―――高菜電三尉――――
優衣の運転で、皇帝ホテルに向かって車を走らせる。
行きは優衣で、帰りは龍太郎である。
龍太郎達も、同じホテルで宿泊しているようだ。
「そう言やさあ、艦娘の義妹持つの初めてだから訊くんだけど、夫婦の営みってしてるの?」
「!?」
「ぴょん!」
「ゆ、優衣さん!?」
その奔放な発言に、顔が真っ赤になる三人。直哉だけは動じてない。
「んー、今のところ忙しくてね、な?電」
「な、なのです」
顔が耳まで真っ赤な電は、何とか応える。
「そう言う、姉さんはどうなんだよ?」
お返しのように問うと、優衣はアハッと笑う。少し照れた表情で、
「婚前交渉は、しない主義なの。こう見えても、しっかりしてるのよ?」
「…………」
龍太郎くんは、顔が真っ赤である。
「そんで、明日から三友邸に住むことになるん?」
「そうそう。あっちのお義母さんとも意気投合しちゃって、明日マンション引き払って引っ越し予定よ」
「そっかそっか。手伝いに行けないけど、悪いな」
「良いって良いって」
「龍太郎くんも、こんな物体だけど、よろしく頼むね?」
「はいっ!優衣さんは、僕にはもったいないくらいのいい人です!」
その言葉に、「もぅ…」と優衣まで顔を赤くする。
その車内で、「はっはっは」と、直哉だけ笑っている。
皇帝ホテルの地下駐車場には警備の皇宮警察官が配置されており、鉄板焼きのフロアにもいるだろうことは、想像できる。
その警察官の見守る中、エレベーターに乗り込んで、鉄板焼きのフロアのボタンを押す。
エレベーターを降りると、オールバックに眼鏡を掛けた、スーツ姿で長身の愛想の無さそうな男と湊子が待っていた。
もちろん、侍従も脇に控えている。
「久しぶりだな。優衣、直哉」
この無愛想な男が、高菜直樹である。成績は優秀で、東大卒。
卒業後高菜ホールディングスに専務として入社、直樹が25の時に父親は第一線を引退、会長に退いたのを機に社長となり、
辣腕を発揮している若き名経営者なのだ。
現在は実家を出て、六本木にあるセレブヒルズに居住している、セレブ族なのだ。
「龍太郎も久しぶりだな、こんな物体を貰ってくれて感謝している」
「兄さんまで!」
「い、いえ。優衣さんは、僕にとってはもったいない良い物体です!」
「もう、龍太郎まで」
緊張のあまり、龍太郎にまで物体呼ばわりされると、プクーっと頬を膨らませる優衣。
その様子に、口元に手を当てて笑っている湊子。
「うふふ、直樹さん。あまり優衣ちゃんをいじめては、可愛そうですよ?」
「それもそうだ」
「久しぶりだねえ、兄さん」
「初めましてなのです、直哉さんと結婚した電なのです」
「初めまして、養子の高菜卯月だぴょん」
ペコリと頭を下げる二人に、直樹も少し笑みを浮かべる。
「初めまして、私が直哉の兄の直樹だ。君達艦娘には、常々感謝している。これからも愚弟を支えてやってくれ」
「はいなのです!」
「わかったぴょん!」
愚弟と呼ばれ肩を竦める直哉と、元気良く応える二人に、
「いい嫁と養子を貰ったな」
と、声を掛ける直樹。
龍太郎は、ちょっと斜めになったご機嫌の優衣を、宥めている最中だ。
「さあ、参りましょう」
湊子の声で、一同歩き始める。
東京の景色を一望できる席に通される。
それぞれの前には食前酒が用意されており、龍太郎だけノンアルコールだ。
「それでは、新しい家族に」
直樹がグラスを持つと、
『乾杯』
一同がグラスを上げる。
「これ、お野菜が美味しいのです」
「以前食べたのより、美味しいぴょん」
喜んでいる艦娘達を見ながら、ふっと笑みを零す直哉。
「しかし、兄さんが湊子様とお付き合いしてたとは知らなかったな?」
「これでも苦労した。マスコミに嗅ぎ付けられないように、侍従殿と計画を立てては参上する日々だったからな。身内にも内緒でな」
「うふふ、お忍びのデートも楽しかったですわ」
ふふふっと笑うと、侍従は苦笑いになる。彼の苦労は、想像するに余りあるだろう。
「しかし、巨大会社の
直哉の問い掛けに、直樹はふうっと溜め息を吐く。
「全く、親父から25で会社を押し付けられた時もそうだが、今度の合併も、親父殿同士の会談によって決まって、私には事後報告だ。全くあの読書家は、気苦労ばかり押し付ける」
その言葉に、龍太郎も苦笑いである。龍太郎も東京大学在学中で、直樹の後輩に当たる。
「僕も、卒業したら三友を任せる、と言われています。その時は、是非義兄さんの下で働かせてください」
「その言葉だけでも助かる。差し当たり、お転婆な嫁をしっかり躾けてやってくれ」
その言葉にどっと笑う。優衣はぷくーっと頬を膨らませており、その頬を隣の湊子が突っつく。
「もぅ………」
その頃には、メインの牛フィレステーキが焼かれている。
美味しそうな匂いに、目をキラキラさせている艦娘達。
「最近の太平洋の状況はどうです?兄さん」
「変わらずだな。横須賀の艦娘が、護衛に就いてくれるおかげで、我が社も貿易を続けていられる。有り難いことだ」
「変わりがないなら良いですね、悪化するよりマシだ」
「だな」
「直哉、お肉が柔らかくて美味しいのです」
「とろける感じだぴょん」
その言葉に、直樹も直哉もふっと笑う。
食事もデザートになったところで、直樹が鞄から熨斗袋を差し出す。
「直哉、龍太郎、少ないが結婚祝いだ」
お互いに、結婚祝いの交換が始まる。
直哉も用意していたし、龍太郎も用意しているのだ。
ありがたく受け取って、鞄にしまう直哉。
「電と卯月も、たまには東京に遊びに来てくれ。今度は六本木で出迎えよう」
「有り難いんですが、卯月は人混みが苦手なんで、車で来ますよ」
「そうだったのか。それは申し訳なかった、すまない」
「いいえ、大丈夫だぴょん。実は……」
これから家族になる相手に、隠し事は嫌だと思った卯月は、悪徳提督にされたことを、涙を浮かべて打ち明けた。
龍太郎も優衣も悲痛な表情になり、電と直哉は卯月の背中を擦っている。
「そうだったのか………全く度し難いことだ。このような小さい娘に、よくそんな事ができるものだ」
感情少なく憤る直樹。それでも弟妹二人は、その悪徳提督に対し、かなり憤ってるのが判る。
「でも大丈夫だぴょん。直哉がいてくれるから、うーちゃん戦えるぴょん」
「強い子だ。卯月も、直哉のことを支えてやってくれ」
「了解だぴょん、びしっ」
涙を拭って敬礼をすると、直樹も笑みを浮かべる。
「今日はごちそうさまでした、高かったんじゃないかい?兄さん」
「このくらいはさせてくれ。兄として、あまり何もしてやれなかったからな」
「それだけでも十分さ、兄さん。これから儀式やらなんやらで忙しいと思うけど」
「私に任せてくれたのだから、やり遂げるさ」
「それでは
兄弟の会話を横で聞いていた湊子が、声を掛ける。
「ああ、また今度顔を出す。発表してしまえば、もう堂々と行けるからな」
とは言え、湊子は公務もある、直樹も会社で忙しい、まだまだ会える時間は短いのだ。
名残惜しそうに、湊子がそっと直樹に抱き付くと、そんな彼女の頭を撫でる直樹。
そして侍従と共に、エレベーターで降りて行くのだ。
「ところで、親父殿達はよかったのかい?」
今更ながらに問うと、直樹はククッと笑った。
「今日は、三兄弟妹の配偶者披露の場だ。親父殿達にはご遠慮願った」
「そう言えば、直哉のお父さんはどんな人なのですか?」
「そうだねえ、一言で言えば
その言葉に、どんな図書館なんだろう?と、ポカーンとしている電と卯月。
「そう考えれば、高菜家でまともなのは私だけだった、と言うことだ」
「「ひどい!」」
直樹の言葉に抗議の声を上げる弟妹に、龍太郎と電と卯月は、笑いを堪えることが出来なかった。
直樹とは皇帝ホテルで別れ――別れ際に、そっと電と卯月に小遣いを渡す直樹。
「繰り返すが、弟を頼む」
との、囁くような言葉と共に……
そして、姉と龍太郎とは、エグゼクティブラウンジで別れると、部屋に戻る三人。
「ふう、満足な食事だったかい?」
「「もちろん!!」」
とっても嬉しそうに応える二人の頭を撫でる。
「先にお風呂入っておいで」
「「一緒に入るのです」ぴょん!」
「えっ…?」
そのまま、お風呂場に連行されて行く直哉だった。
翌朝。眠っている直哉に、目を覚ました電と卯月がそっとキスをした。
「ダイスキなのです」だぴょん」
「ところで、うーちゃん。もう、一度混ざっちゃったら、別々に寝る必要ないのです」
「あぅ………」
顔が真っ赤になる卯月。
「トラウマは、克服できたのですか?」
「わかんないぴょん。でも……直哉は優しくしてくれたぴょん」
「ふふっ、これからもよろしくなのです」
「ぴょん」
直哉越しに握手する電と卯月。こうして直哉は、二人の『嫁』を手に入れることになった。
その頃。
大村奈々海に届いたコニャックは、先に夏海に発見されて、今のを飲み終わるまで没収されたことは言うまでもない。
本日のお題「キスをする」
このお題をメインで持ってこれるのは絵だけだと思います(迫真