東方忘却記   作:マツタケ

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年代表見てゾっとした…。鈴芽のいた時代竹取物語から数百年あとの話やんっ!!その時カルマさん一人旅な訳ないじゃんっ!!?

・・・・い、良いですよねっ!?細かいこと(?)言ってたらコラボなんてできないですよねっ!?
大事なのは勢いで押し切る事なんです。  ホントごめんなさい。


コラボ回その5<後編>

 

 

 

 

 

 

「つくよみ……ね」

 

奇しくも、彼女の性にふと懐かしい名前が浮かび上がった。

最後に逢ったのはいつかの大戦の時だったか…。

とはいえ彼女からは神々しさもの欠片も感じない。そもそも表記が違う。

他人のそら似ならぬ名前のそら似だ。

同じ読み方が同じでもそれは『小田』と『織田』くらいの違いがある。

 

「なるほどな…。わざわざご丁寧に城の連中全員の記憶を書き換えやがった訳だ」

 

「私の力をもってすれば、複数の記憶操作など造作ない事ですわ。褒めてよろしいですわよ?何もでませんけど」

 

明らかに皮肉を込めて呆れ返っているのだが……どうやら通じていないらしい。

意味が分かってわざととぼけているのか、本気で褒められていると思っているのか。

後者だとしたら相当性質が悪い。

 

 

 

「さぁ、次はあなたの番でしてよ?」

 

「…………………は?」

 

客間の代物であろう扇子を勝手に持ち出して、カルマを指す。

したり顔でそんな真似をされても何を意図しているのかまったく分からない。

 

「何が俺の番なんだ?」

 

「な………っ!!? この私がわざわざ能力まで紹介して名乗ったというのにご自分はまだ正体を隠すおつもりですのっ!? そもそも私まだあなたの名前すら存じませんのよ!?あなたの記憶が読めないせいでっ!!」

 

再びヒステリーを起こして金切り声をまき散らす。

耳に響いて不快な事この上ない。

そもそも名乗っていないのだから名前を知らないのが普通だ。もし彼が拒絶を使っていなければ、名前から出生まであらゆる過去を探っていた事だろう。

プライバシーも何もあったものではない。

 

 

 

「カルマ。……ただの人間だ」

 

「嘘ぶっこいてんじゃねーぞ。このダラズが」

 

面倒事を避けようとするカルマの返答に、苦虫をつぶしたような鈴芽の顔が彼に迫っていた。

眉間にしわを寄せた、とてもお見せできないような顔だ。

 

「……嘘じゃない。少なくとも、ただの人間だった」

 

あまりに不快なのでその顔を手で押しのけ、ため息と共に言葉を続けた。

この女の茶番につき合わなければ返してもらえないらしい。

 

 

 

 

 

 

彼から語られたのはおよそまともな常識を持っていれば信じ難い内容だった。

今より数億年も昔の世で彼は今よりもずっと進展した文明に生きていた。

そこでは穢れという物の怪とも異なる異形のもの相手に戦いの日々を繰り返していたのだという。

 

 

だがそんなある日、穢れに紛れて神の名を持つ1人の鬼が現れた。

彼女は自らを鬼子母神と名乗り、当初人間だった彼を徹底的に打ちのめした。

 

そんな彼女に対抗するため、魔人と呼ばれる不死の特性を持つ身体を手に入れた。

それは同時に、人を捨てたという事を意味する、

その身体は彼が扱う九十九の〝禁忌魔法”と呼ばれる禁術を禁術特有の〝代償”を無視して自在に扱えるものへ変わっていった。

 

そうして彼は穢れ軍勢を1人で相手にして、残りの民達を月へと逃がしたのだという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………よくもまぁ、それで『ただの人間』とか言えたものですわね」

 

あまりの話の壮大さに、流石に鈴芽も開いた口が塞がらない。

まるで長い長いファンタジー小説をまるまる一冊読み終えた後のような、なんとも言い難い喪失感のようなものがのしかかってくる。

それを当人はまるでコンビニに行ったら雑誌が売り切れていたかのような軽さで語っていたため、その温度差が逆に現実味を帯びていた。

そのカルマはただいま読書中。

主人公の侍が帝を裏で操り政権を握っている悪党を討つという内容のものだ。

今現在城の者達を操って客間を我が物顔で使っている女がいるのだが、こいつもどこかの侍が討ってはくれないだろうかと、密かに思っている。

 

 

「にしても意外だな」

 

現在本の展開は主人公と姫様との初々しい恋物語へ。この手の話はカルマにはいまいち理解し難い。それよりも悪党がどうやって政権を操っていたかの経緯の続きが気になる。

 

「絶対に鼻で笑って信じないと思っていたんだが?」

 

「………私が今までどれだけの記憶を読んできたとお思いで?嘘をついているかいないかくらい、話の流れや挙動でだいたい分かりますわ」

 

「……ほう」

 

今まで本の内容にしかいっていなかった関心を、少しだけ鈴芽に傾ける。

能力がなければただの口煩いだけの女だと思っていたが、そうでもないのだと少しだけ認識を改める。

 

 

 

「と・こ・ろ・で♪今のお話で少々気になる点があったのですが……」

 

「断る」

 

口元を歪ませ、再びずいっと彼の下へと顔を寄せる。

鬱陶しいので持っていた本で押しのける。

本日2度目のやりとりである。

 

 

「………まだ何も申し上げておりませんわ」

 

「禁忌魔法……だろ?」

 

過去の話をしていた頃から禁忌魔法のくだりの時に鈴芽の目の色が変わっていたのをカルマは見逃していなかった。

記憶の能力云々で深くは考えていなかったが、そういえば魔法使いを自称していたのをそこで思い出した。

ならば当然この話題に食いついてくるであろう事は過去を話している最中に予想はついていた。

彼女がそこまで愚か者でない事を心の片隅で少しだけ祈っていたのだが……残念ながらそこまで愚か者だったらしい。

 

 

 

 

「あらあら♪ご理解が早いようで助かりますわ。では早速……」

 

「……ド低能が!今の話を聞いてなかったのか?

『これ』は人の身を捨てて初めて扱える代物だ……!禁術に代償が必要なのは魔法使いの初歩の初歩だろうが!それが分からない程お前は低級じゃないだろう!?」

 

 

 

 

珍しく…少なくともカルマという男がここまで語調を荒げるのは本当に稀な事だ。

それは禁忌魔法に手を出すという行為がどれだけ愚かしい事かを分かっているからに他ならない。

禁術という術が何故禁忌とされながらもその存在そのものが抹消されないのか。

それは、リスクの先にあるメリットに欲に目の眩んだ者達が後を絶たないからだ。

代償を払ってでも目先の欲望を満たしたい。

もちろん例外はあるものの禁術に手を出す者などほとんどそんな愚者ばかりだ。

 

呆れながらも、頭痛に悩まされながらも、カルマは月詠鈴芽という女を多少なりとも認めていた。

柔軟な思考に物怖じしない度胸、経験による観察力。

認めていたからこそ……彼女の愚かしい言葉に怒りを覚えたのも事実だ。

 

 

 

 

 

「…………………………」

 

しばらくの間、鈴芽は顔をうつむかせたまま黙っていた。

さすがに堪えたのだろう。

堪えたのだろうが……先ほどまでの騒音がここまで急に静かになると、それはそれで居心地が悪い。

軽く舌打ちをしながらも、空になっていた彼女の湯飲みを無言のまま取り上げるとそこに新しくお茶を淹れて彼女に差し出した。

何かを飲むという行為は、少なからず人の気持ちを静める作用がある。

騒音にならない程度に調子を取り戻してくれれば、それがベストだ。

 

「………………………」

 

相も変わらず無言のまま、静かにお茶を口にしてお茶菓子を軽く口にする。

黙っていれば、その様は本当にどこかの姫のようだ。

 

「……んな…………んの………………」

 

それまで塞がれたままの彼女の口が、ようやく開かれた。

小声過ぎて、カルマの聴力をもってしても何を言っているのか聞き取れなかった。

 

 

 

 

 

「そんな言い方しなくてもよろしいじゃありませんのっ!!禁忌の魔法って聞けば魔法使いなら誰だって興味を示すのは当然の事でしょう!!?いーじゃありませんの!99もあるのならどれかひとつくらい触り程度でもお話しするくらい減るものじゃないでしょうにこのケチンボ!!だいたい私を誰だとお思いで!?私ならば禁術のひとつやふたつその代償をどうにかする方法くらいすぐに解明してみせますわっ!!禁術を禁術のまま未だ改良もせずに放ったらかしにしている方にとやかく言われたくないですわっ!!だいたい断るにしたって『代償があるから教える事はできない』とそれだけ言えば済む話でしょう!?それをあんなガミガミ仰る事ないじゃありませんのっ!!私こう見えてもこの能力で一国の姫になった事もございますのよ!?みんなにチヤホヤ優しくされてそれはそれは気分良かったですわ!!その私に説教などと!!あんな風に怒られたなんて数十年ぶりですわよっ!!もっと優しくしてくださっても罰は当たらないというものではありませんのっ!?むき――――っ!!!」

 

 

 

溜まっていたものが、爆発した。

今まで無言だった分の騒音がここにきて一気に彼女の口からあふれ出る。

金切り声を撒き散らしながら地団太を踏むその姿はまるで子供そのもの……否、昨今子供でもここまでみっともない姿はなかなか晒さない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「結論から申し上げます」

 

ようやく癇癪も治まり、今までの痴態を然もなかったかの様に振る舞う事ができるのは彼女の肝の太さの成せる業だろうか。

 

 

「私、あなたが嫌いですわ」

 

「そうかよ。俺もお前は好きになれそうにない」

 

怒られたからあの先生きらい。まったくもって子供の理屈だった。

カルマとしても彼女に気に入られたところで百害あって一利ない。むしろ好都合だ。

 

「それでは、もうお会いする事もないでしょう。楽しいお茶会でしたわ」

 

「あぁ、二度と会わない事を祈っている」

 

カルマに背を向けスライド式の窓を開く。

そこから出ていくつもりなのだろう。入る時は城の人間の記憶を操って入って、出るときはそのまま。実に勝手極まりない。

 

 

 

 

「あ……。

 

 

 

気が変わりましたわ。やっぱりまたお会いしましょう。

その時は、私があなたを泣かせてさしあげますわ☆」

 

ニタリと気味の悪い笑みを浮かばせながら、指をパチンと鳴らせて女は去っていった。

……頭痛がする。……胃がキリキリと痛む。

不死の身体といえど、人並みの症状は人間の時のままのようだ。

唯々、ため息が漏れるばかりだった。

 

 

 

 

「いたぞ―――っ!!出合え~~~~~っ!!」

 

そんな中で突然刀を構えた一人の男がカルマのいた客間に押し入り、声を上げる。

どうやら仲間を呼んでいるらしい。

 

「こ奴が殿のお命を狙う不届き者じゃ!!ひっ捕らえぇぇ~~~~っ!!」

 

「…………………………」

 

カルマの頭に過去の映像が。

先ほど鈴芽が去り際に指をパチンと鳴らしていた姿が脳内でされていた。

更に悪化する頭痛の中、カルマは切に願う。

 

もう二度と会う事のないようにと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

運命は、分岐点の連続だ。

ほんの少し時間をズラすだけで……少し選択肢を変えるだけで、未来は大きく変化する。

だがしかし、誰しも覚えのある事だろう。

運命にしろただの帰り道にしろ、寄り道などしてもロクな事がないのが世の常である。

 

みなさんは、寄り道などせずまっすぐ家に帰りましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

東方禁初幻譚1周年記念~運命の寄り道~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうしてこうなった!? って自分に問いかけたい。
仮にも禁初幻譚の一周年を祝おうって企画のはずだよコレ!?なんで最終的に鈴芽勝手にヒス起こしてカルマさんの胃に穴開けようとしてんのっ!?

・・・な、なかなか理想って実現が難しいものですね。(そういう問題!?)
そんな訳で改めて、東方禁初幻譚一周年おめでとうございます。
正直お祝いにこんなの書いちゃって大丈夫かなっていうのが気分ハラハラものではありますが……これからも鈴華さんの作品楽しみに心待ちにしております。

それでは、今回2回目のコラボ(それまでに何度もお子さんお借りしてる気がしないでもないけど)させて頂き本当にありがとうございました! そしてごめんなさいっ!!
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