実はこの作品とは「東方大神伝 ~幻想郷に太陽は昇る~ 」という東方絆紡録の番外編でもコラボして頂いたんだZE?
「メイド喫茶に行きましょう!」
全てはその一言から始まった。
スマートフォンの中から三頭身にデフォルメ化された女の子が、持ち主である神無悠月に向かって短くしかし力強く、そんな言葉を発した。
彼女の名は夢燈月美。
黒いワンピースの上から黒のパーカーを羽織り、腰まで届くアホ毛の生えた黒い髪。
全身見事に黒尽くめながらも、その容姿に反して明るくお茶目な性格を兼ね備えた文字通りネット世界の住人である。
戦闘時にはスマートフォンから飛び出し刀にもなれる彼の相棒だ。
そんな相棒から放たれた言葉を未だ理解出来ず、またする気にもなれず、彼は月美の映ったスマートフォンに指先で触れるとそのまま横へスライドさせる。
すると彼女はその画面ごと姿を消し声も聞こえなくなった。
『ちょっと!?いきなり何するんですか!!』
静かになった。
そう思ったのも束の間、彼女は再びその姿を現せた。
ピコピコと揺れるアホ毛が、彼女の怒りの度合いを示している。
「すまん、お前の言動が意味不明すぎてつい…な」
「何を言ってるんですか。だからメイド喫茶に行きましょうって言ってるんですよ」
「いや、お前が何を言ってるんだ?」
互いの会話は平行線。
それはまるで徒競走のように。白線で分かたれたお互いの領域は決して交わることはない。
「最近出来たらしいんですよ。メイド喫茶」
「……あのな、ここは幻想郷だぞ?」
明治初期より文明の歩を止めた幻想の集う場所、幻想郷。
テレビもねえ。ラジオもねえ。俺らこんな村嫌だ。
当然の如く喫茶店などあるはずもなく、ましてや外の世界でもマイノリティに属するメイド喫茶など論外。
八百屋の中からカレーパンを探し当てるほどに、ありえない。
「それがあるらしいんですよ。それに偏見は良くないです。
最近だとそのまま幻想郷に居つく外来人も少しずつ増えてきてるって話ですし、そういう文化が浸透してきているかも」
「……そんな文化の浸透、俺は嫌だ」
忘れられたもの。つまり現代社会においてマイナーなものから幻想郷に流れ着くのだから、その可能性は否定できない。
この世界の住民が妙に世間で言うところの『ヲタク』向けの外観なのはひょっとしてそのせいなのだろうか。
ふとした疑問が彼の中に浮かぶ。
「とにかく、一度行ってみましょう!自分の目で見たものしか信用できないのが悠月の信条でしょう?」
人里のとある商店街のような場所に、たしかにそれはあった。
商店街という程に規模は大きくない。八百屋や茶屋の並んだ小さな店の集まりだった。
そんな中で、茶屋に並んで『めいど喫茶』と書かれた他の店と比べて少し大きめの店がプチ商店街の中に溶け込んでいた。
作りも和風で看板も筆で書かれているため、違和感がない。
その違和感の無さに、違和感を覚える。
『なんだか、思ってたのとちがいますね』
「ふつうのメイド喫茶が堂々と並んでたらそれはそれで嫌だけどな」
ともあれ、意を決して扉に手をかける。
月美の言うとおり、何事もその目でたしかめて見ないと信じられないのが彼の信条だ。
逆も然り。目で見たものならば例えどんな信じがたい事実でも受け入れる。
「お帰りなさいませぇ~~……。ご主人サマ!!」
バタンという音と共に悠月は扉を閉じた。
『あの…悠月?今……』
「いいか月美?俺は自分の目で見たものしか信用しない。
そして俺は何も見なかった。だから何も信用しない。中には誰もいなかった」
然しもの彼も受け入れられるものと受け入れられないものが存在するらしい。
扉に向かって回れ右。
そのまま帰ろうとも思ったが、ふとそこで足を止める。
たしか同居人である博麗霊夢が『煎餅が切れた』と駄々をこねていたのを思い出す。
「人里まで降りてきて手ぶらじゃ霊夢がまた煩いだろうし、煎餅でも買って帰るか……」
「なんでじゃあああぁぁ~~~~っ!!?」
扉が壊れそうな勢いで、大きな音を立てて開かれる。
現れたのは先ほど悠月が『見なかった』メイド服姿の少女だった。
「なんでですか!? どうしてですか!? なんでなんですか!!?
こちとら1ヶ月前からずっとスタンバってたんですよ!?この日のために挿絵まで用意してきたんですよ!?健気にご主人様を待つメイドの献身をどうしてそんな簡単に足蹴り出来るんですか!!?」
「………『なんで』っていうのは俺のセリフだと思うんだけどな…
なぁ、古河音?」
悠月はこの少女の存在を知っている。
その性格の面倒臭さも含めて彼女に関わるとロクな事にならないという事を身をもって知っている。
「なんでお前がここにいる?」
「いや~、前回そちらでコラボして頂いた時にですね。ど~も流れがおかしかったじゃないですか?」
※参照・東方絆紡録 幕間『花咲き乱れる非日常』 忘れない復讐劇
「いや、そもそもお前と絡んでまともな流れがあった試しがないんだが?」
「そこで私は思った。あの時の私には何かが足りなかった。そう、悠月さんとの好感度が足りていなかった!!」
質問を質問で返すというのは無作法の類とされるらしい。
だが、彼女の場合はその質問にすらまともに応答していない。
完全に悠月の言い分を無視して尚も力説する。
こういう部分が、好感度を欠落させている要因ではなかろうか。
「ほら、好感度が足りてないせいでイベントが上手く発生しないっていうのはよくある話じゃないですか。つまり私も、前回もっと好感度を稼いでいればもっと『イイハナシダナー』的な感動の再会を果たしていたと思う訳ですよ」
そうして今現在。まったく感動の欠片もないドライな再会を果たしている訳である。
手段のために目的をぽいと捨て去る。これを人は本末転倒と呼ぶ。
「で、それとお前のその格好にどうやったら繋がるんだ?」
もはや、彼女の暴論にツッコミを入れる事は無意味と考えているようだ。
色々と他にも気になることは多々あるが、とりあえず今回の彼女の意図する部分だけでもはっきりさせよう。悠月はそう考えていた。
「メイドといえばご奉仕。つまり今回は悠月さんにご奉仕して好感度をメタルスライム並に荒稼ぎしちゃおうって訳ですよ♪『言わせんな恥ずかしい』!コレ百科事典にもちゃんと載ってる」
「………………………………」
すべてを聞き終えた悠月は辛うじて古河音の意図を理解した。
色々とその答えに行き着くまでの過程に疑問を感じざるを得ないが、どうにか彼女が今回何をしようとしているかだけは、なんとか理解はできた。
「さ、帰るか」
『えっと…悠月。良いんですか?』
理解できたからといって、それに応じるか応じないかはまったく別の話である。
悠月としても彼女の話を最後まで聞けば、もしかして古河音を理解できるかもしれないとは考えていた。
だからこそ話の腰を折る事無く最後まで聞いた。
結果、何も理解できなかった。
今の悠月が理解するには、あまりに彼女は遥か彼方の別次元に迷い込みすぎていた。
「おっと……。ちょうど時期が時期だけに今回気合入れていきますよっ!?ナギカエは僕らのユートピア!祝☆映画化!!」
―――水符・『一緒に暗殺しなイカ?』
もはや彼女の十八番。
心なしかいつもより数が多めに、うねうねとうごめく水製触手が悠月の背後を捉える。
好感度云々の話は一体どこへ消え去ってしまったのか。
――――氷羽・『アイスエンジェル』
瞬時に振りぬかれた一太刀は、水製触手をあっという間に氷漬けにしてしまう。
いつの間にか手にしているその刀こそが、彼の愛刀『夢刀・月美』。
彼の相棒、夢燈月美が刀へと変化した姿である。
「同じ手が二度通じる訳ねえだろ…。ていうか前回も同じ手で破られてたろうが……」
「………ヌルフフフ。流石は悠月さん、一筋縄ではいかないでゲソ」
彼と同じくいつの間にか手にしていた杖を収縮して手首へと戻す。
安心と信頼の二つの玉が先端にはついている。
両の手を上げて降参のポーズ。だがその表情はまるで正反対だ。
それは勝利を確信している者にしかできない顔だ。
「では、こんなのはかがでしょう……?」
尚も両手は挙げたまま、その瞳はまっすぐに悠月を見つめている。
不気味な程に満ちたその自信に、悠月も思わず身構える。
彼女の手は基本初見殺し。
その突飛な発想故に思わぬ方向からの攻撃で相手を惑わせる。
「お願いします寄って行ってください!この通りです!!」
『ど…DO・GE・ZA!!?』
土下座。
古来より日本人が謝罪や懇願の際に行う。
最も自らを卑下するといわれている行為である。
自らの頭を地につけ相手にひざまずく事によって心の深さを相手に示すというものだ。
自らを下げ相手を上げる…日本人独自の謝罪・懇願方法といえるだろう。
「…………分かったよ。寄るから早く頭上げろって」
「ありがとうございますっ!」
「(むははは……っ!悠月さんの性格は事前に予習済みなんだよ!なんやかんや言いながら女の子に土下座までされちゃあ断りきれんぜよ!?むっはははは!!)」
「(――――とか、どうせ思ってるんだろうなコイツ……)」
『(とか思ってるんだろうな……って思ってるんでしょうね悠月は。分かっててもつき合ってあげる辺り、やっりお人好しというかなんというか……)』
三者三様に、各々の心境はまるでリレー形式のように筒抜けだったりする。
本編に詰まったら番外編に逃げる。コレ私の悪いクセだw
という事でお久しぶりです。もう毎回コレ言ってますよね…。
ていうのもですね?また懲りずに新しくゆっくり実況はじめちゃいましたよもうっ!
『ゆっくり実況で人狼だーれだ?』っていう動画始めました。本当にごめんなさい。