プロデューサー杏、芸能界を生き抜く   作:アイスクリン

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・アイドルマスターシンデレラガールズのキャラクター「双葉杏」が
 芸能界で活躍していく話です

・ユニット名は借りてますがアニメの世界ではありません

・キャラクターは原作準拠

・アンチ、ヘイトする気はありませんが、杏が活躍する前提なので
 他のアイドルが割を食う描写があるかもしれません。
 気分を害されたら申し訳ないです

・杏視点




杏、プロデューサーになる

 

 

「杏、プロデューサーやってみないか」

 

 プロデューサーがそんな事言い出したのは、一人での仕事を終え

 次の現場に向かう車の中での事だった。

 いつものように後ろの席で眠ろうとした杏に、

 話があるなんて言い出して、

 挙句の果てにはこんな寝ぼけた事を言い出している。

 杏が寝るより先にプロデューサーが寝てるんじゃないの?

 世間はもうすぐGWだとか言って浮かれているのに、

 人一倍休憩が必要な杏に働かせて酷い鬼プロデューサーだ。

 

「やだ」

 

 当たり前だよ。

 これ以上休みを削られてたまるかっ。

 なんでプロデューサーなんて仕事が杏に回ってくるのか、訳わかんないけど

 忙しすぎてやってられない事だけは分かる。

 絶対にごめんだ。

 そんな気持ちを込めつつも、めんどくさいので二文字で返事。

 

「待て待て、ちょっと話ぐらい聞け。考えろ。

 ほら、この飴やるから」

 

 そう言ってプロデューサーが飴の袋を差し出してきた。

 しかも、梅子ちゃんの新味、真夏の梅子ちゃんだ。

 こんな物を用意していたとは、気が利く所がある。

 仕方ないので少しだけ話を聞いてやろう。

 

「じゃあ聞くだけだよ」

「その様子じゃ乗り気じゃなさそうだな」

「だってプロデューサーってすげー忙しそうじゃん。

 なんでそんな話が出たのか知らないけど、杏にやれる気しないよ」

 

 プロデューサーはいっつお忙しそうだ。

 私達を送迎する合間にもハンズフリーにして電話してるし、現場でも書類仕事したりしてる。

 杏はそもそも17歳で免許持ってないし、送迎とか出来ないじゃん。

 あっ、真夏の梅子ちゃんは大玉あるんだ。

 せっかくだから、これ食べよう。

 

「俺のやってる事から考えてるなら心配いらないぞ。

 マネージャー兼任みたいなものだったから忙しかったんだ。

 …まあ、無関係ではないんだが」

「んぅ?」

 

 グレープフルーツと梅の混ざり合った爽やかな風味が広がって返事が出来ない。

 まあ、いいけど。

 

「プロデューサーがマネージャーのような事もするのが

 うちの事務所の伝統だったんだ、担当アイドルの面倒を全部見るのがさ。

 まあ、でも限界が来るのは分かるだろ?

 アイドルとプロデューサーの数考えたら」

 

 プロデューサーが言いたい事は分かる。

 色々な幸運やなんやかんやで杏達は順調に仕事がある。

 というかどんどん増えてる。

 事務所に来る仕事は増えて、そうするとアイドル志望者も来るし、

 有望なら採用するからアイドルも増える。

 でも、プロデューサーはなかなか増えない。

 だから、忙しそうなんだよね。

 

「ということでプロデューサーはプロデューサーの仕事をする、

 雑務や任せられる事務仕事、送迎なんかは他部署から引っ張ってくる人員や新人に任せる、

 って事になったんだ。

 それでも十分とはいえないから、プロデューサーいらない娘は無し。

 マネージャーだけがつく」

「杏達いらない子?」

「プロデューサーが、いらない子だな」

 

 んー、やり過ぎたのかな。

 プロデューサーがいらないなんて事ないはずなのに。

 

「杏は自分を知っている。

 魅力も欠点も、売り方も。

 何しろ、デビューしてすぐにプロデュースの仕方に口を出してきたぐらいだ。

 そして、的外れな事を言った事はない。

 楽したがりだとは思うけどな、杏の自分を見る目は確かだ」

「そりゃ、自分の事はね。

 自分の事ぐらい分かるよ。

 無駄な苦労したくないから、効率的に次につながる仕事を選んだんじゃん。

 自己中ってだけでプロデュース力があったわけじゃ無いよ」

「かな子や智恵理の分まで考えてくれてただろ」

 

 かな子と智絵里はユニットメンバーだもん。

 自分の事考えるのと一緒みたいなもんでしょ。

 杏が自己中だったのに変わりはないと思うけどな。

 そう言ってみたけどプロデューサーは頷いてくれなかった。

 

「かな子も智絵里もいい子じゃん。

 泣かせたくないから、手伝ってあげようと思ったんだよ。

 いい子じゃ無かったら見捨ててた。

 杏はそんなんだよ」

「それでいいんだ。

 何も気に食わない子をプロデュースしろなんて言わないさ」

 

 うぅ、プロデューサーに口では勝てない。

 不味いぞ。

 このままじゃプロデューサーやらされる。

 ちょっとお茶でも飲んで反撃のチャンスを待とう。

 

「方向性決めたり、仕事内容決めたりが主だ。

 杏は前からやってただろ?

 マネージャーはつくからスケジュール管理や送迎はやってくれる。

 ユニットだけなら今までと何も変わらないぞ」

 

 あー、お茶美味しい。

 車の外には人がいっぱいだなぁ。

 ……なんて、韜晦してても話は終わらない。

 

「それにギャラも上がるし、やりたい事を通すにも

 やりたくない仕事断るにもやりやすいぞ。

 事務所での発言力も上がるしな」

「……ユニットだけなら?

 なんか引っかかる言い方だけど、まさか」

「まあ、そのなんだ……」

 

 ちょっと聞き捨てならない事言ったよ、今!

 しれっと仕事増やそうとしてるよ、このプロデューサー。

 バックミラー越しにじっと睨みつけてやったら、プロデューサーは力無く溜息を吐いた。

 

「……何人か力を貸してほしい娘がいるんだよ」

「やっぱり。 

 今まで通りじゃないって事じゃん」

「いやでも、お前の希望通りでもあるんだぞ。

 プロデュースしたアイドルが売れれば杏にも収入が入る。

 ドル箱アイドルでも育ててみろ、寝ててもがっぽりだ」

 

 うっ、確かにそれが出来るんなら美味しい。

 印税収入か家賃収入、不労所得で暮らすのは昔からの杏の夢だ。

 

「うーん、それは確かに美味しいけど……」

「このままじゃ、印税も不労所得も無いぞ。

 今、すこーし頑張るだけで数年後には寝ててもお金が入って来る。

 な、やってみないか」

 

 うーん、これは悩む。

 確かに何もしなければいつまでも印税も不労所得も手に入らない。

 プロデューサーの言うことに嘘は無いだろう。

 二年程の付き合いだがそれぐらいは分かる。

 それに自分のプロデュース力を期待しているというのも、きっと本音だ。

 杏はアイドルとして成功する為、デビュー直後から仕事内容に口を出してきた。

 普通はあり得ない事だと思う。

 よくこんな小娘の言う事を聞いてくれたよね。

 うちの事務所って「個性を大事に」が信条だからだろうね。

 プロデューサーも優しいしね。

 いくら、的を射ていると判断してくれてても凄い事だと思う。

 おかげでデビューから二年、杏達はアイドルとして人気を得て

 今ではMCやってるテレビ番組まであるんだから、ありがたい。

 杏のやり方で杏達キャンディアイランドは成功したから、

 他の子達もって事なんだろうな。

 実績作っちゃったから、しょうがないのかなぁ。

 めんどくさいけど。

 

「そんなにプロデューサー候補っていないの?」

「志望者はいるが、まだ全然だ。

 若い子達の将来を預かる仕事だからな。

 とりあえず失敗前提でやらせる、なんて出来る訳ないしな」

 

 そう言われたら納得しちゃうけど、めんどくさい。

 多分、やろうと思えば出来る気はする。

 自惚れかもしんないけど。

 でも面倒くさい。

 他の子達の人生に責任を負うって事だよね。

 プロデュースするって事はさ。

 杏みたいな適当な人間に任せていいの?って思っちゃう。

 でも、うちの事務所に他にやれそうな人は杏にも思い当たらない。

 でも面倒くさい。

 とーっても面倒くさい。

 

 そんな事をぐるぐる考えてたら、ふとプロデューサーの頭が目に入った。

 

「……ギャラの歩合はどんなもんなの?」

「おっ、やる気になってくれたか!?」

「まあ、話ぐらいは聞こうかなってね。

 あ、あとかな子と智絵里がいいって言ったらだよ」

「それは心配ない。

 あの二人が反対する訳ないからな」

 

 嬉しそうに話を続けるプロデューサーから目を離し、流れる景色に目を向けた。

 薄暗くなってきた街並みを大勢の人達が忙しなく歩いている。

 この人達もみんな大変な仕事頑張ってるのかな。

 

「あと、その新人アイドルは会ってから決めるから。

 杏じゃ力になれないと思ったら断るよ」

 

 やるのはしょうがないけど、保険だけはかけとかないとね。

 目を閉じてごろんと転がって、杏はもう休む事にした。

 二年前に出会った時は白髪なんて無かったよね。

 めんどくさいの嫌いだけど、

 でも、

 杏がめんどくさがったせいでプロデューサーが倒れても嫌だしね。

 溜息がでちゃうよ。

 

 

 

 次の仕事の現場に着いて、楽屋でユニットの仲間、

 三村かな子と緒方智絵里にさっきの話をした。

 二人がちょっとでも難色を示したら断ろうと思ってたんだけど

 二人とも何故か大喜びだった。

 諸手をあげて賛成してくれたんだ。

 比喩でなく、リアルに万歳した。

 楽屋の中にも関わらずバンザーイなんて声まで上げて。

 

「本当にいいの?

 杏がプロデューサーになったら仕事内容とか杏が決めるんだよ」

「そんなの今までだってそうだったじゃない。

 杏ちゃんの言った通りにして私たちここまで来れたんだから!」

「そ、そうだよ。

 杏ちゃんの働きが認められたって事でしょう?

 すっごく誇らしいよ」

 

 自分の事のように喜んでいる二人にプロデューサー、

 いや元プロデューサーもうんうんと頷いている。

 脂が下がった表情なのは、重責を下ろしたからか、

 杏達三人がお揃いの可愛い衣装を着ているからだろうか。

 薄いブルーのひらひらしたミニスカドレスは杏からみても可愛い衣装だった。

 

「あ、杏ちゃんじゃなくてプロデューサーって呼んだ方がいい?」

「あ、そうだね。杏ちゃんじゃ馴れ馴れしいよね」

「もー、勘弁してよ。

 そんなよそよそしい呼び方」

 

 嬉しそうに笑ってるかな子と智絵里といると杏も笑顔になれる。

 この二人は本当に性格が良くて可愛いのだ。

 ユニット結成してデビューしたからもう付き合いは二年になる。

 ちょっとここで二人の事紹介しとこうか。

 

 三村かな子は杏と同年の16歳。

 身長は153㎝で小柄。139㎝しかない杏が言えた事じゃないけど。

 お菓子作りがとっても得意で、その出来栄えはプロ級。

 すっごく美味しいし、見た目も奇麗なの。

 かな子ちゃん自身食べるのが大好きで、食べる為に作るんだけど

 時々事務所からお菓子禁止令が出てる。

 そんな時でも杏や智絵里や事務所の人の為に作ってくれたりするから凄いよね。

 あと胸がおっきい。

 153㎝のくせに90もおっぱいあるの。

 ふわふわ。

 そのせいで太ってると勘違いされる事あるけど、そんな事ない。

 それと、いい匂いがする。

 焼き立てのクッキーのような幸せな匂い。

 性格はおっとりしてて、でも案外度胸もある。

 

 緒方智絵里は杏とかな子の一つ下の15歳。

 身長は153㎝でかな子と同じ。

 でも体形はほっそり。

 ちょっと細すぎて心配になるレベル。

 性格は引っ込み思案で、謙虚。

 よくファンの人から小動物っぽいって言われてる。

 杏もそう思う。

 リスかウサギって感じ。

 あと寂しがり屋で杏かかな子と一緒にいたがる事が多い。

 家族仲がどうもあんまり、って感じらしくそれもあるのかな。

 杏からしても妹って感じだし、多分かな子もそう思ってると思う。

 杏達は凄く仲が良い。

 アイドルは裏ではギスってる事多いって聞くのに、

 杏達は全くそんな事ない。

 よく泊まりあったりするし、オフに遊びに行ったりもする。

 この二人が性格がいいってのが主な要因だけどね。

 

「でも、これでファンの皆にも杏ちゃんの凄さが分かってもらえるよ」

「う、うん、みんな杏ちゃんを誤解してるもん。

 杏ちゃん、いつもいっぱい頑張ってるのに」

 

 かな子と智絵里は鼻息荒く「ねー」なんて言いあっている。

 杏は怠け者で、それを隠さずにやっている。

 分かりやすいキャラ見せた方が受けるし、

 バラエティなんかでも使って貰いやすいから隠さないんだけど

 真面目な人達からは怒られる事もある。

 杏は仕方ないと割り切っているが、かな子と智絵里はそう思えないらしく

 事あるごとに「杏ちゃんのおかげなのに」なんて言ってくれている。

 二人とも自分からアイドルを志望したのに、まるで我が我がという所がない。

 だからこそ、杏はやりたいようにやれたし、

 その分この娘達を潰したくないと思っちゃうのだ。

 

「うう、分かってくれるのは二人だけだよ。

 事務所もプロデューサーも鬼畜だから、杏の頑張りを認めないんだ」

 

 わざとらしくよよよと泣きつくと、かな子は柔らかく杏を受けてめてよしよしと頭を撫でてくれる。

 かな子はふんわりとやわくて、焼き立てのクッキーのような甘い匂いがする。

 

「認めてるさ。

 だから、プロデューサーになってくれって言ってるんだ」

「誠意は休日でしょ。

 杏は役職じゃなくて休日が欲しかったよ」

「プロデューサーになると休みも自分で決められるぞ、やったな」

 

 身体をひねってかな子の膝に座りなおすと、元プロデューサーが微笑む。

 裏には休んだ分のツケも自分で払う事になるんだぞ、という言葉である。

 もう休みくれって言えないのか。しまったな。

 

「はぁーあ、引き受けるんじゃなかったかな……」

「そうぼやくな、悪いことだけじゃないんだから。

 それより今後の戦略はあるか?

 二・三日後にはマネージャーが来るけど」

 

 うーん、と考えるふりをして杏はかな子と智絵里を見上げる。

 

「写真集を出そうかなと思うんだけど、二人とも水着いける?」

「みっ、水着ですかぁ!?」

「ふぇぇっ水着ぃ!?」

 

 まあ、驚くよね。

 だって今まで水着NG出してたの杏だもん。

 かな子も智絵里もやりたいとは言わなかったけど

 杏は絶対やらないって言ってたんだ。

 杏の体形は小学生みたいなもんだから、

 普通に出したんじゃ特殊な人にしか需要ないしね。

 でも、使い方次第じゃ大きな武器になりえるんだ。

 

「お前、水着は絶対ダメって言ってきたじゃないか」

「今まではね。

 杏がプロデューサーになったんなら話は別。

 やらされてると思われる状況じゃやるだけ損だったから。

 どうかな?やりたくない?」

 

 かな子と智絵里が顔を見合わせる。

 

「杏ちゃんの考えではやった方がいいんだよね。

 杏ちゃんが覚悟決めて水着着るんだもん。

 わたしは大丈夫だよ」

「わっ、わたしも……自信ないけど杏ちゃんとかな子ちゃんと一緒ならだいじょうぶ」

 

 不安気にしながらも二人が頷いてくれる。

 大丈夫、任せてって杏は笑いかけた。

 

「きわどいのとか着せないし、安心して。

 構図もポーズも水着も全部指定するし。

 って事でプロデューサー、我を通さないカメラマンの手配よろしく。

 なんならプロデューサーが撮ってもいいよ?」

 

 杏達の水着姿みれちゃうよー、なんて軽口を叩きプロデューサーをからかう。

 

「残念だがその時間はなさそうだ。

 急ぐんだろう?」

「うん。こういうのはさっさとやらないとね」

「急ぐって」

「なんでですか?」

 

 息を合わせて困惑する二人に、杏はかな子の上から降りて向き合った。

 

「杏のプロデューサー就任会見は一回しか出来ないんだよ。

 せっかくなんだから利用しない手はないもん。

 だから、二人ともそれまでは誰にも言っちゃ駄目だよ」

 

 しーっ、と口に指を当てると、つられてかな子と智絵里も手で口をふさいだ。

 

「秘密にするの?」

「私、誰にも言いませんっ」

「何でも効率重視だよ。

 ビックリして貰ったらタダで勝手に宣伝してくれるからね」

 

 メディアは鬱陶しい事もあるけど大事な道具でもある。

 ようはやり方、使い方。

 勝手に宣伝してくれるなら楽チンだ。

 

 それから二週間後の六月九日、杏のプロデューサー就任は

 キャンディアイランド初の水着写真集発売決定と同時に大々的に発表された。

 

 

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