気になる人は今すぐチェックだ!素敵な巫女さんが主人公の素敵物語が待ってるぞ!?
ここは幻想卿の博麗神社。
天気は快晴。暑すぎず寒すぎず頬を撫でる様な心地よい風が吹いている。
その縁側で巫女服に身を包んだ一人の少女が湯呑に入れられたお茶に舌鼓を打っていた。
博霊神社で巫女といえば彼の博麗霊夢を連想させるが、それは違う。
長い黒髪を大き目の青いリボンで一つにまとめ、スカートを思わせる短めの緋袴を身に付けたどこか不思議な雰囲気を醸し出している。
彼女の名は古城 霙(ふるしろ みぞれ)。
記憶を失くし行き場を失くし、博霊神社に住んでいる寺子屋の臨時教師だ。
うちの作品を読んでいる方なら、記憶喪失と聞いて誰かを連想させるかもしれないがアレとは全くの別物だ、一緒にしてはいけない。
普段は寺子屋で慧音と共に子供達に勉強を教えている彼女だが、本日は寺子屋そのものがお休み。
過ぎゆく時間をまったりと過ごしていた。
気持ちの良い日差しに少し眠気を覚えて空をぼぅっと眺めていると、不意に一つの影が彼女の視界に入った。
逆光のせいか、詳細は分かりづらい。
はためくスカート大きな帽子、箒と共に1人の少女が空を駆けていた。
彼女の知る限り、そんな組み合わせを持つ者は霧雨魔理沙、彼女しかいない。
だが、近づいてくる彼女の姿がそうではないとすぐに分かった。
滑空するように箒から飛び降りニカっと笑うその姿が益々彼女と似ている少女だ。
薄い緑色の髪を一つにまとめて魔理沙とは対照的な白い魔女帽子を被り、慧音と同じデザインをした色違いの黒い衣装。
少なくとも、霙の知り合いではない。
「あの、霊夢さんにご用でしょうか?」
突然見知らぬ者が現れるなど幻想卿ではよくある事。
博霊神社に訪れるのだから、つまりは霊夢への来客なのだろう。
そんな彼女の問いには答えずに帽子をとって一礼。
礼儀正しくはあるのだが、同時にどこか胡散臭さが漂う所作だった。
「はじめまして、古城霙さんですよね?」
「えっ…?あ、はい……」
人懐っこい笑顔で少女に問われ少し困惑する。
少なくとも霙自身に彼女のような知り合いはいないはずである。
「私は上白沢古河音。コラボしに来ました♪」
「ちょっとおぉ――――――っ!!」
古城霙の叫び声が博麗神社に響き渡る。
普段彼女はそこまで大声を出す方ではないのだが、なにやら必死な様子で少女、古河音に詰め寄っていた。
「え……メタっ!?ちょっと…良いんですか!?ここまだ本編……」
何やら言いたい事はあるのだが、言いづらい内容なのか口をもごもごとさせていた。
普段が少し大人びた雰囲気をしているせいか、妙に可愛らしい仕草だ。
「あぁ~、良いんです良いんです。もう今回はメタメタふわふわいっちゃいましょう!
ほら、せっかくのコラボなのに設定とか色々制限されるのももったいないでしょ?アレですよ!最近のトレンドで言うところの『常識に囚われてはいけないのですね!?』的な」
脱いだ帽子を指に掛けてくるくる回す。
背丈から察するに彼女が教えている寺子屋の子供達と歳はそう変わらないはずなのに、何やら色々とダメな匂いが彼女から感じてとれた。
「さて、そんな訳で今日はうちの作品を読んでる人達にも東方歪界譚の魅力を知ってもらうためにも、霙さんの密着取材に挑戦したいと思いますっ!」
今まで自分の乗っていた箒をマイクに見立てて気分はさながらマスゴミだ(誤字に非ず)。
戸惑う霙に対して古河音と名乗る少女はずいずいと箒を彼女の口元へと押し当てる。
この時少女は気づいていなかった。
彼女の中でのその我慢メーターが、どんどんと数値を上げている事に。
「また唐突な…。ていうかなんだか妙にデジャヴなんですが……」
そう、霙がこうして押しの強い押しの強い質問攻めを受けたのは何も今日が初めての事ではない。
ネタと聞けば天から地へ、清く正しく射命丸。
一度は事なきを得たものの、彼女から日を改めて根掘り葉掘りとプライベート?ナニソレオイシイノ? な質問攻めにあったのは記憶に新しい。
「いや~、一度やってみたかったのよね。こういう取材チックなの!文さんが嬉々として取材する気持ちが今なら分かるわぁ~」
独り言というにはあまりに大きな声で、頬を手に当てくるくると回り始めた。
そんな様子に霙もどことなく合点がいった。
つまりは彼女の楽しそうにする取材の様に、ついつい真似したくなったのだろう。
そこまで分かれば霙の中で迷いは消えた。
好奇心旺盛な子供の相手は仕事柄彼女の十八番である。
それで彼女の気が済むならばとことんつき合ってやろうではないか。そんな気持ちが彼女に芽生え始めた。
「ずばりっ!今日の下着の色は何色かにゃ!?」
「………………今、何か?」
「すっ………すみませんでした(((( ;゚д゚))))」
芽生えた気持ちは、一瞬にして風化した。
彼女の全身から溢れる殺気などと呼称するにはあまりに生易しいオーラは、古河音を委縮させ土下座させるには十分すぎるものだった。
古河音としても、さすがにこの質問は本当に冗談だった。
一応そこは彼女も女として生まれた身。それがセクハラに値するという事は重々承知していた。
ただ、彼女の目的はそこではなく、あくまでセクハラに対する初々しいリアクションにあった。
古河音としては『い…言える訳ないはじゃないですかっ!』的な嬉し恥ずかし萌え萌えな反応を期待していたのであって、まさか条件反射で土下座してしまう程の殺気を放ってくるなど予想していなかったのだ。
「人の神社の前で何やってるのよ?」
どこからともなく呆れたような声が。
声のする方向にはまさしく声の通りに鬱陶しげな表情を見せる博麗霊夢の姿があった。
本日は珍しく、霊夢が人里までのお買い物だ。
「霊夢さんお邪魔してま~す…ってこっちじゃ分かんないんだっけ。
いや~今日は古城霙さんに密着取材したいと思いまして、色々と質問を」
「……何アンタ、あの記者の仲間?」
取材、という言葉に霊夢の眉がぴくりと動く。
博霊霊夢という人間が面倒を嫌うのはどこの幻想卿でも共通の認識だ。
そんな彼女が記者という人種を快く思っていないのは言わずもがなだった、
「まぁ~、広い意味ではそうかな?」
「帰れ」
彼女の曖昧な答えに霊夢は容赦なく、文字通りぽいっと摘まみ出した。
物理的な意味でだ。
「ちょっとおおぉぉ~~!霊夢さん!?でも、こっちの世界でもそんなツンクールな貴女が素敵♪」
「霙、うちにまだ塩ってあったっけ?」
遠くから古河音の妙に嬉しそうな声が山を伝って反響する。
摘まみ出されて嬉しそうにするその反応が更に霊夢の警戒心を高まらせた。
何に使うかといえば、当然撒くのだろう。
「あ、えっと…。彼女上がらせてもらえませんか?そうしないと色々と進まないというか……」
「まぁ、霙がそう言うなら……」
霊夢が古河音を追い出したのはもちろん面倒が嫌いというのもある。
それと同時に、訳の分からない輩を霙に近づけないためでもあった。
そんな彼女から頼まれてしまっては毒気も抜けてしまう。
ツンクールからのデレ、この時古河音は貴重なシーンを見逃した事を本能で悟った。
「いや~、上げてもらった上にお茶まで出してもらえるなんて♪」
ところ変わって博麗神社内。
喜ぶ古河音に対して霊夢は、用が済んだら帰りなさいよ? と無関心モード。
未だに霊夢の好感度メーターは底辺である。賽銭?この無駄遣い女が持っている訳ない。
「では改めて、まずはお名前と職業なんかからどうぞ!」
先程のセクハラの件もあってか、本当に無難な切り出し方だった。
霙のオーラはそれだけの威力があったのだろう。
そんな彼女の心境は知る由もなく、やっとまともな質問がきたと安心する霙だった。
「古城霙です。記憶を失くして倒れているところを霊夢さんに拾ってもらって、今はこの神社でお世話になっています。
普段は慧音さんのところで臨時に子供達に勉強を教えたりなんかもしていて、そこで頂いたお金で食費を頂いたり」
ヒモじゃないですか…。と霊夢に投げかけたところ思い切り塩を投げつけられる。
彼女の語る内容を手元のメモにしっかりと書きこんでいく。
その姿は一見しっかりとした記者だが、その上記に『今日の巫女さん』と書かれていた。
「弾幕ごっこはやりますか?スペカは持ってます?」
「たまに紅魔館のフランちゃんに誘われて。断りづらいんですよねぇ…。
スペカは主に空間に穴を開けたりするものが多いですね。物を取り出したり、そこから弾幕をだしたり……」
驚くなかれ、初の弾幕ごっこにて彼女は彼のフランドール・スカーレット相手にほぼ互角の勝負をして見せた程の実力者だ。
ふむふむと事細かくメモをとる古河音の姿に、霙の中である感情が芽生え始めた。
それは、あまりに無防備な脇。
いかにもくすぐってくださいと言わんばかりに隙だらけの姿。
実際そんな事言うわけはないが、一度芽生えた感情は消えることなく疼き続ける。
質問に答える最中もうずうずとくすぐりたい衝動は収まる事を知らない。
取材もひと段落する頃に古河音がうーんと伸びをした次の瞬間。
霙の手がほぼ無意識に―――――………。
「ふぁ!? あひゃひゃひひゃひゃひゃひゃゃひゃ……っ!!
ってぇ!なんばすっとね!!?」
「……なぜに九州弁?」
辛うじてくすぐり地獄から抜け出し、身を翻して荒ぶる鷹のポーズ。
返って隙だらけである。
「いや、なんだかあまりに隙だらけだったもので……つい☆」
困った様に弁明するその笑顔があまりに可愛らしく、無条件に許してしまいたくなってしまう。
が、それを寸でのところで頭をぶんぶんと振って煩悩を退散する。
やられたらやり返す、倍返しだ!
「なるほど……。私相手にくすぐりで挑もうって訳ですね。悪いですけどここR15タグ入ってますからね?コラボだからって手加減はしませんよ……」
不敵な笑みを浮かべながら、手をわきわきとさせてじりじりと霙と一定の距離を保つ。
すると霙もそれに応える様に立ち上がり、同じく手をわきわきとさせる。
傍目から見るとシュール極まりない絵面だ。
神経を研ぎ澄ませて相手を観察する。
相手の重心・大勢・表情に至るまで古河音は霙の隙をうかがった。
「…っ!もらったあぁぁ――――っ!!」
脚力の全てを一蹴りに込めて速さに変える。
狙うは一点、彼女の脇。
速さこそ全てだ。お前に足りないものは、それは、情熱思想理念頭脳気品優雅さ勤勉さ!
そしてェなによりも、速さが足りない!!
「あっひゃひゃひゃひゃっ………!ちょっ…降参!降参ですって!あかんてばっ…!あっひゃひゃひゃひゃ……!!」
結果、見事に返り討ちにあっていた。
これぞまさしくクロスカウンター・くすぐり。足りないのは速さではなく、リーチだった。
「相変わらず霙はくすぐるの好きよねぇ…」
始終傍観していた霊夢が呆れたように肘をついて眺めていた。
助ける気は、ひとかけらもないらしい。
「ちがいますよ。私が好きなのは弄ることで、くすぐりはその手段なんです♪」
「そ、そう……」
黒い笑みを浮かべた霙に霊夢も思わず一歩後退。
気をつけなければ明日は我が身だ。博麗の巫女としての勘が彼女に警告した。
そんな時。
古河音の足が存在感を消し始めた。
否、本当に消え始めていた。
ソレは足から始まり徐々に古河音の身体全体に広がろうとしている。
それは必然だった。その世界に本来存在しない者は元ある世界へと戻る。
それがこの世の法則だ。
「……どうやらお別れのようですね」
「みたいですね。次は絶対に私が勝ちますよ!?」
「ふふふ、楽しみにしてます」
2人の間には、いつの間にか決闘のあとの友情の様な、そんな爽やかな空気が流れていた。
その間にも“消失”は彼女の身体に広がり続け―――――……
腹部の辺りで、止まった。
「え……?」
文字通り止まっていた。
“消失”が腹部まできた状態でそのまま進行しない。
今の彼女は手品か何かで見るような摩訶不思議・上半身だけ人間だ。
「いや、ちょっと何これ!?なんでこんな中途半端なところで止まってんの!?気持ち悪っ!!あれ!?ホントに止まっちゃってるよ!?どうなってんのコレ!!?」
上半身だけの人間が空中で四苦八苦している光景は、子供が見たらトラウマものだ。
これは罰なのかもしれない。
いくらコラボだからってあまりにもメタ発言をするのがきっといけなかったのだろう。
SS作家のみなさんも、過ぎたメタ発言はめっ! だぞ?
「いきなり地の文がふざけだしたんだけど!?……って霙さん、なんでそんな良い笑顔でにじり寄って来てるんですか……?」
「いえ、せっかく止まってるんだから。もうひと弄り♪」
「あっ………
あああぁぁぁァァ――――――――――――――ッ!!!」
~おまけ~
霙さん描いてみた。
という事で! 鈴華さん、色々とごめんなさいでした!色々と…。
楽しんで頂けたでしょうか!?
こちらとしては思い切り楽しんで書かせてもらいました。
という事で今回のゲスト、古城霙さんでした!