時は遡り、5月のことだった。
三隈はこの半年で全てを浜松からこなすことに限界を感じていた。
そこで、会議を連日開いて打開策を模索していた。
「さて、どうしようね?恵美ちゃん」
社長室には仏壇が置いてあり、一人の少女の遺影と位牌が飾られている。
裏の警務隊時代に保護して、そして殺されて喪った少女である。
その遺影に語り掛けると、再び書類に目を落とす。
コンコン
「はい、どうぞ?」
扉が開かれるとそこには飯村規、三隈の夫がいた。
「あれ、あなた、お迎え?」
「うん」
「ありがとう、もうちょっと待ってて」
「そう言えば煮詰まってるんだって?」
「なんで?」
「彰くんから話を聞いてね、困ってるって言ってたけどどうしたの?」
「あぁ…………なるほど」
彰……
年齢は32歳。GWの街コンで初海と意気投合して結婚した初海の旦那様だった。
恐らく初海から伝わったんだろうなと思い良い奥様だなと軽く笑う。
「そうなの。どうしようかなって思っててね」
「全国に支社を作るってのは?」
「支社かぁ…………」
三隈は暫し考え込んだ。
確かに、姫や鬼を支社長に各地区に分散させれば全国をカバーできるかもしれない。
そう考えた三隈は早速翌日の重役会議にかけようと思い、重役グループに連絡を送る。
「それより、
「うん、そうだね」
香奈とは二人が養子に迎えた中学生の女の子である。年齢は愛と同じ14歳である。
両親は四国の艦娘大戦で死亡しており、親戚のいる浜松にやって来たのだった。
養父から性的暴行を受けていて、妊娠までしていた。
発覚したときには堕胎不可能な所まで妊娠が進んでいたのだ。
養母はそれを見て見ぬ振りをしていたが、香奈が家出をした際に三隈に保護されて、そのまま養子に迎えたのだった。
規が無精子症で子供は諦めていた矢先の出来事だった。
勿論養父母は警察によってお縄になっている。
そして歩は養子に迎えたあと出産した三隈や規にとっては孫となる男の子であり、まだ乳児である。
三隈は浜松警備保障の本社から少し歩いたマンションに住んでいた。
曙や最上も同じマンションに住んでいる。
家に帰ると赤ん坊を抱えた制服を着た女の子が出迎える。
「お帰り、三隈ママ、パパ」
「ただいま」
「ただいま」
飯村家のルールとして家族全員で夕飯は協力して作ると言うものがある。
そのため、3人で仲良く和気藹々と夕飯の用意をする。
そして、食事が出来上がる頃に香奈はベビーベッドから歩を抱きかかえると母乳を与える。その姿は幼いながらも母親の慈愛に満ちた姿で三隈や規もそれを見ると養子に迎えて良かったと思っていた。
『いただきます』
ゲップをさせて赤ちゃんが再び眠ったところで3人も夕飯となる。
夕飯を食べながらそれぞれの話をしながら夕飯を食べるのがいつもの事になっている。
「今日の授業はねー…………」
香奈が楽しそうに学校生活を語り始める。
シングルマザーとなって仕舞ったものの、いじめの対象になる事はなく、むしろ学校に行きだしてからは明るくなっている。
両親を失い、養父に暴行を受けて軟禁状態になっていたあの大戦から1年が経過していた。
歩は学校に行っている間は規が面倒を見ているし、臨時のベビーシッターも雇って指導を受けている。
最初は学校に行かずに香奈が育てると言ったものの、規と三隈は揃って反対した。
学校生活は送るべきだという二人の思いを知った香奈は感謝しながら学校生活を謳歌しているのだ。
出会いは寒さの残る2月の事だった。
――――
2月のある日。
病院からの帰りだった。
規は無精子症と診断されて失意の帰宅だった。
「大丈夫よあなた、二人で仲良く暮らせば良いから」
「ごめんね、三隈…………」
規はいつになく落ち込んでいるが必死に三隈が励ましていた。
そんな二人が空地をさしかかったときに一人の少女が体を丸めてうずくまっていた。
頭には白い雪が積もっていてずっとこの場所にいることが分かった。
「あなた、あの子…………」
「うん、ちょっと声をかけてみようか」
近づいて声をかける。
「ねえ、そこのあなた」
「…………だれ?」
「!?」
顔を上げた女の子の姿を見て三隈と規は絶句した。
お腹が明らかに膨らんでいたのだ。
「…………ねえ、幾つ?」
「…………13」
その答えに顔を見合わせた。
「とにかく、うちでご飯でも食べなよ。 こんな所にいたら死んじゃうよ」
「…………お礼はやっぱり抱かれること?」
「えっ……」
「叔父さんがいつもしてるから…………」
「そんな…………そんなことはしないよ、絶対に!」
「そうなの?」
「お名前は?」
「西村香奈…………」
「とにかくあなたは私達が保護するから」
三隈が力強く言うと少女――香奈の手を引いた。
家に連れて帰るとすぐに警察に通報して香奈をお風呂に入れると身体中に虐待のあとがあった。
三隈は絶句した。
「これは…………?」
「叔父さんから縛られたりしてた。 住まわせてもらうお礼だから」
「……………………」
三隈は苦々しい顔をしながら香奈の身体を洗ってあげる。
その間香奈は身の上話を始めた。
両親が艦娘大戦の被害にあって死んだこと、親戚の家で色々な暴行を受けていたこと。
途中から涙声になって最後は三隈に抱きつき泣き出した。
その間に規は夕飯の支度を始める。
香奈が眠ったあとにリビングで二人で考え込んでいた。
香奈をどうするかである。
「このままだと養護施設に入ることになるね」
「でも…………」
「三隈の言いたいことは分かる。でもね…………」
「いいえ、香奈はうちで引き取るよ」
「…………本気なんだね」
「うん」
「三隈が言うなら僕も喜んで父親役を買って出るよ」
翌日すぐに浜松市役所の福祉課に赴いて養子縁組の手続きに入った。
結果は否であった。
しかし、それくらいで諦める三隈ではなかった。
すぐに村上有紀に連絡を取ったのだった。
「もしもし、お久しぶりですの」
「ああ、有紀さんお久しぶり」
「それで、どうしましたの?」
「実は…………」
三隈は事のあらましを話したのだった。
「うふふふ…………その強姦野郎は始末しても良いですか?」
「い、いえ警察に任せようよ」
「それもそうですね、わたくし達はもう仕事人ではありませんもの」
「そうそう」
「ともかく湊子様のお耳にもお入れしますね」
「お願い、頼むよ」
翌日その判定が覆り、特別に養子の許可が下りたのだった。
あとから聞いた話では、湊子が直々に浜松市役所に掛け合ってくれたのだった。
――――
香奈が楽しそうに学校生活を語ってるのを見ると二人はそれを思い出しながら
明るくなったなと二人で顔を見合わせて笑うのだった。
子供は出来なくても可愛い子供や孫に囲まれている三隈。
そんな四人を見守るように恵美の遺影が部屋に飾られている。
ああ、幸せだなと三隈は実感していた。
・浜松警備保障首脳部の結婚生活 (toshi-tomiyamaさん提供)
各地に支社を開設して、自らが飛び回る必要が減少した浜松警備保障首脳部のくまりんこ、もがみん、ぼのたん(^_^)V
落ち着いた結婚生活なのかどうか?
初海ちゃんに負けていられないですからねぇ(^^;