Vivid Outlaw   作:勇忌煉

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第15話「屍兵器」

 

 

 

《緊急事態発生。二名の侵入者を確認。直ちに出動し、排除せよ》

 

 

 

「あァ?」

「こ、これって……!?」

 

 レヴェントンに反吐が出そうな資料を預けた瞬間、室内に警報が響き渡った。

 

 

《緊急事態発生。二名の侵入者を確認。直ちに出動し、排除せよ》

 

 

 四方八方から構成員で足音でも聞こえてくるのかと思いきや、突如部屋にある全てのカプセルが開かれ、中に入っていた者が解き放たれていく。ソイツらはさっきまで微動だにしなかったのが嘘のようにテキパキと動き始め、生まれたままの姿であることを意に介さず、戦闘態勢を取る。

 ……目視した限りじゃ五十はいるか? 何にせよ、さっきのロボット軍団が可愛く見えるほどの数だな。これで一人一人のスペックが高かったらめんどくせぇぞ。

 その者――もう屍兵器でいいや。屍兵器の一体が集団の先頭に立つと、お試しと言わんばかりに両腕を剣に変換させ、アタシとレヴェントンに斬り掛かってきた。

 

「えっ――!?」

「あらよっと!」

 

 レヴェントンをデスクの奥へ蹴り飛ばし、迫り来る刃を上から振り下ろした左肘で圧し折り、奴の動きが止まった一瞬の隙をついて右のボディブローを叩き込んだ。

 

「っ!?」

「へぇ~、血は赤いのか」

 

 ソイツの吐いた血が赤であること、声が人のそれに近いものであることを確認し、痛覚もあるのか怯んだところを右で蹴飛ばす。

 仲間意識というものはないのか、他の奴らは蹴飛ばされた奴には目も暮れず、アタシに襲い掛かってきた。その腕を、銃やら槍やら砲口やらに変形させて。

 さすがに全員をまとめて相手するのは部屋の広さ的に難しいので、二、三体同時を目安に蹴散らしていく。レヴェントンの方も追い詰められたのか、一対一とはいえ屍兵器と戦っていた。まぁ頑張れ。

 

 殴る蹴るをしている最中、アタシは援軍のことも考えて長期戦は良くないと判断し、向かってくる奴は全て一撃の下に秒殺することにした。もちろん、二、三体同時相手も忘れずに。

 

「チッ――!」

 

 だが三十体目を倒したところで、連中の動きが少しずつ良くなっていることに気づいた。ある奴はアタシの背後を取ったうえで砲撃を撃ち、ある奴は低空姿勢から槍を突き出し、ある奴は武器を使わずに肉弾戦を挑んでくる。どうやら戦いながら学習することができるらしいな。

 突き出された槍をピースで受け止め、懐への前蹴りで槍の屍兵器を吹っ飛ばす。次に離れたところにいる砲台係のような奴をブチのめそうと、肉弾戦の奴が放った拳を踏み台にしてジャンプする。

 砲台の奴はこれを好機と見たのか、両腕の砲口から魔力的なものであろう砲撃を撃ち出す。

 

「な、めんな!」

 

 アタシはそれを踏みつけて奴の背後に回り、足払いで転倒させ、顔面を思いっきり踏み抜いた。

 頭部から出る赤い血が溢れるように広がるのを見て、思った。コイツら、学習能力はあれど元のスペックは大したことがないらしい。ロボットに比べると幾分かはマシだが。

 砲台係がやられて焦ったのか、射撃の奴がさっきの男みたくマシンガンのように変形させた銃を撃ちまくってきた。アタシを蜂の巣にでもしたいのか?

 

「レヴェントンは……」

 

 避けるのも面倒なので、お望み通り蜂の巣にされながら、さっき一人に襲われていたレヴェントンの様子を確認する。

 

「くっ、この……!」

 

 まだ襲われていた。抵抗はしているみたいだが、さすがにさっきの構成員とは勝手が違うようで、レヴェントンの拳が届かない距離を維持されている。

 しかもレヴェントンが相手にしている屍兵器、腕の一部であろう槍を棒術のように振るってやがる。動きも生き残っている奴の中じゃ一番良いし、槍を突撃のために使っていた奴とは大違いだな。

 レヴェントンも負けじと拳による連打に蹴りを織り交ぜてはいるが、やはり間合いを上手く取られているせいで一発も当たる気配がない。元々リーチも短いしな。……さてと。

 

「そろそろ終わらせるか」

 

 さっきから蜂に巣にされていたが、いい加減それだけで進展がないのが鬱陶しくなってきた。ほんの少しは痛いが、それでも本当に大したことがない。レヴェントン辺りは危ないだろうが。

 魔力でできた黒い弾丸を顔に受けつつ、射撃の奴との距離を一気になくし、チェーンガンのような形状になっている右腕を手刀で圧し折り、身体が斜めに傾いたところで、ミドルキックを左頬にブチ込んだ。

 

「――!?」

 

 言語機能があるのかないのか。射撃の奴は言葉を発することなく、あっさりと吹っ飛んで壁に激突し、そのまま動かなくなった。

 アタシが逃がしたレヴェントンを狙って襲っている辺り、こちらの言うことを理解してはいるんだろうが……まだその辺はプログラムされていないのか?

 残りの屍兵器も動きこそ良くなっていたが、やはり元が低スペックだったこともあり、少し手こずっただけで何の問題もなく、最後の一体になるまで殲滅し続けた。そして――

 

 

 

「お前で最後だ」

「…………」

 

 

 

 ――その最後の一体と対峙する。いや、レヴェントンと戦っている奴も含めると二体か。

 

 最後の一体はこれまでの個体と違い、まるで格闘技選手のような構えを取った。しかも丸腰で、かつ両腕に魔力であろうエネルギーを纏って。

 アタシもそれに合わせて構える――なんてことはせず、ただただソイツを睨みつける。

 

「な、め、んな……!」

 

 いきなり喋ったかと思えば右腕を砲口に変形させ、拳も届くほどの至近距離から砲撃が放つ。すぐにこれを回避し、右側から左拳を打ち出すも、奴は砲撃を中断すると空いている左手でこれを受け止めた。

 

「おっ!?」

 

 マジかよコイツ。ここに来て喋りやがったぞ。しかもさっきアタシが言った言葉を。どうやら言語機能はちゃんとあったみたいだな。

 拳を受け止められたまま右のハイキックを繰り出すも、今度は元に戻した右腕で受け止められ、そのまま身体を持ち上げられ、きりもみ回転させられながら地面に叩きつけられた。

 

「いって――!?」

 

 おかしい。コイツらの身体スペックは低いはずだ。まさか倒された奴が獲得した情報を元に、成長しているのか? だとしたらそれぞれの情報は共有できるってわけか――!

 

「んなクソッ!」

 

 これまでアタシがやってきたように、左足で顔面を踏みつけようとする最後の屍兵器。

 そう簡単に食らってたまるか。避けはせずに額で足を受け止め、身体がぐらついたところを狙って左脚を掴み、そのまま横に投げ飛ばす。

 が、最後の屍兵器は危なげながらもダメージを受けることなく着地し、左腕をショットガンの形に変形させ、黒い魔力の散弾を何発も撃ってきた。

 

「……っ!」

 

 今度は受けるとヤバイ気がしたので防御もせずに回避し、間合いを詰めて飛び蹴りを繰り出す。

 蹴りは胸元に直撃し、最後の屍兵器も血を吐いたが、そのままアタシの脚を掴むと強引に振り回し、空になったカプセルへと投げ飛ばしやがった。

 受け身も取らず、宙で体勢を変えることもなくカプセルに激突し、背中にガラスの破片が刺さったかのような痛みを覚える。多分刺さったか? 多分刺さったかこれ?

 

「お、ラァッ!」

 

 背中の痛みに耐えつつ立ち上がり、距離を詰めてきた最後の屍兵器が首元目掛けて振るってきた、剣に変形させた右腕を咄嗟にかわす。

 すると左腕を火炎放射器に変形させ、そのまま火炎を放射してきた。マズイ、これは魔力によるものじゃねぇぞ……!

 

「あちぃ!?」

「ざ、まぁ、み、ろ……!」

 

 急いで距離を取るも、右頬に少し浴びてしまい、思わず膝をつきそうになる。コイツら、どんだけの武装データをインプットされてやがるんだ……!?

 また喋ったことにも驚きながら、火傷したであろう頬の痛みを意に介することなく、その場で拳を突き出し、矢のような拳圧を飛ばす。

 こんなところでこれを使うつもりはなかったが、この相手には使った方が良いかもしれないと思ったのだ。特に理由はないが。

 

「な、に、これっ!?」

 

 奴さんにとっちゃ未知の攻撃だったのか、またまた新しい言葉を喋りながらも、拳圧を鳩尾に食らって吹っ飛ぶ最後の屍兵器。それにしても体重が軽いのか、よく吹っ飛ぶなコイツら。

 しかし威力が足りなかったのか、最後の屍兵器はガクガクと震える身体を必死に起こすと、両腕をジェット機のノズルみたいな形に変形させ、それを使って一気に加速してきた。ついに加速能力まで会得したか……!

 

「ちょ――!?」

 

 予想以上の速さに一瞬怯んでしまうも、首元を狙って放たれた右蹴りをバックステップで回避する。あの形態じゃ腕は使えないだろうが、機動力という問題はなくなったに違いない。

 加速と共に次々と繰り出される蹴りを回避していき、上半身が隙だらけと判断したアタシは、蹴りとして放たれた左脚を踏み台にして跳び上がり、振り上げた右拳を脳天目掛けて振り下ろした。

 

「いたっ!?」

 

 屍兵器とは思えないほど可愛らしい声を上げ、その場で膝をつく最後の屍兵器。

 もちろん、ここで見逃すなんて選択肢はない。管理局辺りだと見逃しそうだが、あいにくアタシにそこまで相手を思いやる心はない。

 人間のように涙目で訴えかけるような視線を向けてくる最後の屍兵器。この短時間でここまで人間らしくなるのは凄いもんだが――

 

 

 

「死んでろ」

 

 

 

 ――それもおしまいだ。苦しみながら眠りにつけ。

 

 右足で顔面を容赦なく踏みつけ、そのまま全身をくまなく踏み潰していく。クソッ、他の奴らよりもめちゃくちゃ硬いぞコイツ。一体どんだけの情報を元に成長したんだ?

 そして完全に動かなくなったのを確認し、踏むのをやめて未だに苦戦を強いられているレヴェントンの方へ振り向く。

 

「…………あいった~」

 

 デスクのそばにあった椅子にどっかりと座り込み、顔をしかめて背中を擦る。今になって背中の痛みが響いてきやがった。血は出てないが……骨とか折れてないだろうな?

 さすがにそれは大丈夫だと思うも少し不安を覚えつつ、レヴェントンと本当に最後の屍兵器との戦いを見守ることにする。

 

 

 

 

 

 こっちは倒した。次はお前が倒す番だ、レヴェントン。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁぁ――っ!?」

 

 サツキが他の個体が得た情報を元に急成長していった屍兵器を仕留めた頃。フーカもまた、一体の屍兵器と戦い続けていた。

 先ほど彼女の指示でデスクの後ろへ隠れていたフーカだが、程なくして一体の屍兵器に見つかってしまい、やむを得ず戦うことにしたのだ。

 青く光る魔力を拳に纏い、それを放つもまるで読まれているかのようにかわされ、横から振るわれた槍を食らってしまうフーカ。小柄ゆえに体重も軽いため、あっけなく吹っ飛ばされた。

 

「こんのぉ!」

 

 すぐに体勢を整えるも、向こうが突っ込んでこないのでなかなか自分のペースを保てずにいる。かといってこちらから突っ込めば槍を使った棒術で迎撃されてしまう。

 どうすれば良いものか。フーカは槍の屍兵器から目を離さずに考え込むも、その瞬間を待っていたと言わんばかりに間合いを詰められ、槍の穂先――ではなく刃のない先端部で鳩尾を突かれる。

 

「かは……!?」

 

 息が詰まり、その場で膝をつくフーカ。人間である以上、鳩尾への攻撃が効くのは当然である。

 これを隙だと判断した槍の屍兵器は、もう遊びはおしまいだと言いたげに槍の穂先をフーカの額に向け、そのまま突き出してきた。

 しかし命の危険が迫っているというこの状況で、フーカは酷く冷静だった。怯えることなく迫り来る槍の穂先を凝視し、ギリギリのところでかわしてのけた。

 

「何っ!?」

 

 ここで初めて言葉を、凛とした声で発した槍の屍兵器だが、そこに喜びはなかった。

 突き出した槍はフーカの額を貫くつもりだったらしく、止めることも叶わず地面に突き刺さってしまう。

 反撃を避けるべく急いで腕の一部だった槍を、巨大な盾に変形させてその裏側に隠れる槍の屍兵器。

 

「何じゃこれは――!」

 

 いきなり出現した盾に驚くも、拳の連打を放つフーカ。そこに迷いはなく、真っ直ぐなその瞳も盾の裏に隠れた敵を捉えていた。

 少しして拳の連打では破壊できないと判断し、フーカは敵が隠れているであろう盾の裏に回り込む。

 

「んっ? あいつはどこに行ったんじゃ?」

 

 しかし、そこには誰もいなかった。痕跡すら残されていない。

 ここから逃げたのかと思うフーカだったが、ここにはサツキがいる。自分が見逃しても、彼女は決して見逃さないだろう。

 なので逃げたわけではないと確信し、周囲を警戒しながら彷徨っていると、

 

「うわわ!?」

 

 上からいきなり魔力弾の雨が、フーカに向かって降り注いできた。

 さすがに全部食らうと洒落にならないため、かわしてもなお追ってくる恐怖の雨から逃げ惑うフーカ。

 逃げながらも雨の元を辿ると、屋上に左腕をチェーンガンのような形状にした、槍の屍兵器が張り付いているのが確認できた。いつの間にあんなところへ移動したのだろうか。

 

「どうやってあいつを下ろせばええんじゃ……!」

 

 攻撃しようにも、今まで殴る蹴るだけで戦ってきたフーカには遠距離の敵に攻撃する方法がない。自分の能力だけではどうしようもないだろう。

 弾幕の雨が止むまで逃げ続けようかと思うフーカだったが、以前サツキに言われたことが脳裏をよぎった。

 

 

 

 

『――常に考えろ』

 

 

 

 

「! そうじゃ、あれがあったの!」

 

 たった一言。そのたった一言が、フーカに活路を見出させた。

 

 フーカはその場で足を止めると、さっきまで槍の屍兵器が身を隠していた巨大な盾の裏側に入り込み、弾幕の雨を凌ぎ始める。

 盾の強度は作った自分自身が一番よく知っている。そう言わんばかりに弾幕の発射を中断すると、槍の屍兵器は左腕を元に戻して右腕を回転刃に変形させ、フーカがいるであろう盾の裏に回る。

 

「……いない?」

 

 ここに来て覚えたらしい、新しい言葉をボソリと呟く槍の屍兵器。

 さっきの自分と同じ状況だったので、もしかしたらと思い屋上へ視線を向けるも、そこにフーカの姿はない。

 なら一体どこへ。右腕の回転刃を構えながら考えていると、背後から一人分の足音が聞こえてきた。

 

「っ! そこか――!」

 

 さらっと新しい言葉を喋りつつ、後ろへ振り向きながら回転刃を振るう。

 

「甘いのおっ!」

 

 足音の主は予想通り、今まさに自分が殺すつもりでいた少女――フーカだった。

 だが、そのフーカには自分の予想とは違うところがあった。それは――

 

「いつ……!」

 

 ――回転刃が届かない位置から、他の屍兵器からくすねたであろう、折れた剣の破片を顔面に投げつけてきたことだ。

 完全に不意をつかれたこともあり、投げられた破片を食らって怯んでしまう槍の屍兵器。

 フーカはその一瞬を見逃さず、身長差を補うべく跳び上がって、今度こそ魔力を纏った右の拳を、

 

 

 

「歯ぁ、食いしばれっ!」

「ぐが――!?」

 

 

 

 屍兵器の顔面に叩き込んだ。

 

 完全に拳が入ったこともあり、視界がぐらついて二、三歩下がったところで、尻餅をつく槍の屍兵器。

 まさか自分が子供相手に後れを取るとは。そう思っているかのように、呆然とした顔でフーカを見上げる。そこから戦意というものは感じられず、フーカの勝利を意味していた。

 しかしそれに気づいていないのか、反撃に備えて構えるフーカだったが、

 

「――お前にしちゃやるじゃねぇか、クソガキ」

「お、緒方さん?」

 

 戦いを見守っていたであろうサツキに頭を叩かれたことで、フーカなりに安堵したのか自然に構えを解いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前にしちゃやるじゃねぇか、クソガキ」

 

 大金星を上げたレヴェントンの頭を叩き、自分が勝ったことに気づいていないクソガキの構えを解かせる。

 いやー、生きてればそれで良かったから槍で額を貫かれそうになったところで介入しようかと思ってたけど、まさか勝ってしまうとは思わなかった。

 弾幕の雨をやり過ごすために屍兵器が作った盾の裏に隠れ、相手が射撃を中断して近づいてきたところで盾の表に回り、その間にアタシが最初に肘で圧し折った剣の破片を回収し、それを上手く使うとはな。

 

 ……さて、後はコイツの後始末だけか。しぶとく生き残りやがって。楽に逝かねぇと全身粉々にしてやんぞコノヤロー。

 

「先に行ってろ、レヴェントン」

「えっ? じゃけん――」

「いいから行け」

「は、はいっ」

 

 レヴェントンを強引に奥へ進ませ、だらしなく座り込んでいる屍兵器と正面から向き合う。

 屍兵器の方は完全に戦意を喪失しているようで、アタシを見てもやる気を湧かせることはなかった。

 

「……私をどうする気だ?」

「おおう、すげえ人間っぽく喋るんだなお前」

 

 コイツ、アタシが倒した最後の屍兵器よりも上手く喋ったぞ。しかも武士のような凛とした声で。

 さっきのアタシから言葉を覚え出した奴といい、コイツといい、屍兵器にも個体差はあるんだな。

 まぁ、それは置いといてだ。お前をどうするかなんて、最初から決まっている。

 

「死んでもらうに決まってんだろ?」

 

 それ以外に何があるというのか。これがマジもんの人間ならさすがに殺しはしないが、コイツらは戦いのために生み出された屍兵器。敵である以上、生かす理由はない。

 

「そうか。ならさっさと殺せ」

「潔いな、お前」

 

 確かに殺すつもりではいたが、もう少し抵抗されるものだと思っていた。まさかこうもあっさりと死を受け入れようとするとはな。

 何故簡単に受け入れようとするのか、と聞こうとしたところで、コイツ自身がそれを教えてくれた。

 

「私は兵器として生み出された。兵器である以上、どの道どこかで壊れる運命だ。戦う以外に生きる道もない、ならここで死んだ方がよほど良い」

 

 コイツらと似たような存在の戦闘機人が戦う以外の道で今を生きているのだが、コイツにそれを言うのはやめた方が良さそうだ。

 

「……最後に言うことは?」

 

 アニメや漫画でよくある、主人公が敵キャラにとどめを刺すときに言うお決まりの台詞。一度行ってみたいと思ってはいたが、それがこんな形で訪れるとはな。

 

「言ったはずだ。殺せと」

 

 遺言すらそれか。兵器としての性質上か、あるいは諦めか。コイツは一刻も早く死にたいらしい。

 お望みどおりにしてやるべく右足を振り上げ、コイツの脳天目掛けて振り下ろそうとしたときだった。

 

 

 

「――は?」

 

 

 

 槍の屍兵器が、胸元を爆発させたのは。

 

 爆発は恐ろしいほど小規模だったのでアタシにダメージはなかったが、爆発の中心部が人間で言う心臓に位置していたせいか、槍の屍兵器は何が起こったのかわからないと言った表情のまま、息を引き取った。

 アタシはまだ足を振り下ろしていない。しかも爆発したのは胸部だ。自爆装置でも仕込まれていたのか?

 振り上げていた足を下ろし、死体となった屍兵器の胸元に手を突っ込み、お目当ての物を見つけてそのまま引き摺り出す。

 

「…………嘘だろ?」

 

 アタシが手に握っていたのは――耐魔力繊維だった。しかも真っ黒だ。

 ロボットから出てきたものが、今度は屍兵器から出てきた。……なるほど、確かにこれは違法物だな。管理局の見解は正しかったわけだ。

 

「ふぅ~……」

 

 とりあえず落ち着くためにタバコを取り出し、周囲を警戒しながら一服する。

 他にも何かないかデスクを弄るも、何もなかったので増援が来る前にレヴェントンの後を追うように奥へと進んでいく。

 

「……緒方さん」

「あん?」

 

 少し進んだところで、先に進ませていたレヴェントンと合流した。なんでこんなところにいるんだこのガキ。もっと奥に進んでも良かったのに。

 吸っていたタバコを足下に投げ捨て、それを踏みつけていると、何かを言いたそうにするレヴェントンが意を決して口を開いた。

 

「……殺したんですか?」

 

 やっぱりか。だからこんなところで待っていたんだな。別にお前が気にすることじゃねぇだろうに。

 さすがにここまで来て敵の生死を気にするレヴェントンに呆れ返るも、コイツがまだクソガキだからと勝手に納得することにした。

 あえてレヴェントンの質問には答えず、最後ズボンのポケットに入れていた最後の資料を取り出し、目を通していく。そして、その文字を見て驚愕してしまう。

 

 

 

 

 

「――“耐魔力繊維の特性”……?」

 

 

 

 

 

 そこにはアタシが衣服の材料として使い、さっきの屍兵器を死に追いやった、耐魔力繊維に関する情報が書かれていた。

 

 

 

 

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