「よう寝たなぁ~……」
強めの日差しを顔に浴び、フーカは目を覚ました。目を擦りながら寝袋に入ったまま上半身を起こし、周囲を警戒するように見回す。
サツキが毎晩寝る時間を割いてまで厄介者の対処に当たっていたのだが、呑気にいびきを掻いていたフーカがそれを知るよしもない。
両手で頬を叩いて完全に目を覚まし、寝袋から出てもう一度周囲を見回すフーカ。そして思ったことを一言にまとめて呟く。
「緒方さんがおらん……?」
サツキがいない。いつもなら自分よりも早く起きて外の様子を窺っているサツキが、どこにもいないのだ。荷物はあるので置き去りにされたわけではなさそうだが……。
急いで着替えたフーカは外に出るも、廃墟の周りには人の姿どころか足跡一つすらなかった。
「また上を跳んでいったんか?」
この前みたいに、器用にビルからビルへ飛び移っていったのだろうか。それなら足跡の一つもないのは納得できる。地面には足を付けていないのだから。
それに加え、フーカのいる廃墟から街まではそれなりに距離がある。なのでサツキの場合、走るよりも跳んでいった方が速いのだ。
実を言うとフーカもサツキのように跳んでみたいと思っているのだが、さすがに彼女ほどの身体能力は持っていないため、例え魔力で肉体を強化しても同じことはできないだろう。
「……まぁええか」
サツキのことだからいずれ戻ってくるだろう。そう判断し、寝室に戻るフーカ。
食料は足りているので、今日はやることがないと暇そうに座り込んだところで、先週サツキが買ってきたラジオのスイッチを入れる。すると、普通の日常ではあり得ない言葉が耳に入ってきた。
『――街が謎の集団に襲われています!』
「……え?」
「ふぅ~……」
厄介者を始末してから一週間経ったある日。アタシはこの街に潜む連中の情報を集めるべく、タバコを吸いながら街を徘徊していた。
レヴェントンには何も言わずに出てきたが、何もアタシの方から巻き込む必要はないので何も問題はないと思っている。……呑気に寝てる姿にムカついたというのもあるが。
ちなみに昨日も厄介者を始末したが、ソイツが口を割ることはなかった。あれでも主には忠誠を誓っているってわけか。少し感心したよ。……まァ、そのせいで連中に関する手掛かりは今もなお掴めていないわけだが。もっと痛めつけた方が良かっただろうか?
「それにしても……」
街は相変わらず平和だが、今日は何かがおかしい。平和ボケでも空いているのか住民は一人も気づいていないようだが、わずかながら空気がピリピリしている。
いつでも対応できるよう周囲を警戒しつつ、コンビニで買った朝飯を食べるために座れる場所を探す。理想は地球のそれみたくベンチのある公園だが、最悪ビルの屋上でも良いだろう。
右手に持つタバコを一口吸っていると、かなり遠くの方から爆発音が聞こえてきた。
「ん……?」
すぐさまタバコを投げ捨て、朝飯を一瞬で平らげる。相当離れたところで爆発したせいか、アタシ以外はまだ誰も異変に気づいていない。
しかし、それはアタシの杞憂だった。
「――っ!?」
今度はすぐ近くにある住宅が、いきなり爆発を起こしたのだ。さすがの住民達もマズイと思ったようで、まるで怪獣が現れたかのようにパニックに陥り始める。
そんな中、アタシは冷静に事の原因について考えていた。まだ起こったばかりなので明確なことは何もわからないが、間違っても自然現象ではないだろう。
だとするとこれは人為的なもの。まだ調査していない世界ということもあって、管理局が出しゃばってくる可能性は高い――
『ターゲット捕捉。排除します』
「あァ?」
アタシが廃墟へ戻ろうと両足に力を入れたところで、爆炎の中から黒の短髪に赤のバイザーという、何とも言えない奴が現れた。声質からして人間じゃねぇな。おそらくロボットか。
ソイツはどこからともなく取り出した剣を右手に持つと、何の躊躇いもなくアタシに斬り掛かってきた。
「おっとぉ!」
とはいえそんなに速くはなかったので、右腕で迫り来る剣の軌道を逸らし、握り込んだ左の拳でソイツの顔面をぶん殴り、そのままソイツを爆炎の方へ押し戻すように吹っ飛ばす。
……硬いな。やはりロボットで間違いなさそうだ。殴った時の感触が明らかにおかしかった。
『ガガ……』
「おっ?」
今の一撃でどこか破損でもしたのか、ロボットは全身をスパークさせた状態で再び姿を現す。あのまま突進すればかなり有効な攻撃になると思う。
それでも言語機能を失っただけらしく、構えた剣に魔力的なエネルギーを集中させると、アタシの首元目掛けて剣を振るい、光の刃を放ってきた。
手刀で一刀両断してやろうと思ったが、ロボットがアタシの背後を取るような動きで移動し出したので、咄嗟に屈んで回避し、人並みの速さで走るロボットを目で追う。
ていうか遅いな。アタシの知っているロボットと言えば、共通して人間じゃ届かないほどの身体能力を持っている。もしかするとあのロボット、偵察機か失敗作の類いか?
「来るならさっさと来いッ!」
『ガ――!?』
じれったくなったのでアタシの方から動き、ロボットの正面に回り込んで左のハイキックをお見舞いする。拳同様、顔面にそれを受けたロボットは動かなくなった。
……いやもう終わりかよ? 意外と簡単に機能を停止しやがったぞこのガラクタ。せめて最後に『機能を停止します』とでも言ってくれよ。その方がわかりやすいから。
「ん――!?」
念のために動かなくなったロボットを粉々になるまで踏み潰そうと思った瞬間、背後から殺気を感じたのですぐさましゃがみ込む。するとアタシの頭があった場所を、今度は魔力的な光弾が通過していった。
『ターゲット捕捉。排除します』
「……おいおい、冗談だろ?」
聞こえた声は一人分。だが、後ろを振り向いたアタシの視界には、二十人はいるであろうロボット軍団が映っている。今度は数の暴力かよ……!
「はっ、はっ……!」
ラジオで不穏当な言葉を聞いたフーカは、逃げ惑う十人の流れに逆らうように走っていた。理由は言うまでもなく、街にいるかもしれないサツキのことが気掛かりになったからだ。
フーカは人混みとタイムロスを避けるべく、運よく近くにあった路地裏に入り込み、乱れていた息を整える。
「近くにいてくれるとええんじゃが……」
祈るようにそう思いつつ、フーカはそのまま路地裏を通って別の道に出る。
その道は避難には使われていないようで、人の姿どころか人気すら感じられなかった。
人気の代わりに異様な気味悪さを感じながらも、都心に向かって足を進めるフーカ。そしてサツキが利用していそうな公園に着いたところで、ある物を見つけた。
「? 何じゃこれは?」
それは赤いゴーグルのような物だった。しかも一つだけではなく、よく見るとあちこちに落ちている。
足下にあったものを拾い上げ、試しに装着してみるも、視界が緑色になっただけで何も起きなかった。
それでも何かの役に立つかもしれないと思ったフーカは、拾い上げたゴーグルを額に上げる形で装着し、そのまま走り出す。
「それにしても緒方さん、一体どこにおるんじゃ……!」
全く見つからないサツキに対していよいよ苛立ち始めたフーカだったが、高層ビルの真下に来たところで、ようやくお目当ての人物が目に入った。
だがその人物――緒方サツキは何かと戦っており、敵の攻撃であろう砲撃を軽々と弾き返し、相手が怯んだところを狙って脳天に踵落としをお見舞いしていた。
脳天に強烈であろう一撃を食らった相手は、奇妙な電子音と共にその場で崩れ落ちる。サツキはそれを一瞥することもなく、こちらへ振り向く。
「緒方さんっ!」
「……何してんだ、お前」
フーカが装着しているゴーグルに視線を向けつつ、本来ならここにいるはずのない、いるべきではない彼女に呆れるサツキ。
すぐに崩れ落ちた相手――ロボットを容赦なく踏み潰しながら、サツキはロボットの――人間で言うところの心臓部から一枚の布を強引に引き剥がした。
「それって……耐魔力繊維ですか?」
「多分な。どのガラクタからも出てきやがった」
そう言うとサツキはズボンのポケットに手を入れ、十枚以上もの布を取り出し、めんどくさそうに足下にばら撒く。フーカは花びらのように舞い落ちる布を、ただ呆然と見つめていた。
「これ……みなあのロボットから?」
「今アタシがそう言ったろうが」
布の数から考えて十体以上ものロボットを相手にしていたであろうサツキは、隠せぬ苛立ちを抑えるべく、周りの状況など知ったことかと言わんばかりに一服し始める。
この人は死んでもタバコを吸っていそうじゃ。そう思って呆れ返るフーカだったが、上空から爆発音がしたことですぐに真剣な表情になった。
「な、なんじゃ今の――!?」
「……あーあ」
動揺しながらもフーカはバッと上を見上げ、絶句した。
――おそらくさっきのラジオ放送をしていたであろう、ヘリコプターらしき物体が燃えながら墜落していたからだ。
「え、あ……」
目の前で起こる出来事に頭が追い付かず、無数の布を見た時以上に呆然とするフーカ。
あの乗り物には人が載っていたはずだ。じゃあ、その人たちは……?
いつまでも墜落したヘリを見つめるフーカに痺れを切らし、彼女の後頭部に思いっきり拳骨をかますサツキ。フーカは後頭部から感じた痛みでようやく我に返り、ヘリから視線を外した。
「行くぞ、レヴェントン」
「えっ……ひ、避難はせんのですか!?」
「当たり前だろうが。今から避難して何になる? そもそもアタシは元凶をブチのめすためにここまで来たんだよ。そんなに避難してぇならテメェ一人でしやがれ」
サツキはタバコを一口吸って紫煙を吐き、それを足下に投げ捨てて火が消えるまで踏みつけると、本当に足を進め始めた。
フーカはどんどん離れていく彼女の背中を見つめていたが、もう諦めたと言いたそうにため息をつき、その後を追い始めた。
目指すは――ビル群に挟まれた位置にある工場だ。
「……隠す気ねぇだろコイツら」
「どうやらそんようですね……」
連中が潜伏していそうな工場に着いたのは良いが、入り口には『自分達のアジトはここです』と言わんばかりに、二人の見張りが立っていた。アタシとレヴェントンで始末したけど。
気絶した見張りを蹴り飛ばし、コソコソとすることなく大きな鉄の扉を開ける。扉は見かけほど重くなかったな……まァ良いけど。
「車がいっぱいじゃ……」
「元々は車庫として使われていたんだろ」
だけどレヴェントンの言う通り、工場の中はトラックでびっしりだった。いくら何でも多くねぇか?
アタシがトラックの多さに疑問を抱いていると、レヴェントンが勝手にトラックの後ろ扉を開けていた。いや何してんのコイツ。
「緒方さん! 何かいなげなもんがありました!」
レヴェントンを荷台から落としてボコボコにしたいという衝動を抑え、念のために視野を広げつつ彼女が指差す方を見てみる。
「……いなげなもんどころじゃねぇぞ、これ」
そこにあったのは、漫画やアニメで見た療育ポッドのようなカプセルだった。しかも中には緑の液体と人間らしき者も入っている。
さっきのロボットとは違い、この人間らしき者からは機械的なものが感じられない。まさかクローンか? だとしたら誰の?
レヴェントンもとんでもないものを見てしまった、という顔でアタシの方を向く。どうやら相当ヤバイことに首を突っ込んでしまったらしいな。だからといって今更引き下がるつもりはないが。
ひとまず人間らしき者は置いておき、あまりにも静かな工場内を彷徨っていると、奥の方から二人分の足音が聞こえてきた。
すぐさまレヴェントンの手を掴み、天井に向かってジャンプする。そして空いている左手で鉄筋のようなものを掴んでぶら下がる形になった。
……マズイ、思わず天井に隠れてしまった。いや、これは隠れていると言えるのか?
「やっぱりバネットさんの考えてることはわかんねぇわ」
「わからなくても良いさ。俺たちはボスに従っていればいい」
「まぁ、それもそうか。こないだなんて俺のために治療もしてくれたし、尽くさないわけにはいかないよな」
真下からそんな会話が聞こえてくる。アタシほど耳が良くないレヴェントンには、間違いなくコソコソ話にしか聞こえないだろう。ていうか怯えてやがる。高所恐怖症か?
音を立てないよう、慎重に視線だけを真下に向けてみると、構成員らしき二人の男が会話をしながら見回りをしていた。なるほど、良いことを聞いたな。親玉の名前はバネットって言うのか。
このままやり過ごそうかと思ったが、外の方から十人以上もの気配が近づいてきた。これ以上ジッとしてるのは危険だな……いや、もう待ってられるか。強行突破だ。
「やるぞ、レヴェントン」
「えっ、はい――!?」
やむを得ずレヴェントンを抱きかかえ、手を放して落下するように着地する。
着地の瞬間、思いっきり音を立ててしまったので、当然構成員の二人組はこちらへ振り向いた。
「なんだお前ら!?」
「いつの間に入ったんだ!?」
どこから入ってきた、ではなくいつの間に入ってきたんだと聞く辺り、バカだが間抜けではないらしいな。いや、敵を入れた時点で間抜けか。
一人はマシンガンのような銃型デバイスを構え、もう一人はまともな武器を支給してもらえなかったのか、短剣を構える。良い機会だ。後者はレヴェントンに任せてみるか。
「レヴェントン、短剣の方をやれ。アタシはマシンガンの方をやる」
「押忍ッ!」
アタシは真正面から突撃し、マシンガンの男と短剣の男を分断する。時間がない、ウォーミングアップも兼ねてさっさと片付けてやる。
男の方も余裕がないのか、アタシが向き合った直後に魔力弾を連射してきた。短剣の方も、レヴェントンに不意討ち気味で襲い掛かっている。
すかさず弾幕の全てを弾いていき、一部をトラック数台にぶつけ、一部を短剣男の方へ逸らしていく。
それを食らいそうになった短剣男はミッドチルダ式の魔法陣を展開し、自分に迫る魔力弾をレヴェントンの方に弾いていく。
レヴェントンも負けじと全ての弾幕をかわし、魔力を纏った拳を繰り出す。それ自体は当たらなかったが、短剣男は目を見開いて驚いていた。おそらくレヴェントンの魔力量にビビったのだろう。
「ドラァッ!」
「ごはぁっ!?」
こちらがよそ見でもしていると思ったのか、男が銃の引き金を引こうとした際に一瞬の隙を見せてくれた。アタシはその瞬間をついて懐に潜り込み、右の拳を腹部に叩き込む。
拳圧によるものか、男の肋骨にヒビが入るような音と、男の背後から何かが砕ける音が聞こえてくる。
そして防御も身構えもせずモロに食らった男は息を詰まらせ、身体をくの字に曲げてその場に倒れ込んだ。
「ふぅ、アイツは……」
別に疲れていたわけではないが一息つき、一人で短剣持ちの男と戦うレヴェントンを見つめる。
頬を、腕を、脚を軽く斬られながらも、彼女は渾身の左アッパーで男の動きを止め、右の拳でダウンを奪っていた。……あのガキ、あんなに戦い慣れてたっけ? それとも単に男の方が弱かったとか?
「お前、そんなに場慣れしてたか?」
「いえ、その……一週間ほど前からなんべんもいなげな輩に絡まれてしまいまして……」
「あぁ、なるほど」
コイツも完全に巻き込まれていたのか。夜中に訪れる厄介者の始末で全く気づかなかったよ。それっぽい素振りすら見せてなかったしな。
一応男達が持っていたキーカードを奪い取り、工場の奥へと進んでいく。
灯りがないのか奥へ進めば進むほど暗くなっていき、やがて大きな両開きの鉄扉に辿り着いた。さっきのカードはここで使うのか?
「……ねぇな」
「何がじゃ?」
「カードが使えそうな場所がねぇ」
しかし、扉にはキーカードが使えそうなところがない。セキュリティが万全なのかザルなのかもうわかんねぇなこれ。
仕方ないので右腕を扉にぶっ刺し、手首で引っ掛けるように固定したのを確認してそのまま力ずくで引き剥がした。
「もちぃと穏便にやった方がえかったんじゃ……」
どうせ隠れたってバレるんだ。ならもういっそのこと派手に行こうじゃねぇか。
人の気配がないか警戒しつつ中に入ると、さっきトラックの中で見たカプセルが何個も、何十個も、綺麗に配置されていた。
「さっき見たやつもそうじゃったが、なんで人が中に入っとるんじゃ……?」
さすがのレヴェントンも恐怖で声を震わせ、カプセル一つ一つに入っている人間らしき者を凝視する。アタシも少しビビったわ。悪趣味にしては度が過ぎるぞこれ。
さらに奥へ行く途中、試しにカプセルの一つをコンコンとヒビが入らない程度の力で叩いてみたが、中にいる者は一切の反応を見せなかった。呼吸の音がするから生きてはいるんだろうが……。
「緒方さん、ここに何かあります」
「ん?」
部屋の奥にあったデスク……上にあったパソコンを弄っていると、レヴェントンが五枚ほどの資料を手に取っていた。アタシはすぐにそれを受け取り、一枚目に目を通す。
「……プロジェクトF?」
一枚目の資料。そこにはプロジェクトF.A.T.E、略してプロジェクトFの詳細が書かれていた。
確かこれ、数年前にJS事件を引き起こした張本人――ジェイル・スカリエッティが基礎を設計していたやつだよな? なんでその資料がこんなところにあるんだ?
続いて二枚目に目を通してみると、今度は“マリアージュ”という屍兵器に関する情報が目に入った。戦闘機人なら知っているが、この屍兵器とやらは聞いたことがねぇな……。
「何なんでしょうか、これ……」
「……知りたいのか?」
「そりゃあ、まぁ……」
好奇心には勝てないのか、怯えるような顔でアタシに聞いてくるレヴェントン。……これは話さねぇ方が良いだろ。コイツの立場的に考えて。
アタシとしては全部話してやりたいが、この先話した情報が変な奴に知られる可能性を考えると……やっぱり話さない方が良いわ。この情報からアタシのことがバレる可能性だってあるしな。
「ダメだ。これを知ったらお前、管理局に捕まるぞ」
「そがぁにやばい情報なんですか……!?」
知ってるだけでもヤバイからこうして警告してんだよ。察しろクソガキ。
「それにしたって……」
これだけヤバイ情報をたくさん持っていながら、パソコンにはどこかへハッキングした形跡がなかった。一体どこで手に入れたんだ?
読み終えた二枚の資料をコンパクトに折り畳み、ズボンのポケットへ――
「…………お前が持ってろ」
「えっ?」
――入れようとしたところで一旦手を止め、常に前線で暴れるアタシではなく、力不足で足手まといなレヴェントンのズボンのポケットに入れることにした。
これならアタシが暴れても大事には至らないし、アタシは心置きなく暴れることができる。
「何があっても中は見るなよ? いいな?」
「お、押忍……」
レヴェントンが頷いたのを確認し、三、四枚目の資料に目を通したところで、アタシは思わず首を傾げてしまった。
「――フォーミュラ? ヴァリアントアームズ?」
またしても聞いたことのない単語だった。だがいざ詳細を読んでみると、それが相当ヤバイものであることはわかった。
アームズの方はヴァリアントシステムとやらにも使われるコアを中枢機として生成される武器で、状況に応じて様々な形状に変化させることができるらしい。そして……。
「惑星エルトリアで開発された、エネルギー干渉術式……」
アタシとしてはこっちの方が厄介だと感じている。またまた聞いたことのない単語が出てきたが、問題はそこじゃねぇ。
この資料にはこう書いてやがる。
「ふざけやがって……!」
ただでさえ戦闘機人なんてもんが存在してるのに、今度は体内に微量の機械を仕込むだァ? この世界の連中はどこまで機械に頼れば気が済むんだ……! しかも他の世界の技術を使ってまで……そこまでして力が欲しいのかァ……!?
「いくぞ」
黒幕の打倒を改めて誓い、読み終えた反吐が出そうなそれをレヴェントンに預け――
「あァ?」
「こ、この音って……!?」
レヴェントンに資料を預けた瞬間、室内に警報が響き渡った。
全く――こっちから動く手間を省きやがって。せっかくだしお礼にブチのめしてやるか。
まぁ、サツキはリフレやデトネでの出来事を知らないから、ね?