宮戸島の提督と仲間達のお気楽日記   作:SAMICO

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お夕飯回  島民と二人のふれあい。




お夕飯

何時もの夕飯時、電と二人でやって来る大衆食堂。

 

「いらっしゃい、直さん」

食堂のおばちゃんが声を掛けると、食堂で飯を食っている島民達が、彼の周りに集まる。

「おっす直さん」

「高菜さん、今日も夫婦で飯かい?」

「「夫婦じゃない」のです」

からかいの言葉には、ハモっての反論である。

 

「それじゃあ、日替わり定食と、ビール。電は?」

「電は唐揚げ定食と烏龍茶なのです」

それぞれが思い思いの注文をすると、おばちゃんは「あいよっ!」と元気良く返事をする。

 

「直さん、最近の情勢はどうだい?漁に出れそうかい?」

宮戸島の漁師であるおじさんが、心配そうに訊いて来る。

今の所、宮戸島海域での漁が可能な状態にまで、電一人でやってくれているのである。

「いやあ、近海なら出ても問題ないんじゃないかなあ。ただ、周りのアホ共が敵を引き連れて来るから、無理せず、レーダーが反応したらすぐ逃げるんだよ?」

高菜二佐は、制帽を取って頭を掻きながら応える。

「あいよ。若いもんにも言って聞かせてるからよ」

彼等も、立派な防衛隊なのである。

漁に出るついでに深海棲艦を発見すると、直ぐ様宮戸島鎮守府に通報して、電が向かうのだ。

大抵は、周囲の提督が無理をして敵諸共撤退することが多く、その尻拭いの方が多いが……

 

「そうだ。高菜さん、電ちゃん、今度またお菓子を作って持って来ますからね?」

「いやあ、いつもすみません」

「有難うなのです!」

そう言って来るのは、鎮守府の近くに一人で住んでいる、おばあちゃんである。

夫は護衛艦の艦長で、深海棲艦との戦いで戦死したのである。

宮戸島脱出作戦の時には、島民の古株として皆を纏め上げ、脱出するのに成功した功労者でもある。

趣味のお菓子作りは、「ボケ防止を兼ねて」と、本人が言いながら、電とおまけで高菜二佐の為に作って来てくれるのである。

 

高菜二佐は、街では人気者扱いで、街を歩くだけで、誰彼なく声を掛けられる。

「やあ、直さん」

直さんというのは、彼のニックネームでもあり、大抵直さんで通ってしまう。

いつもお昼前に、電と妖精達のアイスの買い出しに現れる彼には、

島の皆が、信頼と敬意を持って接してくれている。

約1200人の生命を救った英雄らしからぬフランクな態度で接する高菜二佐は、親しみ易い人気者なのだ。

決して、御大層な英雄なんかでは無かった。

 

夕食が出されると、電と乾杯をしてビールをぐいっと飲む。

「提督は飲み過ぎないでください」

そう、チクリと釘を刺すのを忘れない。

「まあ、そう言わないでくれよ。私だって、労働後の一杯を生き甲斐にしているんだから」

「そういうのは、勤勉に働く人が言っていいセリフなのです」

少し膨れっ面で言う電に、皆がどっと笑う。

「いやあ、私はあの脱出で、勤勉さというものを忘れてしまったんだ。いいじゃないか、主任務(給料分)、つまりは宮戸島海域の海の安全を守ってるんだから。……安全を乱しているのは、周囲のアホだが」

最後はぼそっと、電から目を逸らして呟く。

「ちげえねえや、高菜二佐が指導してやったらいいんじゃねえか?」

「いやあ、それでも相手は先任の二佐殿だからね?私ごときが指導なんて、恐れ多くてとてもとても」

漁師のおっさんが、耳聡く最後の呟きを聞いて大笑いすると、高菜二佐も苦笑して肩を竦める。

 

実際、隣接鎮守府の桐山二佐は優秀な戦果を収めているのだ。ただ、ちょっと無理をする事が多いだけなのだ。

その尻拭いをして、戦果を横取りする形になってしまっている宮戸島鎮守府とはソリが悪い。

噂では、ブラックなんじゃないか?と言われているが、前回の査察では問題は無かったらしい。

「まあ、私達の主任務は果たしてるんだ。戦果の横取り、と言うならそれでもいいさ」

「なのです」

高菜二佐の言葉に、電も同意する。

 

食事を終えると、二人して歩いて帰る。

「今日も満腹なのです」

「いやあ、あそこの食堂(めしや)の料理は絶品だからねえ。毎日通いたいもんだ」

「いつもながらなのですが……お給料大丈夫なのですか?」

ふと尋ねる電に、ぽんと頭を撫でる。

「それなりにお国からお給金を頂いてるからね。電が心配しなくていいよ。いつもいつも、心配させて済まないね?」

「全くなのです。高菜二佐は、電がいなかったら、ただのおじさんなのです」

ふんすと鼻息を荒げて言う電に、肩を竦める高菜二佐。

「全くだ。君がいてくれるから、私も随分楽ができる」

「ふふっ。電と、高菜二佐の準備のおかげなのです」

そう言って、電はそっと高菜二佐の手に触れると、ギュッと握った。

「ん?どうした?」

「今日は、手を繋ぎたい気分なのです」

「はいはい。かしこまりました、お嬢様」

おどけて見せる高菜二佐に、電もふっと笑う。

 

争いばかりの日常、この一時だけは争いを忘れる事ができるのだ。

……何事もなければ……

 

Trrrrr....

 

携帯電話が鳴る。はっと顔色を変え、ポケットにある仕事用の携帯電話を取り出すと、

「ハイもしもし、高菜です」

と電話に出る。

『もしもし!今、深海棲艦を見つけた!艦娘隊(やつ等)はスルーして行きやがった!夜釣り隊は緊急避難してる!イ級だけで、こっちは逃げ切れそうだ』

漁師達からの緊急電話である。

「了解」

大きな溜め息を吐くと、手を繋いだ電に、

「仕事だ。夜警中の筈のあの桐山二佐が、またイ級を無視したらしい。すぐに向かおう」

「またなのですか……全く……」

「「面倒事を押し付けないで欲しいな」のです」

そう、同時に言うと、二人は顔を見合わせてふふっと笑った。

「とにかく急ごう」

「はい!」

二人は、手を繋いだまま宮戸島鎮守府に戻って行った。

 

―――――

「全く、超過勤務なのです」

「本当だね」

宮戸島鎮守府にやって来た漁船に乗せてもらい、電と共に緊急出撃する。

イ級自体は速やかに駆逐したものの、漁師達の憤りを宥めるのに骨を折った。

憤りの矛先が、決して高菜二佐に向かって来ないのが、唯一の救いである。

宮戸島鎮守府から、歩いてすぐの場所に食堂があるから、すぐに戻れるものの、

こういうイ級を放置するのは、いい迷惑なのだ。

艦娘にとっては、雑魚で戦果も大したことがない相手でも、漁師達にとっては脅威、死活問題なのだ。

宮戸島鎮守府に帰り着いた二人は、大きな疲労感と共に、一応大本営に報告を入れる。

一応は注意をしてくれるが、守られた試しがない。

相手側も、逃げられたと主張して終わってしまう。

「これも給料分の内かな?」

「なのです」

二人で見合わせて軽く笑うと、高菜二佐は妖精さん達に書類仕事を任せ、入浴してさっさと寝てしまう。

電も後からお風呂に入ると、もう既に寝てしまっている、高菜二佐のベッドに潜り込んで眠る。

これで再び、緊急事態がなければ一日はおしまい。翌朝、また電は出撃して行くのだ。

今の所7勤0休。休みは一応日曜日の筈なのだが、まず間違いなく緊急出動があって、休みなんてものは存在しないのだ。

ある意味ブラックな鎮守府である。

「昼寝くらいしなきゃ、とてもじゃないがやってられないよ」

その鎮守府の責任者は、こうぼやいている。

 




本日のお題「手をつなぐ」

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