蔵はその場から動く事なく、何らかの方法で瓦礫から身を守ったという事なのだろう。

 

 

 

「…………じゃねえだろうがっ!!

こんなところで何してやがんだこの生臭坊主が!!話は妖精メイドからだいたい聞いたぞっ!!?

どんだけ人様に迷惑かけりゃあ気が済むんだテメエはっ!!?誰があとで謝ると思ってんだ!?菓子折りいくつあっても足りんわっ!!だいたいテメエはいつも人の迷惑っつーもんをもっと考えてから行動しやがれってんだ!!ここだけだろうな粗相しでかしたのは!?他でなんか問題起こしてねえだろうなっ!?マジで土下座もんだぞこの野郎!!!」

 

その一言一句が、とてもかの有名な孫悟空とは思えない。

彼の発言から滲み出るその主婦臭さは、姑というよりはむじろおかんだ。お母さんだ。

三蔵法師もつまらなさそうな顔でそれを聞き流す姿は粗相をしでかすダメ息子のそれだ。

 

 

 

 

「……いいから、これからここのみなさんに頭下げに」

 

――――その時、悟空の視界に光が見えた。

持ち主である彼女の目と髪の色によく似たその金色の光には覚えがあった。

その光は瞬く間に周囲を巻き込み薙ぎ払っていった。

 

 

マスタースパーク。

ミニ八卦炉を媒体に魔力を高出力で前方へと撃ち出す。霧雨魔理沙の代名詞だ。

弾幕はパワー。まさに彼女のその主義と性格を形にしたような、彼女らしい弾幕だ。

 

 

 

 

「お前もいきなり何しとんじゃあ魔理沙テメエっ!!?」

 

「ん?何って……異変の解決だぜ☆」

 

悟空も三蔵も良也まで巻き込んだそのど派手な暴挙に、魔理沙は何の気も言い放った。

彼女の中では敵も味方も巻き込んですべてを吹き飛ばす行為が異変解決なのだそうだ。

 

「いいねぇ。こういう喧嘩っ早い奴がいた方が分かりやすいぜ」

 

「お前も何やる気出してんだよ!?今すぐここの人たちにお詫びすんだよっ!!」

 

悲しいかな。この幻想郷では話し合いなどという主張は非常に通り辛い。

口よりも先に手がでる連中の割合が、圧倒的に多いからだ。

東風谷早苗がかつてはあったはずの常識をかなぐり捨てたのも、それが大きく起因している。

常識が通じない。だからこそ彼女は通じない常識を捨てた。

郷にいては郷に従え。まさに彼女は積極的にこの幻想郷という郷に従ったといえるだろう。

 

「同感ね。優秀な囮がしゃしゃり出てきた今ならあなたにだって勝てるのよ?」

 

「ひょっとしてコチラのメイドさんですか!?うち馬鹿が本当にご迷惑お掛けしましたっ!!あとで菓子折り持ってお詫びいたしますんでっ!!!」

 

魔理沙に続き、咲夜もやる気満々だ。

積極的に相手にケンカをうるタイプではないが、喧嘩を売ってきた相手をみすみす見逃すような性格もしていない。

 

 

 

 

「面倒くせえっ!!全員まとめてかかって来いやっ!!」

 

「へへへっ!そういう事言うやつは大抵負けるんだぜ!?」

 

「面倒臭いのはあなたの存在そのものだけどね」

 

三者三様に、喧嘩腰全開だ。

彼女らがもし話し合いの場を設けるとすれば、それはこの喧嘩が終わったあとだ。

 

 

 

 

 

「ちょっと待っっっっ…………………ったああああぁぁ!!!」

 

黒いスカートをはためかせ、愛用の箒に跨って、あえていつもの帽子をとって惜しげもなく毛のない頭部を丸出しにして。

彼女は舞い降りた。

そう、一応今作の主人公。上白沢古河音だ。

 

「残念ながら、今回の異変はここまでです」

 

いつになくまじめな顔だが、三蔵と同じくツルツルの頭が何故か彼女だと異様に笑いを誘う。

そしてなぜか彼女の手には一冊の本が握られていた。

表紙も真っ白。タイトルも何もない。少しぶ厚めの本だった。

 

 

「おいおい、せ…

 

「『せっかく見逃してやったってのに、さすがに二度目は容赦しねえぞガキ』ですよね?」

 

「…………っ!?」

 

わずかに三蔵の眉が動く。

言い返さないのは否定できないからだ。

古河音の予測した彼女のセリフが当たっていたからだ。

 

「………テ

 

「『テメエ、何を仕込んできやがった?』ですか?」

 

「………のガキ……!!」

 

彼女が歪ませるその表情から、次もまた当たったのだろう。

その異様な光景に周りも固唾を飲んで見ていた。

負けて十分そこそこで突然パワーアップして帰ってくるなど、それはフィクションの話だ。現実はそこまでご都合主義ではない。

突然強くなるなどありえない。

だが明らかに彼女は今までに持っていない何かを持って帰っていた。

 

「……おしまいだよ。帰る場所なんてどこにもない。元からそんなものはなかったんだから。

 

だからもうおしまい。このお話はもう、これにて閉幕……」

 

開かれたのは真っ白な本。

表紙もなければタイトルも、内容すらない真っ白な本。

そこから溢れる光が周囲を包んでいった。

まるで金縛りのように、その光の中では指一本動かすことは出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の瞬間、孫悟空と三蔵法師の姿は跡形もなく消え去っていた。

 

「………これが、今回の異変の正体です」




圧倒的ムリヤリ終わらせた感。もう少し続くヨー?
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