宮戸島の提督と仲間達のお気楽日記   作:SAMICO

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浜松警備保障、宮戸島へ

中学校から帰って来た愛に、秘書艦ビスマルクから告げられたのは、予想外のものだった。

 

「救難信号ですか?」

「ええ、浜松警備保障のパーソナル警備サービスで、東北沖を航行中のトローリングボートが海賊に襲われたらしくて撃退したのだけど、念の為に救難信号を出したらしいわ」

「浜松警備保障ですか…………」

 

正直なところ、”自衛隊は民間人を守る“と言う建前を心から信じて疑わない愛にとって、浜松警備保障のサービスは自衛隊の領分を侵すものだと思っているが、

同時に直哉から聞かされた、「全てを守ることは不可能である」と言う実情も分かっている。

 

そんな事を考えていると、艦娘専用無線から通信が入って来る。

 

『こちら、旗艦アイオワ。周囲に敵影Nothing、Guardしながら戻るネ』

「こちら宮戸島本部、了解しまし……護衛しながら戻る、ですか?」

『補給とトローリングボートの修繕に、寄港を求めているネ。何とトローリングボートには竹宮辰夫、カンナ親子が乗ってたネ』

「マジで!?」

 

竹宮辰夫は釣りが趣味の俳優で、娘のカンナはスーパーモデルとして活躍している。

愛は、そんなカンナの大ファンなのである。

 

『マジもマジ、大マジネ。カンナさんは、愛のことよく知ってて、中学生提督のサインを貰いたいと言ってたネ』

「マジで!?私も、カンナさんのサイン貰いたいと思ってたんですよ」

 

雑談に入りそうになったが、艦娘無線だと言うことを思い出し、コホンと咳払いをする。

 

「りょぉ〜かいです。出迎えの準備をしますので、浜松警備保障の皆さんと民間人の警護をお願いします」

『Roger』

 

――――――――

「で、何で秋也さんもいるんですかねぇ?」

 

宮戸島鎮守府の埠頭で出迎えに出ている愛は、然も“当たり前”のようにいる足立秋也に声を掛ける。

 

「ばっか、有名芸能人が来るからには、“東北管区の責任者”の俺が立ち会うのは当たり前だろう?」

「本音はどうなんですか?」

「ばっか、辰夫のおやっさんのサイン欲しいだけに決まってるだろ!?」

「…………」

 

愛は、それ以上追及しないようにした。

もちろん、友人である健太達にも連絡したら、一同総結集である。

 

「芸能人に会えるなんて楽しみだなぁ」

とは、健太の素直な感想である。

 

「カンナさんにサイン書いて貰えるように、帰りに色紙いっぱい買って来たわよ」

燿子は、もう既に色紙にサインを書いて貰うつもりのようだ。

 

「辰夫さんのヤクザ映画、個人的に好きなんだよなあ」

慎は、圭一から譲り受けた長ランのポケットに手を突っ込んでいる。

 

「カンナさんと言ったら、この間の女子向け雑誌のヌード」

「それな」

「だね」

ギャルズ達は、既にお目々キラキラ状態である。

 

「あれはセルフプロデュースで、自分で撮影も熟したらしいよぉ?」

「そうなんだ、へぇ〜」

優花と寛太もその記事を見ていたらしく、仲睦まじく会話をしている。

 

「そうだ」

 

望が思い出したように、愛の耳元で囁いた。

 

「私達も撮ってもらおうよ」

「ええっ!?ヌードを!?」

 

隣の健太共々、顔が真っ赤である。

ビスマルクも出撃していない為、誰も止めるヤツがいないのである。

 

ワイキャイしながら女子達が騒いでる中、慎は辰夫に会えるのを心待ちにしている。

誰もツッコミがいない。

 

――――――――

 

宮戸島艦隊のエスコートを受けて、幼体イ級達の護衛するトローリングボートが宮戸島にやって来た。

 

「皆さん、お疲れ様です。浜松警備保障の方には入渠と補給の準備ができています。トローリングボートの修理に業者を手配しましたので、終わるまでこんなところで恐縮ですが……」

 

愛が代表し、敬礼して出迎えると、デッキから竹宮カンナが飛び出して来る。

 

「貴女が笹野 愛ちゃんね!」

 

カンナは、愛をハグすると一歩下がり、竹宮辰夫も出て来る。

“テレビの中の住人”が、リアルにやって来る。

 

「娘は中学生提督の大ファンでね」

「そうよ、パパ。こんな小さいのに頑張ってるって聞いてたから、愛ちゃん、サイン頂戴ね」

「サインと言っても、こんなのしかできませんでしたけど……」

 

白紙の色紙と、自分なりに自らのデフォルメイラストを添えたサインを差し出すと、カンナはすぐにサインをして差し出す。

早速、サインの交換をしているのである。

 

「竹宮辰夫さん、お初にお目に掛かります。自分は、東北管区警務隊長の足立秋也陸准将補であります」

 

秋也は、普段のやる気ないオーラを隠して敬礼する。“借りて来た猫”である。

 

「これは、態々申し訳ない」

 

辰夫が手を差し出すと、ぐっと握手を交わす。

 

「あ、すんませんけどサインもらえますか?」

「ああ、いいとも」

 

借りた猫は、たった今死んだ。

 

 

――――――――

場所を鎮守府に移すと、秋也と健太と慎が、応接間で辰夫を交えてヤクザ映画の話を男同士熱く語り合っている中、鎮守府の大テーブルではカンナを中心に女子会が始まっている。そこに公然といる寛太は、気にしてはいけない。

 

「カンナさんは新しい彼氏とかいるんですか?」

 

ギャルズの望が、いきなりキラーパスを飛ばして来る。

 

「んー、今のところはいないかなぁ」

「こらこら、プライベートをほじくり返したらだめじゃない。マスコミじゃないんだから」

 

ビスマルクがそれを軽く諌めると、ギャルズ達から、

 

『はぁーい』

「よろしい。カンナさん、騒がしい鎮守府でごめんなさいね」

「ははは、いいのいいの。私、賑やかなのが好きだから」

 

そうあっけらかんと笑って見せると、愛も笑顔になる。

愛とカンナはさっそく意気投合し、ラインの交換をすると、

 

「そうだ、今度私の友達とかも紹介するから」

 

と、モデル仲間のグループに招待を掛けてくれた。

 

「あ、ありがとうございます……いいのかなあ」

「いいのいいの、愛ちゃん読モ目指しなよ、可愛いから。ほら、艦娘のビスマルクちゃんだっけ……と一緒に。私がプロデュースしてあげるから」

「あはは、その話は大本営を通してから……」

「パパの知り合いに、広報のお偉いさんいるから、聞いてあげるね」

 

即断即決で、パパの知り合いとやらの東京地本本部長の即決許可で、撮影しよう!と言うことになったのだ。

足立総監は頭を抱えるだろうが、カンナとしては知ったことではない。

そして、案件が副総監である直哉のところで止まり、面白がって即OKサインを出したのも、カンナは知ったことではない。

 

 

「えええ……?」

 

早速海上自衛隊の制服に着替えると、カンナの手によるメイクアップが施され、女子達全員もエキストラで参加しての大撮影会が始まった。

執務机でペンを片手に上目遣いで見上げる姿や、港の埠頭で指揮をしている姿、終いにはちょっと際どいものまでシャッターに収められて行く。

それに、エキストラとして参加した女子勢と艦娘達、カンナ発案で女装させられた寛太の姿も華を添える。

 

鳳翔と伊勢は和装をしっかりと決めて、アイオワはアメリカン・ガールっぷりを見せ付ける。ビスマルクは凛々しく、

そして大井と北上は、仲良さをアピールする。

愛の友人達も負けてはいない。

優花と寛太は天然っぷりを見せ付け、ギャルズ達は自ら際どい撮影に喜んで飛び込んで行く。

燿子は、控えめに清楚な感じで写真に収まっている。

 

そして最後に、女子達でヌードを撮ろうというノリになり、男子禁制(寛太は除く)の鎮守府執務室になったのであった。

 

その間、辰夫等男達は岸壁釣りを始めていた。

 

 

――――――――

 

「皆、楽しかったよ!ありがとう」

「慎くんと健太くんは、今度映画撮影においでよ」

 

娘と父親は、修復されたトローリングボートに乗って、宮戸島を離れて行く。

思い出の写真の一部……発刊できないものは、女子達(と寛太)のスマホに思い出として収まっていて……

 

 

その後、笹野 愛ファースト写真集として、艦娘広報の一環として発売されるに至り、知名度が更に上がったのは言うまでもない。

もちろん、印税は皆で山分けである。

愛は、その後1ヶ月半ほど全国の地本に引っ張り回され、サイン会や講演会ツアーをすることになるのだが、

講演会の最後は四国を回ろう、と心に決めていた。




今回のお題「浜松警備保障、宮戸島へ」toshi-tomiyamaさん提供
→「パーソナル海洋警備」で、東北沖に向かった浜松警備保障……
突発的なトラプルで宮戸島に来航……


次回もお題モノになります。
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