宮戸島の提督と仲間達のお気楽日記   作:村上浩助

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おしまい

三月半ばになって、皆慌しくなっていた。

 

まずは、宮戸島鎮守府の改築工事が入った。

司令官執務室に、航空隊長執務室や応接室等、鎮守府に必要な施設を設置している。

コンテナハウスの組み合わせなので、数日中には工事が終わるだろう。

 

基地航空隊が正式に認可されたので、工廠の横に航空隊基地が建設されていて、

艦娘・女子寮も正式に建設されていた。

コンテナハウスを組み合わせた二階建ての施設で、艦娘達と翼が入居する予定である。

 

その間、執務は埠頭に設置された四畳半のコンテナハウス(仮執務室)の中で行われて……()()()()()

直哉曰く、

 

「後任は優秀な子だからね、()()貯めてても問題ないよ」

 

そう言いながら、ブランデーを呑んでいる。

電も、困った笑顔を浮かべながらその隣に座っている。

お揃いの制服はお気に入りらしく、直哉が見ている映画をノートパソコンで見ている。

 

「ところで、執務室のテレビやステレオはどうするつもりだい?」

「愛ちゃんにあげるのです」

「うん、いいね」

 

そんな言葉を聞きながら、四月から有明鎮守府秘書艦になる薄雲は、秘書艦業務()()はせっせと片付けてしまっている。

引き継ぎマニュアルから何やら、全てを熟している。

着任するビスマルクが困らないように、との配慮である。

 

同じ頃、高菜家(借家)では引越し業者と卯月と子日が、引っ越し荷物の運び出しを行っている。

 

「こっちの箱は割れ物だぴょん!」

「これは子日の私物だから、あとでいいよ!」

 

お掃除をしながら、運び出されて行く荷物を見送るエプロン姿の二人。

 

「しっかし……」

「うーちゃん、どうしたの?」

「ここもおさらばとなると、ちょっと寂しくなるぴょん……」

「でも、東京だよ!楽しいものがいっぱいあるよ!」

 

寂しそうにしている卯月を、子日は元気付けようと励ましている。

こうして高菜家は引き払われ、子日と卯月は一旦東京に向かい、直哉達は民宿に宿泊することになる。

春休みに合わせてやって来る愛ちゃん達に合わせる形で、早めに引き払ったのだ。

 

 

それと同じくして、原家でも引っ越しの準備が行われていた。

 

「おーい、これは持ってくのか?」

「圭一くん、衣類はダンボール詰め終わったよ」

 

手伝いに来た慎と寛太が、持って行く物と置いてく物の選別を行っている。

東京では、空き部屋にしていた直哉と優衣の部屋を使う手筈が着いている。

 

「ああ、そいつは持って行って、後は置いてく感じだな。漫画は全部持って行くぜ」

「はいはい、りょーかい」

 

圭一がギリギリまでやらない性格の為、こうやって早めに放課後にやって来ては、一緒に荷物の梱包をやって行くのだ。

こちらは単身なので、早めに終わりそうである。

 

「それよか、愛達が来るのはいつだっけ?」

「愛ちゃん達はあっちで終業式を終えてからこっちに来るよ。それで、歓送迎会を行って、直哉さん(師匠)達が東京に向かう手筈になってるらしいよ」

「うん、圭一に合わせて東京に行くって。だから、それまでに荷物は発送して欲しいってさ、言ってたよ」

「ああ、そうだったな」

 

圭一は、ギャルズ(望・奈緒子・櫻子)と優花も史絵の引越の手伝いをしているだろう、と考えていた。

史絵の方は締切がある為、殆どギャルズ達にお任せだった。

 

「ねー、ふみえもん」

「何ですか?」

 

執筆用のMacBookで、次回の『小さな提督シリーズ』の原稿を書きながら応える史絵に、

 

「勝負下着みっけちゃった!」

「!?」

 

ばっと振り返ると、こっそりネットで購入したセクシーランジェリーを両手にした望がいた。

 

「は、早くしまってください!!」

「あはは、顔真っ赤だよ」

「それな」

「だね」

「だねぇ~」

 

顔を真っ赤にして抗議する史絵を、笑いながら誂うギャルズに優花。

 

「もぅ……」

「あっちでも元気でね。あ、子供出来たら連絡するんだよ」

「学生の間は予定はないです。結婚したら、ですよ」

 

そこは弁えてる、心外な。と言わんばかりに、セクシー下着を取り上げてダンボール箱に仕舞い込むと、再び机に向かう。

史絵はこうやって多忙な日々を、引っ越しの準備を手伝ってもらいながら過ごすのだ。

 

 

卒業式を迎えた日、愛達がやって来た。

 

「久々に故郷に帰って来たね、健太」

「うん」

「ここが二人の故郷なのね」

 

引越し作業は業者とリーヴェ、それに翼に任せると早速、改築が完成した宮戸島鎮守府に向かった。

鍵が掛かって入れない。

そう。直哉は未だに、仮執務室の方で()()()いる。

 

埠頭の方に向かうと、直哉と電が執務室から出て来ていた。

 

「愛ちゃん、いや、()()()()。これでバトンタッチだね?」

「はいっ」

 

二人は、手をパシンと叩いた。

 

 

「そこで、執務は四月一日(しがついっぴ)からでいいから、休暇を楽しんでもらいたいけど、()()()()()()()()辞令がある。健太君と燿子ちゃんの全ての職を解く」

「そうですね、その方がいいですね」

 

その辞令に、愛とその後ろの二人も頷く。

 

「と言う訳で、再び名誉隊員として頑張ってね!」

 

くるっと振り向くと、愛が笑顔を向ける。

 

 

 

 

これから先、この愛弟子である愛に、全てを任せられるだろう、と直哉は安堵し、()()()の役目が終わったことを実感した。

これから先の物語は、彼女達が紡いで行く。もはや自分は、役目を終え新たな役目へと進む時が来たのだ、と笑いながら考えていた。

 

そして、電もそれに寄り添って笑みを浮かべていた。

 

 

宮戸島のお気楽な提督の話はこれでおしまい。

 

 

 




というわけで、日記シリーズの本編完結となります。

いろいろ伏線ややりたい事は残っていますが当初の100話完結という目標に達したので
気が向いたら更新するかもしれませんが一旦日記シリーズは中学生提督日記の完結を以ておしまいとさせていただきます。

いろいろなネタを提供してくれたtoshi-tomiyamaさんに、この場を借りて深い感謝を申し上げます。
全てのネタを拾えず申し訳ありませんでした。


ではではそんな感じで、またいつか。

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