宮戸島の提督と仲間達のお気楽日記   作:村上浩助

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本日の名言はあとがきに。



※キャラかぶりが判明したので大和を三笠に変えました。


サプライズブライダル

結婚式に当たって、武藤二佐が宮城地本(地方協力本部)と相談し、

和装に拘る彼の為に、「人前式」と言うプランを、ウェディングプランナーが提案した。

 

神前式は、基本家族のみだが、武藤家には両親はおらず、艦娘側も当然そうな為、

ならば、和風の式場を借りて、人前式にすればいいのではないか?という結論に至った。

 

招待する提督達も、女川・宮戸島・気仙沼等、親しい提督だけを招待した。

この日に当たっては、横須賀鎮守府所属の警備艦隊が東北を守ることになっている為、

艦娘達も全員参加の、賑やかなパーティーとなる。

 

大本営(艦娘本部)からは、大貫空将と足立一佐が参加して、

宮城地本からも、宮本一佐が参加する。

小ぢんまりと言うことで、軍高官は招待せず、最上位者は大貫空将の参加に留まっている。

その代わり、大貫夫妻が仲人となっている。

 

駐車場に、車を停めて降りる高菜二佐。

ブランド物の礼服で、髪もかっちり整えている。

後ろから降りて来る、電と卯月も可愛い和服で、夏用のものをレンタルしたのだ。

受付では、宮城地本の人達が受付を担当し、皆順番に記帳を行っている。

「この度はおめでとうございます」

「おめでとうだぴょん」

「おめでとうなのです」

それぞれ、包んだ熨斗袋を受付に手渡すと、それぞれが記帳する。

 

控室には、既にいろんな艦娘達が会場に集っており、ワイキャイと会話を楽しんでいる。

和風だったりドレスだったり、真面目な娘は制服を身に着けている。

「お久しぶりです、先輩」

そう声を掛けて来たのは、そばかすが特徴的な、控え目な留め袖の女性。

気仙沼鎮守府の、大村奈々海二等海佐である。

「いやあ、久しぶりだねえ。そっちは最近どうだい?」

「何時も通りです。なかなか北方への開拓が出来ませんね」

こちらの麾下艦娘は、三笠、武蔵、大鳳、加賀、翔鶴、瑞鶴という航空打撃部隊であり、強めの敵をどんどん倒している有望株である。

士官学校の三期後輩で、最上級生の時にシミュレーションで対戦してから、才能を買っていた。

彼女は「逃げる振り」が巧みで、逃げ帰っては急反転して攻撃する等、地形を利用した攻撃が得意なのである。

桐山に並ぶ進軍派だが、もう片方(桐山)はよく失敗するので、強い方の進軍派と呼ばれている。

「初めまして。電三尉なのです」

「卯月士長だぴょん!びしっ」

二人仲良く敬礼をすると、奈々海も敬礼を返す。そう、卯月は昇進したのだ。漸く。

「私は大村奈々海二等海佐、よろしくね?」

「ところで、留め袖ってことは……」

「ん、既婚者だよ。旦那は今、ドバイで先輩のお兄さんの貿易会社の社員。娘がいてねー、夏海~」

そう声を掛けると、中学生の制服を着たおかっぱの女の子と、艦娘達がやって来る。

「こちら、高菜直哉二佐。こっちが、うちの娘の夏海と、艦娘達」

「初めまして。『宮戸島の英雄』に初めてお目にかかれるとは、光栄です」

その言葉に、苦笑いを浮かべる高菜二佐。

「期待してたものと違って申し訳ないねぇ」

「いえいえ、とんでもありません、親しみ易そうで…」

そう言うと、少し照れて大村二佐の横に下がる。

「三笠よ。階級は三尉」

「武蔵だ、同じく三尉」

「大鳳です。曹長です」

「加賀よ、曹長」

「瑞鶴です。一曹です」

「翔鶴です。妹と同じく一曹です」

順番に自己紹介をして来る。

それぞれに、自己紹介と挨拶をすると、電と卯月は艦娘達に連れられ、お菓子のテーブルの方に向かって行く。

すると痩身の、いかにもエリートだと言った感じの男が声を掛ける。

「やあ、高菜君。久しぶりだね?」

そう、声を掛けて来たのは、自分の一つ先輩の桐山 崇二等空佐である。

「どーも、先輩」

「ご無沙汰してます、二佐」

高菜二佐は緩やかな敬礼で、大村二佐はびしっと敬礼する。

「うむ。高菜くんには、いつも戦果を横取りされて困っているよ」

「そうなんですか?」

経緯を知らない大村に、高菜二佐は軽く肩を竦めると、

「だったら、敵を連れて近海までお戻りにならないことをお勧めしますよ」

と、毒の入った言葉を叩き付ける。

「貴様っ!」

憤った桐山二佐に、すぐに神通が駆け寄る。階級は曹長。

「申し訳ありません」

と謝って、神通が連れて行く。

「まあ、あの唯一の良心がいる限りは、あれより酷いことにはならないだろう」

桐山の背中を見送りながら、そう呟くと、

「まあ、そろそろ始まるから、我々も向かおう」

「そうですね」

 

広い和室に席が並べられ、人間側と艦娘側に、左右で分けられる。

新婦側が、艦娘達である。

司会席にいる足立一佐が、準備ができた。と連絡を受けると、一呼吸措きマイクに声を発する。

「本日はお忙しい中、また遠方より武藤 廉さんと戦艦長門さんの結婚式にご列席いただきまして、誠にありがとうございます。

只今より、新郎新婦が入場いたします。正面入り口にご注目ください。どうぞ盛大な拍手でお迎えください」

新郎・武藤 廉は白の紋付袴で登場する。恰幅が良いので、紋付袴もとても似合う。

それに手を添えて、横に並び立っているのは、白無垢に綿帽子姿の長門である。

しずしずと、二人並び立ち、参列する皆の前を歩いて行き、一番前の一段高いところまで歩くと、参列客の方を向いて一礼する。

「それではこれより、武藤 廉さんと戦艦長門さんの結婚式を始めさせていただきます。

この結婚式は、新郎新婦の希望により、お二人が日ごろからお世話になっている皆様の前で結婚を誓う、人前式のスタイルで行います。本日お集まりいただきました皆様全員が、結婚の証人となる訳です。

どうぞ皆様、お二人の結婚の誓いを、しっかりと見届けてくださいますよう、お願いいたします。

申し遅れましたが、私は本日の司会を務めさせていただきます「足立昭彦」と申します。新郎新婦とは同じ職場の同期です。不慣れな為、行き届かない点もあるかと思いますが、精一杯務めさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします」

 

それから、足立によるプロフイールの紹介が始まる。

そして、結婚するに至った経緯になると、

「……で、過日の生放送の『電も結婚したいのです』と言う発言に触発され、三人で結婚を迫ったところ、承諾した訳であります」

と言う言葉に、電は顔を真っ赤にして俯き、会場からはどっと笑い声が上がる。

 

「では次に、新郎新婦より結婚の誓いの言葉を述べさせていただきます。廉さん、長門さんお願いいたします」

その言葉に、ちらっと二人を見ると、最前列の夕立と木曾も立ち上がり、壇上に上がる。

そして四人で、

『私達は、本日ここにご列席いただきました皆様の見守る中、家族となりました。

これからの人生、いかなる時も生涯変わらぬ愛を約束し、生涯家族として生きて行くことを誓います。そして、家族で海の平和を守り続けて行くことも誓います」

「新郎 武藤 廉」

「新婦 戦艦長門」

「娘  巡洋艦木曾」

「同じく駆逐艦夕立」

 

「それでは、指輪の交換に入りたいと思います。艦娘のケッコンとは、提督との永遠の絆を願って付けられるもので、深海棲艦の姫を倒すと得られる『霊子の結晶』によって精製されます。艦娘の潜在能力を大幅に引き出し、より強い艦娘になれるように、家族の証として四つ用意してあります」

そう言うと、大貫空将が立ち上がり、リングピローを二つ持って来る。

廉の前で片方を開けると、リングが三つ入っている。

「まずは、新郎から新婦、そして娘達へとリングを贈ります」

その言葉で、廉は長門、木曾、夕立の順に指輪を左薬指に填めていく。

今度は、もう一つのリングピローを三人の艦娘に差し出す。

それを、するっと三人で取ると、三人の手で廉の左薬指に填めていく。

その時、四つの光が輝き、光が収まると白金(プラチナ)色にキラキラ輝き続けている。

「想いがある限り、指輪は輝き続けます。この指輪は、艦娘を統括される大貫空将直々に届けていただきました。ありがとうございました」

「おめでとうございます。皆様、二人の結婚を承認いただけますでしょうか?承認いただけるようであれば、盛大な拍手をお願いいたします」

全員が立ち上がり、盛大な拍手で迎えた。

「それでは、ご参列の皆様の承認を得て、ここにめでたくこの家族の縁が成立となりました。ご結婚おめでとうございます」

 

一同が、再び拍手の嵐で迎えた。

 

そして、全員が披露宴の席にやって来て、披露宴が始まる。

席は、鎮守府毎で分かれている為、電と卯月と高菜二佐で一つのテーブルになる。

 

新郎新婦は、お色直しで一旦引っ込んで、

再び登場すると、今度は儀礼服とウエディングドレス姿である。

木曾と夕立も、それぞれ黒と朱のドレス姿で登場である。

 

そしてブーケトスが始まるが、長門がマイクを手に取る。

「済まないが、ブーケを渡すのは既に決めている。駆逐艦電、受け取れ」

事前に相談を受けていた、気仙沼鎮守府の加賀が、ブーケに矢を向け放つと、艦載機が一機飛んでブーケを雷装アームでガッチリ?むと、宮戸島鎮守府の席の電に向かって落とされる。

「あ………」

「…………」

 

手元にブーケを受け取って驚いている電に、

 

「頑張れ、後はお前次第だ」

とサムズ・アップする。

すると、艦娘達からは拍手と黄色い声援が上がり、電は狼狽える。

もちろん、高菜二佐も狼狽えているが、卯月も拍手をしている。

 

全ては、この結婚式に仕組まれた作戦だったのだ。

廉の、せっかくなら披露宴で電と高菜二佐をくっ付けたい、と言う発言から始まったのだ。

気仙沼の加賀、そして宮戸島の卯月にも協力を依頼したサプライズである。

自身の結婚式でプロポーズをさせるとは、なかなか大胆な男である。

 

そして、さっと式場の人が、電にマイクを手渡す。

照明(スポットライト)も、電と高菜二佐に集まる。

「あえっ、その………」

「言っちゃえっぽい―!!」

一際大きい夕立の言葉に、ゴクリと唾を飲み込む。

「高菜二佐………直哉、電と……私と結婚してほしいのです」

その言葉に、全員の歓声が上がる。

そして、直哉に渡されるマイク。

「あーいや、困ったな。どうやら、私は包囲されていたようだね。電、君が男としての好き、だと言うなら、喜んで君のプロポーズに応えよう」

「おめでとう!!!」

本来の主役、廉の大きな声が会場に響くと、拍手の嵐になる。

 

その後は、合同披露宴みたいな形になって、大盛り上がりになった。

卯月が、こっそり机から持ち出したケッコンリングを取り出して、蓋を開ける。

「指輪交換だぴょん」

そう言われて皆が見守る中、先に直哉が電の左薬指にケッコンリングを填める。

そして次に電が、ケッコンリングを直哉の左薬指に填める。

そうすると、光り輝いて電の姿が、少し大人びた感じになった。

ほんの少しだが……

そう。電のチート能力、改三能力が開封された瞬間だった。

 

その後は、再び武藤家の結婚披露宴に戻り、空母艦娘のミニ航空ショーやら、

いろいろな余興をしながら、楽しい披露宴になった。

 

 

その後、直哉と電と卯月は、それぞれの五次会まで参加したが、

翌日三人共運転代行で帰り、官舎のリビングでばたんきゅーしているところで、目を覚ますことになる。

「イタタタ………飲み過ぎたかな?」

「飲み過ぎたのです……」

「うー……頭痛い」

そう。艦娘に、飲酒禁止は関係ないのだ。

 




まさか他人の結婚式でプロポーズされると思わなかった
―――――高菜直哉――――――


本日のお題「結婚をする」

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