東方忘却記   作:マツタケ

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その39

 

 

 

 

 

 

 

 

終わってみればそれは、あまりにもあっさりとした結末だった。

 

架空の登場人物が幻想郷の各場所に現れそれを追っていき、そのうちの一人が紅魔館を占拠するという事態にまで発展した今回の事件。

 

思わぬ犯人に思わぬ弾幕ごっこ。

事態が更なる事態を呼び発展していった今回の異変も、一人の巫女の一撃によってそれは一瞬のうちに終わりを告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

一人の少女が倒れていた。

もはや再起不能なまでに打ちのめされた彼女が起き上がる事は…もうないだろう。

 

魔理沙と古河音の弾幕ごっこ。

誰しもが思っていた。多少の善戦はあっても魔理沙が負ける事などまずないだろう……と。

 

しかしこの事態だけは予想していなかった。

まさかあの博麗の巫女が、最悪の横槍を入れて今回の事態に終止符を打つ形になるなど、誰が予想しただろうか。

最悪の事態を呼び起こすことを『また守谷か』という言葉で呼ばれる事がある。

ならばおいしいところだけを掻っ攫っていく今回の巫女を例えるならば、『また博麗か』と、いったところか。

 

 

 

 

 

「お前どういうつもりだよ霊夢!?」

 

一仕事終えた。そんな様子で肩を回す巫女に対して白黒の魔女は吠える。

徒競走で例えるならば自分が一着でゴールイン。そう思った矢先に最後尾の選手が自分を一瞬にして抜き去るような。まさにそんな心境だった。文句の一つも言いたくなる。

 

「どういうもつもり何も。妖精メイドが私のところに来てなんとかしてくれって言うもんだからわざわざ来てあげたんじゃない。なんとなくこれは異変だなーって感じがしたしね。

 

で、コイツなんでしょ今回の異変の原因?別に根拠なんてなんにもないけど。アンタが戦ってたって事は少なくとも戦うような原因があった。それだけで十分じゃない」

 

横暴。 まさにその一言に尽きる。

過程も実力も関係ない。『博麗霊夢が異変を解決する』まさにその結果だけがまるで天命のようだ。

さすがの魔理沙も今回の結果には納得がいかない。その傍らで今回思い切り被害に遭った十六夜咲夜は尚の事納得いくはずもない。

 

 

「今のなし!ノーカンだ!今のは私の弾幕ごっこだ。弾幕ごっこに割り込みは厳禁だぜ!?」

 

「あーはいはい。じゃあそれでいいわよ。私は私で異変の主犯を懲らしめるっていう仕事はもう終わったから。もう帰るわね?」

 

「だぁーーかぁーーらぁーーー!お前のそういう温度差が一番腹立つんだよっ!!あぁ、もう古河音とかどーでもいい!この場で今すぐ私とやれっ!!」

 

その温度差は、さながら役所に訪れたクレーマーとその役員ばりに差があった。

もっと熱くなれよよろしく炎のように燃え盛る霧雨魔理沙。

定時なので帰ります。公務員気質の博麗霊夢。

そんな対照的な2人が長年連れ添っているというのだから、『縁』というのは不思議なものである。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ~~~……ちょいとお2人さん?」

 

何よ? 何だよ? と、良也の呼びかけに2人が振り返る。

そのタイミングはまさに阿吽の呼吸。正反対な様で気質は似ているのかもしれない。

 

「いや、もう今更な気はするんだけどさ……逃げたぞ?

 

 

 

古河音」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふふふ………。あーーーっはっはっはっは!霊夢さん私のタフネスを甘く見すぎだぜぇ……!毒を食らわば皿まで。こうなったらラストに何か大きな事して新聞に載せるまで……!自演乙?いいんですよ!大切なのはみんなから注目される事!動画製作者の人達だってやってる事なんですよ!!」

 

強がってはいるが、正直全身ガタガタだ。

先ほどの弾幕ごっこでかなりの魔力も消費したし、当然霊夢による渾身の一撃のダメージも未だ大きい。集中力もかなり欠けてきている。

それでも彼女は身の安全よりも目立つ事を優先した。

やらなければ今回本当にやられ損だからだ。どうせなら最後に黒幕らしく、何か大きな事をしたい。

 

 

 

 

「………ならそうね。『異変の黒幕、吸血鬼姉妹に血祭りにあげられる』なんてどうかしら?」

 

「えぇぇ~~?嫌ですよそんな三流作家が考えたみたいなオチ。おんなじ目立つにしたってもうちょっとヒネらなきゃ、それは悪い方の目立ち……か……た…?」

 

 

 

 

飛空していた箒が徐々にその速度を緩めていき、最後にはその場で立ち尽くしてしまう。

 

どこかで聞き覚えのある声がした。

どこかで聞き覚えのある喋り方だった。

あまりにナチュラルに話しかけてくるものだから思わず相手の神経を逆なでするような事を口走ってしまった。

 

嫌な予感がする。なら逃げればいい。いや、そうではないのだ。

 

その声は古河音の『背後』から聞こえてきたのだ。

もっと正確にいうならば、箒にのっている古河音の『後部座席(?)』から、その声は聞こえてきたのだ。

 

もし古河音の予想が当たっているならば、逃げる事に意味などない。

逃げても逃げても『ソレ』は自分が逃げた分だけついてくるのだから。

 

 

「……い……………いつから?」

 

「あなたが霊夢と魔理沙の言い争いを影から見ていて……良也の指摘で慌てて逃げ出したあたりかしら?」

 

最初からだった。

普通なら気づきそうなものである。

例えるなら自転車の後部座席に誰かが突然乗ってきたりなんかしたら、即事故ものだ。

だがソレは最初古河音に気づかれぬよう最初は自らも飛びながら古河音の箒を掴むだけにとどめて、徐々に体重を加えていった。

加えてそこには、多大なダメージによってガタガタだった古河音の集中力もひとつの原因だった。

 

 

 

 

「せっかく紅魔館にまで来たのだから……ゆっくりしていきなさいな♪」

 

いつものように怪力で肩を鷲掴みにするのではなく、ポンと優しく肩に手を置かれた。

その優しさが余計に怖かった。

振り向きたくなかった……だが、タッタッタと足音を鳴らしながら前方から元気よく駆け寄ってくるその人影に、振り返った方が良かったとさえ思ってしまう。

 

「こーがねっ!あ・そ・ぼ♪」

 

手に握られた少女の手に握られた歪な形をした炎の剣。それを用いて一体どんな遊びをしようというのか。

 

 

「私たち姉妹が直々に相手をしてあげるのだから………

 

 

 

 

せいぜいいい声で鳴きなさい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後。聞くに堪えない断末魔に駆けつけた霊夢たちが目にしたのは、とても凄惨な光景だったという。

 

散々痛めつけられた彼女に待っていたのはせっかく戻っていた髪を再び剃られ『私はとっても悪い子です』というプレートを首からつるされて、真っ赤な十字架に張り付けにされるという結末だった。

 

 

「………あれ?前にもなんかこんな事があった気が」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………た、ただいまぁ~~~……」

 

3日という月日をかけて解放された古河音は、身を縮こませて帰宅した。

おそらくは今回の騒動の顛末は『彼女』にも知らされているだろう。

ならば帰った途端頭突きが飛んできてもおかしくはない。

 

囁くようなただいまにも彼女は敏感に聞き取り、扉の前まで現れた。

 

「おかえり。また、やらかしたようだな?」

 

「あは……あはははははは……」

 

腰に手を当て古河音を見下ろすのは人里の守護者にて古河音の姉、上白沢慧音だ。

もはや覚悟はできている。ならばせめて、笑ってごまかすくらいの抵抗くらいは許されるのではないだろうか。

誰に言うでもない免罪符を、心の中でひとりつぶやく。

 

「話は聞いている。何も食べていないんだろ?早く上がりなさい」

 

呆れたようにひとつ息をつくと、慧音はそのままくるりと背を向け奥へと向かっていった。

 

 

 

 

 

「…………へ??」

 

間違いなく、問答無用で頭突きが飛んでくると思っていた古河音はその場でポカンと呆けていた。

これは誰だ。偽物か。そんな考えさえ頭によぎる。

それくらいに、彼女にとっては意外な反応だった。

 

 

「話は聞いたと言っただろ。罰は十分に受けたんだろ?いくら私でも追い打ちをかけるような真似はしないさ。というかお前は一体私をなんだと思っているんだか……」

 

少し傷ついたようにして、もうひとつため息。

最近では一部の心無い子供から頭突きおばけと指さされた事もあり、若干デリケートな慧音先生だった。

 

「お……………おぉ…………

 

 

 

 

お姉ちゃああぁぁぁぁぁんっ!!」

 

今まで受けてきた境遇が境遇なだけに、不意な優しさが心に染み渡る古河音だった。

 

 

「ちなみにこの3日間溜め込んだ宿題は、きとんとやってもらうぞ♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぃ~~……!食った食った♪」

 

満腹になった腹を抱えながら、この腹の膨らみがもっと上にいけばいいのに。

そんな考えが頭によぎる。

結局、今回の異変は記事にはできない。なぜなら十字架で吊るされている間、あの射命丸文に写真を撮られたからだ。おそらくその様子がこの数日中に新聞にデカデカと載るのだろう。

 

やはり何かてっとり早く大きな力を覚醒させるべきだろうか。

そうすれば異変を解決するにしろ起こすにしろもっと上手くいくはずだ。

そんな考えを巡らせていると、懐から何かが落ちる。

 

 

白い…本だった。

今回の異変のすべての始まり。そもそもスカーレット姉妹にボコボコにされた原因だ。

 

「そうだった…。これどうするかなー…。上手く使えば悪戯に使えるんじゃね?

 

 

 

………………あ」

 

パラパラとページをめくり、すぐに異変に気づいた。

何も、描かれていないのだ。

最初からそうだったではないか。いや、違う。

三蔵法師たちを……彼女たちを封印した際に、白紙のページには古河音の描いた汚い絵と字が記されていたはずだ。

 

それが今再び白紙に戻っているという事は………。

 

「……………ヤバ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

命蓮寺。

人里の外れにある聖白蓮が住職を務める人と妖怪の救済を目的とした寺だ。

今『彼女』の傍らには幽谷響子・多々良小傘・ナズーリンといった面々が地に伏せていた。

そんな彼女らになど目もくれず、彼女は手に持っている数珠を弄び目の前の寺を品定めするようにまじまじと観察していた。

 

「くっくっくっくっく………はっはっはっはっは……!!

いいかっ!?今日からこの寺は私、三蔵法師様のもんだっ!!分かったか!?」

 

この後さすがに南無三されました。(人間相手は相性悪い)




という事で! 終わったぁぁぁっ!!
西遊記異変これにておしまいとなりますっ!この異変はじまったのいつ!?
もう2月からはじめてますよこの異変っ!!
ほぼ8か月かけてようやく、この異変終わりました。決めた。もうしばらく異変系のお話には手を出さない!!
という訳で、長々だらだらと続いた今回の異変。最後までおつき合い頂き、本当にありがとうございました!!
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