東方忘却記   作:マツタケ

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コラボ回もこれで五回目っ!ここで重大発表です!
今回出演してもらうカルマさんの登場する「東方禁初幻譚 」が一周年ですよーっ!
( ̄∇ ̄ノノ"パチパチパチ!!

まぁ、それに関係なくカルマさんはいずれお借りする予定だったんですけど、一周年と聞いて急遽予定を切り上げたんだぜ☆


コラボ回その5<前編>

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

薄暗い夜道。灯もなく月明りだけが頼りの獣道。

光の有無。それだけで世界は一変する。

同じ風景のはずなのに、昼と夜とではまるで別世界だ。

その場の空気も見え方も、生き物も無機物も……全てか変わる。

だからこそ人はその変化を抑えるために明かりを頼る。

少しでも世界の変化から逃れるため、飲まれそうな闇を必死で払おうとしている。

 

そんな夜道で、それは奇妙に映えていた。

 

金色の頭髪。東洋の国では見る事のない異国の色素だ。

白銀の月に対をなすような太陽を思わせる長く伸びた金色の髪。

対照的に全身を包む黒色の衣。

こちらも日本では見る事のない仕様だ。というより『今』の技術で作れるような代物ではない。

 

 

 

 

虫の声すら聞こえない不自然なほど静かな世界で、何かが聞こえた。

声…なのだと辛うじて分かった。

それほどに離れた距離。聞き取れたのは、彼の人並み外れた聴覚の賜物だろう。

 

「………………………………」

 

どうせ暇なのだしと、彼の足は進路を変えた。

ちょっとした気まぐれ。ほんの少しの寄り道。本来あるべき運命からのちょっとした分岐点。

これは、本来出会うはずのない人物同士の、ちょっとした運命の寄り道。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東方禁初幻譚1周年記念~運命の寄り道~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

足を進めるにつれ、声のする方へと距離を縮めるにつれて、彼の端正な顔立ちが怪訝なものへと変わっていった。

その声は…歌声だった。歌声………なのかもしれない。

声質からしてそれは女性のものなのだと分かる。分かるのだが………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゆぅめぇじゃあないっ! アレもコレむおぉ~~……その手ぇどぇドアを開けましょううぉう!!

 

 

 

 

 

 

 

そして輝く ウ・ル・ト・ラ・ソウル♪ ハァイ!!」

 

 

 

 

一人の女が、虫さえも鳴かない静寂を 世界を包み込む暗闇を 静かに照らす月明りを それらを一切無視して奇妙なテンションで歌っていた。

元の歌は知らないが、明らかに本来あるべき音程を崩しまくっている。

月に照らされた草原のど真ん中で一人聞いたこともない歌を異常なテンションで熱唱する様は、奇妙を通り越して軽く恐怖を感じるレベルである。

 

「………………………………」

 

男は無言で踵を返す。

何も見なかった事にして、何も聞かなかった事にして、運命の分岐点へと再び戻ろうとした………が、すでに遅かった。

一度選んだ選択肢に、後戻りは通じない。

 

「あら、そこにいらっしゃるのはどちら様ですの?」

 

チッ… 聞こえない程度の静かな舌打ちを立てながら、彼は諦めたように姿を現した。

十分に距離は保っていた筈……なのに気づいたという事は彼女もただ者ではないのだろう。

夜中に一人酔っ払いよろしく大声で歌っている時点で普通ではないのだが、そういう意味ではなく。

 

 

 

 

 

 

「………こんな夜中に何をしているのかと思ってな」

 

姿を現した男の名はカルマ。

黒衣の衣装を身に纏い長い金髪に長い手足、端正ながらもどこか中性的な顔立ち。

赤い左目と金色の左目が妙に特徴的だった。

彼の出生は、今では月の民と呼ばれる月へと移住した民のうちの一人だ。

紆余曲折あって、今では魔と神の力を合わせ持つ魔神と呼ばれる存在へと昇華している。

 

月の民と別れた今は一人旅の身だ。

 

 

「! あぁ~~~……なるほどなるほど。心中お察ししますわ」

 

何がなるほどなのか…女は勝手にうんうんと頷いている。

別に見ず知らずの女に何を思われようと関係はないのだが、妙に彼女の態度が癪に触った。

 

「一応答え合わせだ。お前は一体どういう解釈をした?」

 

「あらあら、それを私に言わせるおつもりですの?綺麗なお顔に似合わずあまりご趣味がよろしくないようで……」

 

「……………………………」

 

無言の視線が女を突き刺した。

彼女の今の発言で、何かしら間違いのある解釈をしているのは明白だ。

それを正さなければならない……という訳ではないのだが、この女に妙な誤解を持たれるのはなんとなく……なんとなく不快だった。

 

 

「そう睨まないでくださいな…。分かりましたわ。

 

ズバリ、夜道に響き渡る笛の音の様な私の歌声についフラフラと誘われここまでいらしゃったのでしょう?

 

仕方のない事ですわ。私の美声を独り占めしたいというそのお気持ちは決して悪ではございません。

ですがお気をつけを。昔から歌声を餌に獲物を狙う魔物の類は後を絶ちませんわ。

良かったですわね私が人間で。私が妖怪なら今頃あなたはパクリとやられていたにちがいありませんもの」

 

聞いてもない事を一から百までぺらぺらと。この場合の百とは十を基準にして残り九十ボーダーラインを突き抜けている事を意味する。

井戸端会議などで、その場を微動だにする事なく数時間平気で話し続けるおばちゃんなどによく見られる特徴である。

 

 

「後学のために教えてやる。あれは世間では歌声じゃなくて『奇声』というんだ。覚えておけ」

 

「またまたそんな、照れ隠しとは見苦しいですわ。きっとあなた将来は『ツンデレ』と呼ばれるに違いありませんわ。私の……こほんっ!まぁ、そういう事にしておいてもよろしいですわ」

 

勘違いという域を通り越して自意識過剰まで到達している彼女だが、カルマの貫く冷たい視線が少しだけ女を自重させた。

勘違いも甚だしい。よく耳にする言葉ではあるが、まさにこの女にこそ相応しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、なんでこんな夜中に1人で『奇声』を発していた?」

 

けっきょく歌声は奇声扱い。

否定しようとしてもその度に彼の冷たい視線が突き刺さるので、もう諦めた。

普段は人の視線など気にもならないのだが、なぜか彼の視線は妙に突き刺さる。

威圧、ともいえるそんな眼だ。

 

「そう…あれはご飯も作るのも面倒くさくて適当な家にお宅訪問して晩御飯を分けて貰っていた時の事ですわ……」

 

語りだしからすでに、ツッコミどころが満載だった。

だがここで口を出してしまっては話が中断し、目的である『奇声』まで辿り着かなくなる。

別にカルマはお喋りが目的ではない。彼女の奇行の意図が少しだけ気になったので聞いてみた。ただそれだけの事なのだから。

 

 

 

 

「おじいさんとおばあさんと談笑をしていた私の頭に、突然電波が舞い降りたのです。そう、熱いソウルが私の中に宿ったのですわ!

 

私は居ても立ってもいられず家を飛び出し、熱いソウルに従ってここまで走ってきましたわ。

 

そして魂のままそれを体現したのです!ウ・ル・ト・ラ・ソウル!!」

 

 

 

「……………………………」

 

聞けば何か分かると思っていた。聞いても何も分からなかった。

理解を超えた彼女の言動にカルマに謎の頭痛が押し寄せる。

ほんの気まぐれとはいえ、こんな理解不明な女の歌声を聞きに来た過去の自分がとても愚かに思えてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで、どう見ても異国の方のようですが、どちら……か…ら………」

 

好奇に捕らわれたカルマを見る女の瞳が突如変わった。

今までの雰囲気とはあきらかにちがう。

カルマという存在を計り知れない何かを見るような表情だ。

 

 

「………何者ですの?あなた」

 

「………ほう?」

 

カルマは自分の何かが探られるような感覚を感じ取り、咄嗟に彼の持つ禁忌魔法『拒絶』を使用した。

文字通りありとあらゆるものを『拒絶』する強力かつ代償の高い禁術のひとつだ。

彼の身体は魔神になったその時から、禁術のどんな代償をもものともしない身体へと昇華したものになっている。

そのため常人ででは手を出せないような術も彼は息をするように扱えてしまう。

 

今回でいえばその『探るような感覚』を拒絶した。

女の反応からして、間違いなくその感覚は彼女によるものだったのだろう。

 

 

「別に、ただの旅人だ」

 

「むぅ……」

 

カルマの言葉に女はあからさまに不満げな表情を見せる。

正体を隠された事がそれほど不満なようだ。

自慢気な表情から怪訝な表情へ、そこからまた不満そうな顔に、コロコロとよく変わる表情だ。

 

「……なるほど。正体を明かすならまず私の正体を明かせと……そういう事ですのね?」

 

「誰がそんな事言った?」

 

「それもたしかに一理ありますわ。では、あちらでゆっくりとお茶でも飲みながら語り合うとしましょう。それならば平等でしょう?」

 

「人の話を…………っ!?」

 

まるで茶屋を指すように女が『あちら』と指さしたその先には、なんとも立派な城が見えた。

それ以外に建物らしい建物も見えない。間違いなくこの女が茶屋感覚で指しているのはその城の事らしい。

 

 

「………お前、あの城の関係者だったのか?」

 

話によれば彼女は自炊を面倒がりどこの家とも分からぬ老夫婦に晩飯をご馳走になったという。

そんな輩がそんな大層な身分だとは思えない。

 

「いえいえ、全く関係ありませんわ。ですがご安心を。きっとみなさん歓迎してくださいますわ♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本当に、歓迎された。

あきらかに大物でなければ入れないような客間へと懇切丁寧に案内され、上物のお茶に茶菓子まで出てくる始末。

関係者でもここまでの待遇は滅多とされないだろう。

 

その過程で、カルマの中であるひとつの推論が導き出されていた。

 

先ほど感じた何かを探るような感覚。

それを同じものをこの客間に案内されるまでに何度もそれを感じ取った。

『それ』が自分に向けられていない事が分かっていたから『拒絶』を使うこともなかったが、間違いなくこの女の仕業だ。

まるで当然のように自分たちを迎え入れる城の者。そして先ほど老夫婦も同様に彼女を当然のように迎え入れたという。

 

そんな能力を持つ存在が彼の知識の中に心当たりがあった。

 

 

 

「お前まさか―――――――………

 

 

 

 

 

 

 

 

ぬらりひょんなのか?」

 

女はその問いかけに、まるでバナナの皮を踏んづけたかの様に盛大に転ぶ。

漫才の才能でもあるのかもしれない。

 

ぬらりひょん。

どこからともなく現れ、まるで家主のような振る舞いで居座り、そしていつの間にか去っていく。

諸説あるも未だ謎の多い妖怪だ。

いつの間にやら『ぬらり』と現れ、『ひょん』と思いもよらぬ行動にでる。

それが名前の由来だとかなんとか。

 

 

「あんな下賤な妖怪と一緒にしないでくださいましっ!!」

 

金切り声が響き渡る。耳障りなので彼女の声のみを拒絶で防いだ。

唇を見れば何を言っているかは大抵分かる。

 

 

 

 

 

「こほん………。私の名前は月詠鈴芽。相手の記憶を自在に読み取り操る魔法使いですわ☆」




今回はいつものコラボと若干ちがう仕様です。

もし、カルマさんと鈴芽が同じ世界にいたら。こうやって出会う事もあったかもしれないというIFストーリーとなってます。

ちなみに時系列としてはカルマさんがまだ一人旅をしていた頃。鈴芽が紫と出会う前。
具体的にいつだって?知らんな(ヲイ!!
例によって例のごとくふわふわ設定です!この先の展開だって全くの未定です<(` ^ ´)>エッヘン
そんな訳でもうちょっと続くヨー
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