プロデューサー杏、芸能界を生き抜く   作:アイスクリン

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なんで?

 

 

 八月に入った。暑い。

 もう、なんで夏なんかあるんだろ?

 ずっと秋ぐらいだったらいいのにな。

 夏を楽しめる人はアクティブな人って感じだよね。

 杏は海に行きたくないし、行く暇もないし、

 山なんか全く登りたいと思わないし、行く暇もないし

 バーベキューなんて手間がかかるし、やる暇もないし

 キャンプなんて邪魔くさいだけだし、やる暇ないし。

 夏ならではの楽しみが思い当たらないよ。

 アイスだって冬に炬燵で食べる方が美味しいと思うし。

 

 なんて言いつつも、今日のテレビ収録はアイス特集だったりする。

 さすがに冬にアイスが美味しくても、紹介しづらいしね。

 

「第一回、利きアイス対決~っ!!」

 

 喫茶店風の書き割りを背景にしたセットに

 杏のタイトルコールが響くと、わーっと参加者の拍手が続く。

 

「ルール説明、智絵里ちゃん」

「はいっ、それではルール説明です。

 目隠しした状態でひとつのアイスを食べて頂き、

 その後、この並んだアイスから自分が食べたアイスを当てるシンプルなルールです」

 

 智絵里が淀みなくカンペを読み上げる。

 もうすっかりどもらなくなったね。

 偉いぞ、智絵里。

 

「そんじゃあ、かな子参加メンバー紹介~」

「はい、今回はお馴染みの私達キャンディアイランドの三人と、

 後輩の佐々木千枝ちゃん、

 アイス好きという事でライラさんに来て貰ってます。

 それでは意気込みの方をお願いします」

 

 かな子に振られてまず千枝ちゃんが頭を下げる。

 菜々さんとの料理コーナーに出してるキッズアイドルのお姉ちゃんの方だね。

 11歳だけどしっかりしてるし、評判もいいから試しに単独で呼んでみたんだ。

 

「さ、佐々木千枝です。

 この番組は初出演ですが、精一杯頑張ります。

 よろしくお願いします」

 

 緊張気味だけど、しっかり自己紹介出来てる。

 うん、大きくなりかけの子供の魅力があるね。

 この年代にしか出せない魅力だから、ちゃんとステップアップに繋げてやりたいな。

 

「わたくしライラさんと申しますですー。

 今日は大好きなアイスを食べられると聞いて楽しみにして来たですよー」

 

 ライラ。名字は無くて単にライラって芸名みたい。

 本人が言うからかライラさんと呼ばれる事が多いね。

 金髪碧眼で褐色肌の16歳。智絵里と同学年だ。

 日本語上手だけど時々怪しい、異国出身のアイス好き。

 背は150㎝と低くて、体形もほっそりしてるけど

 エキゾチックな色気のある可愛らしい美人って感じ。

 前に共演した事あって、アイス大好きって言ってたから覚えてたんだ。

 

 さて、この二人を迎えての収録は智絵里が言った通りの利きアイス対決。

 この利き対決は杏達の番組キャンディシャワーではお馴染みの企画なんだ。

 今までは苺、みかん、おもち、ショートケーキ、プリン、珈琲ゼリーとかやって来た。

 戦績はかな子が一番高いね。

 みかん、ショートケーキ、プリンと三回も正解してる。

 智絵里は苺を当てたっきり。

 杏はプリンと珈琲ゼリーの二回。

 意外と難しんだよ、これ。

 企画立てる方としては楽だけどね。

 

「最初の挑戦者は私、緒方智恵理です。

 よろしくお願いします」

 

 この企画の時は揃いの衣装着るのがお決まりになってる。

 和服着たりエプロンドレス着たりね。

 今回は水夫さんみたいな恰好。

 襟だけ紺色の白セーラー服で下も白いズボンに白い帽子。

 杏達のコスプレ目当てで見てくれる人だっているから、

 テレビじゃ出来る限り可愛い服着とかないとね。

 ちなみに、順番は決まってる。

 千枝ちゃんやライラさんにトップ行かせるの可哀想だし。

 最後は杏が他四人の稼いだ尺によって、考えなきゃいけないからね。

 悩むふりで時間稼ぎしたり、十分と判断したらさっさと当てに行ったりとかさ。

 

 智絵里が椅子に座って目隠しをする。

 SNS見てるとこのアイドルが目隠ししてるシーンが、地味に人気ある。

 目隠しした状態で食べるのがセクシーらしい。

 こういうとこ感覚じゃわかんないから、需要を知るって調査が大事だね。

 

「どれにしよっか?」

「無難にこれとか?」

「ライラさんはこれが好きでございますー」

「じゅ、十個もあるんですね……

 千枝、こんなにバニラアイス並んでるの初めて見ました」

 

 まあ,お店でもバニラばっかりなんてある訳無いしね。

 台本無しの企画だから、わいわいと話し合って一つ決める。

【阿蘇方面からの刺客、戦慄の牛乳バニラ】という

 よくわかんない奴にした。

 こういうキャッチコピーってインパクト重要だけど

 遊びすぎなのも定着しないよね。

 

「はい、あーん」

「あっ……んっ……美味しい……

 ちょっとシャーベットぽくて、濃厚な味なのに後味スッキリです」

「もう一口食べる?」

「ううん、もういい」

 

 智絵里が目隠しを外して立ち上がり、

 後ろのアイスが並んだテーブルに向かう。

 ちなみにアイスはガラス容器に入れて、

 その周りをドライアイスで囲ってる仕様なんだけど

 絶対に溶けない訳じゃないから急いだ方がいい。

 といっても急いだらアイスクリーム頭痛になるし、加減しながらだね。

 

「全くヒント無いので、とりあえずこの左端から……

 及川牧場さんのセクシーバニラ……」

「セクシーバニラは美味しいですまずねー」

「ライラさんは食べた事あるんだ? 」

 

 この試食中はヒントになる事言えないので、話す事に気を遣う。

 だから、無口になっちゃうゲストもいるんだけど、ライラは違うみたいだね。

 これは有難い。

 

「これも美味しいけど……違うと思います。

 えっと、これはクリーム感がさっきのよりも強いかな」

 

 智絵里が無難なコメントしつつもちゃんと特徴をあげてる。

 昔はしどろもどろでそれもまた可愛かったけど、

 安定したコメント言えるのもスキルだからね。

 可愛いだけで許されない場面もあるから、技術はあって損なしだよね。

 ソロでやっていけるポテンシャルはあるんだからさ。

 

「正解? やったっ。

 次、いきますね」

 

 智絵里はその後も順調に正解続けてたけど、

 肝心の戦慄バニラを食べてもぴんと来ずに

「違う」と言ってしまって不正解になった。

 地味に協力してくれたメーカーさんの商品紹介を兼ねてるから、

 六つ目まで行ったのは優秀だと思う。

 

「失敗しちゃいましたー……」

 

「はい、OKです」

 

 智絵里がカメラ目線で不正解を謝ると、ディレクターの声が響いた。

 スタッフがわらわらとやって来て、アイスを入れ替える。

 メイクさんもやって来て杏達をチェックし、軽くパフってくる。

 小休止ともいえない時間が経って、またディレさんの声が響く。

 それぞれの立ち位置に戻って、カメラを見る。

 

「じゃあ、次はライラさんだね」

「頑張りますですよー」

 

 ライラは特に緊張してるって訳でもなさそうだね。

 ぼーっとした印象だけど、ソツが無い。

 褐色の肌が白い服とコントラストになって奇麗。

 この子も本気出せばもっと売れるんだろうけどな。

 本人があまり有名になりたくないらしいんだよね。

 暮らしていけるだけ稼げればいいらしい。

 勿体ないなんて思っちゃうのは、プロデューサー目線かな?

 

「はい、あーん」

「んんっ……これは食べた事無いアイスですねー。

 それにフルーツの香りがすこーししますですー」

 

 目隠しを取ってライラはほつれた金の髪をかき上げ、

 唇の端についたアイスをペロっと舐めた。

 これは色っぽいね。

 この場じゃパクれないけど、そのうち杏も使ってやろう。

 

「じゃあ、ライラさんはこのアイスからにしますですねー」

「あれ、ライラさん、それ食べた事あるって言ってたよね? 」

「美味しいですからねー。

 せっかくの食べ放題でございますから、食べておこうと思いますですー」

「いや、食べ放題とは違うよ!? 」

 

 笑い声がスタジオに響いた。

 ライラ起用は正解だったね。

 見た目もいいし、類似タレントもいないし、

 とぼけたキャラも変な日本語も面白い。

 千枝ちゃんも怖がってないし、嫌味な所が全然無いし、

 本当にこれで本人のやる気さえあれば売れっ子になるだろうに。

 って、まぁ、人それぞれ事情があるんだからしょうがないんだけどさ。

 

「んー…………これ、近いですねー。

 でも、かすかに感じたフルーツのフレーバーがございませんですねー。

 違うと思いますですー」

 

 ピンポーンと正解の音が鳴る。

 ほんとにアイス好きなんだろうなぁ。

 クールな印象だったのにアイス食べた時、少し口角上がってる。

 

「ふあぁ……凄いです。

 こんなに分かるものなんですか?

 千枝には出来そうもありません……」

 

 千枝ちゃんがこういうのも無理はない。

 ライラは八種類食べてアイスを満喫して、しっかり正解した。

 きっと味見の段階で見当ついてたんじゃないの?

 それで正解するまで食べたいものを食べたんだ。

 

「やりましたですー。

 これでおうちでも食べ放題しますですねー」

 

 この企画、当てたらご褒美として出てきた食品全品お持ち帰り出来るんだけど

「そんなにいらない」とか言われる事もある。

 こうして素直に喜んでくれると、こっちも嬉しいね。

 ちなみに外したら罰ゲームくじ引いて、書いてある罰ゲーム執行。

 痛いのは無しで、大体ちょっと恥ずかしい程度の軽い奴だよ。

 誰かのモノマネとか、視聴者リクエストのコスプレとかね。

 

「ライラさん、本当は味見の段階で分かってたんじゃないのー? 」

「そんな事はございませんですよー?

 ただ、このうちの六個は食べた事ありましたですからねー。

 候補は絞られてたですー」

「六個もですか!?

 私もこの中の四つしか食べた事ないですよ!? 」

「ええー、かな子ちゃん、そんな食べた事あるの!?」

 

 ライラとかな子のアイス談義が始まり、ちょっと盛り上がる。

 うんうん、かな子になら智絵里もツッコミ入れられるからトークが回るね。

 番組にどこまで使われるかは分からないけどもね。

 

「千枝ちゃんは食べた事あるの、ある?」

「あっ、ち、千枝は一つだけです。

 アイスマンさんのバニランド……」

 

 多分、バニーとかけたんだろうね。

 バニランドはバニー服着たウサギがパッケージにディフォルメで描いてある。

 

「ああー、あのウサギが描いてある奴ね」

「はいっ、それです。

 可愛い絵が描いてあるから……」

「という訳で千枝ちゃんの時は、バニランド無しだねー」

「あぅぅ……」

 

 千枝ちゃんの可愛い困り顔をお茶の間にお届けして、

 ライラさんの番を締めくくる。

 後は、かな子、千枝ちゃん、杏の順番でこれを繰り返していくだけだね。

 杏の番の前にディレさんからおおよその取れ高が伝えられるから

 杏はそれ次第だね。

 取れ高無さすぎだと粘った挙句に、罰ゲームもやらなくちゃいけないから

 結構めんどくさい。

 今日は多分大丈夫だけどね。

 

 という訳でダイジェスト。

 

「これはもう完全に分かっちゃいましたっ!

 ぜ~ったいっ、これですっ! 」

 

 かな子が凄いドヤ顔を決めている。

 いつもは優しくて謙虚なかな子だけど、スイーツに関しては違う。

 この企画は貴重なドヤかな子が見られていいよね。

 しかも間違えてるっていうのが素晴らしい。

 笑いも可愛さも同時に届ける完璧な仕事だよ。

 ここだけで企画成立してるもんね。

 

「美味しい……あっ、違った。

 えと、美味しいですけど……のど越しが違うような気がします」

「食感は少し溶けて変わる可能性あるから気を付けてね」

「あっ、そうですね。

 そっか、うーん……」

 

 小学生の千枝ちゃんを弄り過ぎると、

 いじめてるとか見られる可能性があるから難しい。

 でも、せっかく呼んだんだし、笑いにつなげたり

 可愛い所見せれるようにもしてあげたいしね。

 こういう時、杏の容姿って便利なんだよ。

 千枝ちゃんと変わらない、むしろ年下にすら見える杏だと

 毒になりにくくて悪者過ぎる事があんまり無い。

 アイドルって弄る側に回ると、印象悪くなりやすいから難しいんだよ、普通はね。

 これは杏の強い武器の一つだよ。

 

「こ、これです。

 味も食感も同じですっ。

 これだと思いますっ」

 

 同じ物を食べ続けると舌って麻痺してくるからね。

 残念、千枝ちゃん、それ間違い。

 

「そ、そんな~。

 違うんですか……?

 これってやってみると、当てるの難しいんですね。

 勉強になりました……」

 

 割とヒント上げたんだけど難しいよね、やっぱり。

 でも、がっかりしないでいいよ。

 薫ちゃんや仁奈ちゃんにおみやげあげたかったんだよね。

 それは杏が当ててあげるからさ。

 

「はーい、じゃあ杏の番だねー。

 今日のは自信無いけど、アイスは杏も好きだからね。

 頑張っちゃうよ」

 

 ドヤって間違うのはもうかな子がやったし、尺も十分。

 千枝ちゃんの為に本気出す事にしようかな。

 

 

 

「あの、本当にいいんですか?

 こんなに貰っちゃって……」

「いいからいいから。

 薫ちゃんや仁奈ちゃんには、

 千枝ちゃんからのおみやげって事で渡して。

 今日は頑張ってくれたからご褒美だよ」

 

 収録を終えて、事務所について、時刻は六時すぎ。

 アイスを半分渡すと、千枝ちゃんはお礼を言って深々と頭を下げた。

 この子、小学生にして礼儀正しいなぁ。

 しっかりしたお家で育った感が凄い。

 

「重いでしょう?

 持っていきますよ」

「頼むね。

 杏は部屋にいるから」

 

 マネさんに千枝ちゃんを任せて、杏達は杏ルームに帰る。

 プロデューサールームというのが正しいんだけど、

 もはや事務所内の我が家のようなものだ。

 

「じゃあ、こっちは私が持つよ」

「頼むね。

 杏はもう疲れたよ……」

「うふふ、杏ちゃん頑張ったもんね」

「うん、凄かったよ」

 

 かな子も智絵里もいい子だねぇ、本当に。

 杏はラストだからちょっと有利なのに、そう言う事言わないもん。

 

「かな子も智絵里も頑張ったじゃん。

 可愛かったよ、犬の真似」

「わ、忘れてよぉ~」

「そうですっ。

 あんな罰ゲーム酷いですっ」

 

 犬耳カチューシャ付けて、くーんくーん言ってた二人はとても可愛かった。

 千枝ちゃんもやったんだけど、

 小学生がこれやってる映像やばいかもって事で封印決定。

 代わりの罰ゲームに「菜々さんのモノマネ」という大当たり引いて、

 可愛く親近感を増す事が出来たし、今回の収録は大成功だと思うよ。

 

「まあまあ、可愛かったしいいじゃん。

 手ごたえあるとやった甲斐はあるしさ」

 

 杏の昨日の仕事の手ごたえ無さに比べたら、楽勝だよ。

 

「あっ、昨日の……」

「杏ちゃん、昨日のレコーディングきつかったって言ってたもんね。

 新曲はもう出来たの?」

「杏のやる事は終わったよ。

 あとはエディターさんの仕事」

 

 思いついたのは良かったけど新曲を作るのは結局楽な話じゃなかった。

 杏は作曲を舐めすぎてたね。

 歌詞いらないんだったら、何の縛りもなく

 耳障りの良い音だけを繋げていけるから簡単なんじゃないかな、

 なんて甘すぎた。

 あんなワチャワチャした音楽もちゃんと考えて作ってあるんだね。

 

「楽しみだね。

 早く聞いてみたいな」

「智絵里は気楽に言うけど、大変だったんだよ。

 三時間もずっと意味ない声を上げ続けたんだから」

「さ、三時間も……」

 

 レコーディングって時間かかる事珍しくないらしいけど、

 杏って時間かかるの嫌いだから今までずっと一発撮りでOK出してきたんだよね。

 でも、今回のやり方は普通の曲と違うから無理だったんだ。

 とにかく思いついたメロディをベースに色んな楽器の音をイメージして

 鼻歌をスマホに録音して、そっから全部の音を杏の声に置き換えるやり方にしたの。

 昨日、録音した杏の声を元にプロのエディターさんが作ってくれてる。

 出来栄えがどうなるか、杏にもわかりゃしない。

 ま、なるようにしかならないし。

 曲がりなりにも作詞作曲:杏の曲だもんね。

 売れたらいいなぁ。

 

「杏ちゃんが三時間は凄いね……

 そんなにスタジオに籠ったの初めてなんじゃない? 」

「うん、初めて。

 やっぱ省エネは大事だって思い知ったよ」

 

 溜息出るね。

 今日の仕事は体力は使ってないけどさ。

 杏がソロで出すからには、かな子と智絵里のソロも出したいし

 アイドルの仕事終わっても、Pの仕事は終わらないなぁ。

 

「やっと部屋ついた……」

 

 三階は遠いね。

 いくらエレベーターあってもエレベーターまで歩かなきゃだし。

 

「ただいまー」

「おかえりなさい」

 

 杏がドアを開けると後ろから智絵里が返事をする。

 一緒に帰ってきたのに、出迎えるというよく分かんないボケだ。

 智絵里は何故か気に入ってて、よくこのやりとりをする。

 ただ、今日はもうひとつ返事が聞こえてきた。

 

「お、お、お帰りなさい……」

「あれ、乃々どうしたの?

 まだ、帰ってなかったんだ」

 

 今日は乃々はおやつの企画の収録だったはずだ。

 もちろん一人で行かせるぐらいだから、収録といっても大した物じゃないよ。

 今度の特番でファンの前で歌う事に挑戦する準備として

 顔なじみの女性スタッフの前で歌に挑戦するだけ。

 出来ても出来なくても企画としては成立するし、

 メイクや着替え入れても三十分かからない仕事だ。

 時間的にとっくに終わってるはずだし、

 乃々が事務所に来る必要はないんだけど……

 

「ま、待ってたんです……ぅぅ……」

「杏を?

 なんで? 」

 

 ソファーに座って待ってたらしい乃々は、

 思い詰めた表情で立ち上がり、くしゃくしゃに握りしめた封筒を差し出して来た。

 

「あの……あたし、アイドル辞めようかなって……その……これ……」

 

 渡された封筒には歪んだ字で「辞表」と書いてあった。

 うん、これは…………参ったな。

 ちょっと予想してなかったよ。

 




次回に続く
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