寒さも強まる、東北の11月の昼下がり。
いつものように、電、卯月、薄雲は哨戒に向かっている。
そんな折、いつものように報告書を事務妖精さんに丸投げして微睡んでいると、
ぽろろぽろろぽろろぽろん ぽんぽんぽんぽん
プライベート用スマホの着信音が鳴り響く。
南三陸の武藤二佐からだった。
「ふぁい、もしもし……」
『また昼寝かね?聞いてくれ!うちの夕立がとうとう三尉になった!』
嬉しさを爆発させているような笑顔が見て取れる。
その言葉に、直哉の頬も緩む。
「それはおめでたいですね。折角ですから、ウチのダイニングでパーティでも開いたらどうですか?」
『おお!あの高菜二佐の家には、一度お邪魔してみたかったんだよ』
「そうですか。ところで、変なこと訊くようですけど、二佐んところは夜の生活とかどうしてるんです?」
誂い半分で訊いてみる。同じトリオ嫁同志なのだ。
『うちは、長門が曜日管理しておる。私もそう若くないものでな、週二回ずつで日曜日は三人で、といった形じゃのう』
「あはは。うちは、大抵三人とも積極的で、私ももう40代になるんだから、多少は遠慮して欲しいものですよ」
『愛されてる証じゃて。一度明石に、艦娘用増強剤を飲まされた時は、四人とも足腰が立たなくなって、軍務に影響が出て、奈々海二佐のところに迷惑を掛けてしまったよ』
「明石印の薬品は気を付けてくださいよ。うちも、獣耳化してしまいましたよ」
因みに、その大村奈々海は幼女化したそうだ。
その写真を夫に送ったら、その姿でもOK!と言い出したらしい。
未だドバイに長期単身赴任中の為、幼女化奈々海のいろいろなセクシーショットを送ったそうな。
本人もノリ重視だった為、ノリノリで送ったようだが……
『なんでも最近は、艦娘同志カップルの為に、怪しげな研究をしているとかしていないとか』
「まあ、その話はこの辺にしておきましょう。各艦娘に怪しげなクスリを飲ませないように注意喚起する、ってことで。明石には、この間嫁達が物理的にお説教をしたようですし」
『なるほど。それじゃあ、お邪魔していいかい?』
「良いですよ」
『それじゃあ夕方、顔を出させてもらうよ』
その言葉と共に、電話が切れる。
「ふぁーぁ………」
欠伸をしながら背を伸ばしていると、艦娘達が哨戒を終えて帰って来る。
「ただいまーなのです!」
「今日もロ級を退治したぴょん」
「楽勝でした」
無表情でVサインをする薄雲の頭をナデナデする、電と卯月。
「今日は、武藤提督達が遊びに来るらしいぞ。夕立が、とうとう三尉になった」
「「「おー」」」
「そんな訳で、お祝いパーティをしようと言うことになった」
「なるほど」
「それはいいアイデアだぴょん!」
「そうですね」
夕方。
「こんばんはー」
やって来たのは、武藤提督に長門、それに木曾に、夕立…までは良かったが、
夏海に謎の少女。
「えへへ。先輩、私ですよ。私」
ふにゃっと笑った笑顔、夏海と同伴でそばかすがある特徴的な顔。
「ああ、大村二佐か。何やってるんだ?まさか、明石の?」
「はい。子供化ドリンクを盛られまして、それからその姿で……」
「艦娘的には庇護欲をそそるとかで、戻さないで欲しい、と言うことで……」
こめかみに指を当てながら、代わりに答える夏海に、電が、
「ご苦労さまなのです」
と云う謎の慰めの言葉を掛ける。
「制服も特注のを申請しましたし、足立一佐にはイヤーな顔をされましたけど、自腹で特注してるんですから問題ないですよ」
自信満々に語る後輩に、夏海と直哉は大きな溜め息を吐いた。
「旦那はどうするんだよ?」
「旦那に写真送ったら、喜んでくれましたよ?」
「………アイツはロリコンだったのか?」
一応、奈々海の旦那の顔も知っていて、生真面目一徹な男の意外な素顔に、もう一度大きな溜め息を吐いた。
「ところで、夕飯はどうする?すき焼きかしゃぶしゃぶか寄せ鍋にしようと思うんだけど?」
「寄せ鍋!お魚いっぱい食べたいっぽい!!」
と云う主賓のご意見により、寄せ鍋に決定した。
主賓はリビングで、最新ゲームをやって楽しんでいる。
持参して来たアップルパイは夕立の独占で、卯月、奈々海と一緒に、楽しそうにゲームをしている。
奈々海は昔から場を盛り上げる天才で、ゲームも適度に手を抜いたり、力を入れたりして夕立を楽しませている。
「夕立、うまいうまい!」
「上手だぴょん!」
「うちにもゲームがあるからやってるっぽい!」
自慢気になる夕立、その様子をほっこり眺めている長門。
「うちの
「なのです」
「そうですね」
「そうだな。武藤提督もゆっくり座っててください」
そう言うと武藤提督も、
「すまんねえ」
と言いながら、リビングのソファに腰を下ろす。
電と薄雲、木曾、それに夏海に直哉。
練り歩く先は、漁港近くの魚市場にあるお魚屋さんである。
「大村二佐には、いつも世話になってるねえ」
「いいえ。私としては、母が皆さんの迷惑になってないか?と」
恐縮する夏海に、ふふっと笑って、
「迷惑で思い出したけど、私が上級生の深夜番だった時に、門限破りから戻って来た旧姓水上奈々海候補生と出会ってね」
「出会って?」
「見て見ぬふりをしておいたんだ。今思い返せば、それが私達の出会いだったかな。君のお父さんを紹介したのも、彼女が在学中の時に、彼氏ができないなんて言い出したから、高菜HDの社員で結婚を考えてる人と私と三人で飲み会をしたら、任官直後に妊娠して出産。22歳の二尉で、いきなり母親になった訳さ。奔放な後輩だよ」
「そうだったんですか……母らしいです」
母親の知られざるエピソードに、ふふっと笑う夏海。
「そう言えば、母娘喧嘩とかしないの?」
「良くしますけど、武蔵や三笠曰く『提督のほうが子供だ』と言っています。そんなに私、落ち着き過ぎてますか?」
困った顔をする夏海に、薄雲が、
「落ち着いたガール、モテます」
「電もそう思うのです!」
「俺もそう思うぜ」
そう言うと、電も木曾も続ける。
「有難うございます」
笑顔を浮かべながら喜んでいる後輩の娘を見て、ふふっと笑みを浮かべる直哉。
やって来た魚屋さんで、
「直さんに、かわいいお嬢ちゃん達も来てくれたから、お刺身も付けてあげるよ!」
とのお言葉に甘えて、沢山お魚を買って来る。
シャケやタラや白身魚やブリ等、いっぱい買って、
お刺身用の魚も、柵で持たせてくれる。
「いやあ、いつも済まないねえ」
そう言いながら、代金を支払う直哉に、
「いいっていいって。いつも、海の平和を守ってくれてるんだから」
と笑顔で言う、魚屋のおっちゃん。
「いやあ、有難うございます」
直哉がそのおっちゃんに頭を下げると、おっちゃんは直哉の背中を叩く。
「げふっ」
少し噎せると、皆どっと笑うのだ。
お魚を買い終えて野菜も買って家に戻ると、武藤提督が金物屋で大きな土鍋を買って来てくれていた。
「ああ、すみません」
「卯月が、この間土鍋が割れたって言うから、卯月と買って来たんだよ。目止めも終わってるよ」
そう。この間の鍋で、卯月が洗い物中に、落として割ってしまっていたのだ。
すっかりそれを忘れていた直哉はそう言いながら、キッチンに向かう。
キッチンに入ったら、大村家の総料理長である夏海が、テキパキと包丁を走らせて大皿に魚と野菜を盛り付けてから、
柵の刺し身をしゅっ、しゅっと切って盛り付ける。電と木曾はそのお手伝いをしている。
「いやあ、良いお嫁さんになるよ」
そんな言葉に、少し照れて、
「そんなに褒めても、何も出ませんよ?」
そう言うも、長門も木曾も、
「良いお嫁さんになる」
と断言すると、いよいよ顔を赤くするのだ。
その間にダイニングでは、卯月が来客用の椅子を、収納から出して来る。
その頃ゲーム組は、ロリ奈々海と夕立で、格闘ゲームに熱中している。
『シネェーイ!、ドコヲミテイル!』
画面では奈々海のキャラが、バスケットボールのように叩き付けられている。
そして、夕立のキャラの姿はどこにもなく、奈々海のキャラが画面外と地面を往復しているだけの状態である。
出汁たっぷりのお鍋に、野菜とお魚を入れ、野菜とお魚が簡単に煮えたところで、ミトンで?んでカセットコンロに移動する。
「はいはい。夕立ちゃんも、母さんもごはんですよ~」
「「はーい!」」
ゲームを放り出して、ダイニングにやって来る二人。
全員揃ったところで、
「それじゃあ、乾杯の音頭を取る前に、発表があります!」
『えっ?』
直哉は宣言と共に、プリントアウトした昇進辞令と、今朝宅配便で届いた階級章を取り出す。
「えー、駆逐艦電。類稀なる優秀な戦績により、艦娘昇進規定によって二尉に任じる。また駆逐艦卯月、同じく優秀な成績により、三曹に任じる。大本営幕僚総監 大貫 悟海将 おめでとう」
直哉は、余計なことをしたかな?と思いつつ発表すると、真っ先に主賓である夕立が、
「おめでとう!!!」
と祝福してくれた。
その後皆で、
「夕立も電も卯月もおめでとう!!!カンパーイ!」
と、全員で乾杯の音頭を取り、お鍋パーティーが始まる。
ワイワイガヤガヤ、艦娘達がガールズトークに花を咲かせ、新しい階級章を身に着けた夕立・電・卯月の三人は、嬉しそうに食事をしている。
そんな艦娘達を眺めながら、自分達も彼女等を守って行こう、と決意する提督三人組だった。
因みに、全員お泊りになり、リビングで雑魚寝することになった。
夕立と卯月と電はベッドの独占権が与えられ、ふかふかのベッドで眠るのだ。
お代「料理づくり」