宮戸島の提督と仲間達のお気楽日記   作:SAMICO

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今回兄さんがでてくる  とでも思ったのかァ
――――高菜直哉―――



東京への旅

その電話の翌日に、三人分の新幹線の往復チケットが速達書留で送られてきた。しかも、グランクラス車である。

それに、ホテルのスイートルームの宿泊券も。

「やれやれ、これは泊まり掛けになるかな?」

「お泊り出来るのですか?」

二人のその期待する言葉に、直哉は司令官コンピュータで周囲の状況を確認すると、ポケットから電話業務用携帯を取り出す。

電話の先は、大村二佐である。

『はい。もしもし、高菜先輩。どうしました?』

「うん。あのさ、今週の日月、艦娘を半数こっちに回してもらえないかな?」

『ああ、良いですよ。お出掛けですか?』

「うん。ほら、うちの三兄姉弟、揃って結婚だろう?一同に会して食事でも、って」

『ああ、是非行ってください。周辺の掃討なら、武蔵と大鳳で十分でしょう。と・こ・ろ・で』

「うん?」

『もちろん謝礼はありますよね?どういうお酒で引き受けようかなって』

楽しそうな声色の、遠慮のない後輩に、やれやれと肩を竦める。

「あぁ……なっちゃんに怒られるよ、飲み過ぎは。二次会前に『飲み過ぎないでください、母さん』って言われてたじゃないか?」

『いつもの事ですよ、腕を組んで『飲み過ぎは身体に毒です』ってさ」

「なっちゃんが、艦娘側二次会に行ったのを良いことに飲みまくってたね」

『怖い目付役がいないからですよ。結局叱られましたけど。』

そう。大村奈々海二佐は大酒豪で、いわゆるワクなのだ。

いっつも、お酒を飲んでいるのを奈々海の娘夏海に咎められているのだ。

同じく大酒豪の武蔵と共に。家計を握っている夏海には、誰も敵わない。

気仙沼鎮守府最強は、ある意味夏海なのだ。

余談だが、奈々海麾下の艦娘達は、全員養子に迎えている。

つまり夏海は、大村家最強の妹様なのだ。普段のおとなしい様子からは想像がつかないが……

「まあ、了解。コニャックを送るよ。今日注文するから、明日明後日には着くと思うよ』

『有難うございます!いやあ、楽しみだなあ』

嬉しそうな後輩の声を聞くと、頬が緩む。

「それじゃ、頼んだよ」

 

電話を切ると、二人にOKマークを示す。

「「やったぁ!!」」

二人は「ばんじゃーい」と飛び上がる。

 

提督の自由裁量でこうやって、周囲の鎮守府に応援を頼み、休暇を取ることも可能なのだ。

特に、この宮戸島鎮守府は桐山の尻拭いで休みが取れず、代休が溜まっている。

そして、提督と家族となっている艦娘には、提督と同行する権利が与えられる。

要するに、卯月を家族に加えた理由の一つでもある。

 

結婚してから、夜の営みと言うのは、未だに行えていない。

桐山が嫌がらせのように、夜に深海棲艦を連れて、宮戸島海域に放置して行くのだ。

毎回、ムードが高まったところで緊急通信が鳴って、

共有ウォークインクローゼットの中で、聞き耳を立てている卯月と共に向かうのだ。

遠慮はしているものの、電ちゃんの乱れる姿をわくわくしているお年頃。

トラウマも、少しずつ癒えて来ている証拠である。

 

 

日曜日。またまた夜勤を終え、仮眠を取ってから三人共起きると、リビングに集合する。

直哉はスリーピーススーツで、二人は艦娘の正装、制服姿である。

荷物は、既に宅配便で送っており、手回りのカバンだけでの移動である。

二人は、ホテルに移動したらお揃いのドレスに着替える予定なのだ。

一路仙台駅まで移動してから、新幹線に乗るのだ。

駅の駐車場に車を停めると、都会である仙台の人通りの多さに目を丸くする二人。

卯月はぎゅっと、電の手を握る。

「日曜の東京駅は、もっと人が多いよ」

そう笑って、二人の頭をぽんと撫でると、それぞれの手を繋いで、駅のホームへ向かう。

それぞれ改札できっぷを通すと、新幹線の広いホームに出る。

「さて、お弁当を買おうか?」

それぞれの駅弁を買うと、艦娘達はルンルン気分で新幹線を待つ。

新幹線がやって来ると、車内に乗り込む。

高級感溢れる一列3シートで、一番うしろの席だった。

2シートの方を卯月が譲ろうとしたが、

「行きは、うーちゃんと楽しくおしゃべりしながら行きたいのです」

と言う電の要望により、直哉が1シートの方に足を組んで座る。

走り始めると、電達はびゅんびゅんと駆け抜けて行く車窓の光景を、目をキラキラさせて見ている。

「速いのです!」

「いい景色だぴょん!」

それを眺めながら、持って来た缶コーヒーを口にする直哉だった。

 

東京駅に到着した三人を待っていたのは、ものすごい人混みだった。

「ものすごい人なのです!」

「あ……あぅぅ」

卯月の様子が、驚きから怯えに変わっている。

あまりに人が多過ぎて、トラウマが発動し始めている。

「うーちゃん。大丈夫?直哉、うーちゃんをおんぶするのです」

「あいよ」

卯月を背負って足早に、人混みから逃げ出すように駅を後にする三人だった。

取ってあるホテルは、東京駅からすぐのホテルで助かった。

「うーちゃん、大丈夫?」

「うん、大丈夫だぴょん……」

すぐにチェックインを済ませると、お部屋に通される。

リビング付きのスイートで、ベッドルームに向かうとものすごく大きいベッドがある。

今二人で寝ている、クイーンサイズのベッドよりも大きい。

「ベッドが大きいのです」

「広いぴょん」

「これは、キングサイズのベッドだねえ」

「じゃーんぷ!」

ぼふっと、電がダイビングする。ぱんつ丸見えである。

「うーちゃんもするぴょん!」

続いて卯月もダイブする。言わずもがなである。

その様子を、微笑ましげに見ている直哉。

「直哉も来るのです」

両手を広げて待っている、電の真横にダイブする直哉。

両側から、両腕を抱き締める電と卯月。

何だかんだで、卯月も直哉のことは大好きなのだ。

約束の時間は、1800(ヒトハチマルマル)。今は、まだ1400(ヒトヨンマルマル)

「ちょっと昼寝でもしようか?」

そう言いながら、目を閉じる直哉。

結局、事後処理やら何やらで、直哉はほぼ徹夜なのだ。

寝息が聞こえる直哉越しに、二人目を見合わせる電と卯月。

 

数分後、仲良く川の字で眠っている三人。

電と卯月は、ぎゅっと直哉を抱き締めていた。

 

「レディのお着替えなのです!」

夕方1700(ヒトナナマルマル)に目を覚ますと、直哉はベッドルームから追い出される。

ベッドルームでは、楽しそうな声が聞こえている。

お揃いで買ったドレスに着替えているのだろう。

そんな中、直哉は別のスリーピース・スーツに着替える。

 

「お待たせしたのです」

「お待たせだぴょん」

二人手を繋いで、ベッドルームから出て来た。

色違いのお揃いのドレスである。そう言えば、二人して服屋に行ってたがこれだったか、と直哉は納得する。

「それじゃあ、行きましょうかね、小さなお姫様方」

「「はーい!」なのです」

 

 

ロビーに降りると、

「電ちゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」

と声がして、優衣が突進して来る。優衣の姿はまたまたフォーマルスーツである。

卯月と直哉がひょいっと回避すると、抱き締められる電。

そのまま、クルクルっとダンスを踊るように抱き締めている優衣を放っておいて、もう一人のスーツ姿で眼鏡の、まだ少年にも見える青年の方に向かう。

「始めまして、三友龍太郎くんだね?高菜直哉だよ」

「存じてます。初めまして、三友龍太郎です。『宮戸島の英雄』だ、と優衣さんから何度もお伺いしております」

手を差し出すと、両手で握手をする年下の義兄である龍太郎。

「高菜卯月だぴょん。よろしくだぴょん」

「うちの、養子の艦娘。君にとっては義理の姪っ子になるかな?」

「よろしくね、卯月ちゃん」

優しく頭を撫でる。

「ぴょん」

電を抱き締めたまま、優衣も戻って来る。

「姉さんも、いつもどおり通常運転だね。で、今日はどこで食事?」

「皇帝ホテルの鉄板焼きー」

「皇帝ホテルか。まあ、あそこは警備もいいし眺めも良い。しかし兄さん、奮発したな」

「鉄板焼きって何なのです?」

「お肉とか野菜を、シェフが焼いてくれるところだぴょん。査察の前の日に前の提督が連れてってくれたぴょん」

「「………」」

その言葉に、言葉を失う二人に龍太郎は、

「件の悪徳提督ですね。そうやって不正に得た金銭の共犯に仕立て上げて、口止めしてたんでしょうね?」

「卯月は共犯だぴょん?」

「いいえ、被害者です。でも、査察で後ろめたくて言わせないようにしてたんでしょうね?」

そう言うと、卯月の頭を撫でる龍太郎。童顔の優男は、卯月にとっては恐怖ではないようで、大人しく頭を撫でられる。

「はいはい。湿っぽい話は抜き、今日は楽しみましょう。だって、高菜優衣最後の日なんだから」

「何だ、もう籍を入れるのか?」

その問いに、代わりに龍太郎が応える。

「はい。新会社設立の登記日に合わせて入籍をしよう、ってことで」

「そうか、おめでとう。こんな物体だけど、大丈夫だったかな?」

誂うように言うと、頬を膨らませる優衣。

「物体言うなし」

「いえっ、優衣さんは僕にとってもったいないくらいです。綺麗で、キュートなところがあって、カッコよくて……将棋も上手くて、頭も良くて……」

顔を真っ赤にしながら、優衣の魅力を語り出す龍太郎に、顔を赤くする優衣。

「もう、龍太郎……」

「はいはい、ご馳走様。それじゃあ、向かおうか。お出迎えに来たんだろう?」

「はい。僕は、未成年なので運転手役です」

そうして、ホテルの前に駐車している車を指す。国産車の大き目の五人乗りセダンである。初心者マーク付きである。

「ではよろしくお願いね」

直哉の声で、車に向かおうとする一同。そこで電が口を開く。

「いい加減に下ろすのです」

「あっ」

ずっと、抱っこされていた電だった。

 




お題「添い寝をしよう」

まだ出てこない兄さん。
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