「ちょ…ちょっと待て!なんで今の願い事からそんな展開になるんだよ!?」
事情を察していない双覇からすれば、それは当然の疑問だった。
男2人を恋人に…という願い事から妥協して男2人を友人関係に。
ここまではまだ自然な流れだ。
もともと最初の願いが自然ではないのだがそこを言及していてはきりがない。
そこから一転、今度はこの場にいる女性とデートしてくれというのだ。
何がどうなってそういう願い事へと転換したのかなど分かるはずもない。彼女たちの気持ちを知っていない限りは……。
「分かりませんか?分かりませんよね~?大丈夫、主人公ってそういうものです。
私、鈍感属性肯定派ですのでご心配なく。
でも残念その質問には答えられません。私が答える事じゃないですから☆」
少年よ大志を抱け。答えは誰かに教えられるものではない。己で切り開いてこその道なのじゃ。さぁ、ゆくがよい。大いなる冒険(デート)がお主を待っておる!
そんな思いを込めて、親指をグっと立ててサムズアップ。
もちろんそんなメッセージなど伝わるはずもないが、とりあえず上から目線で何かを訴えかけているという事だけは双覇にも伝わった。
「それなら、私も双覇さんと一緒にデートしたいです!
一世一代の文様から奪い取るチャンスですから!!!!!!!!」
どこからともなく、声が響く。
上空から降り立つその姿は純白の髪を持った白狼天狗の少女。
犬走椛だった。
妖怪の山で侵入者を追い払うという任を受け持つ白狼天狗の中でも切り込み隊長的存在だ。
「椛っ!あなた山の警護は……」
妖怪の山というのは他の妖怪には見られないある習性を持っていた。
それは統率だ。
強いものは弱いものを食い、弱いものは食われるか従うか。
良くも悪くもそれが妖怪の本質だ。
が、妖怪の山の妖怪たちは群れる事を重んじ上下関係をはっきりとさせた統率という規則に従っている。
これはどちらかといえば人間に強く見られる習性だ。
その分彼らの結束は強く、他の妖怪には見られない『群れ』の力を如何なく発揮しているのだ。
その分彼らは上下関係にも非常に厳しい。
犬走椛の上司にあたる文は、突然現れた彼女の行動を言及する権利を持っている。
…………のではあるのだが。
「そうじゃのっ!私もなんだかんだと最近ご主人様と一緒に居なかった
からな!デ・・・デートをして今まで私を頼らなかったツケを払ってもらうとする
のじゃっ!!」
「椛が大急ぎで飛んでいったから何かあったのかと
思えば、面白そうなことしてるなぁ私も混ざろうっっ!!これでも昔は
妖怪の山で最も美しい妖怪と言われたものだ。」
「何おかしなこと言ってんのさ。
それはあたしだろ、天魔。まぁ今も圧勝だけどねぇ!というわけで、
天魔が参加するならあたしもするさ・・・面白そうだしねぇ!!!!!!」
そんな文の言葉を待たずにあれよあれよと次から次へと、椛の介入をきっかけに乱入者たちが押し寄せる。
それも彼女たちの言葉を聞くに、全員このデート大会に参加を申し出る者達ばかりだ。
合わせて計7人の女性が、一人の少年に対してデートを申し込む。
これをラブコメの主人公と言わずしてなんというのか。
「待て待て待て待てっ!!なんだよこの状況!!?
ちょっと一回整理させてくれ……。オイ!まさかこの人数と全員今日中にデートしろなんていうつもりじゃないよなっ!?」
突然の状況に双覇は古河音の方へと振り返る。
彼女が言うには女性『一人ずつ』という条件が課せられている。
そもそも複数の相手と同時に行動を共にすれば、それはデートと呼んでいいのか非常に微妙なものになる。
「うーーーーーーんん………」
さすがの古河音もこの状況にはあごに手を当てうめきを上げる。
今の状況に、双覇の問いかけに、頭を悩ませる。
最悪今の願い事をキャンセルして再び最初の願い事叶えてもらって早々に元の世界へと帰るという手段もある。
が、そんな消極的な行動は彼女の矜持に反する。
そもそもこの場にいる者達みんなが彼とのデートを望んでいるのだ。
同じ女として、そんな状況を見捨てるのはいかがなものだろう。
ここで一人くらい男性がデートを申し込んでいれば真っ先にそっちを優先したのに……。心の片隅で軽く舌打ちをしながら、彼女の答えは決まった。
「分かりました……。私も鬼じゃありません。
一日じゃなくて二日かけて、ここにいる人達とデートしてください!」
「鬼かお前はっ!!?」
「何言ってんだい?鬼は私だよ」
「そういう事じゃなくてっ!!!」
かくして、前代未聞のデート大会が今この時はじまろうとしていた。
「いやーっ!まさかこんな事になるとはねぇ!!」
「あ、それお前が言うんだ?」
あっはっは!と彼の隣で豪快に笑うのは鬼という種族の祖。鬼子母神。
一種の神だ。
鬼という種族をこの世に生み出した鬼の祖。
名を姫神焔<ひめかみ ほむら>
かの星熊勇儀並みの怪力に息吹萃香と同じく霧状にもなれるという驚きのハイスッペックである。
かつては互いの立場の違いからぶつかり合い、どちらが死んでもおかしくない死闘を繰り広げた仲だ。
喧嘩の後の友情的なものなのか、それ以来すっかり双覇に懐いているといった様子である。
「硬い事は言いっこなしだよ。祭りごとはノリって昔から決まってるからねぇ♪」
面白そうだから混ざってみた。
彼女の様子を見ているとそんな心情がうかがえる。
仮にも鬼をまとめる一族の長。しかし今の彼女からはそんな重荷から解放されたような雰囲気が感じられる。
少なくとも昔の彼女なら、ここまで気ままな行動はとらなかったはずだ。
「……少し、変わったか?」
「良くも悪くも…ね。アンタのおかげさ」
「そりゃよかった。悪かったって言うべきなのか?」
「さぁ?どっちでもいいんじゃないかい」
そんな光景を見守っているととるべきか監視しているととるべきか、7つの視線が彼ら2人を見つめていた。
さすがにひとつの場所に固まっていると気づかれるので、各々がばらけて行動している。
移動の際には唯一飛べないさつきは古河音の箒で2人乗りだ。
もとよりデート中、他のメンバーがおとなしく待機……などしているはずもなかった。
2人の一挙一動に食い入るように見つめながら、そのセリフを一言も聞き逃さないように必死に耳を傾けながら。
その様子はさながら容疑者を監視する刑事のようだ。
「ねぇ……」
「え、ちょっと今いいとこなんだけど……。なんですか?」
それぞれ別々に2人を観察しながら、その中でも移動に必要な古河音とさつきだけは共に行動していた。
全神経を覗きに集中していた古河音は、若干不満気だ。
「なんで……その……今回みたいなお願い事した訳?自分の願いまでキャンセルして……」
本来古河音が今回の事を言い出すまでは、文とさつきと靈夢とで三人そろっての甘味屋めぐり。それが当初の予定だった。
双覇に想いを寄せるさつきとしては、いささか不満の残るもの。
彼が複数の女性とデートするという点においては変わらず不満は残るものの、それでも2人きりで彼といられる貴重な機会だ。
自分の願いを蹴ってまでそんな願いをする彼女の意図が、さつきには分らなかった。
「さつきさんって、ラブコメとか読む人ですか?」
「えっ……?ま、まぁ読むけど……普通のね!?ごく普通の一般的なやつね!!?」
質問の意図が分からずに戸惑いながらも彼女の質問に答える。
答えた後で、古河音の趣味の事を思い出し、即座に念を押した。同族と思われて妙な話題を振られでもしたら、彼女では対処しきれない。
「あーいうのって、結局主人公とくっつくの誰か決まってるじゃないですか。
漫画とかだとルートなんてないし。そうなると、やっぱ他のキャラって応援したくなりません?」
「っ!! 分かるっ!! 最近の漫画って幼馴染があまりにも報われてない気がするッ!!」
「おぉっ!?力の入ったリアクションありがとうございます。でもちょっと力抜いてもらえません!?」
「あ、ごめん……」
突然古河音の手をぎゅっと握りしめ、正直痛いくらいに力が込められていた。
昨今ラブコメにおいて『幼馴染』というポジションは不遇になりがちである。
今まで主人公に対してコツコツと溜めてきた好感度が、突然現れた謎のヒロインにごっそり持っていかれるという展開は今では珍しくもない。
あくまでフィクションと分っていながらも、そういう幼馴染というポジションのキャラクターに少なからず自分と重ねてしまうという経験が、少なからずさつきにはあった。
「ま、理由としてはそんなとこです。さすがにここまで人が集まるとは思ってなかったですけど……」
「だよね。ホントどこから嗅ぎつけてきたんだか……」
ほんの少し、距離の縮まった2人だった。
「ところで双覇」
「ん?」
「デートってのは一体何をするものなんだい?」
「デスヨネ………」
そもそも喧嘩と酒が生きがいの鬼がデートというものを理解しているのかという事自体、疑問を持ってしかるべきだった。
馬鹿か私はァァァァ!! 7人とのデートの予定詰まってるんだよっ! まだ1人たりとも終わってないってどういう事っ!?
展開遅い遅い…。そうだよ!私が続き物書くとこうなるんだって!!
という事で、まだ一人たりとも満足に終えれませんでした…。コレ向こうのコラボ回にも影響するんだってば…。次回こそ2人くらいデート済ませますのでっ!!