Vivid Outlaw   作:勇忌煉

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第20話「ブチ抜く一撃」

 

 

 

「――手ぇ、貸せ」

 

 

 

 あり得ない言葉だった。なまじ強すぎるがゆえに一人で何でも解決しようとするサツキが、目の前の敵を倒すべく、自分に手を貸せと言った。フーカはそれが信じられなかった。

 

「……わしなんかじゃ、緒方さんについていけんですよ。それでもええんですか?」

 

 そう、フーカはこの場にいる誰よりも弱く、戦いの経験が浅い。というかほぼ皆無に等しい。そんな自分が、サツキについていけるのか。ついていっても大丈夫なのか。

 不安に駆られるフーカを見たサツキは額に青筋が浮かぶほどムカつき、彼女をぶん殴りたそうに拳を握ると、フーカの前に立って口を開く。

 

「良いか良くないかじゃねぇ。アタシが手ぇ貸せつったら貸すんだよ。お前の都合なんざどうでもいいわ」

 

 そう言って左手を、拳に変えてフーカに突き出すサツキ。お前に拒否権はないと言わんばかりの眼光で、フーカを睨みながら。

 ぶっきらぼうで言い方こそ悪いものの、実力的には足手まといの自分を、彼女は必要としてくれている。その事実が、フーカには嬉しくてたまらないものだった。

 

「……わしに選択権はなさそうじゃの」

 

 なので傍若無人という四文字熟語がこれでもかというほど似合うサツキの態度に、フーカは呆れ、苦笑いしながらも、サツキの拳に自分の右拳を合わせた。

 

「それで……わしは何をすりゃぁええんですか?」

「そうだな――!」

 

 作戦会議なんてさせるか。そんなメッセージを込めたかのように放たれたギガンテスの右拳に、咄嗟に振り返り握り込んだ右拳をぶつけるサツキ。

 フーカはいきなりのことで焦るも、サツキは比較的冷静に指示を出してきた。

 

「身体強化は、できるな……!?」

「は、はいっ」

「それを、全身にやれ……!」

 

 そう言われて何の迷いもなく、己の肉体を魔力で強化するフーカ。これまで喧嘩の際、拳だけにやってきたそれを、今度は魔力を全身に流し込むイメージでやっていく。

 そして、魔力による強化を完了したフーカが自信あり気に微笑むと、サツキは自分の拳を引き、食い止めていたギガンテスの拳を直撃寸前のところで回避し――

 

 

「いくぞ――!」

「押忍っ!!」

 

 

 ――サツキにしては珍しく気合いの入った声を出し、フーカも気合いを入れてサツキとほぼ同時に駆け出した。

 

「一人より二人か……。ギガンテス! オールウェポンだ!」

 

 

「■□■□■□■――!!」

 

 

 バネットの指示を受け、両手の指を二人に向かってツルのように伸ばすギガンテス。

 しなやかに伸び、それでいて巨大な岩の指が、まるで鋭利な矢のようにサツキとフーカに迫る。

 

「構うな! アタシが次の指示を出すまで走り続けろ!」

「押忍!」

 

 雨のように上から襲い来る指をジグザグに避けていき、避け切れないものは拳で破壊していくサツキ。

 フーカも彼女に負けじと、自分に当たりそうな指とそうでない指を最大限見極め、冷静かつ迅速にかわしていく。

 続いてギガンテスは先ほどのように地響きと共に右足を振り上げ、何もないところへ蹴りを放った際の風圧で、二人を吹き飛ばしに掛かる。

 

 

 

「□□□□□□□――ッ!!」

 

 

 

 さすがにこの風圧はフーカじゃ対処できないため、彼女がついてこられるよう、前に出ているサツキが咆哮による大音量の振動波で相殺する。

 サツキの後ろで咄嗟に耳を塞いだフーカだったが、至近距離で聞いてしまったせいで動きが鈍ってしまう。

 

 

「■□■□■□■――!!」

 

 

 そのフーカを狙って、音速に匹敵するほどの速度で拳を放つギガンテス。それでもフーカは止まらず、ただひたすら走り続ける。

 

「オラアアアア!!」

 

 サツキはフーカへ迫る死の鉄拳に自分の拳を突き出して食い止め、彼女を先に行かせると同時に拳を引っ込め、身体を左に逸らして拳を回避。そのまま自分も止めていた足を動かす。

 全く止まらない二人を見てもバネットが焦っていないからか、ギガンテスも次だと言うように淡々と右の拳だけを、ドリルのように回転させながら飛ばしてくる。

 

「邪魔すんな!」

 

 今度は右に回避すると同時に、左の蹴りでロケットパンチを食い止め、そのまま力ずくで蹴り返す。蹴りをぶつけた際に脚が痛みで悲鳴を上げるも、サツキは止まることなく駆けていく。

 ギガンテスはそれを再構築した左の拳で相殺すると、間髪入れずに再度右の指を伸ばし、相殺した拳の破片が左拳を放った際の風圧でサツキ達に降り注ぐ。

 指と破片を全て視認すると、フーカが止まらずに駆けていることを確認し、迫り来る矢のような岩の指を、拳で一本ずつ破壊していき、フーカに当たりそうな破片だけを弾くサツキ。

 

「レヴェントン! 投げてやるから軽く跳べ!」

「とっ……!?」

 

 サツキの提案に思わずギョッとするフーカだが、敵が目に前にいて、攻撃を仕掛けてきている以上、一瞬の迷いも許されない。

 フーカはサツキが自分と並走しているのを確認すると、指示通り軽く、彼女の肩ぐらいまでジャンプする。それを見たサツキはすかさず両の拳を合わせると、

 

 

「吹っ飛べぇっ!」

「えぇぇぇーっ!?」

 

 

 その腕にジャンプしたフーカを着地させ、そのままバレーボールのトスの要領で腕を振り上げ、彼女をギガンテスの胸部目掛けて投げ飛ばした。

 

「ど、どうすりゃぁ……!」

 

 いきなり空中に投げ出され、困惑するフーカ。だが、ここまで来たらできることは限られてくるため、すぐに答えが見つかった。

 もう後には引き下がれない。フーカは飛ばされながらも可能な限りで姿勢を整えると、まだ使える右拳に全身の魔力を集中させていく。

 ギガンテスもさっきのサツキみたく叩き落とそうと右の拳を放つも、フーカの後を追うように跳んできたサツキの蹴りによって拳の軌道をズラされ、逆に突き出した右腕への着地を許してしまう。

 

「チッ! 落とせギガンテス!」

 

 

「■□■□■□■――!!」

 

 

 ついに焦りの表情を見せたバネットが指示を出し、ギガンテスがそれに従って、右腕に乗ったサツキを左手で叩き落とそうとする。が、サツキは「待ってました」と小声で言うと、両足に力を入れてもう一度跳び上がる。

 その衝撃でギガンテスの右腕が破損する中、フーカはギガンテスの胸部に到達し、そこへ溜めに溜めた右の拳を突き刺した。

 

 

「■□■□■□■――!!」

 

 

 しかし当然と言うべきか、全く効かないぞと言わんばかりに雄叫びを上げるギガンテス。

 

「二人で拳を打ち、ギガンテスを砕く……悪くない作戦だが、一人のうちに落とせば問題ない!」

 

 そう言って称賛するバネットだが、まだ焦りが消えておらず、ギガンテスに指示を出す。

 ギガンテスは100m越えの巨大ゴーレムだ。サツキよりも大きく力の劣るフーカの拳ではそう簡単に倒れるどころか、よろめくこともない。

 ここで終わらせてやる。今度こそフーカを叩き落とそうと、彼女の真上に置いた左拳を振り上げるギガンテスだったが――

 

 

「先に墜ちてろォッ!」

 

 

 ――途中で宙に散らばる破片を踏み台にし、追いついたサツキの左拳が胸部に突き刺さる。

 

 その直後、拳の威力が予想以上に大きかったせいか、とうとうギガンテスの巨体が後ろへよろめいた。

 

「お、緒方さ――」

「全部だ! 残ってるもん全部出せ!」

「――お、押忍っ!」

 

 突き出した拳にありったけの魔力を纏っていくサツキ。フーカもそれに倣い、持てる魔力の全てを拳に乗っけていく。

 それでもサツキは魔法の使用という屈辱からか、血が出るほど唇を噛み締める。さっきの狼狽といい、今といい、よほど使いたくないのだろう。

 二人を迎撃しようにも、体勢が崩れているせいで動けないギガンテス。内に響く魔力込みの攻撃を食らっているせいか、腕を振るうこともできない。

 

「うおおおおお!」

「うおおおおお!」

 

 お互いに突き刺した拳でギガンテスの胸部を、ありったけの力で殴りつけるサツキとフーカ。

 殴られたことで胸部が破壊され、破片が周囲に散らばっていく。それに加えて体勢を崩し、転倒しそうになるギガンテスだが、ギリギリ持ち堪えてみせた。

 サツキとフーカはこの瞬間を好機と判断し、大きな破片を踏み台にして跳び上がると、もう一度ギガンテスの胸部へ向かっていく。

 

「何が何でも叩き潰せ! ギガンテス!!」

 

 

「■□■□■□■――!!」

 

 

 バネットがなりふり構っていられないと言わんばかりに指示を出すと、ギガンテスは両の拳を握り込み、拳の連打を今日一番の速さで放ってきた。

 

「おーらよっ!」

「ま、またですかぁぁぁ-っ!?」

 

 またしても両の拳を合わせると、バレーボールのトスの要領で腕を振り上げ、腕に乗っていたフーカをギガンテスの破損した胸部まで送り届けるサツキ。

 フーカが無事に胸部まで到達したのを確認し、サツキは繰り出される拳の連打をかわし、逸らしていく。最後の一発は自らの拳をぶつけ、相殺することに成功する。

 サツキが拳の連打を凌いだ頃、飛ばされたフーカは胸部に到達すると同時に右の拳を、再度ギガンテスの胸部にぶつけた。

 

「歯ぁ!」

「食いしばれ!」

 

 フーカの声にサツキが続き、二人して己の信念が込められた拳を、フーカは一旦後ろへ引き、サツキは溜めるように構え、それをギガンテスの破損した胸部へ放つ。

 

 

「■□■□■□■……!?」

 

 

「ハアアアアア!!」

「ぐううううう!!」

 

 ギガンテスは後ろへ一歩下がると、焦ったのか交差した両腕で胸部をガードする。二人の拳がその巨大な両腕に激突し、魔力を含んだ衝撃波が広がる。拳から血が噴き出そうと、腕にヒビが入るような痛みを覚えようと、二人とも構うことなく力を振り絞る。そして――

 

 

 

「「ブチ抜けぇぇぇぇ――っ!!」」

 

 

 

 ――サツキの禍々しい赤紫色に輝く拳と、フーカの綺麗な青色に輝く拳が、ギガンテスをガードの上から暴き打ち砕き、二人の拳から一筋の青い光が放たれた。

 

「こ、こんなバカな――」

 

 赤紫色の螺旋を纏った青い光は、ギガンテスの強固な巨体をいとも容易く貫き、バネットの絶叫じみた声を掻き消し、ギガンテスの巨体に続いて街を覆うように展開されていた結界も――

 

 

 

 ――その先にあった雲さえも、貫いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「や、やった………………ここからどうすりゃぁええんじゃぁー!?」

 

 ギガンテスの巨体が崩れていき、結界が消滅していく様を見て喜びの声を上げようとしたフーカだったが、自分が飛行魔法を使えないこと、その自分が絶賛落下中であることに気づき、真下を見て絶叫する。

 せめてもの抵抗にと、両手足をじたばたさせるも、そんなことで落下速度に変化が生じることもなく、その目に涙を浮かべながら、順調に地面に向かって落ちるフーカ。

 もちろんサツキもフーカと同じように落下してはいるものの、慣れているのか全く動じず、血だらけになった左手を押さえていた。

 

「チッ……世話が焼けるな」

 

 サツキはそう言うとため息をつき、自分達のように落下していたギガンテスの破片を真下から、踏み台にする感じで蹴りつけ、地面に付いた両足で勢いを殺し、一足先に着地する。

 

「いっつ……」

 

 その際に全身から感じる痛みで顔をしかめ、立ち眩みでもしたようによろめくサツキ。

 が、すぐにいつもの目付きの悪い顔に戻すと、フーカが落ちてくるであろう地点に立ち、さぁ来いと言うように両手を広げ――

 

 

「うえぇっ!?」

 

 

 ――落ちてきたフーカを受け止めた。お姫様抱っこになる形で。

 

「あ、あの……」

 

 同性が相手とはいえさすがに恥ずかしいのか、今にも湯気が出そうなほど顔を真っ赤にするフーカ。

 しかし、サツキはそれを知ってか、あるいは天然か。フーカを抱く逞しい両腕に力を入れ、下ろしてほしそうにじたばたしていた彼女を押さえ込んだ。

 

「さて……」

 

 サツキはフーカを下ろすことなく歩き始め、身体の所々が瓦礫に埋まったバネットと、彼の身を案じるアルファを見つけたところで、一息ついて二人の元へ向かっていく。

 彼らの周囲にはバネットの部下であろう男達が、救助活動のようなものを行っていた。どうやら瓦礫に埋まった仲間を助けているみたいだ。

 自分達の方に来るサツキと、彼女に抱かれたフーカを見たアルファは険しい表情になり、バネットも悔しそうに顔を歪めた。

 

「…………今更何ですか」

「さァな」

 

 肩を竦めるサツキを見て、死体蹴りに来たわけではないと判断し、警戒心を薄めるアルファ。

 バネットもそれがわかって安心したのか、一息ついてうっすらと笑みを浮かべ、線のように閉ざしていた口を開き、一言だけ呟いた。

 

「いやー参った参った。……完敗だわ」

 

 バネットがこれ以降、口を開くことは一切なかった。アルファもアルファで、

 

「人間の底力は怖いですね」

 

 と一言述べ、もう話すことはないと完全に口を閉ざした。

 

「……そうかよ」

 

 フーカをお姫様抱っこしたまま器用にタバコを取り出し、彼女にお構いなく一服するサツキ。フーカは今の状態が恥ずかしくてたまらないのか、自分を抱いたままタバコを吸うなとは言えなかった。

 バネットに完敗と言われたが、勝った覚えはない。むしろアタシは負けたんだ。そう言い返したかったサツキだが、二人の頑固そうな態度を見て出掛かった言葉を喉元で抑える。

 自分一人じゃ勝てなかったし、何より自分にとってのタブーを破ったという意味では、完全かつ屈辱的な敗北と言えるだろう。

 

 結界がなくなり、雲も掻き消された青空の下で、サツキは自分の腕に抱かれ、顔を真っ赤に染めて眠るように黙り込む最大の功労者、フーカに比較的優しめの視線を向けると、

 

 

 

「お疲れ」

 

 

 

 労いの言葉を一言だけ述べ、戦いの終わりを実感するように青天を見上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『今回の事件の首謀者である、元管理局員のバネット・フライヤーは黙認を――』

 

 翌日。次元船内にて、隣で睡眠を取るサツキを尻目に、フーカはラジオで臨時ニュースを聞いていた。

 

 

 あれから厄介な連中――管理局勢の気配を感じたサツキは、フーカをお姫様抱っこしたまま、目にも止まらぬ速さで工場地帯――だった場所から離脱した結果、管理局には見つからずに済んだ。

 だが、市民に目撃された魔力光と使用者の人物像から、『この街に緒方サツキがいる』という噂が広がり始めたのだ。それを聞いたフーカは焦ったが、そうなることを予想していたサツキの行動の早さには驚かされた。

 その噂を直接耳にしたわけでもないのに、すぐさま噂が広がる前に次元船に乗り、ミッドチルダへ帰還することを決めたのだ。

 それからは市民に素顔を見られないよう、サツキはサングラスで、フーカはキャップ帽で顔を隠し、ビルからビルへと飛び移るという方法を、跳べないフーカを米俵のように担ぎながら実行。無事に次元港へ辿り着き、今に至る。

 

 ちなみにさっきラジオで流れていたように、黒幕であるバネットとその配下的立場にあったアルファは、あの後程なくして管理局に確保された。体力を消耗し切っていたこともあってか、二人とも抵抗する素振りすら見せなかったらしい。

 屍兵器の一人であり、その中で唯一の生き残りであるアルファは、本人の対応次第でかつての戦闘機人と同様の処置を取ることもできたらしいが、捜査に非協力的だったため、そうはならなかった。

 なお、今のところ黙認しているバネットだが、いつ自分達のことをバラシてしまうかわからない。それが現時点における、フーカにとっての不安要素だった。

 

「…………」

 

 ラジオの音量を落とし、大きな音を立てないよう、チラリと眠っているサツキへ視線を向ける。

 あの後、全身に相当なガタが来たらしく、両腕には包帯が巻かれ、切り傷や火傷の痕があった右頬にはガーゼが貼られており、精神的な疲労も凄まじかったのか、次元船に乗って席に座った途端、スイッチが切れたかのように眠りについたのだ。

 それでも周囲を警戒しているのか、起きてすぐに戦えるような姿勢で眠っている。どんな時でも警戒を怠らなくなったのはさすがである。

 

 一方でサツキほど大きなダメージは受けなかったフーカだが、両手には包帯が巻かれており、切り傷の残った左頬と右腕と右脚にはガーゼが貼られていた。

 サツキよりかはマシというだけで、フーカもフーカなりにダメージは受けていたのだ。とはいっても全身に受けたわけではないので、本人にそこまでの実感はないが。

 

「そーゆやぁ……」

 

 ハッと何かを思い出し、リュックの中を漁るフーカ。そしてお目当ての物を見つけ、コソコソとした動きで取り出す。

 

「これ、向こうに着いたらどうしようかのお……」

 

 その手に持っていたのは、事件当日に拾った、赤いゴーグルだった。あれからもずっと付けていたことを、離脱した際にサツキに指摘されるまですっかり忘れていたのだ。

 このゴーグルは最初にサツキが遭遇したロボットが装着していたもので、本来なら現場に置いてくるべき代物だったのだが、そのタイミングを完全になくしてしまったフーカは、後ろめたさを感じながらもリュックの中へ隠すことにした。

 それに加え、今のようにどうしようかと考えているうちにここまで持ってきてしまったので、とりあえず向こうへ持って帰ることにしている。処分するかどうかはその後に自分で決める。

 

「へへ……」

 

 よほど気に入っているようで、フーカはゴーグルを装着すると、自分の姿が映っている窓を見て、にへらと口元を緩ませる。

 その直後、すぐに凛とした表情になると、掛けていたゴーグルをリュックに仕舞い、静かに寝息を立てて眠るサツキを見て、自分も眠ろうと椅子にもたれ掛かる。そして目を閉じる前に、一言だけ告げる。

 

 

 

「――お疲れ様でした」

 

 

 

 あの時サツキが掛けてくれた、労いの言葉と同じもの。フーカはその時のことを思い出して嬉しそうに微笑むと、そのまま目を閉じて眠りの扉を開くのだった。

 

 

 

 

 




 はい、この章はこれで完結です。こちらの予定通り、十話ピッタリで終わらせることができました。


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