プロデューサー杏、芸能界を生き抜く   作:アイスクリン

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キャラが多いと会話が多くなってストーリーが進まない
考えていた話が一話に収まらない言い訳です


お泊り会(前)

 

 

 ガチャっと鍵をひねり、ドアを開ける。

 うちはワンルームだから、玄関を開けたら右手に風呂、トイレと並んでて

 その前を抜けたら、あとはもうリビングになってる。

 あんまりごちゃごちゃするの嫌いだし、

 一部屋で完結してるのが杏の性に合ってるんだ。

 突き当りのドアを開けたら、もうそこは杏の部屋。

 ようやく仕事を終えて帰ってきた杏を、

 ひんやりとした冷気と菜々さん達が出迎えてくれた。

 

「あら、杏ちゃん。

 お帰りなさい。

 お疲れ様でした」

 

 おおう、さすが菜々さん……メイド経験者なだけあって、

 お出迎えが素晴らしいね。

 赤いジャージの上からだけど、白いエプロンつけて片手にお玉。

 お母さん路線が板についてきた?

 

「ただいまー」

「杏ちゃん、お帰りなさい」

「お帰りなさい」

「あんずちゃんっ!」

「うわぁっ」

 

 杏に気付いたきらりがダッシュしてきて、ハグされた。

 びっくりするけど、きらりに嬉しそうにされると注意しづらいよね。

 きらりってなんか大型犬みたい。

 

「お、お帰りなさい……」

「ただいまー。

 乃々も来てるなら、杏が最後?」

「そだゆ?」

「はい、もう準備できてますよ」

 

 ちらっと目をやると、ガラス製のテーブルの上には色々な料理が

 はみ出しそうな勢いで置かれている。

 もう七時過ぎだし、待っててくれたなら皆に悪かったな。

 CIとしての仕事終わってから、杏にだけ追加があったせいだ。

 Pでもあるから仕方無いんだけどさ。

 お泊り会するって言っても、

 マネさん、仕事を明日に残すの許してくれないんだもん。

 

「あー、ごめんね、待たせて。

 じゃあ、もう早速食べようか」

「あ、じゃあ準備しますね」

「杏ちゃん、お風呂も沸かしましたよ。

 先に入ります?」

 

 智絵里がなんか新婚さんの嫁みたいな事言い出した。

 ここは一応、杏の家なんだけど智絵里もかな子もきらりも

 しょっちゅう泊まりに来るので、勝手知ったるって奴だ。

 私物もいっぱいあるしね。

 三つあるソファーの内、杏が買ったのは一つだけって事で

 この部屋の浸食され具合が分かると思う。

 それぞれ布団もあるし、そもそも調理器具なんか杏は一つも買った覚えがない。

 多分、きらりとかな子だね。

 菜々さんはまだ二回しか来た事無いし、乃々は今日が初めてだし。

 

「それ言うなら、「それとも、わ・た・し」をつけて欲しかったな」

「あ、そ、そんなつもりじゃっ」

「あ~、いいですねぇ、定番のセリフ」

「きゃー、きゃー、どきどきするにぃ☆」

「うふふ、定番のセリフですね。

 智絵里ちゃん、可愛いなぁ」

「あ、じゃあ、これはどうです?

 こほん。

 ……お帰りなさいませ、ご主人様」

 

 甘く蕩けるような、語尾にハートマークの付いた声で、菜々さんが微笑む。

 なるほど、世の男性はこれ言われたくてメイド喫茶にお金落とすのか。

 気持ち分かっちゃうなぁ。

 

「おおーっ……さすが菜々さん」

「本当っ、可愛いですねっ」

「これがメイドさん……

 確かに……これは言われたいかも……」

 

 乃々ですらときめいてるみたい。

 メイドをモチーフにした曲とかありかも。

 衣装も合わせたら、凄く可愛いよね。

 CIで……いや、乃々のデビュー曲として……

 

「はーい、じゃあ杏ちゃんはここだにぃ。

 隣はー……乃々ちゃんかな?」

「は、はい」

 

 考え事に没頭してた訳じゃないけど、気づいたらきらりに運ばれて

 杏はテレビ正面のソファーに座らされてた。

 隣には乃々が連れてこられてる。

 

「わ、私も何か手伝わないと……」

「いいからいいから、皆に任せとこ?」

 

 立ち上がろうとする乃々を抱きしめ、体重を預ける。

 乃々も今日はお泊りだから緩い部屋着だけど、

 胸と裾にフリルのついた薄ピンクの可愛い恰好だ。

 お母さんの趣味ってだけじゃなくて、乃々もこういう系が好きみたいだね。

 服もふわふわ、乃々本人はもっとふわふわで気持ちいい。

 

「あ~、乃々まくら癒される~」

「あぅぅ……杏さん、お父さんみたいですけど……」

 

 乃々のお父さんまさか今でもこんな事してるのかな。

 家庭に首突っ込めないけど、大丈夫?

 昔の話だと思いたい。

 

「杏ちゃん、もう揃ったよ」

 

 飲み物をついでくれてたかな子から言われて、

 改めてソファーにちゃんと座る。

 あ、言っとくけど別に乃々にセクハラしてる訳じゃないから。

 いや、セクハラはセクハラかもしれないけど、

 乃々は嫌がってないからセーフ? だよ。

 カメラ無い分には、構ってあげた方が喜ぶんだから。

 誤解しないように。

 

「じゃあ、皆いい?」

 

 左手側の薄緑のソファーに座るかな子と智絵里、

 右手側のクリーム色のソファーに座るきらりと菜々さん、

 そしてテレビとテーブルを挟んで反対側に座る杏と乃々。

 みんなジャージとかパジャマとかラフな格好だ。

 杏の恰好もいつものだよ。

 今日は「来世から本気出す」シャツ。

 それぞれがお茶やジュースの入ったグラスを持ち上げた。

 

「新番組がヒットして長く続きますように……

 かんぱーいっ! 」

「「かんぱーいっ」」

 

 ガシャガシャとグラスを合わせて、中身を飲む。

 冷えた炭酸がしゅわしゅわと心地いい。

 

 今日は杏達の新番組「九時のおやつの杏JAM」の初回放送日なのだ。

 せっかくだから皆で揃って見よう、と言い出したのはかな子だったかな。

 残念ながら日曜日は仕事をする日なので、

 生で見るのは全員のスケジュール合わせられなかったけど、

 お泊り会して皆でご飯食べながら見ようって事になって。

 

 菜々さんが杏達CIと共演する仕事で一緒だったから、

 先に来てご飯作って待つって言ってくれて、

 乃々の親に電話して許可貰って、とこうして

 この集まりが出来上がったのだ。

 

「杏ちゃん、みようよっ、みようよっ」

「うぅ……本当に見るんですか……

 というか本当に森久保出演してるんですか……?」

 

 もう既に恥ずかしそうな乃々を皆が慰め、励ましている。

 杏は容赦なく再生ボタン押すけどね。

 

『おっはよー! 今日から始まる新番組のMCを務める双葉杏ですっ』

 

 イントロが流れテレビの中から杏の声が聞こえてくる。

 

「始まったねっ」

「わぁー」

「杏ちゃん可愛いにぃ」

「あぅぅ……」

 

 皆テレビの方見てるけど、杏の目はテーブルの上の料理に釘付けだった。

 卵のサラダ、大根サラダ、辛そうな赤いパスタ、海老ときのこの乗った白いパスタ、

 手羽先と大根の煮物、梅干し、わかめの味噌汁、山芋の……煮びたし?

 ネギと鰹節の乗った冷奴、お刺身盛り合わせ、ほかほかの白いご飯。

 凄い豪華だ。

 そして、作った人が大体分かる。

 サラダは智恵理、パスタはきらり、残りの和風のは多分菜々さんだ。

 かな子は多分きっとデザートを何か作ったと思う。

 乃々は今日初めて杏ハウスに来たし、性格的にもおろおろしてただろうな。

 全部、見ただけで美味しそう。

 杏より先に終わったとはいえ仕事はしてるのに

 仕事終わってからこんなに作ってくれたなんて、それだけで嬉しくなるね。

 

「いただきまーす」

 

 杏は揃って食べたり遠慮したりしないよ。

 温かいうちに食べる。

 まあ実は杏は放送前チェックで完成版見てるからね。

 いちいち見なくても番組の出来は知ってるんだ。

 

 それよりこの味噌汁だよ。

 玉ねぎも入ってるんだ……ああ、美味しい。

 ほっとする味。

 猛烈に美味しい訳じゃないし、斬新な訳じゃないけど

 やすらぐような……

 続いて、気になってた輪切りの山芋に箸をつける。

 ご飯と味噌汁以外は大皿だけど、もう直箸でいいや。

 ほぅ、醤油系で煮込んでるのか。

 ほっくりしてて少しだけ山椒かかってるみたい。

 これもすごく美味しい。

 

『さあ、それでは一個目の企画いくよー』

『はい、それでは菜々の菜々つ星レストラン、どうぞー』

 

 杏達の自己紹介が終わり、菜々さんのコーナーが始まる。

 出演者は菜々さんと佐々木千枝ちゃん、龍崎薫ちゃんの三人。

 菜々さんお馴染みのハイテンション挨拶芸のあとに

 小学生二人も挨拶する。

 

『佐々木千枝です。

 ご迷惑おかけしないように頑張ります』

『りゅうざきかおるでーっすっ!

 よろしくおねがいまーっ!』

 

 うんうん、可愛い。

 佐々木千枝ちゃんは11歳。

 ちょっと大人しいけど、年齢の割に大人びたしっかりした子だ。

 龍崎薫ちゃんは9歳。

 もうおにぎりを作れるし、お料理そのものに興味がある元気な子。

 どっちもうちの事務所のキッズアイドル。

 元気な妹としっかり者の姉をイメージしたキャスティングで、

 お料理に興味があるけどまだまだ子供全開な薫ちゃんと

 ブレーキ役で菜々さんの補佐に千枝ちゃん。

 娘と一緒に料理したい母親って結構多いみたいだし、

 娘に料理作ってもらって感激する父親はもっと多い。

 なんかそういうデータがあった。

 

「みんな可愛いぃぃぃ」

 

 きらりが身体をくねくねして悶えてる。

 元々子供好きだし、収録で一緒になって仲良くなれたからね。

 懐かれたみたいできらりは大喜びだ。

 他の皆は画面を見ながらも、ようやくご飯に手を付け始めた。

 

『薫ちゃんはどんなご飯が好き?』

『かおるはねぇー、ご飯だと白いご飯が好き』

『か、薫ちゃん、そうじゃないよ。

 えっと……好きな献立、おかずを聞かれてるんだよ?』

『そっかー、まちがえちゃったっ。

 それならおさかなさんがすきっ』

『いいんですよ。

 お魚かー。お魚ですね。お魚美味しいですもんね』

『うんっ、かおるおさかなさんすき』

『千枝ちゃんは何が好きかな?』

『千枝は、カレーとかパスタとか好きです』

 

 天然というか子供らしい間違え方をする薫ちゃんに、

 千枝ちゃんが注意し、菜々さんは優しく受け止める。

 このコーナー、実は台本が無い。

 小学生に台本読ませると、どうしても棒読みになって可愛さが減るからね。

 あえて子供組は自由にさせて菜々さんが全部フォローする事になってるのだ。

 今回作るメニューはハンバーグ。

 子供の口からハンバーグを引き出そうとした菜々さんの思惑は、思いっきり外されている。

 

『分かりました。

 それは今度作ってあげますから、

 今日はハンバーグを作りましょう』

『わぁーっ! 作ってくれるのっ!

 やったーっ!』

『ごめんなさい。

 ハンバーグって言うべきでしたよね……』

 

 強引にハンバーグを作ると言い出す菜々さんに謝る千枝ちゃん、

 はしゃいでる薫ちゃん。

 いきなりカオスな感じになり、ワイプから杏が突っ込む。

 先に企画VTRを撮影し、それをスタジオで見る形式にしてフォローする。

 嘲笑するような、悪い感じにならないよう苦労した所だ。

 特に子供組を批判、批難してると捉えられかねない言葉は使えない。

 激しい笑いはいらない、見てて楽しいをモットーに、だからね。

 画面の中では順調に子供達が料理を教わり、作っていく。

 あくまで子供が作れるように手順を紹介し、

 一緒にする際のコツなんかもナレーションで言っておく。

 ちなみにこのコーナーのナレーションはかな子。

 

「どうでした?」

 

 放送版見て不安になったのか、菜々さんがこっちを見てくる。

 

「どれも美味しいよ。

 菜々さん、うちにお嫁に来てずっとご飯作ってよ」

「ありがとうございま……って、そっちじゃなくて」

 

 だよねー。

 本気で言いたいぐらい料理上手なんだけど。

 

「思った以上に上手くいった気がするね。

 菜々さんのお母さん感が出てて可愛いし、

 子供達が楽しそうなのが伝わってくる」

「うう、良かったぁ。

 二人ともいい子で楽しかったけど、

 企画としてどうなのかって不安で……」

 

 他の皆からも高評価を貰ってようやく菜々さんは安心したみたい。

 仕事の合間や移動中にSNSでチェックもしたけど、

 大分評判良かったし大丈夫だよ。

 きらりなんかさっきからずっと「可愛い」しか言えない生き物になってるし。

 

「CM行きましたね」

「あー、このCMとか流れるのかぁ……

 スポンサーはC層、T層狙いの番組と想定してるね」

「違うんですか?」

「いや、M層を杏達の可愛さだけで引っ張ってこようってのは、

 あんまり自信過剰だったかなって」

 

 Cは子供、Tは十代、Mは男の意味。

 番組としてターゲットは想定しなきゃいけないんだけど、

 この番組は老若男女全狙いだ。

 色々と策はあるけど、男の子に関しては

 杏達がいるんだから見てくれよっていう適当すぎる狙い方なのだ。

 番組PもDもそれでいいって言ってくれたけど、

 ついたスポンサーはそう思ってないのかも。

 

「乃々はどう思う?」

「森久保は菜々さん凄いとしか思えませんでしたけど……」

 

 はむはむと少しづつサラダを食べてる乃々はリスみたいだ。

 智恵理もリス感あると思ったけど、

 比べると智恵理はむしろウサギっぽいかも。

 

「もぉ~、そんなにおだてても何もでませんよっ。

 乃々ちゃん、おかわりあげましょうか?」

「あ、森久保、食べるの遅いので……」

 

 皆してわやわや言ってたらCMが開ける。

 そして次のコーナーだ。

 

『それでは次の企画なんですけど、

 次はですね、わたくし、杏のプロデュースする次世代アイドルを

 見て貰おうかと思います』

「ひぅっ……」

 

 テレビの中の杏の声に、乃々が固まり、小さな悲鳴を上げた。

 そう、いよいよ森久保乃々のテレビデビューの時間である。

 

「ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……………」

 

 泣きそうな顔で睨みつける乃々に、

 無慈悲にもテレビは乃々の姿を大写しに映した。

 

『ふぅ……慌てさせないで下さい、杏さん。

 いくら杏さんでも森久保使って面白いテレビなんて作れるはず無いと思いますけど……

 それに他の大人の人達も許可するはずありませんし……』

 

 杏がスマホで撮った乃々がテレビの中にいる。

 本人は隣であうあう言ってる。

 いやー、ほんと乃々って可愛い。

 こんなに可愛い子を世間に出さないなんて、世のアイドル好きから恨まれるレベルだよね。

 森久保乃々のシンデレラロードと銘打った企画は、

 番組PやDから大賛成を受けての発進となった。

 この映像見せたらもう「メインコンテンツにしよう」と大張り切りだった。

 それぐらい乃々は可能性を感じさせる子だという事だ。

 乃々がトップアイドルになったら、

 デビューから追ってる番組が持つアドバンテージは計り知れないもんね。

 

『という訳で、森久保乃々ちゃんがアイドルデビューするまで。

 いや、トップアイドルになるまで、この番組では追っかけます。

 皆さん、応援して下さいね』

『も、も、も、森久保、乃々……です……

 ふぐぅ……絶対無理だと思いますけど……

 応援するだけ無駄だと思いますけど……えうっ……

 が、が、頑張りますぅ……』

 

 完全に明後日の方を向いた乃々が涙目で挨拶をして、

 コーナーが終わった。

 結構衝撃的……インパクトのある映像になったと思う。

 SNSでも大分反響あったし、出だしとしては大成功だ。

 

「これはほんと大成功だね。

 デビュー前アイドルがこんだけ話題になるなんて、早々ないよ。

 ん、どしたの?」

「わ、話題……森久保が……話題……」

 

 乃々はずーんと沈んでしまった。

 恥ずかしいっていうのとはまた反応違う。

 

 次回放送分までは撮影してあるけど、その次からはまた大変だね。

 でも、森久保乃々というアイドルには、

 それだけ手間をかける価値があると思う。

 もう妹みたいな感じだし。

 

「ほら、ご飯食べよう、ご飯。

 美味しいよ」

「……はい…」

 

 空気を重くちゃダメだ。

 杏はどうでもいいっちゃいいんだけど、

 自分のせいで空気が悪いと思ったら、乃々はいよいよ落ち込んじゃうし。

 さあ、どうするか。

 ここは、メンタルの強いかな子に頼もう。

 

「かな子ちゃん、この状況で食レポって言われたらどうする?」

「んーと、じゃあ……

 今日は杏ちゃんちのお夕飯に来させていただきましたー。

 見て下さい、この豪華なメニュー。

 目移りしちゃってもうどれから食べていいか迷っちゃいますっ」

 

 声のトーンが上がり、かな子が両手を胸の前で合わせて微笑む。

 さすがだね。

 プロだよ、まさしく。

 

「本当にどれも美味しそうなんですけど、今日はこちら。

 このシェフおすすめのアラビアータをいただきたいと思います。

 ……ふああ、美味しいっ。

 凄く美味しいですっ。

 初めにピリッとした爽やかな辛さが来るんですけど、

 トマトの濃厚な旨味と酸味が追いかけてきて

 挽肉の甘味とタッグを組んで調和が取れていくんです。

 アラビアータと言ったらやっぱり辛味が特徴なんですけど、

 こちらのパスタは辛すぎない程度に抑えられているんですね。

 それでも辛いという方はこの粉チーズなんかを振ると

 また風味の違う美味しさになって……夏にぴったりの幸せですね」

 

 にこっと天使の笑みをかな子が浮かべると、

 一瞬間が開いて拍手が鳴り響いた。

 

「すごーい」

「さすがですー」

「えへへ、こういうのよくやってるから」

 

 そう、CI三人でご飯食べる時よくこういう遊びをする。

 かな子はそのまま仕事でやれるレベルで上手だし、

 智絵里は表現が詩的だね。

 あとたまにボケる。

 三人だけの時は実は智絵里は笑わせようとしてきたりもするんだよ。

 カメラの前でやれるようになるにはまだ時間かかるみたいだけどね。

 

「よくやるんですか?」

「うん、キャンディでご飯食べる時は昔からやるよ」

「トークの練習にもなるからって杏ちゃんが」

「へー面白いですね」

「きらりもやるー。

 やっていい?」

 

 その後は、何故か食レポごっこ大会になった。

 

「にょわー☆おいすぃっ。

 キラキラでぇーぶわーって美味しさが来てー。

 はぴはぴーって感じぃ? 」

 

 うん、満面の笑みで美味しい事だけは伝わるけど

 それ以外何も分からないよ、きらり。

 

「自分で作ったのは恥ずかしいから、サラダでやります。

 見て下さいこのレタスの色。

 太陽を浴びて育ちましたと主張する緑色。

 レタスは食物繊維が非常に豊富で、カロリーは低く

 栄養たっぷりの美容食材なんですよ。

 お通じの乱れはお肌の乱れ、これは全宇宙共通の言葉です。

 思い出しますねぇ……売れなかった手売り時代を……

 一玉百円のキャベツを三回に分けて食べたり……

 あっ、違う!

 今のは、えーっと、ウサミン星にいた頃の思い出で……

 菜々は別に下積み時代とかありませんし!

 本当ですよ、菜々は17歳なんだから

 下積みあったらおかしいですもんね! ねっ! 」

 

 美容情報盛り込みつつ、しっかり自爆もかまして

 これもまたプロの仕事だね。

 この自爆が狙ってるわけじゃない辺り、菜々さんは天才だよ。

 

「皆さんは子供のころからの夢ってありますか?

 私はお豆腐を冷奴で食べることでした。

 その夢が今夜、ついに叶う時が来ました。

 パンの耳しか食べる事の無かった少女の頃…」

 

 智絵里が変なテンションで変な劇を始めたよ。

 冷奴が夢ってどんな設定!?

 

「……素敵……」

「えへへ、そう? 」

 

 何か琴線に触れたのか乃々はうっとりしてて、

 智絵里は嬉しそうだ。

 うん、可愛いってズルいよね。

 訳わかんない寸劇振って、落ち無しでも許されるもん。

 可愛い。

 

「…この手羽先美味しいです……

 味が染みてて……大根も美味しいです。

 ……美味しい……美味しいとしか言いようが無いんですけど…」

 

 まあ、乃々に食レポはまだ無理だよね。

 でも、箸の使い方が凄く奇麗。

 あのめんどくさい手羽先を齧りつかずに箸でほぐして食べてる。

 

「乃々、食べ方キレイだね。

 箸の使い方が上手」

「わーほんとだ、凄い!」

「本当ですね、奇麗です」

「あ……そんな…そんな照れるんですけど……」

 

 あ、ちょっと自慢気だ。

 照れて謙遜しながらだけど、嬉しそうでもある。

 レアな表情見て得した気分になるね。

 

 全員で食レポごっこやって笑った所で、

 止めてた番組の続き見よっか。

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