―――作者談―――
ピピピピピピ…………
今朝も目を覚ます。
電が、モソモソと布団を手繰り寄せ起き上がる。
何か頭に違和感が……
頭を触ってみる。何か付いている……
横で眠っている卯月の頭を見ると、うさぎの耳。
布団を捲ると、お尻にもうさぎのちっちゃくて可愛いしっぽが付いている。
自分のお尻にも、尻尾は付いている。縞々模様の狸の尻尾……
「な、何なのですかぁぁぁぁぁぁ!?!?」
電の悲鳴が、寝室に響き渡った。
その叫びが響く頃、薄雲は漁港の埠頭で、工作艦明石と密会していた。
「私の新装備、どうでしたか?」
「ユニーク……上手く行きました」
薄雲も、黒猫の耳に長い尻尾を付けている。
「さすがは私の元助手です」
そう、直哉の下に来る前に、薄雲は明石の下にいたのだ。
そこで明石は、薄雲の身体を検査したり調査したりしていたのだ。
薄雲は、それから直哉の下に行くまで、明石の助手をさせられていたのだった。
明石は、大本営の大工廠の所属で、日夜新装備を開発している。
それとは別に、趣味で日夜、全国の提督と一部の艦娘が喜びそうなものも開発しているのだ。
「私の『獣耳ドリンク』上手く行きましたね、これで全国の提督に高く売れば……うふふ」
「碌なことにならないと思いますよ。マッドサイエンティスト」
「褒め言葉と受け取っておきましょう」
そう言われた薄雲は、先に立ち上がると、スタスタと高菜家に戻って行った。
「ただいま」
寝室に戻ると、虎の耳と尻尾をつけた直哉が、狸とうさぎを仲良く襲っており、
「あれっ」
黒猫さんも敢えなく捕まって、ベッドに放り込まれた。
数時間後……
獣耳の状態で庁舎に向かう四人、
完全に遅刻である。
「しかし、どうしてこうなった……?」
「解らないのです……」
「そう言えば、薄雲が買って来たジュースは、皆飲んだぴょん」
その卯月の言葉に、耳と尻尾がピコンと跳ねた。
その様子を見た三人は、ジト目で薄雲を見る。
「逃さないのです!」
逃げようとした薄雲の尻尾を、電が捕まえた。
「ふにゃああ…………」
薄雲は可愛い声を上げて、へなへなと崩れ落ちた。
「……という訳なんです」
薄雲は腕を組んだ三人に囲まれて、庁舎で白状した。
「明石の仕業か………」
直哉は、エグゼクティブチェアに腰掛ける。尻尾は、キャスターで踏まないように、くるっと支柱に丸める。
「はい。昨日明石さんから、宮戸島に宿泊する旨連絡がありまして、その際に実験をするように、と」
正座している薄雲が答えると、直哉は大きな溜め息を吐いた。
「取り敢えず、このまま哨戒に行っておいで。明石は、私に用事があるようだ」
仲良く哨戒に行ったのを見計らって、大きな溜め息を吐いた。
「明石、一人だから入っておいて」
すうっと光学迷彩を解除して、明石が執務室に現れた。
「相変わらずのマッドサイエンティストだねえ」
苦笑いを浮かべる直哉に、同じく笑いを浮かべる明石。
「取り敢えず、応接室に行こうか?」
「はい」
庁舎の応接室に場所を移動した明石は、開口一番、
「薄雲はどうですか?」
「やはり、用件はそれか。半分深海棲艦と言うのは本当のようだね?」
「はい、再生力はかなり強いと思います。ただ、その方向性は生きたい、という想いのようですね?」
そう言うと、ちらりと意地悪そうな笑みを浮かべる明石。
「結局、一目惚れってのは本心だったのか?」
「はい。薄雲の希望と、私の推薦で異動になったようなものですから」
「さすがは『宮戸島の脱出行』の手品師。いずれにせよ、私のところに押し付けると思ったよ」
宮戸島の脱出成功を、更に後押ししたのは、上陸して来た深海棲艦達であった。
これ等は全て明石が作成したダミーで、自立駆動もする後々、量産型艦娘計画の基礎になったものである。
この深海棲艦の姿に島民達は恐怖して、当時の直哉の言うことを信じ、全島避難を完遂することになったのだ。
その直後、艦娘部隊が結集して陸上戦を行い、奪還したのだ。
何故、宮戸島を深海棲艦が狙ったのかは、未だに分かってはいない。
「うふふ、もう少し調べておきたいこともありましたし、今は宮城に出張していますよ」
「また謎の物体を研究したいんじゃないのかい?結局、量産型艦娘はどうなったんだい?」
「ああ、あれはですね、コストの問題でボツになりました。後、浪漫の問題で。中に自衛官がおっさんが入ってたらちょっと……」
「自衛官としては、それでも有用な手段なんだがねえ。防護力を考えれば、怪獣型の方がいいんじゃないかな?」
「怪獣の姿のパワードスーツみたいな感じですか……それもコストの問題が……それに人命も」
「現状、コストパフォーマンスがいいのは艦娘だ、というのは悲しい限りだな」
「…………」
溜め息を吐く二人。
「話を戻そう。薄雲についてはどう思う?」
「私の結論では、貴方の側にいる限りは大丈夫だ、と考えています。大本営は、理由を付けて処分したがりそうですけどね」
悲しそうに明石が首を振る。
「深海棲艦化の問題か。だが、私はどうなったとしても薄雲を信じている。私達の敵にはならない、と」
「私も信じたいです。ですから、私が宮城に派遣されました。兵装関係は夕張に任せておけばいいですし、実装演習は鹿島に任せておいていい。実戦配備試験には、大和二佐率いる特殊艦隊もいますし」
「それで、宮戸島に滞在している訳か……いっその事、宮戸島鎮守府に工作士官として着任すれば良いじゃないか?」
「ふむ………その手もありですか。でも、私がここにいてはお邪魔でしょうし。私は宮城地本に作ってもらった工廠で、研究を続けますよ」
「?」
「三人の嫁達に囲まれて幸せな日々を送っている、高菜二佐のお邪魔はできませんよ?」
意地悪そうな笑みを浮かべている明石に、直哉は苦笑いを浮かべる。
「あー!!いたー!!」
扉が開かれると、中に乱入してくる三人の嫁達。明石は慌てた顔をして、
「INVISIBLE!」
と発し、姿を消す。
「消えたのです!?」
「どこ行ったぴょん!?」
「きっと入り口に……ふに゛ゃん!!そこです!」
尻尾を踏まれた薄雲が、悲鳴を上げた直後に腕を伸ばすと、そこに明石が引き攣った笑いをして立っていた……
「解毒剤を出すのです」
三人娘にとっ捕まって、正座状態の明石が泣く泣く解毒剤を出すと、それぞれが飲んで元に戻る。
「全く、酷い目に遭ったのです」
「うーちゃん、尻尾がパンツの中でずっと気になってたぴょん」
「尻尾を踏まれました……」
明石は苦笑いで立ち上がると、両脇をガシッと電と薄雲に掴まれた。
「えっ?」
引き攣った顔で両サイドを見回すと、卯月が笑顔で見上げる。
「お家でお仕置きだぴょん」
「た、高菜二佐、助けてぇ…………」
助けを懇願すると、
「やだ」
そう言って、さっさと執務室に戻って行ってしまう。
その後、明石はめちゃめちゃお仕置きをされたのは言うまでもない。
お題「獣耳」
このお題が良くなかった。
クオリティ低くてすみません。
お休み予定でしたが、夜から気分が向上したので書いてみました。