暑い。まるで日射しに焼かれているようだなと感じた。かつて、こんなにも暑いと感じた日があっただろうか。…、あれはいつだったか、窓から見える太陽を憎しげに睨んだ日だった。
つまらない真っ白の病室、厚い毛布とベット、そしてなんの変哲もない窓だけ。それがあの時の私の世界だった。しかし、私にとって救いだったのは、母と妹がそんな無の空間によく来てくれていたことだ。おかげで母と妹がいる間、私は一人であることに哀しみを覚えずにすんだ。
ただ、親たちが帰ると途端に虚しさを感じた。哀しみという感情ではなかったと思う。私はかつて入院に至った経緯については何も知らされていなかったし、今も知らないままだ。しかし、今思えば多忙な父ですら来ることがあったことや、ほとんど毎日来る母たちの様子から、自身の「病」はまずいものだと幼心にも理解できたのだろう。きっと、それで哀しさの前に虚しさを覚えたのかもしれない。入院当初は私の病室の階は多くの患者と見舞いに来た家族の人たちで賑やかだった。しかし、彼らもまずい病を持っていたのだろう、徐々に寂しくなっていった。
そんな中で窓から見えた太陽は雲ひとつない空に己のみを誇示するかのように存在していた。なぜ奴は一人で居られるのか。なぜ一人であんなにも輝いているのか。なぜ、私たちのことなど知ったことではないというようにしているのか。考えれば考えるほど奴の存在が憎くなっていた。そんなことを考えて頭の熱が上がっていたのか、空調管理された病室だというのにこの上ないくらい暑さを感じた…。
今、私の前に広がる焼け野原。妹と手を繋ぎ、ただ茫然と眺めていた。政府の発表では深海棲艦と名付けられた敵性生命体の仕業らしい。本来であれば深海棲艦という輩に怒りを感じるか、失ったものへの哀しみを感じるのが正しいのかもしれない。しかし、私は虚しさを感じるのみであったし、この惨状の割にはその感傷からすぐに逃れることができ、頭の中はこれからどう生きていくかという思考に切り替わっていた。
そんな私の耳に、少し焼けているスーツを着た人たちの声が聞こえてきた。「国難につき志願制の徴兵を行います。過去の軍艦の遺志を継ぐ艦娘となり、この国難に立ち向かわんとする方はぜひ○○鎮守府へ…」
ああ、ほんと、奴はウザいなぁ。こんなになっても平然としてるじゃん。
だから、これは八つ当たりっていうのかもしれない。まぁ、気楽にいきますかねー。私はまだ茫然として、茶色がかった髪を風にたなびかせる妹の手を引いて、スーツの人たちに近づいていった。