宮戸島の提督と仲間達のお気楽日記   作:SAMICO

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変態に人権は無いのです
――電二尉――



今回は短いです。
※一部表現がエグい部分を書き直しました


健太君と愛ちゃん

土日の朝も、直哉達は鎮守府にやって来る。

ただ平日と違うのは、二人の子供が待っているかいないか、である。

「「おはようございます!」」

元いじめられっ子の健太君と、愛ちゃんである。

二人仲良く、空手の道着に着替えて待っている。

健太君には艦娘寮の鍵を預けていて、そこで着替えることを許可している。

これも、提督の自由裁量権のひとつなのだ。

 

「はい、おはよう。それじゃ着替えて来るから、埠頭で待ってるように」

「「はいっ!」」

健太君と愛ちゃんは、手を繋いで軍港敷地内の埠頭に向かって行く。

「今日も元気がいいのです」

「元気いっぱいだぴょん」

「ですね」

三人の嫁達もそれをにこやかに見送ると、三人仲良く哨戒に向かって行く。

深海提督の存在や、深海棲艦全てが戦争を望んでいる訳ではないことを知っている三人は、少しやり辛いが、

漁師達の命と財産を預かっている身である為、はぐれ深海棲艦は沈めざるを得ないのだ。

どんどん浄化して、そして轟沈艦娘がいなくなれば、この戦争も平穏期を迎える。

そう信じて戦い続けるのだ。

 

その間に、直哉は空手着に着替える。

使い込まれた黒帯を締めると、顔も引き締まる。

 

そうして二人の指導を始めるのだ。

「正面に礼!」

「「「押忍!」」」

「互いに礼!」

「「「押忍!」」」

まずは、互いに挨拶をしてから準備体操をして、基本の練習から始まる。

「正拳突き、一!ニ!三!四!五!………」

 

 

「お疲れなのです!」

練習が終わる頃には、電達が哨戒を終えて戻って来る。

「今日は敵影なし。ぶいっ」

無表情でVサインをする薄雲に、

「何事もなかったぴょん」

笑顔を浮かべる卯月。

練習が終わると、埠頭でお茶会が始まる。

和気藹々としながら、お茶を飲んでいる皆を見つつ、健太と直哉は愛ちゃんが空手を習うきっかけになった出来事を思い出していた……

 

 

――――――――

それは、健太といじめっ子トリオが修好状態になった直後の頃だった。

愛ちゃんは何時も通り、学校の帰りに裏道を通り、近道をして家に向かっていた。

そこに、コートを着たオジさんが立っていた。

誰だろ、普段誰も通らないのに、と不思議な顔をしてそのオジさんと擦れ違おうとした時、

「ねえ、お嬢ちゃん」

そう呼び止められた。

振り向いた愛ちゃんの眼前には、全裸のオジさんの姿があった。

「き、きゃ…………」

母子家庭の彼女が、初めて見た男性のそれである。

恐怖と驚きで、腰を抜かしていた。

「こ………来ないで……」

オジさんは興奮した様子で、ジリジリと近寄って来る。

ぎゅっと目を閉じた時、後ろから声が聞こえた。

「オッサン!やめろ!」

それと同時に、何者かが体当りした。

オジさんは後ろに蹌踉けると、男の子が愛ちゃんの前に立ちはだかった。

「お、おい、愛。大丈夫かよ?」

一緒にいたお騒がせ三人組、元いじめっ子の圭一・寛太・慎が、愛ちゃんを囲んで気遣う。

「慎くん、お巡りさん呼んで来て!」

立ちはだかった男の子、健太は空手の構えをしながらそう言うと、寛太と慎が二人でお巡りさんを呼びに、駐在所に走って行った。

リーダー格の圭一は、近くで愛ちゃんを守るように、健太の様子を見ている。

「邪魔するなぁ!!」

襲い掛かってくるオジさんに殴られると、少し蹌踉ける。

「「健太!」くん!」

二人の悲鳴に似た声が重なると、健太はバッとそっちに手を出して、

「大丈夫」

そう言って、前を向いた。

オジさんが殴って来るのを受けて、払って躱す。

蹴りを膝で受け止めて、勢いを殺しながら下がる。

全裸の変態オジさんと健太の攻防を、愛ちゃんはじっと見ていた。

 

 

――――――――

その頃、変態じゃないおじさんこと直哉は、駐在所で駐在さんと将棋を指していた。

「はい、王手飛車取り」

パチンと駐在さんが指すと、

「あれ、おかしいなぁ……」

悪手だったかなあ、と苦笑いをしている。

この駐在さん、公認のアマ五段の持ち主なのだ。

「お巡りさん!!」

そんな中、寛太と慎が飛び込んで来た。

「お巡りさん!変なオジさんがいて、健太と戦ってる!」

「何だって!?」

「私も行こう」

二人は立ち上がって、寛太と慎の案内で現場まで向かった。

 

 

二人が現場に着いた頃には、息の上がっているオジさんと、少し息の荒い健太が睨み合っていた。

腰が抜けた愛ちゃんは、立てなくて側に圭一がいる。

「何やってるんだ!?」

「くそっ!このガキ共!!」

破れかぶれで蹴りを入れようとした時、健太は股間目掛けてカウンターで回し蹴りを放った。

もちろん、蹴りは受け止めている。

「!!!!!!」

「沈め!この変態が!」

その股間の激痛に立ち竦んでいると、直哉が飛び込んで肝臓撃ちをぶっ放す。

「ごぶぅ!」

そのまま崩れ落ちたオジさんは、駐在さんによって現行犯逮捕されたのだ。

 

「大丈夫だった?愛ちゃん」

「うん……ごめんね」

腰が抜けた愛ちゃんを、おんぶしてお家まで送る健太。

そんな健太くんに、愛ちゃんは一目惚れしてしまったのだ。

 

そして愛ちゃんも身を護る為に、何より健太君と一緒にいる為に、空手を始めた。

今では、お騒がせトリオよりも段級が上になっている。

練習をサボりがちのトリオより、熱心に練習しているのだ。

「今日もアツアツなのです」

仲良く隣り合って座っている、健太君と愛ちゃんを誂う電。

そうすると、二人揃って顔が赤くなるのだ。

 

そんな様子を見ながら、より一層頑張って海の安全を守らなくては、と決意を新たにする直哉だった。

 

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