宮戸島の提督と仲間達のお気楽日記   作:SAMICO

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復 活


着任!問題児

梅雨が過ぎた7月頃、漸く宮戸島鎮守府に基地航空隊が完成した。

それと同時に、宮戸島に()()がやって来た。

 

「ふっ、漸く着いたか…………って田舎過ぎるじゃん!!何も無いじゃん!」

 

彼女の愛車である、赤いプリウスを降りた彼女の発した第一声がこれであった。

彼女の名前は大垣 翼。階級は三等空佐。

この度完成した宮戸島鎮守府航空隊長である。

 

「ばっか、“住めば都”って言うだろが」

「あっ、秋也、久しぶり」

「アホたれ、勤務中は足立一佐か隊長と呼べぃ」

「あいたっ」

 

当たり前のように鎮守府から出て来た秋也が、デコピンを喰らわせる。

おでこを押さえて蹲る翼。

しかし、直ぐに立ち上がり笑みを浮かべる。

 

「隊長は今日も宮戸島鎮守府に入り浸ってる感じ?」

「まあなー。大体、佐伯と円城寺がラブラブ過ぎて警務隊オフィスに居場所が()えんだよ」

「そっかー」

 

そのままブラブラと海岸線を仲睦まじそうに歩いて行く2人。

 

「それで、2人の様子はどうなん?」

「ん?円城寺と佐伯か。同棲を始めたって聞いたな。近いうちに結婚すんじゃね?知らんけど」

「そっかー」

 

ふと翼が足を止める。

 

「ねぇ、秋也」

「ん?何だよ」

 

秋也が振り向くと、翼は殊の外真面目な顔をする。

 

「……」

「どうした、翼らしく()ぇな」

 

秋也が怪訝そうな顔を向けると、翼はにへらっと笑った。

 

「何でも無い」

「まあいいか。それで、住む場所はどうするんだ?」

「当分の間は艦娘寮でお世話になるかな」

「まあ、“()()()の艦娘寮”ならビス子の目の届く範囲だし問題()ぇか」

「問題って?」

 

首を傾げた翼に、容赦無く秋也のデコピンが襲う。

痛そうに頭を押さえてしゃがみ込む。

 

「だから痛いって!」

 

立ち上がり抗議をする翼に、秋也は腰に手を当てて、

 

「だから、お前の“男漁り”の件だ。幸田から苦情来てたぞ」

「えうー…………だって、早々と暁とレーちゃんがパートナーシップ認定受けて持て余してる状態だったし」

「だからと言って“始末書の山”は問題だろうに。大塚司令官を困らせるんじゃ()えよ」

 

真面目な顔で言うと、翼が少しムスッとする。

 

()()()()()()隊長に言われたくないやい」

「……?」

「まあいいや。こんなド田舎で男漁りしたら噂も広がるしね、自重しようかな?」

「だから住めば都って言うだろ?通販もあるんだからさ」

 

秋也が諫めるように言うと、翼は軽く笑って、

 

「それもそっか」

 

そう頭に手を回して歩き始める。

 

「あー!翼さんだ!」

「お、翼お姉さん久しぶり」

 

ランドセルを背負って手を繋いで仲良く下校して来た真愛と拓くんが、二人の方へ駆け出して来る。

 

「お、真愛に拓坊か、久しぶり」

「おっす、今日も鎮守府で勉強か?」

 

軽く手を上げる翼と笑いながら2人の頭を撫でる秋也に、二人のちびっ子は、

 

「うん!ビス子お姉さんが勉強教えてくれるんだよ」

「そうそう」

 

と答える。

そんな仲良さそうな二人を見て、翼は少し羨まし気な顔をするが、直ぐににへらっと笑みを浮かべる。

 

「そっかー、それじゃあ行ってらっしゃい。後であたしも鎮守府に顔を出すからね」

「おう、しっかり勉強しろよ」

「「はいっ!」」

 

真愛と拓はまた仲良く手を繋ぐと、鎮守府の方に歩いて行く。

それを見送った翼は、良いなあと思いながらも“無い物強請(ねだ)り”は見苦しいか、と思い軽く溜め息を吐いた。

そんな翼の様子を見た秋也は、不思議そうな顔をする。

 

「どうしたよ、アンニュイな顔をしてよ」

「んー…………」

 

どう答えようか考え(あぐ)ねていると、秋也が続ける。

 

「ま、そろそろ鎮守府に戻るかね?」

「あ、そうだね」

 

鎮守府に向けて足を進める秋也の背中に、

 

「この鈍感男」

 

と、ぼそりと呪詛の言葉を飛ばしてから追い掛ける。

 

 

鎮守府に戻ると、宮戸島鎮守府秘書艦のビスマルクが、ホワイトボードで算数を二人に教えて、

それを二人が真面目に勉強していた。

 

「よっす、ビス子久しぶり!」

「翼、お久しぶりね」

 

ビス子が入口に視線を向けると、翼はビシッと敬礼する。

 

「大垣 翼三等空佐、只今着任しました」

「お疲れ様。司令官は学校だから、そろそろ戻ると思うから一緒に勉強見てあげて頂戴」

「へいへい」

「それじゃ俺は仕事に戻るわ」

 

翼が真愛の隣に腰掛けると、秋也は拓の隣に開きっ放しのノートパソコンでカタカタと仕事を再開する。

暫くすると愛と愉快な仲間達がやって来る。

 

「ただいまー、ああ翼さんお久しぶりです!」

「うん、久しぶり」

 

皆を代表して愛が挨拶すると、翼は軽く手を上げる。

 

 

 

皆が勉強している中、翼はギャルズ達と猥談で盛り上がっている。

曰く“昨日はどんなプレイをした”、等惚気話でもある。

 

「でねー、ラブラブなわけ」

「それな」

「うん」

 

三人の話を横で聞きながら秋也も仕事をしていたが、ポケットの業務用携帯が鳴ると外に出て行ってしまう。

そして、それを見送ると望がふと思い出したように訊く。

 

「翼さんは“好きな人”とかいないわけ?」

「好きな人かぁ」

 

にへらっと笑うと、

 

「居るけど、()()()()()()()()かな」

 

そう答えると望が、

 

「そうなんだ。これ、明石印の媚薬貰ったんだけど」

「誰に?」

「メルカリで買った~」

 

そう答える望に、翼は一応「年長者」として釘を刺す。

 

「変なモノをネットで買わないこと」

「はーい」

「それな」

「うん」

 

ギャルズ達がちゃんと聞いてるのか分からない返事をすると、

 

「で、どうだった?」

「うん、朝まで寝かせて貰え無かったよ」

「それな」

「うん」

 

その言葉に、慎が会話に加わる。

 

「全く酷い目に遭ったよ。四人で足腰立たなくって、学校休んだからな」

「だって、足腰立たなくしたのは慎じゃん」

 

ギャルズ達を代表して、望が言い返すと翼はあははっと笑う。

 

「それで、好きな人って誰なん?」

「それはですね」

 

その言葉に、執務室で仕事をしていた愛が悪戯っぽい笑みを浮かべて立ち上がり、櫻子の隣に座ると会話に加わる。

 

「足立一佐のことが好きなんですよ」

「愛ちゃん!?」

 

少し照れて慌てる翼に、丁度秋也が戻って来る。

一斉に視線が秋也に向いた。

 

「何だ?俺の顔に何か付いてるか?」

「ねえねえ、隊長は好きな人いるの?」

 

代表して望が秋也に問い掛けると、秋也は椅子に腰掛けながら、

 

「おう」

 

とだけ答える。

翼は“自分以外だ”と思って、少し残念そうな笑みを浮かべる。

しかし、ギャルズ達は更に踏み込んで来る。

 

「誰?」

「それは秘密だな」

「何で?」

「ばっか、俺はもう40(しじゅう)だぜ。そんな“売れ残り物件”誰も欲しがら()えって」

「そうかなあ?」

「そうだよ。“お子様”には未だ判ん()えって」

 

ふっと笑みを浮かべる秋也は仕事に戻る。

翼は、はぁーっと溜め息を吐いた。

 

 

 

 

 

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